ルカの福音書(41)病と死に打ち勝つイエス8:40~56

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死と病に打ち勝つイエスの権威について学ぶ。

ルカの福音書 41回

病と死に打ち勝つイエス

ルカ8:40~56

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①イエスは、第2回ガリラヤ伝道を行われた。

  ②イエスは、たとえを用いて教えられた(ルカ独特)。

  ③ルカは、イエスの権威を証明する出来事を記した(4:31~6:16)。

  ④再び、イエスの権威を証明する出来事を紹介する(8:22~56)。

(3)ルカ8:22~56の内容(イエスの権威の証明)

  ①嵐を静めるイエス(22~25節)

  ②悪霊を追い出すイエス(26~39節)

  ③病と死に打ち勝つイエス(40~56節)

2.アウトライン

(1)ヤイロの懇願(40~42節a)

(2)長血の女の癒し(42b~48節)

(3)ヤイロの娘の蘇生(49~56節)

3.結論

(1)複合的奇跡の意味

(2)信仰の力

(3)イエスの知恵

死と病に打ち勝つイエスの権威について学ぶ。

Ⅰ.ヤイロの懇願(40~42節a)

1.40節

Luk 8:40
さて、イエスが帰って来られると、群衆は喜んで迎えた。みなイエスを待ちわびていたのである。

(1)イエスは、ガリラヤ湖の南東部から北西部に帰って来られた。

  ①異邦人の地からユダヤ人の地への帰還である。

  ②群衆は喜んでイエスを迎えた。イエスを待ちわびていた。

  ③複合的奇跡は、ユダヤ人の地で起る(カペナウム近辺であろう)。

2.41~42節a

Luk 8:41

すると見よ、ヤイロという人がやって来た。この人は会堂司であった。彼はイエスの足もとにひれ伏して、自分の家に来ていただきたいと懇願した。

Luk 8:42a
彼には十二歳ぐらいの一人娘がいて、死にかけていたのであった。

(1)ヤイロは会堂司であった。

  ①ヤイロとは、「主は目を覚まさせる」という意味である。

  ②ヤイロは、ユダヤ人共同体の長老の一人である。

  ③影響力のあるリーダーの何人かが、イエスを信じていたことを示している。

  ④ルカ7:3

Luk 7:3 百人隊長はイエスのことを聞き、みもとにユダヤ人の長老たちを送って、自分のしもべを助けに来てくださいとお願いした。

  ⑤ヤイロは、百人隊長の使者となった長老たちに含まれていた可能性がある。

(2)ヤイロは、自分の家に来ていただきたいとイエスに懇願した。

  ①12歳くらいの娘が死にかけていた。

    *娘は、結婚可能な年齢になろうとしていた。

    *現代のユダヤ人少女は、12歳でバット・ミツヴァーを祝う。

  ②ルカだけが、一人娘と書いている。

  ③イエスのあわれみの心が、その事実と共鳴した。

  ④ヨハ3:16

Joh 3:16
神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。

Ⅱ.長血の女の癒し(42b~48節)

  1.42b~43節

Luk 8:42b
それでイエスが出かけられると、群衆はイエスに押し迫って来た。

Luk 8:43
そこに、十二年の間、長血をわずらい、医者たちに財産すべてを費やしたのに、だれにも治してもらえなかった女の人がいた。

(1)群衆は、イエスに押し迫って来た。

  ①これは、長血の女がイエスに触れる状況の説明となっている。

(2)長血とは、血の流出が続く病である。

  ①健康が害されていた。

  ②儀式的に汚れていた。共同体から隔離されていた。

  ③自己嫌悪に陥っていた。

  ④イエスは、このような者のために来られたのである(ルカ4:18~19)。

(3)彼女は、12年間も治療を受けてきたが、どの医者も治すことができなかった。

  ①彼女は、財産すべてを費やした。

  ②ルカは、イエスだけが彼女を治すことができるという点を強調している。

2.44節

Luk 8:44
彼女はイエスのうしろから近づいて、その衣の房に触れた。すると、ただちに出血が止まった。

(1)彼女の信仰は、迷信的なものである。

  ①イエスのうしろから近づいて、その衣の房に触れた。

  ②すると、ただちに出血が止まった。

  ③神は、不完全な信仰さえも受け入れてくださった。

  ④使5:15にも似たような例が出てくる。

Act 5:15
そしてついには、病人を大通りへ運び出し、寝台や寝床の上に寝かせて、ペテロが通りかかるときには、せめてその影だけでも、病人のだれかにかかるようにするほどになった。

3.45~46節

Luk 8:45

イエスは、「わたしにさわったのは、だれですか」と言われた。みな自分ではないと言ったので、ペテロは、「先生。大勢の人たちが、あなたを囲んで押し合っています」と言った。

