私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
申命記(32)7年目の解放15:1~18
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安息年の規定について学ぶ。
申命記 32回
「7年目の解放」
申15:1~18(朗読箇所 15:1~11)
1.はじめに
(1)第2の説教:契約に基づく義務
①総論:臣下の義務(4:44~5:33)
②全的従順の呼びかけ(6~11章)
③律法の解説と日常生活への適用(12:1~26:15)
④【主】に対する誓約(26:16~19)
(2)この箇所は、律法の各論的解説とその適用である。
①この箇所を12項目に分割して説明している。
②今回は、項目5「7年目の解放」を取り上げる。
2.メッセージのアウトライン
(5)7年目の解放(15:1~18)
① 負債の免除(15:1~11)
②奴隷の解放(15:12~18)
3.結論:自発的奴隷について
安息年の規定について学ぶ。
Ⅰ.負債の免除(15:1~11)
1.1節
Deu 15:1 あなたは七年の終わりごとに、負債の免除をしなければならない。
(1)安息年の規定は、他の箇所にすでに出ていた。
①出23:10~11、レビ25:1~7
②これら箇所には、7年目には土地を休ませよという規定が記されている。
③負債免除の規定は、申命記15章で初めて出て来る。
④「七年の終わりごとに」は、ヘブル的表現で「七年目に」という意味である。
(2)負債の免除に関しては、2種類の解釈がある。
①7年目に、貸し主は返済の催促をしてはならないとする解釈
*土地が休耕地になっている。収穫がないので返済できない。
*この説では、7年目が終わると、再び返済義務が生じる。
②7年目に、負債はすべて帳消しになるという解釈
*神は、極端な貧しさも極端な富も嫌われる。
*安息年は、50年目のヨベルの年に向けた準備となる(レビ25:8~17)。
*ヨベルの年になると、土地が元の所有者に返還される。
*この解釈の方が、正しいと思われる。
③文脈の確認
*15:1は、負債の免除を命じている。
*15:2~11は、免除の仕方を詳細に解説している。
2.2~4節
Deu 15:2
その免除の仕方は次のとおりである。貸し主はみな、その隣人に貸したものを免除する。その隣人や同胞から取り立ててはならない。【主】が負債の免除を布告されたからである。
Deu 15:3 異国人からは取り立ててもよいが、あなたの同胞があなたに借りているものは免除しなければならない。
Deu 15:4
もっとも、あなたの神、【主】が相続地としてあなたに与えて所有させようとしておられる地で、【主】が必ずあなたを祝福されるので、あなたのうちには貧しい人がいなくなるであろう。
(1)7年目の負債の免除は、貧富の差を解消するための神の方法である。
①7は、聖書では完全数である。
②【主】が負債の免除を布告されたので、貸し主は取り立ててはならない。
③この規定は、イスラエルの民の間の規定であって、異国人には適用されない。
(2)この規定には、祝福の約束が伴っている。
①もしこの規定を守るなら、【主】は必ずその人を祝福される。
②その結果、イスラエルの民の間には貧しい人がいなくなる。
③神は、この規定を通してイスラエルの民の信仰を試しておられる。
3.5~6節
Deu 15:5
ただしそれは、もしあなたが、あなたの神、【主】の御声に確かに聞き従い、私が今日あなたに命じるこのすべての命令を守り行ったなら、である。
Deu 15:6
あなたの神、【主】はあなたに約束したようにあなたを祝福されるから、あなたは多くの国々に貸すが、あなたが借りることはない。また、あなたは多くの国々を支配するが、彼らがあなたを支配することはない。
(1)【主】は、負債を免除する人を豊かに祝福される。
①イスラエルの民は、諸国に貸すが、借りることはない。
②イスラエルの民は、多くの国々を支配するが、支配されることはない。
4.7~8節
Deu 15:7
あなたの神、【主】があなたに与えようとしておられる地で、あなたのどの町囲みの中ででも、あなたの同胞の一人が貧しい者であるとき、その貧しい同胞に対してあなたの心を頑なにしてはならない。また手を閉ざしてはならない。
