ルカの福音書(43)12人の帰還9:7~17

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12人の帰還について学ぶ。

ルカの福音書 43回

12人の帰還

ルカ9:7~17

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①イエスのガリラヤ地方での奉仕(ルカ4:14~9:50)

  ②ルカ9:1~50は、そのクライマックスである。

  ③エルサレムへの旅(ルカ9:51~19:10)へのブリッジである。

  ④ルカ9:1~50の中心テーマは、弟子訓練である。

    *教会時代への準備が始まる。

(2)弟子訓練の内容

  ①ご自分が何者であるかについて教える。

  ②メシアの受難について教える。

  ③弟子として受ける苦しみについて教える。

(3)ルカ9:1~17の内容(サンドイッチ構造)

  ①12人の派遣(1~6節)

  ②挿入句的エピソード(ヘロデの心理状態)(7~9節)

  ③12人の帰還(10~17節)

2.アウトライン

(1)ヘロデの心理状態(7~9節)

(2)12人の帰還:ベツサイダへの移動(10~11節)

(3)12人の帰還:パンと魚の奇跡(12~17節)

3.結論

(1)イエスを求める動機

(2)群衆を歓迎するイエス

(3)奉仕者に与えられる祝福

12人の帰還について学ぶ

Ⅰ.ヘロデの心理状態(7~9節)

1.7~8節

Luk 9:7 さて、領主ヘロデはこのすべての出来事を聞いて、ひどく当惑していた。ある人たちは、「ヨハネが死人の中からよみがえったのだ」と言い、

Luk 9:8 別の人たちは、「エリヤが現れたのだ」と言い、さらに別の人たちは、「昔の預言者の一人が生き返ったのだ」と言っていたからである。

(1)ガリラヤ伝道の期間における最大のテーマは、「イエスとは誰か」である。

  ①弟子訓練の目的の一つは、「イエスとは誰か」を教えることである。

  ②この段階での弟子たちの理解は、未だに不十分なものである。

  ③ヘロデのエピソードは、「12人の派遣」という文脈の中に置かれている。

  ④ルカは、「イエスとは誰か」というテーマの重要性を強調している。

(2)ガリラヤの人々は、イエスに関してさまざまな意見を持っていた。

  ①ヨハネが死人の中からよみがえったのだ。

  ②エリヤが現れたのだ。

  ③昔の預言者の一人が生き返ったのだ。

  ④イエスに関するうわさがヘロデの耳にも届いた。

(3)領主ヘロデとは、ヘロデ・アンティパスのことである。

  ①彼は、父ヘロデ大王の領土の4分の1を継承した領主である。

    *テトラークというタイトル(国主という訳もある)。

  ②彼は、ガリラヤとペレアを統治していた。

  ③自分の領地で奇跡を行う者がいるといううわさが、彼の耳に届いた。

    *イエスと12人の弟子たちの活動

    *宮廷内でも、このうわさが広がっていた。

  ④彼は、ひどく当惑した(戸惑った)。

2.9節

Luk 9:9 ヘロデは言った。「ヨハネは私が首をはねた。このようなうわさがあるこの人は、いったいだれなのだろうか。」ヘロデはイエスに会ってみたいと思った。

(1)ヘロデが当惑した理由は、彼がヨハネの首をはねたからである。

  ①彼の内には、罪責感から来る恐れがあった。

(2)「このようなうわさがあるこの人は、いったいだれなのだろうか」

  ①ヘロデのエピソードの中心点は、この質問である。

  ②マコ6:16では、これとは異なる記述がある。

Mar 6:16 しかし、ヘロデはこれを聞いて言った。「私が首をはねた、あのヨハネがよみがえったのだ。」

  ③両方の聖句を比較すると、ヘロデの思案が読み取れる。

    *イエスについてのうわさを聞いた。

    *イエスとは誰なのかと思案した。

    *思案した結果、自分が首をはねたヨハネがよみがえったと結論づけた。

(3)「ヘロデはイエスに会ってみたいと思った」

  ①ルカは、このテーマを後に発展させる。

Ⅱ.12人の帰還:ベツサイダへの移動(10~11節)

1.10節

Luk 9:10 さて、使徒たちは帰って来て、自分たちがしたことをすべて報告した。それからイエスは彼らを連れて、ベツサイダという町へひそかに退かれた。

(1)12人の宣教旅行は終わった。

  ①「12人」から「使徒」という呼び名に変っている。

  ②彼らは、イエスによって遣わされた者たちである。

  ③ルカは、使徒の働きでの彼らの奉仕の道備えをしている。

(2)彼らは、イエスに宣教旅行の報告をした。

  ①派遣された者が派遣した者に結果報告するのは、使徒の働きの原則である。

  ②彼らは、高揚した状態にあった。

  ③イエスは、弓の弦を緩める必要があることを知っておられた。

(3)イエスは、彼らを連れて、ベツサイダという町にひそかに退かれた。

  ①使徒たちに休息を与えようとされた。

  ②イエスと使徒たちは、カペナウムからベツサイダに移動した。

    *東に向い、ヨルダン川を越えるとベツサイダがある(ガリラヤ湖の北東)。

  ③私たちも、ベツサイダに退く必要がある。

2.11節

Luk 9:11 ところが、それを知った群衆がイエスの後について来た。イエスは彼らを喜んで迎え、神の国のことを話し、また、癒やしを必要とする人たちを治された。

(1)群衆は、イエスの後について来た。

  ①この時期、イエスの人気は絶頂期にあった。

  ②群衆がついて来るのは、いつものことである。

(2)イエスは、彼らを歓迎された。

  ①「イエスは彼らを喜んで迎え、」と書いているのは、ルカだけである。

  ②イエスの愛とあわれみが強調されている。

  ③イエスの奉仕

    *神の国の福音を伝える。

    *病人を癒す。

Ⅲ.12人の帰還:パンと魚の奇跡(12~17節)

