パートⅠ.葛藤の舞台設定 1章 神の国の始まり

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聖書は、「神の国と悪魔の国の葛藤」というテーマを軸に読み解くことができる。創造主である神は、被造世界に対して最善の計画を持っておられる。それを阻止しようとして暗躍するのが悪魔である。この世になぜ悪が存在するのか。その答えは、神と悪魔の葛藤の中にある。

パートⅠ.葛藤の舞台設定

1章 神の国の始まり

イントロダクション

  1.聖書の概略を読み解くためには、いくつの方法がある。

    (1)諸契約を基に、神の計画の歴史的進展を読み解く方法

①聖書を字義通りに読めば、8つの聖書的契約が存在することが分かる。

    (2)神の経綸の移行に注目しながら、聖書を読み解く方法

      ①神の経綸は、一般的にディスペンセーションと呼ばれている。

      ②聖書には、明確に区分可能な7つのディスペンセーションがある。

    (3)神の国と悪魔の国の葛藤というテーマを軸に、聖書を理解する方法

①本シリーズは、(3)の方法で聖書の概略を読み解こうとするものである。

  2.本シリーズの目次

    パートⅠ.葛藤の舞台設定

    パートⅡ.旧約時代

    パートⅢ.中間時代

    パートⅣ.新約時代

    パートⅤ.公認教会の時代

    パートⅥ.ルネサンスと宗教改革の時代

    パートⅦ.近代における背教の時代

    パートⅧ.自由主義神学の時代

    パートⅨ.グローバリズムの時代

    パートⅩ.神の国の完成

  3.「1章 神の国の始まり」のアウトライン

    (1)個人的証し

    (2)キリスト教とは、世界観であり歴史観である。

    (3)聖書の神は、無から有を創造する神である。

神の国の始まりについて学ぶ

Ⅰ.個人的証し

1.クリスチャンになる前の私は、無神論者であった。

(1)今の自分の存在は、進化の積み重ねによって出来たと思っていた。

①生命の存在原因について、進化論しか教えられていなかった。

②人間は、偶然の積み重ねの産物であると信じて疑うことがなかった。

    (2)大学に入学した直後から、人生の根源的な問いに悩まされるようになった。

      ①「人はどこから来て、どこへ行こうとしているのか」

②「人はなぜ生きているのか」

③特に、死への恐怖は人一倍強かったように思う。

  2.2年生になったとき、自らの人生観を揺さぶられるようなことが起った。

(1)学生寮で同室になった下級生がクリスチャンであった。

①彼の誘いもあり、教会に定期的に通うようになった。

②今から思うと、神の摂理以外の何ものでもない。

    (2)約2年の求道生活を経て、クリスチャンになった。

①その結果、死の恐れから解放された。

②これは、心に起こった顕著な変化であった。

    (3)とは言え、すべての問題が解決したわけではなかった。

①それまで深く考えることのなかった新たな疑問が湧いてきた。

②「神が愛なら、なぜこの世に悪が存在するのか」

③「聖書が示す人生のゴールとはなんなのか」

④「クリスチャンとして、いかに生きるべきか」

⑤聖書には、必ず答えがある。そう思いながら、聖書の学びを続けた。

Ⅱ.キリスト教とは、世界観であり歴史観である。

  1.聖書には、明確な歴史哲学が啓示されている。

    (1)歴史哲学とは、歴史を読み解く原則のことである。

      ①その原則を用いれば、さまざまな歴史上の出来事の説明が可能となる。

    (2)いつ、なぜ、どのようにして起こったのかを、説明できるようになる。

①世界の存在

②死の存在

③悪の存在

④死刑制度の存在

⑤多言語の存在

⑥諸民族の存在

⑦イスラエル人の存在

⑧反ユダヤ主義の存在

⑨キリスト教会の存在

⑩ローマ・カトリック教会の存在

⑪イスラム教の存在

⑫プロテスタント教会の存在

⑬ホロコーストの悲劇

⑭近代イスラエル国家の復興

  2.聖書の歴史哲学の主要テーマのひとつが、「神の国と悪魔の国の葛藤」である。

    (1)「神の国」とは、光の国である。

      ①「神の国」とは、「神の王国」(Kingdom of God)である。

    (2)「悪魔の国」とは、闇の国である。

      ①「悪魔の国」とは、「悪魔の王国」(Kingdom of the Devil)である。

    (3)聖書によれば、歴史とは、この2つの王国の葛藤の記録でもある。

Ⅲ.無から有を創造する神

  1.聖書の歴史哲学の土台になるのが、無から有を創造する神の存在である。

    (1)神はなぜ、天地を創造し、人間を創造されたのか。

    (2)「孤独だったので、愛の対象として人間を創造した」というのは誤りである。

      ①神は、永遠の昔から、三位一体の神として(父、子、聖霊という3つの位格

において)存在しておられる。

②神は、完全に自己充足し、自己完結したお方である。

    (3)天地創造の前には、神以外のいかなるものも存在しなかった。

