申命記(25)傲慢に対する警告(1)9:1~21

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傲慢に対する警告について学ぶ。

申命記 25回

「傲慢に対する警告(1)」

申9:1~21(朗読箇所:1~12節)

1.はじめに

    (1)第2の説教:契約に基づく義務

      ①総論:臣下の義務(4:44~5:33)

      ②全的従順の呼びかけ(6~11章)

      ③律法の解説と日常生活への適用(12:1~26:15)

      ④【主】に対する誓約(26:16~19)

    (3)モーセは、自分が聞いた律法の内容を民に説明している。

      ①申6章は、「聞け、イスラエルよ」がテーマであった。

      ②申7章は、「【主】の戦い」がテーマである。

      ③申8章は、「歴史からの教訓」がテーマである。

      ③申9章は、「傲慢に対する警告」がテーマである。

2.メッセージのアウトライン

    (1)イスラエルの義のゆえではなく(9:1~6)

    (2)金の子牛事件(9:7~21)

    (3)その他の事件(9:22~24)

    (4)モーセの執りなし(9:25~29)

    (5)神の赦し(10:1~11)

  3.結論

    (1)断食の意味と力

    (2)申命記の中にある福音

傲慢に対する警告について学ぶ。

Ⅰ.イスラエルの義のゆえではなく(9:1~6)

  1.1~3節

Deu 9:1
聞け、イスラエルよ。あなたは今日、ヨルダン川を渡って、あなたよりも大きくて強い国々を占領しようとしている。その町々は大きく、城壁は天に高くそびえている。

Deu 9:2
あなたがよく知っているアナク人は、大きくて背が高い民である。あなたは「だれがアナク人に立ち向かえるだろうか」と言われるのを聞いたことがある。

Deu 9:3
今日、知りなさい。あなたの神、【主】ご自身が、焼き尽くす火としてあなたの前を進み、彼らを根絶やしにされる。主があなたの前で彼らを征服される。あなたは【主】が約束されたように、彼らをただちに追い払って滅ぼすのだ。

    (1)「聞け、イスラエルよ」

      ①これから重要なことが告げられる。

      ②「今日」とは、「24時間の日」ではなく、「時代」のことである。

    (2)【主】は、カナンの地征服がいかに困難なことであるかを強調される。

      ①その地の住民は、イスラエルの民よりも大きくて強い。

      ②町々は大きく、城壁は天に高くそびえている。

      ③神は、イスラエルの敵がいかに強力であるかをよく知っておられた。

    (3)「だれがアナク人に立ち向かえるだろうか」というのは、格言である。

      ①カデシュ・バルネアでの出来事(民13:26~14:4)

      ②12人のスパイの内の10人が語った不信仰の言葉が、格言になった。

    (4)【主】は、民が同じ失敗を繰り返さないように、励ましの言葉を語られた。

      ①戦う前から、結果は決まっている。

②戦うのは【主】ご自身である。

        *【主】は創造主であり、土地の所有者である。

        *その方が、契約に基づきイスラエルに土地を与えようとしておられる。

③【主】は、焼き尽くす火として民の前を進み、彼らを根絶やしにされる。

        *シャカイナグローリーが民を導いたのと同じことが起こる。

      ④箴21:31

Pro 21:31 戦いの日のためには馬が備えられる。/しかし、救いは【主】による。

      ⑤イスラエルの民の責務は、【主】の約束に従って戦うことである。

      ⑥勝利するために必要な力は、【主】から与えられる。

  
2.4~6節

Deu 9:4
あなたの神、【主】があなたの前から彼らを追い出されたとき、あなたは心の中で、「私が正しいから、【主】が私をこの地に導き入れ、所有させてくださったのだ」と言ってはならない。これらの国々の邪悪さのゆえに、【主】はあなたの前から彼らを追い出そうとしておられるのだ。

Deu 9:5
あなたが彼らの地を所有することができるのは、あなたが正しいからではなく、またあなたの心が真っ直ぐだからでもない。これらの国々の邪悪さのゆえに、あなたの神、【主】があなたの前から彼らを追い出そうとしておられるのだ。また【主】があなたの父祖、アブラハム、イサク、ヤコブになさった誓いを果たすためである。

Deu 9:6
知りなさい。あなたの神、【主】は、あなたの正しさゆえに、この良い地をあなたに与えて所有させてくださるのではない。事実、あなたはうなじを固くする民なのだ。

(1)勝利したなら、民は傲慢になる危険性がある。

      ①私たちも、人生が順調に進んでいるときは、同じ罪を犯す危険性がある。

      ②霊的傲慢ほど、やっかいなものはない。

        *「私が正しいから」(新改訳2017)

*「我の義がために」(文語訳)