1.12節

Luk 9:12 日が傾き始めたので、十二人はみもとに来て言った。「群衆を解散させてください。そうすれば、彼らは周りの村や里に行き、宿をとり、何か食べることができるでしょう。私たちは、このような寂しいところにいるのですから。」

(1)12人は、イエスに提案した。

  ①群衆を解散させてください。

  ②ここは寂しいところである。

  ③明るい内なら、周りの村や里に行くことができる。

  ④彼らは、宿を見つけ、食事をする必要がある。

2.13~15節

Luk 9:13 すると、イエスは彼らに言われた。「あなたがたが、あの人たちに食べる物をあげなさい。」彼らは言った。「私たちには五つのパンと二匹の魚しかありません。私たちが出かけて行って、この民全員のために食べ物を買うのでしょうか。」

Luk 9:14 というのは、男だけでおよそ五千人もいたからである。しかし、イエスは弟子たちに言われた。 「人々を、五十人ぐらいずつ組にして座らせなさい。」

Luk 9:15 弟子たちはそのとおりにして、全員を座らせた。

(1)イエスの回答は、弟子訓練を目的としたものである。

  ①「あなたがたが、あの人たちに食べる物をあげなさい」

  ②男だけで5千人もいた。

  ③弟子たちは、「私たちには五つのパンと二匹の魚しかありません」と答えた。

  ④弟子たちは、自分たちの無力を認識させられた。

  ⑤それゆえ、神に信頼するしかない。

  ⑥2列4:42~44

2Ki 4:42 ある人がバアル・シャリシャから、初穂のパンである大麦のパン二十個と、新穀一袋を、神の人のところに持って来た。神の人は「この人たちに与えて食べさせなさい」と命じた。

2Ki 4:43 彼の召使いは、「これだけで、どうして百人もの人に分けられるでしょうか」と言った。しかし、エリシャは言った。「この人たちに与えて食べさせなさい。【主】はこう言われる。『彼らは食べて残すだろう。』」

2Ki 4:44 そこで、召使いが彼らに配ると、彼らは食べて残した。【主】のことばのとおりであった。

(2)イエスは、12使徒たちに、神に信頼することを教えた。

  ①「人々を、五十人ぐらいずつ組にして座らせなさい」

  ②弟子たちはそのとおりにして、全員を座らせた。

3.16~17節

Luk 9:16 そこでイエスは、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げ、それらのゆえに神をほめたたえてそれを裂き、群衆に配るように弟子たちにお与えになった。

Luk 9:17 人々はみな、食べて満腹した。そして余ったパン切れを集めると、十二かごあった。

(1)奇跡が起るプロセス

  ①イエスは、5つのパンと2匹の魚を手に取った。

  ②天を見上げて、神の御名をたたえた。

  ③それを裂き、弟子たちに与えた。

  ④弟子たちは、群衆にそれを与えた。

  ⑤人々はみな、食べて満腹した。

  ⑥余ったパン切れは、12かごにもなった。

(2)余ったパン切れは12かごあった。

  ①ここでの「かご」は「コフィナス」である。

  ②清浄食物を持ち運ぶために用いた手持ちの小さなかごである。

  ③イエスは、ご自分の奉仕者を祝福される。

  ④奉仕した12人にも、パンが与えられた。

結論

1.イエスを求める動機

(1)ヘロデは、イエスに会いたいと思ったが、すぐには実現しなかった。

  ①ルカ13:31~32

Luk 13:31 ちょうどそのとき、パリサイ人たちが何人か近寄って来て、イエスに言った。「ここから立ち去りなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています。」

Luk 13:32 イエスは彼らに言われた。「行って、あの狐にこう言いなさい。『見なさい。わたしは今日と明日、悪霊どもを追い出し、癒やしを行い、三日目に働きを完了する。

  ②ルカ23:6~12(ピラトはイエスをヘロデのもとに送った)

(2)ヘロデは、好奇心と敵対心のゆえにイエスに会ってみたいと思った。

  ①信仰が動機ではなかった。

  ②ヘロデはイエスに会いながら、イエスの本質を見ることはできなかった。

2.群衆を歓迎するイエス

(1)ルカは、イエスをすぐそばにいる助け主として描いた。

(2)ヘブ4:15~16

Heb 4:15 私たちの大祭司は、私たちの弱さに同情できない方ではありません。罪は犯しませんでしたが、すべての点において、私たちと同じように試みにあわれたのです。

Heb 4:16 ですから私たちは、あわれみを受け、また恵みをいただいて、折にかなった助けを受けるために、大胆に恵みの御座に近づこうではありませんか。

(3)ヘブ13:8

Heb 13:8 イエス・キリストは、昨日も今日も、とこしえに変わることがありません。

3.奉仕者の祝福

(1)イエスとともに働くなら、自分の力以上のことが可能になる。

(2)12使徒たちにもパンが与えられた。

  ①余ったパン切れを集めると、12かごあった。

(3)12使徒たちは、神の奇跡に参加した。

  ①パンと魚の奇跡は、四福音書すべてに記録された唯一の奇跡である。

  ②彼らは、「イエスとは誰か」という質問の再考を迫られた。

(4)この奇跡は、次回取り上げるペテロの信仰告白の準備となっている。

  ①あなたは、「イエスとは誰か」という質問にどう答えるか。

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