メシアの生涯(21)—世の罪を取り除く神の小羊—

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このメッセージでは...

ヨハネからイエスへの移行について学ぶ。

「世の罪を取り除く神の小羊」  ヨハ1:19~34

1.はじめに

  (1)イエスの公生涯の開始

①バプテスマと誘惑は、連続した出来事である。

  *神の子

  *主のしもべ

②その直後のイエスの行動は、ヨハネの福音書だけに記されている。

③今日の箇所で、神の国運動の中心が、ヨハネからイエスに移る。

    (2)世の罪を取り除く神の小羊(A.T.ロバートソンの§26、27)

      ①§26 「サンヘドリンに対するヨハネの証し」 19~28節

      ②§27 「イエスをメシアと認識するヨハネ」 29~34節

  2.アウトライン

    (1)ヨハネの証し(19~28節)

    (2)メシアの登場(29~34節)

  3.メッセージのゴール

    (1)ユダヤ人たち(19節)

(2)パリサイ人(24節)

(3)神の小羊(29節)

このメッセージは、ヨハネからイエスへの移行について学ぼうとするものである。

Ⅰ.ヨハネの証し(19~28節)

  1.第一の問い(19~20節)

「ヨハネの証言は、こうである。ユダヤ人たちが祭司とレビ人をエルサレムからヨハネの

もとに遣わして、『あなたはどなたですか』と尋ねさせた。彼は告白して否まず、『私はキ

リストではありません』と言明した」

  (1)サンヘドリンについて

①ローマから権限を委託された自治組織。司法、行政、立法機関。

②70名の議員と1名の議長(大祭司)

③3種類の構成員

*祭司長(サドカイ派)

*律法学者(パリサイ派)

*長老(一般人の代表)

(2)メシア運動(神の国運動)に対するサンヘドリン(ユダヤ議会)の対応

①代表団を派遣し、それが正当なものであるかどうかを判断する。

「ヨハネの証言」とは、それに対してヨハネがどう答えたかということである。

③エルサレムからの代表団であることが、3度にわたって記載されている。

*19節、22節、24節

(3)メシア運動の3段階

①黙って観察する段階

②審問の段階

  *代表団はバプテスマのヨハネに種々の質問をしている。

③結論を出す段階

    (4)審問の内容 「あなたはどなたですか」

      ①ヨハネが授けている洗礼についての質問

      ②ヨハネの自己宣言についての質問

    (5)ヨハネの回答

  「彼は告白して否まず、『私はキリストではありません』と言明した」 (新改訳)

  「彼は公言して隠さず、『わたしはメシアではない』と言い表した」 (新共同訳)

    ①ホモロゲオウという動詞を2回使っている。強意。

    ②「エゴウ・エイミ・ウーク・クリストス」(I am not the Messiah.)

    ③ヨハネの福音書の中では、イエスは7回「I am ….」と語っている。

  2.第2の問い(21節a)

  「また、彼らは聞いた。『では、いったい何ですか。あなたはエリヤですか』。彼は言った。

『そうではありません』」

    (1)この質問の背景には、マラ4:5の預言がある。

    「見よ。わたしは、【主】の大いなる恐ろしい日が来る前に、預言者エリヤをあなたが

たに遣わす」

      ①バプテスマのヨハネをエリヤの再来と考えていた人たちがいた。

    (2)ヨハネの回答

    「そうではありません」

      ①「エイミ・ウーク」(I am not.)

3.第3の問い(21節b)

「『あなたはあの預言者ですか』。彼は答えた。『違います』」

  (1)この質問の背景には、申18:15がある。

  「あなたの神、【主】は、あなたのうちから、あなたの同胞の中から、私のようなひと

りの預言者をあなたのために起こされる。彼に聞き従わなければならない」

    ①「あの預言者」とは、メシアのことである。

    ②しかし、「あの預言者」をメシアとは別の人物と考える人もいた。

  (2)ヨハネの回答

  「違います」

    ①「ウー」(No.)