①これは、神を理解する際に極めて重要な情報である。

  2.パウロによる神の定義

(1)1テモ1:17

1Ti 1:17
どうか、世々の王、すなわち、朽ちることなく、目に見えない唯一の神に、誉れと栄光が世々限りなくありますように。アーメン。

     ①神は、「世々の王」(永遠の王)(the King eternal)である。

②神は、朽ちることなく、目に見えない唯一の神である。

    *神は、不変である(時間に支配されていない)。

    *神は、物質界を超越した霊的存在である。

    (2)神は、永遠の昔に、御自身が王として統治する「神の国」を造ろうとされた。

(3)「王国」が存在するためには、次の3つの要素がなければならない。

①王の存在

②王国を統治するための権威

③臣民の存在

  3.天地創造の目的は、神の国の臣民を造り出すことにあった。

    (1)最初に創造されたのが、天使たちである。

    (2)天使は霊的存在であり、知性を有する(マタ22:30、ヘブ1:13~14)。

①コミュニケーション能力が、与えられている。

②天に住むように創造されたが、地に下ることも許された。

③天使たちの間には、権威や能力に関する序列が存在する。

    (3)天使の数に関しての明確な啓示はないが、ヒントになる聖句はある。

      ①ダニ7:10

Dan 7:10
火の流れがこの方の前から出ていた。/幾千もの者がこの方に仕え、/幾万もの者がその前に立っていた。/さばきが始まり、/いくつかの文書が開かれた。

      ②ヘブ12:22

Heb 12:22
しかし、あなたがたが近づいているのは、シオンの山、生ける神の都である天上のエルサレム、無数の御使いたちの喜びの集い、

      ③黙5:11

Rev 5:11
また私は見た。そして御座と生き物と長老たちの周りに、多くの御使いたちの声を聞いた。その数は万の数万倍、千の数千倍であった。

    (4)次に、神の国の臣民として創造されたのが、人間である。

  4.人間には、重要な役割が与えられた。

    (1)神の代理人としての役割

①時代劇によく登場する役職に、「代官」というものがある。

②代官とは、主君(領主)の代理人として領地に派遣され、その地の管理事務

を司る者のことである。

③代官には、主君に対する説明責任がある。

(2)神が人間を創造したのは、地球という領地に代理人を置き、管理させるため。

①当然のことながら、人間には神への説明責任が伴う。

②神が代理人を通して地上を管理する統治形態を、神政政治と呼ぶ。

    (3)重要な聖句

      ①創2:7

Gen 2:7 神である【主】は、その大地のちりで人を形造り、その鼻にいのちの息を吹き込まれた。それで人は生きるものとなった。

        *地上の体が与えられたのは、領地をより良く理解するためである。

      ②創1:26~27

Gen 1:26
神は仰せられた。「さあ、人をわれわれのかたちとして、われわれの似姿に造ろう。こうして彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地の上を這うすべてのものを支配するようにしよう。」

Gen 1:27 神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして人を創造し、男と女に彼らを創造された。

        *「神のかたち」に創造されたのは、神とのコミュニケーションのため。

*「かたち」は、ヘブル語で「ツェレム」である。

*その意味は、偶像、彫像、似姿(幻で見る形)、などである。

*外面的な「かたち」は、以下のようなものである。

・言葉を使用する。

・顔に表情がある。

・恥を感じることができる(顔が赤くなる)。

・自然界を支配する能力がある。

*内面的な「かたち」は、以下のようなものである。

・知性、感情、意志

・霊性

結論

  1.人間の創造によって、神の国を設立するための神の御業は完了した。

    (1)人間は創造の冠として、最後に造られた。

    (2)人間の尊厳の根拠は、「神のかたち」に創造されているという点にある。

  2.被造世界を見て、神は「非常に良かった」と評価された。

(1)創1:31

Gen 1:31 神はご自分が造ったすべてのものを見られた。見よ、それは非常に良かった。夕があり、朝があった。第六日。

    (2)物質は決して悪ではない。

  3.「非常に良かった」被造世界が、なぜ呪われた世界となったのか。

    (1)聖書の歴史哲学は、その理由を明らかにする。

(2)その理由は、神の国と悪魔の国の葛藤にある。

  4.聖書は、将来に希望をもたらす書である。

    (1)被造世界は、「非常に良かった」という状態で始まった。

    (2)現在の被造世界は、呪われた状態にある。

(3)しかし、被造世界は、再び元の状態に戻る。いや、それ以上の状態になる。

    (4)クリスチャンが楽観主義者である理由は、そこにある。

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