ルカの福音書(16)荒野の誘惑4:1~13

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イエスが受けた誘惑の意味について学ぶ。

ルカの福音書 16回

荒野の誘惑

ルカ4:1~13

1.はじめに

(1)文脈の確認

   ①イエスは、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。

   ②次に、イエスの系図が紹介された(挿入句)。

  ③バプテスマによって、メシアの本質が明らかになった。

    *メシアは、神の子、主のしもべである。

  ④バプテスマと誘惑は、連続した出来事である。

  ⑤イエスは聖霊の力によって、父なる神の御心を行い、悪魔に勝利される。

2.アウトライン

  (1)聖霊の導き(1~2節)

(2)第1の誘惑(3~4節)

(3)第2の誘惑(5~8節)

(4)第3の誘惑(9~12節)

(5)イエスから離れる悪魔(13節)

3.結論

(1)イエスの誘惑とアダムの罪の関係

(2)イエスの誘惑とイスラエルの罪の関係

(3)イエスの誘惑と私たちの罪の関係

イエスが受けた誘惑の意味について学ぶ。

Ⅰ.聖霊の導き(1~2節)

1.1~2節a

Luk 4:1
さて、イエスは聖霊に満ちてヨルダンから帰られた。そして御霊によって荒野に導かれ、

Luk 4:2a
四十日間、悪魔の試みを受けられた。

(1)3:22で聖霊がイエスの上に下った。

   ①イエスは聖霊に支配されて、聖霊の力によって、メシアとしての働きをする。

  ②興味深いことに、聖霊がイエスを荒野に導いた。

  ③ヘブ5:8

Heb 5:8 キリストは御子であられるのに、お受けになった様々な苦しみによって従順を学び、

  ④荒野は神の声を聴く場所であるが、そこで悪魔の声が聞こえてきた。

    *伝統的に、誘惑の場所はエリコを見下ろす山であると言われている。

  ⑤クリスチャンにとって、荒野の体験は霊的成長のために必要なものである。

(3)「四十日間、悪魔の試みを受けられた」

  ①悪魔は、ギリシア語でディアボロス、ヘブル語で、サタナス。

    *ともに、訴える者という意味である。

  ②試みは、ギリシア語でペイラゾウである。

    *誘惑する(tempt)と試す(test)という2つの意味がある。

  ③悪魔の試みは、40日間にわたり継続した。

  2.2節b

Luk 4:2b
 その間イエスは何も食べず、その期間が終わると空腹を覚えられた。

(1)旧約聖書では、40日間というモチーフが随所に現れている。

  ①大雨が降った日数(創7:4)

  ②モーセがシナイ山で過ごした日数(出24:18)

  ③エリヤが神の山ホレブまで歩いた日数(1列19:8)

  ④ニネベが滅びるまでの日数(ヨナ3:4)

  ⑤イスラエルが荒野を放浪した年数(40年)

  ⑥イエスの試みの期間は、40日間であった。

  ⑦イエスは、イスラエルの民の失敗を償うために、申命記から引用する。

  ⑧イスラエルの民は荒野でマナを食べたが、イエスには食べ物がなかった。

(2)40日間が終わると、悪魔の誘惑はさらに激しくなった。

  ①イエスは空腹を覚えた。

  ②そこに悪魔が付け込んで来た。

Ⅱ.第1の誘惑(3~4節)