    ②ヨハネの回答は、先に行くほど言葉数が少なくなっている。

  4.第4の問い(22~24節)

  「そこで、彼らは言った。『あなたはだれですか。私たちを遣わした人々に返事をし

たいのですが、あなたは自分を何だと言われるのですか』。彼は言った。『私は、預

言者イザヤが言ったように「主の道をまっすぐにせよ」と荒野で叫んでいる者の声で

す』。彼らは、パリサイ人の中から遣わされたのであった」

    (1)彼らは、サンヘドリンに回答を持って帰る必要があった。

      ①祭司とレビ人」(19節)とは、サドカイ人のことである。

      ②ヨハネの福音書には、サドカイ人という呼称は出てこない。

        *神殿崩壊以降に書かれている。

      ③代表団の中には、パリサイ人も含まれていた。

      ④サンヘドリンが派遣したことは、パリサイ人が派遣したのと同じこと。

      ⑤あなたは自分を何だと言われるのですか」

    (2)ヨハネの回答

      ①ヨハネは自分自身を、「荒野で叫んでいる者の声」と紹介した。

        *イザヤ書40:3の引用。

*ヨハネは「声」であり、イエスは「ことば」である。

*ヨハネは、メシアの先駆者としての自分の使命をよく理解していた。

      (例話)第3回聖書フォーラムキャンプ 「I am not the Missiah.」

  5.第5の問い(25~28節)

  「彼らはまた尋ねて言った。『キリストでもなく、エリヤでもなく、またあの預言者

でもないなら、なぜ、あなたはバプテスマを授けているのですか』。ヨハネは答えて

言った。『私は水でバプテスマを授けているが、あなたがたの中に、あなたがたの知

らない方が立っておられます。その方は私のあとから来られる方で、私はその方のく

つのひもを解く値うちもありません』。この事があったのは、ヨルダンの向こう岸の

ベタニヤであって、ヨハネはそこでバプテスマを授けていた」

    (1)無資格の身でありながら、なぜバプテスマを授けているのか。

    (2)ヨハネの回答

      ①水でバプテスマを授けているのは、メシアが現われるための準備である。

      ②メシアは確かにおられるが、まだ知られていない。

      ③メシアと比較すると、自分は奴隷以下の存在だ。

(3)「ヨルダンの向こう岸のベタニヤ」

  ①ユダのベタニヤとは異なる場所である。

  ②エリコの東側

  ③現在では、イスラエルからもヨルダンからも、この場所に行ける。

Ⅱ.メシアの登場(29~34節)

   1.その時が来た(29~31節)

  「その翌日、ヨハネは自分のほうにイエスが来られるのを見て言った。『見よ、世の罪を

取り除く神の小羊。私が「私のあとから来る人がある。その方は私にまさる方である。私

より先におられたからだ』と言ったのは、この方のことです。私もこの方を知りませんで

した。しかし、この方がイスラエルに明らかにされるために、私は来て、水でバプテスマ

を授けているのです」

    (1)テンポの速い展開

      ①29節 「その翌日」

        *サンヘドリンによる審問の翌日が、父なる神がメシアを示す日となった。

      ②35節 「その翌日」

      ③43節 「その翌日」

      ④2章1節 「それから三日目に」

      ⑤およそ1週間後にカナの婚礼となる。

    (2)「見よ、世の罪を取り除く神の小羊」

      ①紀元1世紀のユダヤ人たちは、「小羊」について2つの概念を持っていた。

        *過ぎ越しの小羊という概念。出エジプト12章から出てくる概念。

*メシア的小羊という概念。イザヤ53章から出てくる概念。

②ヨハネは両方の意味で、イエスを「神の小羊」と呼んでいる。

(3)「私のあとから来る人がある。その方は私にまさる方である。私より先におられ

たからだ」

  ①イエスは人間としては、ヨハネよりも6か月後に誕生した。

②しかし、神の子としては、宇宙が創造される前から存在しておられた。

③イエスは人間性と神性の両方をお持ちになられた。

④ヨハネの奉仕は、すべてその方のためである。

  2.共観福音書の記録のまとめ(32~34節)

