日本人のルーツはユダヤ人か(1)失われた北の十部族

  • 2021.12.13
  • スピーカー 中川健一
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「失われた北の十部族」のアウトライン
①日ユ同祖論の始まり
②失われた北の十部族
③聖書に基づく議論

日本人のルーツはユダヤ人か(1) 失われた北の十部族

はじめに

  
(1)定期的に受ける質問がある。

「〇〇で見たのですが、日本人の先祖はユダヤ人なのですか」

(2)日本人の中には、日ユ同祖論を信じる人が根強く存在している。

(3)「日本人のルーツはユダヤ人か」というテーマで、3回に分けて話す。

(4)「失われた北の十部族」のアウトライン

  ①日ユ同祖論の始まり

②失われた北の十部族

③聖書に基づく議論

1.日ユ同祖論の始まり

  (1)両者の文化の類似性を強調し、日本人のルーツはユダヤ人だと主張する人がいる。

    ①相違点は無視される。

  (2)日本人とユダヤ人が交流を始めたのは、近現代以降である。

    ①日ユ同祖論はそれを否定し、太古から関係があったと主張する。

  (3)日ユ同祖論を最初に主張したのは、ユダヤ人実業家である。

    ①明治初期に来日した英国のユダヤ人実業家、ノーマン・マクロード

②彼は、『日本古代史の縮図』(明治8年)という本を書いた。

③彼は、両者の文化の類似性を観察し、日本人は北の十部族の末裔だと主張した。

④日本人の中からも日ユ同祖論を主張する人たちが出て来た。

2.失われた北の十部族

  (1)ソロモンの死後、イスラエル王国は南北に分裂した。

    ①北の10部族がイスラエル、南の2部族がユダと呼ばれた。

    ②ダビデの系統に属する正当な王朝は、南王国である。

  (2)北王国は、アッシリア捕囚に遭う(前722年)。

    ①連行されたのは、主に貴族階級である。

    ②アッシリアは、民族混合策を取った。

    ③その結果誕生したのが、サマリア人である。

    ④北の十部族の消息は途絶えた。

  (3)南王国ユダは、バビロン捕囚に遭う(前586年)。

    ①この場合も、連行されたのは主に貴族階級である。

    ②ユダ族とベニヤミン族は、バビロニア帝国の保護を受けた。

  (4)70年後、ペルシアのキュロス王の勅令により、ユダヤ人たちは父祖の地に帰還。

    ①帰還したのは、ほんの一部である。

    ②この時から、ユダ族にちなんでユダヤ人ということばが用いられるようになる。

    ③北の十部族は、南の2部族とともに、父祖の地に帰還したのであろうか。

  (5)日本以外にも、「失われた北の十部族」の伝説は存在する。

    ①「イングランドはイスラエルの末裔だ」(17世紀のジョン・サドラー議員)

    ②「大ブリテン民族が失われた北の十部族である」(18世紀の英国)

    ③「アングロ・サクソン人も十部族の末裔である」

      *プロテスタントのクリスチャンによる「British Israelism」(19世紀)

      *米国では、G.W.グリーンウッドが月刊誌『世界の遺産』を創刊(1880年)。

*彼は、アメリカにおける「British Israelism」の主導者となった。

*今も、「British Israelism」運動を展開する団体が多く存在する。

3.聖書に基づく議論

  (1)ルカの福音書2章36節

  「また、アシェル族のペヌエルの娘で、アンナという女預言者がいた。この人は非常に

年をとっていた。処女の時代の後、七年間夫とともに暮らしたが、」

  ①紀元70年の神殿崩壊により、ユダヤ人たちの系図は失われてしまった。

  ②イエス誕生の頃、ユダヤ人たちは系図を所有していた。

  ③幼子イエスを祝福したアンナは、アシェル族のペヌエルの娘であった。

  ④少なくとも、アシェル族は失われていない。

  (2)使徒の働き26章7節

  「私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神に仕えながら、その約束のものを得たいと望

んでいます。王よ。私はこの望みを抱いているために、ユダヤ人から訴えられているのです」

  ①失われた北の十部族論が間違いであることが分かる。

(3)ヤコブの手紙1章1節

「神と主イエス・キリストのしもべヤコブが、離散している十二部族にあいさつを送ります」

  ①12部族は世界各地に離散しているが、失われてはいない。

4.まとめ

  (1)南の2部族が先祖の地に帰還したときに、南の10部族もいっしょに帰還した。

  (2)現在のユダヤ人たちは自分が何族に属するかは分かっていない。

  (3)現在のユダヤ人の中に北の十部族の子孫たちがいる。

  (4)失われた北の十部族論が誤りなら、「British Israelism」も日ユ同祖論も誤り。

  (5)次回は、日本人の日ユ同祖論論者を取り上げる。

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