      ③この3節(4~6節)で、モーセは3度も警告を発している。

      ④【主】は、イスラエルの民が正しいから勝利を与えるのではない。

    (2)勝利の3つの理由

      ①これらの国々の邪悪さのゆえに

      ②【主】が父祖たちになさった誓いを果たすため

      ③【主】の恵みを示すため

        *事実、イスラエルの民は、「うなじを堅くする民」である。

        *カナンの地は、恵みによる贈り物である。

        *「うなじを堅くする民」である証拠として、金の子牛事件を取り上げる。

Ⅱ.金の子牛事件(9:7~21)

  
1.7~8節

Deu 9:7
あなたは荒野であなたの神、【主】をどれほど怒らせたかを忘れずに覚えていなさい。エジプトの地を出た日からこの場所に来るまで、あなたがたは【主】に逆らい続けてきた。

Deu 9:8
あなたがたはホレブで【主】を怒らせた。それで【主】はあなたがたに怒りを燃やし、あなたがたを根絶やしにしようとされたのである。

    
(1)金の子牛事件(出32章)

「〇〇を忘れずに覚えていなさい」が強調されている。

      ②この事件は、イスラエルの歴史が反抗の歴史であることを示している。

      ③この事件は、イスラエルの民の罪深さと神の恵み深さを示している。

  
2.9~10節

Deu 9:9
私が石の板、すなわち、【主】があなたがたと結んだ契約の板を受け取るために山に登ったとき、私は四十日四十夜、山にとどまり、パンも食べず水も飲まなかった。

Deu 9:10
【主】は、神の指で書き記された石の板二枚を私に授けてくださった。その上には、あの集まりの日に、【主】が山で火の中からあなたがたに告げられたことばが、すべてそのまま書かれていた。

    
(1)モーセは、石の板を受け取るために、シナイ山頂で40日間断食をした。

      ①その間彼は、完全に神に依存していた。

②しかし民は、麓で宴会を開いていた。

  *fastingとfeasting

      ③【主】は、神の指で書き記された石の板2枚をモーセに授けた。

        *そこには、十戒が書かれていた。

      ④同じ時間、民は麓でその戒めを破っていた。

  
3.11~12節

Deu 9:11 こうして四十日四十夜の終わりに、【主】はその二枚の石の板、すなわち契約の板を私に授けてくださった。

Deu 9:12
そして【主】は私に言われた。「さあ、急いでここから下れ。あなたがエジプトから導き出したあなたの民は堕落してしまった。彼らはわたしが命じた道から早くも外れて、自分たちのために鋳物の像を造った。」

    (1)四十日四十夜の終わりに、【主】は、石の板2枚をモーセに授けた。

      ①書かれた内容は、民が直接【主】から聞いた十戒である。

      ②しかし民は、麓で第1戒と第2戒を破っていた。

        *「あなたには、わたし以外に、ほかの神があってはならない」

        *「あなたは自分のために偶像を造ってはならない」

      ③彼らは、金の子牛を礼拝していた。

      ④民は、驚くほどのスピードで堕落し、【主】から離れて行った。

  
4.13~14節

Deu 9:13
さらに【主】は私にこう言われた。 「わたしはこの民を見てきたが、実にうなじを固くする民である。

Deu 9:14
わたしのするがままにさせよ。
わたしは彼らを根絶やしにし、彼らの名を天の下から消し去る。しかし、わたしはあなたを、彼らよりも強くまた数の多い国民にする。」

    
(1)【主】の評価と提案

      ①「わたしはこの民を見てきたが、実にうなじを固くする民である」

      ②「わたしは彼らを根絶やしにし、彼らの名を天の下から消し去る」

「しかし、わたしはあなたを、彼らよりも強くまた数の多い国民にする」

  
5.15~17節

Deu 9:15 私は向きを変えて山から下りた。山は火で燃えていた。二枚の契約の板は私の両手にあった。

Deu 9:16
私が見ると、見よ、あなたがたは自分たちの神、【主】の前に罪ある者となって、自分たちのために鋳物の子牛を造り、【主】があなたがたに命じられた道から早くも外れてしまっていた。

Deu 9:17 それで私はその二枚の板をつかみ、両手でそれを投げつけ、あなたがたの目の前でそれを打ち砕いた。

    
(1)モーセがすぐに行ったこと

      ①向きを変えて山から下りた。

        *民は気まぐれで罪深い。

*民は、【主】が命じた道から早くも外れてしまった。

        *山は火で燃えていた。

        *シャカイナグローリーがシナイ山を覆っていた。

      ②モーセは、2枚の板を投げつけ、民の目の前でそれを打ち砕いた。

        *民はシナイ契約の条項を破り、この契約に違反した。

        *神には、この契約を破棄する権利がある。

  
6.18~19節

Deu 9:18
それから私は、前のように四十日四十夜、【主】の前にひれ伏して、パンも食べず水も飲まなかった。あなたがたが罪ある者となって、【主】の目に悪であることを行い、御怒りを引き起こした、そのすべての罪のゆえであった。