Luk 8:46
しかし、イエスは言われた。「だれかがわたしにさわりました。わたし自身、自分から力が出て行くのを感じました。」

(1)イエスは、誰が自分にさわったのかと質問した。

  ①ペテロは、大勢の人たちがあなたにさわっていますとイエスに言った。

  ②ルカだけが、ペテロという名を出している。描写に現実味が出てくる。

(2)イエスは、ある意図を持ってこの質問をした。

  ①イエスは、時には、信仰のない人を癒すことがあった。

  ②ここでは、信仰によってイエスから力を引き出した人がいる。

  ③この力は、聖霊の力である。

    *イエスの内にある神の力が移動したということである。

    *イエスの力が減少したということではない。

  ④イエスは、その人物を励まし、その信仰を育てようとされた。

  ⑤ルカ6:19

Luk 6:19 群衆はみな何とかしてイエスにさわろうとしていた。イエスから力が出て、すべての人を癒やしていたからである。

4.47~48節

Luk 8:47

彼女は隠しきれないと知って、震えながら進み出て御前にひれ伏し、イエスにさわった理由と、ただちに癒やされた次第を、すべての民の前で話した。

Luk 8:48
イエスは彼女に言われた。「娘よ、あなたの信仰があなたを救ったのです。安心して行きなさい。」

(1)彼女は、震えながら御前にひれ伏した。

  ①儀式的に汚れていながら、群衆の中にいた。

  ②御前にひれ伏したのは、感謝の表現である。

(2)自分に起ったことをすべて民の前で話した。

  ①イエスにさわった理由

  ②ただちに癒された次第

(3)イエスは、公に彼女を祝福した。

  ①「娘よ」。神の家族の一員となった。

  ②「あなたの信仰があなたを救った」。魔術ではなく信仰による癒しが起った。

  ③「安心して行きなさい」。共同体での生活に復帰するために必要な宣言である。

Ⅲ.ヤイロの娘の蘇生(49~56節)

1.49~50節

Luk 8:49

イエスがまだ話しておられるとき、会堂司の家から人が来て言った。「お嬢さんは亡くなりました。もう、先生を煩わすことはありません。」

Luk 8:50
これを聞いて、イエスは答えられた。「恐れないで、ただ信じなさい。そうすれば、娘は救われます。」

(1)今度は、ヤイロの信仰が試される番になった。

  ①彼は、イエスが儀式的汚れと病に勝利するのを目撃した。

  ②今度は、イエスが儀式的汚れと死に勝利することを信じるかどうかが試される。

(2)「お嬢さんは亡くなりました」

  ①語順は、「Dead is your daughter.」である。

    *「死んだ」という点に強調がある。

    *時制は完了形である。

  ②「もう、先生を煩わすことはありません」

(3)しかしイエスは、ヤイロを励まし、彼の信仰を支えた。

  ①信仰があれば、娘は救われる。

  ②特に、神の時に関する信仰が要求された。

  ③長血の女の割り込みは、神の力を無効にするものではない。

2.51節

Luk 8:51

イエスは家に着いたが、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ、そしてその子の父と母のほかは、だれも一緒に入ることをお許しにならなかった。

(1)ヤイロは、信仰を持ち続けた。

  ①イエスを家に招き入れたことが、その証拠である。

(2)イエスは、少数の者だけに入室を許した。

  ①ペテロ、ヨハネ、ヤコブ

    *12弟子のトップ3が証人となった。

    *この順位は、教会時代になってから大きな意味を持つようになる。

  ②その子の父と母

  ③少数者に限定した理由

    *部屋が狭かった。

    *蘇生した少女が驚かないように。

    *できるだけ公にならないように。

3.52~53節

Luk 8:52

人々はみな、少女のために泣き悲しんでいた。しかし、イエスは言われた。「泣かなくてよい。死んだのではなく、眠っているのです。」

Luk 8:53
人々は、少女が死んだことを知っていたので、イエスをあざ笑った。

(1)人々はみな、泣き悲しんでいた。

  ①死ぬとすぐに葬儀の準備を始めるのは、当時の習慣である。

  ②彼らには、イエスに対する信仰はなかった。

(2)イエスは、「泣かなくてよい」と言われた。

  ①「死んだのではなく、眠っているのです」

  ②娘の死は、一時的なものである。

  ③神の視点からすると、死は一時的な眠りである。

  ④イエスはこの娘を蘇生させる。

4.54~55節

Luk 8:54
しかし、イエスは少女の手を取って叫ばれた。「子よ、起きなさい。」

Luk 8:55
すると少女の霊が戻って、少女はただちに起き上がった。それでイエスは、その子に食べ物を与えるように命じられた。

(1)イエスは、少女の手を取って叫ばれた。

  ①イエスは、汚れ(死体)に触れても、汚れを受けることがない。

  ②イエスは、モーセの律法の上に立つ方である。

  ③イエスは、ことばを発することでその少女を蘇生させた。

(2)彼女は確かに死んでいた。

  ①離れていた霊が、肉体に戻ってきた。

  ②この蘇生は、瞬時に起った。

  ③イエスは、その子に食べ物を与えるように命じられた。

  ④この体は、食物によって維持されなければならない体である。

5.56節

Luk 8:56
両親が驚いていると、イエスは、この出来事をだれにも話さないように命じられた。

(1)両親は驚いた。

  ①蘇生が実際に起ったということである。

  ②イエスは、この出来事をだれにも話さないように命じられた。

    *誤った動機で人々がイエスに近づかないように。

結論

1
.複合的奇跡の意味

(1)福音書に出てくる唯一の複合的奇跡である。

  ①病からの解放と死からの解放

(2)この奇跡は、イエスの本質を証明する奇跡のクライマックスである。

  ①イエスは、人であり神である。

  ②イエスは、力とあわれみに満ちたお方である。

2
.信仰の力

(1)長血の女は、信仰によってその病が癒された。

  ①彼女の信仰は、迷信的なものであった。

  ②しかし神は、その信仰を受け入れられた。

(2)ヤイロは、より深い信仰を持つように期待された。

  ①神の時を認めるという信仰

  ②娘は蘇生するという信仰

3
.イエスの知恵

(1)イエスは、長血の女を公の場での信仰告白に導いた。

  ①彼女の社会復帰を保証した。

(2)イエスは、少女の両親に沈黙を命じた。

  ①イエスのメシア性を証明する奇跡は、公の場で行われた。

  ②ここでの奇跡は、個人的な要請に基づくものである。

  ③イエスは、人々がしるしを見るために近づいてくることを嫌われた。

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