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ルカの福音書(32)百人隊長のしもべの癒し7:1~10
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百人隊長のしもべの癒しについて学ぶ。
ルカの福音書 32回
百人隊長のしもべの癒し
ルカ7:1~10
1.はじめに
(1)文脈の確認
①イエスは、弟子たちに対して「平地での説教」を語られた。
②語り終えると、カペナウムに入られた。
③ここから、ルカの福音書7章が始まる。
④ルカは、イエスをあわれみ深い方として描いている。
*群衆は、あわれみに満ちた行いを、神の介入によるものと見なした。
*パリサイ人たちは、イエスに関して懐疑的であった。
⑤あわれみの行為の一例として、百人隊長のしもべの癒しが取り上げられる。
*並行箇所は、マタ8:5~13である。
2.アウトライン
(1)舞台設定(1節)
(2)ユダヤ人の長老たちの懇願(2~5節)
(3)百人隊長の願い(6~8節)
(4)イエスの驚き(9~10節)
3.結論
(1)弱者への配慮
(2)ユダヤ人と異邦人の関係
(3)マタイとルカの視点の違い
百人隊長のしもべの癒しについて学ぶ。
Ⅰ.舞台設定(1節)
1.1節
Luk 7:1
イエスは、耳を傾けている人々にこれらのことばをすべて話し終えると、カペナウムに入られた。
(1)この節は、物語を次に進めるための移行文である。
①平地での説教に耳を傾けていたのは、弟子たちだけではなかった。
②一般の民衆も、イエスの教えに耳を傾けていた。
(2)イエスは、カペナウムに入られた。
①イエスは、この町を伝道の拠点とされた。
②イエスは、この町で多くの奇跡を行われた。
Ⅱ.ユダヤ人の長老たちの懇願(2~5節)
1.2~3節
Luk 7:2
時に、ある百人隊長に重んじられていた一人のしもべが、病気で死にかけていた。
Luk 7:3
百人隊長はイエスのことを聞き、みもとにユダヤ人の長老たちを送って、自分のしもべを助けに来てくださいとお願いした。
(1)ある百人隊長が登場する。
①通常は、60人~80人の兵士を統治し、指揮する。
②ローマ帝国の軍政においては、百人隊長が主要な骨格を形成していた。
③由緒ある家系の出で、非常に魅力的な人が多かった。
④新約聖書には、9人の百人隊長が登場する。
⑤全員、好意的に描写されている。
(2)この百人隊長のしもべが死にかけていた。
①「中風のために家で寝込んでいます。ひどく苦しんでいます」(マタ8:6)
②「病気で死にかけていた」(ルカ7:2)
③しもべは、イエスのもとに連れて来ることができないほど苦しんでいた。
④この時代、主人がしもべのことを気にかけるのは、例外的なことである。
*しもべは、ギリシア語で「パイス」。息子とも訳される。
*病気のしもべは、家族同然の存在だったのだろう。
⑤この百人隊長は、好人物として描かれている。
(3)彼は、ユダヤ人の長老たちを派遣した。
①仲介者を通して何かを依頼するのは、古代世界の習慣である。
②ユダヤ人の長老たちは、ラビたちである。
③ラビたちが、異邦人の代理人になるのは、極めて珍しいケースである。
④さらに、ラビたちはイエスをメシアとは信じていないのである。
⑤しかも彼らは、イエスに熱心にお願いした。
⑥そこには、ある理由があった。
2.4~5節
Luk 7:4
イエスのもとに来たその人たちは、熱心にお願いして言った。「この人は、あなたにそうしていただく資格のある人です。
Luk 7:5
私たちの国民を愛し、私たちのために自ら会堂を建ててくれました。」
(1)ラビたちがイエスのもとに来た理由がある。
①通常、ユダヤ人たちはローマ兵を嫌っていた。
②この百人隊長は、ユダヤ人から認められていた。
③彼は、イスラエル人を愛していた。
④その愛は、会堂建設となって表現された。
⑤この百人隊長は、神を恐れる異邦人である。
⑥彼は、ユダヤ人たちに貸しを作っていた。
(2)マタイの福音書では、百人隊長が直接イエスのもとに来ている。
①ルカは、事実をそのまま書いている。
②マタイは、事実を要約して書いている。
③ヘブル的には、代理人を派遣することは、本人が行くことと同じである。
Ⅲ.百人隊長の願い(6~8節)
1.6~7節a
Luk 7:6
そこで、イエスは彼らと一緒に行かれた。ところが、百人隊長の家からあまり遠くないところまで来たとき、百人隊長は友人たちを使いに出して、イエスにこう伝えた。「主よ、わざわざ、ご足労くださるには及びません。あなた様を、私のような者の家の屋根の下にお入れする資格はありませんので。
Luk 7:7a
ですから、私自身があなた様のもとに伺うのも、ふさわしいとは思いませんでした。
(1)イエスが百人隊長の家に行くのは、例外的なことである。
①百人隊長は、「神を恐れる異邦人」であった。
②彼には、儀式的汚れが残っていた。
③特に食物規定上の問題があった。
④ラビたちが例外を設けることを願ったので、イエスはそれに応答した。
(2)ここでも、マタイとルカの記述の違いがある。
①マタイでは、百人隊長自身が語ったことになっている。
②ルカでは、百人隊長は友人たちを派遣したことになっている。
*友人たちは、百人隊長が派遣した2つ目のグループである。
(3)百人隊長の謙遜に注目しよう。
①「この人は、あなたにそうしていただく資格のある人です」(4節)
*ユダヤ人の長老たちが、彼を推薦した。
②「あなた様を、私のような者の家の屋根の下にお入れする資格はありませんの
で」(6節)