Deu 15:8 必ずあなたの手を彼に開き、その必要としているものを十分に貸し与えなければならない。
(1)ここでモーセは、貸す側の心の問題を取り上げている。
①貧しい同胞に対して、援助の手を差し伸べるべきである。
②同胞が必要としているものを十分に貸し与えなければならない。
③「必ずあなたの手を彼に開き」
④これを実行すれば、結果的に、金や物を愛する危険から守られることになる。
5.9~11節
Deu 15:9
あなたは心によこしまな考えを抱き、「第七年、免除の年が近づいた」と言って、貧しい同胞に物惜しみして、何も与えないことのないように気をつけなさい。その人があなたのことで【主】に叫ぶなら、あなたは罪責を負うことになる。
Deu 15:10
必ず彼に与えなさい。また、与えるとき物惜しみをしてはならない。このことのゆえに、あなたの神、【主】は、あなたのすべての働きと手のわざを祝福してくださるからである。
Deu 15:11
貧しい人が国のうちから絶えることはないであろう。それゆえ私はあなたに命じる。「あなたの地にいるあなたの同胞で、困窮している人と貧しい人には、必ずあなたの手を開かなければならない。」
(1)7年目が近いという理由で、貸し惜しみをしてはならない。
①貸し惜しみをする理由は、【主】の祝福に対する不信仰である。
②その人があなたのことで【主】に叫ぶなら、あなたは罪責を負うことになる。
③【主】はかならず祝福してくださるので、物惜しみをしてはならない。
(2)その地では祝福が約束されているのに、なぜ貧しい人が常に近くにいるのか。
①【主】の命令に背いたために、貧しくなる人がいる。
②【主】がその人を訓練するために、貧しさを与える場合がある。
③困窮している人と貧しい人の存在は、愛を実践するチャンスとなる。
*イスラエル人ほど、同胞を助ける民族はいない。
(ILL)ホロコーストの時の助け合い
(ILL)ユダヤ人の祖国帰還
Ⅱ.奴隷の解放(15:12~18)
1.12節
Deu 15:12
もしあなたの同胞、ヘブル人の男あるいは女が、あなたのところに売られてきて六年間あなたに仕えたなら、七年目には自由の身として、あなたのもとから去らせなければならない。
(1)ユダヤ人は、負債を返済するために自分を奴隷として売る場合があった。
①これは、6年間の労働を売るということである。
②7年目には、主人はその人を自由の身として去らせる。
③出21:2
Exo 21:2 あなたがヘブル人の男奴隷を買う場合、その人は六年間仕えなければならない。しかし七年目には自由の身として無償で去ることができる。
④この7年目は、負債免除の年と合致している必要はない。
2.13~15節
Deu 15:13 その人を自由の身として去らせるときは、何も持たせずに去らせてはならない。
Deu 15:14
必ず、あなたの羊の群れと打ち場と踏み場のうちから取って、彼に分けてやらなければならない。あなたの神、【主】があなたに祝福として与えられたものを与えなければならない。
Deu 15:15
あなたは、エジプトの地で奴隷であったこと、そして、あなたの神、【主】があなたを贖い出されたことを覚えていなければならない。それゆえ、私は今日このことをあなたに命じるのである。
(1)その場合、去って行く人が経済的に自立出来るように援助する義務がある。
①3種類のものを与えなければならない。
*羊(家畜)、打ち場のうちから(穀物)、踏み場のうちから(ぶどう酒)
②これは、奴隷の所有者が【主】からの祝福によって受けたものである。
(2)この寛大な行為には、【主】の御業を思い起こすという教育的意味があった。
①出エジプトの出来事が、この行為の原型になっている。
②かつてイスラエルの民は、エジプトで奴隷であった。
③【主】はイスラエルの民を贖い出された。
④イスラエルの民は、自由の民としてエジプトを脱出することができた。
⑤その際、エジプト人から労働の対価を受け取った。
⑥主人が今あるのは、【主】の恵みのゆえである。
⑦主人は、【主】から受けた恵みを、奴隷に対して実践するのである。
⑧ルカ7:47(パリサイ人シモンと罪の女の対比)
Luk 7:47