1.3節

Luk 4:3
そこで、悪魔はイエスに言った。「あなたが神の子なら、この石に、パンになるように命じなさい。」

(1)「あなたが神の子なら」は、「あなたは神の子なのだから」という意味である。

   ①イエスが神の子として、父なる神に従順に歩むかどうかを試している。

(2)この誘惑の内容

  ①イエスには、石をパンに変える力はある。

  ②その力を、自らを満足させるために用いよという誘惑である。

  ③父の御心に従うのではなく、父から独立して行動せよという誘惑である。

    *父の御心は、イエスが荒野で空腹になることであった。

    *父の御心は、イエスが受難の道を歩むことであった。

  2.4節

Luk 4:4
イエスは悪魔に答えられた。「『人はパンだけで生きるのではない』と書いてある。」

    
(1)申8:3からの引用

  ①イスラエルの民は、荒野でマナを食べて生き延びた。

  ②マナは、神のことば(約束)によって与えられた。

  ③それゆえ、マナを食べる者は神のことばを食べているのである。

    *神のことばを食べるとは、神の約束に信頼することである。

  ④イエスは、パンを食べなくても、荒野で死ぬことはないと知っていた。

  ⑤と同時に、神のことばに信頼しなければ霊的に死ぬことも知っていた。

  ⑥それゆえイエスは、神のことばに自らを委ねたのである。

(2)イエスは、聖句を引用することによって、悪魔の誘惑に勝利した。

  ①聖句を自分に適用することが、霊的戦いに勝利する秘訣である。

Ⅲ.第2の誘惑(5~8節)

1.5~7節

Luk 4:5
すると悪魔はイエスを高いところに連れて行き、一瞬のうちに世界のすべての国々を見せて、

Luk 4:6

こう言った。「このような、国々の権力と栄光をすべてあなたにあげよう。それは私に任されていて、だれでも私が望む人にあげるのだから。

Luk 4:7
だから、もしあなたが私の前にひれ伏すなら、すべてがあなたのものとなる。」

    
(1)「高いところ」とは、エリコを見下ろす場所であろう。

  ①エリコには、オアシスの町の栄華があった。特にバルサム樹が重要であった。

  ②悪魔は、エリコ以外にも、幻によって世界のすべての国々を見せた。

(2)「もしあなたが私の前にひれ伏すなら、すべてがあなたのものとなる」

  ①悪魔がこう言えるのは、彼がこの世の支配者だからである。

  ②2コリ4:4

2Co 4:4
彼らの場合は、この世の神が、信じない者たちの思いを暗くし、神のかたちであるキリストの栄光に関わる福音の光を、輝かせないようにしているのです。

  ③ヨハ12:31

Joh 12:31 今、この世に対するさばきが行われ、今、この世を支配する者が追い出されます。

  ④悪魔を拝むことが、この世の栄華を得るための条件である。

  ⑤この誘惑は、十字架を抜きにした救いの道を提案するものである。

  2.8節

Luk 4:8
イエスは悪魔に答えられた。「『あなたの神である主を礼拝しなさい。主にのみ仕えなさい』と書いてある。」

(1)イエスは、申6:13を引用された。

  ①これは、モーセがイスラエルの民に与えた命令である。

  ②約束の地で安定した生活に入っても、主を礼拝することを忘れてはならない。

  ③神の子イエスは、神の民イスラエルに語られた命令を、自分に適用された。

(2)イエスは、やがて御国の王となるお方である。

   ①王となる方法は、悪魔礼拝ではなく、父なる神への信頼である。

Ⅳ.第3の誘惑(9~12節)

