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メシアの生涯(10)—ヨセフへの告知—
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イエス誕生の意味について学ぶ。
「ヨセフへの告知」 マタイ1:18~25
1.はじめに
(1)ヨハネとイエスの対比(特にルカの福音書)
①誕生の告知
②実際の誕生物語
③神の約束が成就し、人々に喜びをもたらす。
(2)ヨセフの側から見た物語(マタイの福音書)
2.アウトライン
(1)ヨセフの苦悩(18~19節)
(2)天使の御告げ(20~23節)
(3)ヨセフの応答(24~25節)
3.メッセージのゴール
(1)イエスという名の意味
(2)インマヌエルという呼称の意味
このメッセージは、イエス誕生の意味について学ぼうとするものである。
Ⅰ.ヨセフの苦悩(18~19節)
1.18節
「イエス・キリストの誕生は次のようであった。その母マリヤはヨセフの妻と決まってい
たが、ふたりがまだいっしょにならないうちに、聖霊によって身重になったことがわかっ
た」
(1)イエス・キリスト(1節と同じ名称)
①ユダヤ人に対する情報である。
②メシアとして到来されたイエスは、ダビデの家系である。
③マタイは、イエスの誕生が超自然的なものであることを説明する。
(2)ユダヤ式結婚の習慣を知る必要がある(第7回目「イエス誕生の告知」参照)。
①今の私たちが「婚約」と言っている意味とは、異なる。
「その母マリヤはヨセフの妻と決まっていたが」(新改訳)
口語訳と新共同訳は、ともに「婚約していた」と訳している。
(3)ユダヤ式結婚の手順
①両親の合意で話が進められる。
②花嫁の父親に花嫁料を払った段階で、正式な準結婚関係が成立する。
③同居は、1年ほど先のことになるが、法的には結婚関係とみなされる。
④その期間は、花嫁が父に仕える期間である。
⑤また、花嫁の純潔が証明される期間でもある。
⑥もし花嫁が他の男と関係を持てば、姦淫の罪を犯したことになる。
⑦婚約関係の破棄は、離婚によってのみ可能になる。
(3)実質的な結婚関係が始まらない内に、マリアは身重になった。
①聖霊によって。
*実に簡潔な記述である。
②これは、マリアの側の情報であって、ヨセフは事情を知らない。
③ヨセフはマリアを愛していたので、彼女の背信の行為のゆえに心が痛んだ。
2.19節
「夫のヨセフは正しい人であって、彼女をさらし者にはしたくなかったので、内密に去ら
せようと決めた」
(1)「夫のヨセフは正しい人であって」
①まったく罪がないという意味ではない。
②旧約聖書的な意味での義人
③モーセの律法に従って生きているという意味である。
④彼もまた、イスラエルの残れる者(レムナント)である。
(2)ヨセフの選択肢
「彼女をさらし者にはしたくなかったので、内密に去らせようと決めた」(新改訳)
「彼女のことが公けになることを好まず、ひそかに離縁しようと決心した」(口語訳)
「マリアのことを表ざたにするのを望まず、ひそかに縁を切ろうと決心した」(新共同訳)
①公にするか、個人的に解決するか。
②公にした場合は、マリアは石打の刑に処せられる可能性がある。
*町の門の所に座っている裁き人に訴え出る。
*申22:23~24
「ある男と婚約している処女の娘がいて、別の男が町で彼女と出会い、床を
共にしたならば、その二人を町の門に引き出し、石で打ち殺さねばならない。
その娘は町の中で助けを求めず、男は隣人の妻を辱めたからである。あなた
はこうして、あなたの中から悪を取り除かねばならない」
③個人的に解決する場合は、2人の証人の前で離婚状を与える。
④ヨセフの場合は、正義よりも恵みが勝った。
(3)神の苦しみとヨセフの苦しみ
①アブラハムがイサクを捧げた出来事
②預言者ホセアの召し
*神は、背信の妻イスラエルを不変の愛(ヘセッド)をもって愛し続けた。
*このメッセージは、ホセアの家庭的体験によって具体化された。
*彼は、「姦淫の女」ゴメルをめとれと命じられた。
Ⅱ.天使の御告げ(20~23節)
1.20~21節
「彼がこのことを思い巡らしていたとき、主の使いが夢に現れて言った。『ダビデの子ヨセ
フ。恐れないであなたの妻マリヤを迎えなさい。その胎に宿っているものは聖霊によるの
です。マリヤは男の子を産みます。その名をイエスとつけなさい。この方こそ、ご自分の