Deu 9:19
こうしたのは、【主】が激しく怒ってあなたがたを根絶やしにしようとされたその怒りと憤りが、私には怖かったからであった。しかし、そのときも【主】は私の願いを聞き入れてくださった。

    
(1)次にモーセが行ったこと

      ①山に上り、に四十日四十夜、【主】の前にひれ伏して断食した。

        *これは、断食祈祷である(申9:26~29に祈りの内容が出て来る)。

      ②断食は、悔い改めの表現である。

      ③モーセは、イスラエルの民の罪と一体化したのである。

      ④モーセは、【主】の怒りと憤りを恐れた。

      ⑤【主】は、モーセの願いを聞き入れてくださった。

  
7.20~21節

Deu 9:20 【主】はアロンに向かって激しく怒り、彼を滅ぼそうとされたが、そのとき私はアロンのためにもとりなしをした。

Deu 9:21
私はあなたがたの罪、あなたがたが造ったその子牛を取って火で焼き、打ち砕き、ちりになるまでよくすりつぶした。そして私はそのちりを、山から流れ下る川に投げ捨てた。

    (1)モーセがアロンのために祈ったというのは、ここだけに出て来る情報である。

      ①モーセは、アロンの命も救った。

    (2)モーセは、金の子牛を修復不可能なほどに破壊した。

      ①これは、2度目の40日間の断食の後の行為である。

「あなたがたの罪」「あなたがたが作った子牛」(これは皮肉である)

      ③破壊した後のちりを川に投げ捨てた。

      ④偶像が破壊されたことは、偶像礼拝者も破壊されることを示している。

結論

  1.断食の意味と力

    (1)モーセは山に登り、2度目の断食を行った。

      ①40日40夜の断食

      ②旧約聖書では、悔い改めの時期に断食するのは、一般的な習慣であった。

      ③ここでの断食は、モーセが民と一体化したことを示している。

      ④また、民が犯した罪の恐ろしさとも一体化していることを示している。

    (2)旧約聖書における断食の代表例

      ①2サム12:16

2Sa 12:16 ダビデはその子のために神に願い求めた。ダビデは断食をして引きこもり、一晩中、地に伏していた。

        *ダビデは、バテ・シェバが産んだ子どものために祈った。

      ②1列21:27

1Ki 21:27
アハブはこれらのことばを聞くとすぐ、自分の外套を裂き、身に粗布をまとって断食をした。彼は粗布をまとって伏し、打ちひしがれて歩いた。

        *アハブは、エリヤが語る滅びの預言を聞いた。

      ③ネヘ1:4 

Neh 1:4 このことばを聞いたとき、私は座り込んで泣き、数日の間嘆き悲しみ、断食して天の神の前に祈った。

        *ネヘミヤは、帰還民とエルサレムの窮状を知った。

    (3)クリスチャンの断食

      ①神はクリスチャンに、断食せよとは命じておられない。

②断食は、熱心な姿を神に見せて、神を動かそうとするものではない。

③つまり、断食を誇ってはならないということである。

④断食とは、神に関心を向けるために、食物を断つことである。

⑤強調点は、食物にではなく、神との関係にある。

⑥この世への執着心を捨てると、神との関係が深まる。

⑦断食によって、新しい霊的視点が開かれて来る。

⑧断食を実行する際に必要なのは、謙遜とそれを喜ぶ姿勢である。

⑨マタ6:17~18

Mat 6:17 断食するときは頭に油を塗り、顔を洗いなさい。

Mat 6:18
それは、断食していることが、人にではなく、隠れたところにおられるあなたの父に見えるようにするためです。そうすれば、隠れたところで見ておられるあなたの父が報いてくださいます。

  2.申命記の中にある福音

    (1)イスラエルの民は、自らの義のゆえに勝利するのではない。

      ①カナン人に対する勝利は、神の恵みによって与えられる。

    (2)同じ霊的真理が、私たちにも適用される。

      ①私たちは、自らの義のゆえに救われたのではない。

      ②キリストの義が私たちに適用されたので、救われたのである。

      ③救われる方法は、キリストに対する信頼である。

      ④私たちは、恵みと信仰によって救われた。

      ⑤神は、私たちのことをすべてご存じである。

      ⑥自分の義を探し、それを誇る人は、必ず失望させられる。

      ⑦エペ2:8~9

Eph 2:8 この恵みのゆえに、あなたがたは信仰によって救われたのです。それはあなたがたから出たことではなく、神の賜物です。

Eph 2:9 行いによるのではありません。だれも誇ることのないためです。

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