*彼は、ユダヤ人が異邦人の家に入るのは、問題であると知っていた。
③「ですから、私自身があなた様のもとに伺うのも、ふさわしいとは思いません
でした」(7節)
*彼は、家の外で会うことさえ問題だと感じた。
2.7b~8節
Luk 7:7b
ただ、おことばを下さい。そうして私のしもべを癒やしてください。
Luk 7:8
と申しますのは、私も権威の下に置かれている者だからです。私自身の下にも兵士たちがいて、その一人に『行け』と言えば行きますし、別の者に『来い』と言えば来ます。また、しもべに『これをしろ』と言えば、そのようにします。」
(1)百人隊長の信仰に注目しよう。
①彼は、権威の意味を体験的に知っていた。
*彼の指揮下には、100人近い兵士たちがいた。
*兵士は、上官の命令によって動く人たちであった。
*彼自身もまた、上官の指揮下に置かれていた。
*上官の命令が下れば、それに従った。
②彼は、イエスのことばには権威があり、病はその権威に服すると信じていた。
*自分と部下の関係=イエスと病の関係
*それで、イエスのことばだけを求めた。
Ⅳ.イエスの驚き(9~10節)
1.9節
Luk 7:9
イエスはこれを聞いて驚き、振り向いて、ついて来ていた群衆に言われた。「あなたがたに言いますが、わたしはイスラエルのうちでも、これほどの信仰を見たことがありません。」
(1)福音書では、イエスは2度驚いている。
①マコ6:6
Mar 6:6 イエスは彼らの不信仰に驚かれた。それからイエスは、近くの村々を巡って教えられた。
*ナザレは、イエスの故郷である。イエスにとって最も身近な町。
*ナザレは、イスラエル全体の象徴である。
*そのナザレの人々が、不信仰な態度を示した。
②ルカ7:9
*イエスは、異邦人の百人隊長の信仰に驚いた。
*メシア預言を知らない異邦人が、これほどの信仰を示した。
*ルカは、異邦人の信仰の進展を描いている。
*この箇所で、マタイよりもルカの情報の方が豊富な理由は、そこにある。
2.10節
Luk 7:10
使いに送られた人たちが家に戻ると、そのしもべは良くなっていた。
(1)この癒しは、百人隊長のイエスの対する信仰のゆえに起こったものである。
①イエスは、百人隊長が信じた通り、病に対する権威を示された。
(2)ユダヤ人の間には、奇跡を行う人の記録が流布していた。
①しかし、距離が離れた人を癒したという記録はなかった。
②それゆえ、この奇跡は特別なものとなった。
結論
1.弱者への配慮
(1)イエスは、弱者(マイノリティ)に対してあわれみを示された。
①貧しい者、取税人、婦人、サマリア人、異邦人など
②社会的弱者も、神の救いの計画に含まれている。
(2)社会的弱者を抑圧することで、自らの特権を維持していた者たちがいた。
①イエスは、彼らから社会的弱者を守ろうとされた。
(3)私たちへの適用
①イエスは、弱い私を愛し、守ってくださる。
2.ユダヤ人と異邦人の関係
(1)ユダヤ人信者と異邦人信者の関係は、初代教会において大きなテーマであった。
①書簡の多くの箇所が、その問題を取り上げている。
(2)ルカは、イエスを信じる異邦人は、受け入れられるべきであると教えた。
①この百人隊長の信仰は、イエスによって称賛された。
(3)ルカは、別の百人隊長コルネリウスの救いを取り上げている。
Act 10:34
そこで、ペテロは口を開いてこう言った。「これで私は、はっきり分かりました。神はえこひいきをする方ではなく、
Act 10:35
どこの国の人であっても、神を恐れ、正義を行う人は、神に受け入れられます。
Act 10:36
神は、イスラエルの子らにみことばを送り、イエス・キリストによって平和の福音を宣べ伝えられました。このイエス・キリストはすべての人の主です。
(4)私たちへの適用
①分け隔てなく、すべての人に福音を伝えるべきである。
3.マタイとルカの視点の違い
(1)マタイは、神の計画の中に異邦人も含まれていることを強調している。
Mat 8:10
イエスはこれを聞いて驚き、ついて来た人たちに言われた。「まことに、あなたがたに言います。わたしはイスラエルのうちのだれにも、これほどの信仰を見たことがありません。
Mat 8:11
あなたがたに言いますが、多くの人が東からも西からも来て、天の御国でアブラハム、イサク、ヤコブと一緒に食卓に着きます。
Mat 8:12
しかし、御国の子らは外の暗闇に放り出されます。そこで泣いて歯ぎしりするのです。」
①多くの人が東からも西からも来て=異邦人のことである。
(2)ルカは、異邦人がユダヤ人を愛することの重要性を強調している。
Luk 7:3
百人隊長はイエスのことを聞き、みもとにユダヤ人の長老たちを送って、自分のしもべを助けに来てくださいとお願いした。
Luk 7:4
イエスのもとに来たその人たちは、熱心にお願いして言った。「この人は、あなたにそうしていただく資格のある人です。
Luk 7:5
私たちの国民を愛し、私たちのために自ら会堂を建ててくれました。」
①イスラエルを祝福する人は、祝福される。
(3)私たちへの適用
①異邦人信者の責務は、ユダヤ人を愛し、彼らに妬みを起こさせることである。
②ロマ11:11
Rom 11:11
それでは尋ねますが、彼らがつまずいたのは倒れるためでしょうか。決してそんなことはありません。かえって、彼らの背きによって、救いが異邦人に及び、イスラエルにねたみを起こさせました。
③この箇所は、終末論にまでつながる箇所である。
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