  「またヨハネは証言して言った。『御霊が鳩のように天から下って、この方の上にとどま

られるのを私は見ました。私もこの方を知りませんでした。しかし、水でバプテスマを授

けさせるために私を遣わされた方が、私に言われました。「御霊がある方の上に下って、

その上にとどまられるのがあなたに見えたなら、その方こそ、聖霊によってバプテスマを

授ける方である」。私はそれを見たのです。それで、この方が神の子であると証言してい

るのです』」

    (1)ヨハネの福音書には、イエスの洗礼の場面はない。

      ①ヨハネは、イエスがヨハネから洗礼を受けたことを前提に書いている。

    (2)ヨハネの目撃情報

      ①イエスの上に御霊が鳩のように天から下るのを見た。

「それで、この方が神の子であると証言しているのです」(34節)

結論:

  1.ユダヤ人たち(19節)

    (1)エルサレムから使者を遣わしたのは、「ユダヤ人たち」である。

    (2)新約聖書は反ユダヤ的書であるか。

      ①ギリシア語で「ユーダイオイ」、ヘブル語で「イェフディム」

      ②これを「ユダヤ人たち」と訳すと、無意識の内にユダヤ人はメシアに敵対した

というメッセージを伝えることになる。

③この言葉は、文脈によって注意深く解釈する必要がある。

    (3)3つの解釈が可能である。

      ①ユダ族の人たち

      ②ユダヤ民族(ユダヤ教徒たち)

      ③ユダヤ地方に住む人たち(出身者たち)

        *ヨハネは③の意味で使っている。

        *エルサレムに住む宗教的指導者たちのことである。

  2.パリサイ人(24節)

    (1)バビロン捕囚期以降のユダヤ教

      ①捕囚により神殿が破壊され、祭司階級は職場を失った。

      ②70年間(捕囚)で、律法を学ぶことが民族統一の鍵であるとの認識が生まれた。

      ③捕囚から帰還して以降の重要人物は、エズラである。

        *彼は祭司であった。

        *と同時に、律法学者(書記)でもあった。

      ④第二神殿の建設後、祭司階級の職業が復活した。サドカイ人の源流。

      ⑤エズラの教えに触発される人々が現れた。パリサイ人の源流。

        *パリサイ派は、いわば平信徒の運動として発展した。

        *イエスの時代、パリサイ人は約6,000人いた。

      ⑥サンヘドリンを構成していたのは、サドカイ人とパリサイ人である。

    (2)メシア待望の高まり

      ①1世紀の最初の30年くらい

      ②ローマからの解放を達成する政治的メシア像

      ③超自然的登場

      ④あるいは、ダビデの家系から登場する王

    (3)バプテスマのヨハネは異端児である。

      ①エルサレムの神殿とは無関係の所で、育った。

      ②正式なラビ教育を受けていない。

      ③無資格で働きを展開している。

        *神殿やシナゴーグに通うユダヤ人を自分のところに集めている。

        *いわば、羊泥棒である。

      ④既成勢力から見ると、反発を覚える人物であるが、認めないわけにはいかない。

      ⑤審問を開始した時点では、サンヘドリンの立場は中立である。

      ⑥ヨハネは、日本の歴史で言えば、信長のような人物である。

        *信長のような人物が登場する背景に、鉄器による農業生産の高まりがある。

        *国力が飛躍的に増し、商品流通経済が発展する。

*そして、鉄砲が、戦争の形態を一変させた。

      ⑦日本の霊的壁を打ち破る可能性はあるか。

*万人祭司という概念の再確認

        *ヘブル的解釈

        *字義通りの解釈

  3.神の小羊(29節)

    (1)イエスの自己認識

      ①神の子

      ②神のしもべ

    (2)バプテスマのヨハネのメシア認識

      ①「神の子」(34節)

      ②「世の罪を取り除く神の小羊」(29節)

    (3)使徒たちのメシア認識

      ①1コリ5:7

      「新しい粉のかたまりのままでいるために、古いパン種を取り除きなさい。あな

たがたはパン種のないものだからです。私たちの過越の小羊キリストが、すでに

ほふられたからです」

      ②1ペテ1:18~19

      「ご承知のように、あなたがたが父祖伝来のむなしい生き方から贖い出されたの

は、銀や金のような朽ちる物にはよらず、傷もなく汚れもない小羊のようなキリ

ストの、尊い血によったのです」

    (4)アンケートにあった質問

      ①サタンは、訴える者である。

      ②根拠なく、訴える者である。

    (例話)キャンプでの5人の受洗者の証し(福音の3要素)

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