1.9~11節

Luk 4:9

また、悪魔はイエスをエルサレムに連れて行き、>神殿の屋根の端に立たせて、こう言った。「あなたが神の子なら、ここから下に身を投げなさい。

Luk 4:10
『神は、あなたのために御使いたちに命じて、/あなたを守られる。

Luk 4:11
彼らは、その両手にあなたをのせ、/あなたの足が石に打ち当たらないようにする』/と書いてあるから。」

(1)ルカは、これを第3の誘惑としている。

   ①マタイは、これを第2の誘惑としている。

  ②ルカは、最後にエルサレムの神殿の場面をもってくる。

    *イエスは、エルサレムで悪魔に勝利される。

    *イエスは、エルサレムで十字架に付けられる。

    *エルサレムから福音が全世界に拡がっていく。

  ③マタイは、御国に関する誘惑を最後にもってくる。

    *マタイが想定する読者は、ユダヤ人たちである。

(2)「神殿の屋根の端に立たせて」

  ①神殿の南東の角。ケデロンの谷を眼下に見る場所。

  ②悪魔は、そこから下に身を投げるように誘惑する。

  ③奇跡を見せれば、人々はあなたをメシアとして受け入れるだろうという誘惑。

  ④つまり、十字架抜きで救いを提供せよという誘惑である。

(3)悪魔は、詩篇91篇11~12節を引用した。

   ①「あなたの足が石に打ち当たらないようにする」

    *悪魔は、神殿の頂から飛び降りても石に当たらないという適用をしている。

  ②「あなたのすべての道で」を無視している。

    *詩篇91篇は、神の御心の道を歩む人への守りの約束である。

  2.12節

Luk 4:12
するとイエスは答えられた。「『あなたの神である主を試みてはならない』と言われている。」

(1)これは、申命記6章16節の引用である。

  ①荒野の旅で、水がなくなった時に、民は【主】に向かってつぶやいた。

  ②出17:1~7の出来事

(2)ここでも、イエスは聖句の引用によって勝利された。

  ①受難のしもべとして、十字架への道を歩むことが、神の御心である。

Ⅴ.イエスから離れる悪魔(13節)

  1.13節

Luk 4:13
悪魔はあらゆる試みを終えると、しばらくの間イエスから離れた。

(1)悪魔は、一時的にイエスを離れた。

  ①イエスの公生涯が次の段階に入ったときに、再度登場する。

  ②マタ16:23

Mat 16:23
しかし、イエスは振り向いてペテロに言われた。「下がれ、サタン。あなたは、わたしをつまずかせるものだ。あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている。」

結論

1
.イエスの誘惑とアダムの罪の関係

(1)イエスは、アダムの失敗を償った。

(2)アダムが受けた3つの誘惑

  ①食べ物に関係した誘惑(ルカの1番目の誘惑)

Gen 3:1

さて蛇は、神である【主】が造られた野の生き物のうちで、ほかのどれよりも賢かった。蛇は女に言った。「園の木のどれからも食べてはならないと、神は本当に言われたのですか。」

  ②死ぬことはないという誘惑(ルカの3番目の誘惑)

Gen 3:4
すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。

  ③力が手に入るという誘惑(ルカの2番目の誘惑)

Gen 3:5
それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」

(3)イエスは、3つの誘惑に打ち勝ち、アダムの失敗を償った。

2.イエスの誘惑とイスラエルの罪の関係

(1)イエスは、イスラエルの失敗を償った。

(2)イスラエルは、荒野で40年間試された。

  ①期間に関しては、40年と40日の対比がある。

  ②イエスの聖句引用は、すべて申命記からのものである。

  ③申命記は、神とイスラエルの民の契約の書である。

(3)イエスは、40日間の荒野の誘惑に打ち勝ち、イスラエルの失敗を償った。

3.イエスの誘惑と私たちの罪の関係

(1)イエスは、私たちの失敗を償った。

(2)人類一般が受ける誘惑(1ヨハ2:16)

1Jn 2:16

すべて世にあるもの、すなわち、肉の欲、目の欲、暮らし向きの自慢は、御父から出るものではなく、世から出るものだからです。

  ①肉の欲(食欲、性欲など)

  ②目の欲(貪欲な性質)(ルカの2番目の誘惑)

  ③暮らし向きの自慢(注目されたいという欲)(ルカの3番目の誘惑)

(3)私たちが犯す失敗を、メシアが補った。

(4)私たちへの教訓

  ①誘惑のタイミングは、バプテスマの直後である。

  ②神は、誘惑が起こることを許される。

  ③クリスチャンは、神のことば(約束)を食して生きる。

  ④義認は、イエス・キリストを信じた瞬間に起こる。

  ⑤しかし、聖化には時間がかかる。

  ⑥神は、私たちを完成に導くために、私たちを試みられる。

    *私たちは、神の子であり、神のしもべである。

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