民をその罪から救ってくださる方です』」
(1)旧約時代によく起こる神の啓示法
①夢を通した啓示
②天使を通した啓示
(2)「ダビデの子ヨセフ」
①イエスの義父は、メシアを排出する家系に属している。
②イエスは法的にもダビデの子孫である。
(3)メッセージの内容
①命令:恐れないでマリアを妻として迎えよ。
②理由:胎内の子は聖霊によって身ごもったから。
③命令:生まれてくる男の子にイエスという名を付けよ。
④理由:イエスとは、「ヤハウェは救い」という意味である。
*バプテスマのヨハネの場合と同様に、神から名が与えられる。
*イエスがもたらす救いは、罪からの救いである。
2.22~23節
「このすべての出来事は、主が預言者を通して言われた事が成就するためであった。『見よ、
処女がみごもっている。そして男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる』(訳す
と、神は私たちとともにおられる、という意味である)」
(1)これは、マタイによる解説である。
①ユダヤ人読者を意識している。
②イエスにおいて、ひとつの重要なメシア預言が成就した。
(2)イザ7:14
「それゆえ、主みずから、あなたがたに一つのしるしを与えられる。見よ。処女がみ
ごもっている。そして男の子を産み、その名を『インマヌエル』と名づける」
①ヘブル語の「アルマー」は、乙女、若い娘のこと。
*この聖句を処女懐胎の預言とは見ない人たちがいる。
②マタイは、ギリシア語の「パーセノス」を使っている。
*これは、処女という意味である。
*当時は、乙女と言えば、処女のことである。
*紀元1世紀のユダヤ教は、イザ7:14を処女懐胎の預言と理解していた。
Ⅲ.ヨセフの応答(24~25節)
1.24~25節
「ヨセフは眠りからさめ、主の使いに命じられたとおりにして、その妻を迎え入れ、そし
て、子どもが生まれるまで彼女を知ることがなく、その子どもの名をイエスとつけた」
(1)ヨセフの旧約聖書理解
①イエスという名の意味を理解した。
*詩130:8
「主は、イスラエルをすべての罪から贖ってくださる」(新共同訳)
*エレ31:31~37 新しい契約の約束
②イザ7:14の預言
(2)ヨセフは時を移さず、マリアと住むようになった。
①天使のことばを信じたということを示すため
②マリアを守るため
(3)イエスが誕生するまで、実際の夫婦関係はなかった。
(4)「その子どもの名をイエスとつけた」
①ルカ2:21によれば、それは生後8日目(割礼の日)に行われた。
結論:マタイは、ユダヤ人に対して2つのキーワードを示し、イエスのメシア性を証明しよう
としている。
1.イエスという名の意味
(1)ヘブル語でイェシュアという。
①旧約聖書のヨシュアと同じである。
②メシアとして誕生した方は、ごく普通のユダヤ人男子の名前を持った。
③「ヤハウェは救い」「ヤハウェは救う」という意味である。
④メシアがもたらす救いは、政治的な解放ではない。
⑤それは、霊的な解放である。
(2)ユダヤ人伝道とイエスという名
①イエス(英語でJesus)という名は、ユダヤ人に忌み嫌われる。
②ユダヤ人は、イエスという名によって迫害されてきた。
③これは、ユダヤ人がかかわらない方がよい名である。
④ユダヤ人伝道においては、イェシュアというヘブル名を使うのがよい。
2.インマヌエルという呼称の意味
(1)これは、イエスの名ではなく、イエスの特徴を表現する呼称である。
①その意味は、「神は私たちとともにおられる」ということ。
(2)処女懐胎したイエスは、神であり人である。
①神が人間の世界(有限の世界)に介入された。
②ヨハ1:14
「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。
父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに
満ちておられた」
③イエスは、私たちの苦悩と弱さを理解し、それを共有してくださる。
④処女懐胎は、神が私たちに近づき、私たちを救うための神の方法である。
*「すべての道は同じゴールに到達する」というのは、真理ではない。
*神の方法によらねば、救いはない。
⑤マタイ28:20b
「見よ。わたしは、世の終わりまで、いつも、あなたがたとともにいます」
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