ですから、わたしはあなたに言います。この人は多くの罪を赦されています。彼女は多く愛したのですから。赦されることの少ない者は、愛することも少ないのです。」
2.16~17節
Deu 15:16
しかし、その人があなたとあなたの家族を愛し、あなたのもとにいて幸せなので、「あなたのもとから去りたくありません」と言うなら、
Deu 15:17
あなたはきりを取って、彼の耳を戸に刺しなさい。彼はいつまでもあなたの奴隷となる。女奴隷にも同じようにしなければならない。
(1)自発的奴隷の規定
①奴隷になった人が、主人の家を去りたくないと思うようになった。
*奴隷になってから結婚した場合は、妻と子は主人のものである。
*奴隷は、主人の家で家族一緒に暮らしたいと願うようになった。
②その場合、主人はきりを取って、奴隷の耳を戸に刺す。
③この方法で、奴隷は自発的奴隷となり、いつまでも主人の家で仕える。
④女奴隷の場合も、同じようにする。
3.18節
Deu 15:18
彼を自由の身として去らせるときには、厳しくしてはならない。彼は六年間、雇い人の賃金の二倍の分あなたに仕えたからである。こうして、あなたの神、【主】は、あなたのなすすべてのことにおいて、あなたを祝福してくださる。
(1)奴隷を自由の身として去らせるときは、快く去らせなければならない。
①もし労働者を雇ったとするなら、2倍の賃金がかかったはずである。
②この命令に従うなら、【主】はあらゆる面で主人を祝福してくださる。
結論:自発的奴隷について
1.自発的奴隷の意味
(1)イスラエル人が奴隷になるいくつかのケース(出21:5~6)
Exo 21:5
しかし、もしもその奴隷が『私は、ご主人様と、私の妻と子どもたちとを愛しています。自由の身となって去りたくありません』と明言するようなことがあるなら、
Exo 21:6
その主人は彼を神のもとに連れて行く。それから戸または門柱のところに連れて行き、きりで彼の耳を刺し通す。彼はいつまでも主人に仕えることができる。
①負債を返済するために、自分を奴隷として売る場合があった。
②盗んだ物の弁済のために、自分を奴隷に売る場合があった。
③奴隷の子として誕生する場合もあった。
(2)イスラエル人の奴隷は、6年間働き、7年目には自由人として解放された。
(3)奴隷になる前から結婚していた場合は、妻子も自由人として解放された。
(4)奴隷期間中に結婚した場合は、妻子は主人の所有物となった。
(5)このような場合、奴隷には2つの選択肢があった。
①自由人となって主人の家を去る。
②自発的奴隷となって、主人の家に留まる。
(6)自発的奴隷となる場合、主人はきりを取って、奴隷の耳を戸に刺す。
①これは、奴隷がその家と一体化したことの象徴である。
②英語で「earmark」というのは、家畜に付ける耳票である。
③これは、家畜に対する所有権を示すものである。
④自発的奴隷には、主人の「earmark」が付いている。
2.自発的奴隷は、キリストの型である。
(1)自由であるお方が、自発的に奴隷となられた。
(2)私たちを愛する余り、完璧な「【主】のしもべ」となられた。
①主イエスは、十字架の死に至るまで忠実であられた。
②主イエスの頭、両手、両足、脇腹には、今も「しるし」が残っている。
3.自発的奴隷は、クリスチャンの型である。
(1)ロマ1:1
Rom 1:1 キリスト・イエスのしもべ、神の福音のために選び出され、使徒として召されたパウロから。
①しもべとは、ギリシア語で「デューロス」である。
②パウロの自己認識:イエスによって買い取られた奴隷であるという認識
*1コリ7:23
1Co 7:23 あなたがたは、代価を払って買い取られたのです。人間の奴隷となってはいけません。
(2)パウロが自発的奴隷となった3つのステップ
①罪の奴隷から解放された。
②自由の身となった。
③自らの選択によってキリスト・イエスのしもべとなった。
(3)「キリスト・イエスのしもべ」とは、逆説的言葉である。
①最も不自由であるかに見えて、最も自由である。
②最も低き所に降ろされたように見えて、最も高き所に引き上げられている。
③最も弱い者になったように見えて、最も強い者にされている。
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