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ガラテヤ人への手紙(7)偽教師による惑わし ー信仰体験に基づく議論ー
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ガラテヤ人の信仰体験について学ぶ。
ガラテヤ7回
ガラ3:1~5「信仰体験に基づく議論」
1.はじめに
(1)ガラテヤ人への手紙の位置づけ
①ガラテヤ地方の諸教会は、律法主義者の教えの影響を受けた。
②パウロは、律法主義者の教えに反論する必要を感じ、この書簡を書いた。
(2)ガラテヤ人への手紙のアウトライン
①個人的弁明:パウロの使徒職(1:1~2:21)
②教理的教え:信仰義認(3:1~4:31)
③実践的教え:キリスト者の自由(5:1~6:18)
(3)文脈の確認
①1章と2章で、使徒職と福音は、神からのものであることが証明された。
②3章から、ガラテヤ人たちに対する教理的教えが始まる。
*信仰体験に基づく議論(1~5節)
*聖書に基づく議論(6~14節)
*論理に基づく議論(15~29節)
③今回は、信仰体験に基づく議論(1~5節)を取り上げる。
*パウロは、4つの質問をするが、すべて、修辞的質問である。
*答を求めるのではなく、考えさせ、内省させるための質問である。
2.メッセージのアウトライン
(1)偽教師による惑わし(1節)
(2)第1の質問(2節)
(3)第2の質問(3節)
(4)第3の質問(4節)
(5)第4の質問(5節)
3.結論
(1)偽教師の背後に潜む悪魔
(2)人間の心に宿る欲望
(3)聖霊がもたらす救い
ガラテヤ人の信仰体験について学ぶ。
Ⅰ.偽教師による惑わし(1節)
Gal 3:1 ああ、愚かなガラテヤ人。十字架につけられたイエス・キリストが、目の前に描き出されたというのに、だれがあなたがたを惑わしたのですか。
(1)ここから、より改まった形の議論入る。
①「私は驚いています」(1:6)
②ここでは、「ああ、愚かなガラテヤ人」と言っている。
*パウロの叱責は、直接的である。
③「愚か」(アノエイトス)とは、知識に欠けるということではなく、判断力
がない、知恵がない、ということである。
④当時の哲学者たちは、ガラテヤ地方の人々は知識が豊富だと認めていた。
⑤イエスも同じ言葉を語られた(ルカ24:25)
Luk 24:25 そこでイエスは彼らに言われた。「ああ、愚かな者たち。心が鈍くて、預言者たちの言ったことすべてを信じられない者たち。
⑤パウロは、ロマ1:14で同じ言葉を使っている。
*アノエイトスは、「知識のない人」「知恵のない人」である。
Rom 1:14 私は、ギリシア人にも未開の人にも、知識のある人にも知識のない人にも、負い目のある者です。 (新改訳2017)
Rom 1:14 わたしは、ギリシア人にも未開の人にも、知恵のある人にもない人にも、果たすべき責任があります。(新共同訳)
(2)「だれがあなたがたを惑わしたのですか」
①律法主義者の教えを受け入れるとはどうしたことか、という意味である。
②「惑わした」とは、まじないをかけられた状態、騙された状態である。
*(文語訳)では、「誰が汝らを誑(たぶら)かししぞ」となっている。
③まじないをかけられているので、理性的な判断ができなくなっている。
*実際に、異端の影響を受けた人を助け出すのは、容易なことではない。
*マインドコントロール:強制に気づかせないで、他者を操作すること。
④彼らを惑わしたのは、律法主義者たちである。
(3)「十字架につけられたイエス・キリストが、目の前に描き出されたというの
に、」
①惑わされたガラテヤ人たちにも、大いに責任がある。
②パウロは、ガラテヤでの伝道において、イエス・キリストが人類の罪のた
めに死んで復活したことを明確に伝えた。
③「目の前に描き出された」(プログラフォウ)とは、キリストの姿が、掲示
板に書かれた公の宣言のようになったという意味である。
④キリストの贖罪死が福音の中心であることは、疑いようがない。
*十字架こそが、キリスト教の中心である。
⑤それにもかかわらず、ガラテヤ人の目は、キリストから律法に向けられた。
⑥それゆえ、彼らに弁解の余地はない。
⑦彼らを正気に戻すために、さらに4つの質問をする。
Ⅱ.第1の質問(2節)
Gal 3:2 これだけは、あなたがたに聞いておきたい。あなたがたが御霊を受けたのは、律法を行ったからですか。それとも信仰をもって聞いたからですか。
(1)聖霊を受けたのは、律法を行ったからか、信じたからか。
①「これだけは、あなたがたに聞いておきたい」
*「あなたがたに一つだけ確かめたい」(新共同訳)
*この点が明らかになれば、すべての問題は解決する。
②回心体験の時点まで遡り、何が起こったかを確かめようということである。
(2)「あなたがたが御霊を受けたのは、律法を行ったからですか。それとも信仰
をもって聞いたからですか」
①これは、相手に考えさせるための修辞的質問である。
②パウロは、ガラテヤの信者たちが救われていることを疑っていない。
③福音を信じたときに、彼らは救われ、御霊を受けた。
④そのことを前提に、御霊を受けたのは、どうしてかと質問している。
⑤当然、律法を行ったからではなく、信仰をもって聞いたからである。
⑥ガラテヤの諸教会は、基本的には異邦人教会であり、そもそもモーセの律法
とは無関係であった。
⑦異邦人でもユダヤ人でも、律法によって御霊を受けた人は、ひとりもいない。
⑧信じた人は全員、恵みによって御霊を受けたのである。
⑨使13:49~52(ピシディアのアンティオキア)
Act 13:49 こうして主のことばは、この地方全体に広まった。
Act 13:50
ところが、ユダヤ人たちは、神を敬う貴婦人たちや町のおもだった人たちを扇動して、パウロとバルナバを迫害させ、二人をその地方から追い出した。
ところが、ユダヤ人たちは、神を敬う貴婦人たちや町のおもだった人たちを扇動して、パウロとバルナバを迫害させ、二人をその地方から追い出した。
Act 13:51 二人は彼らに対して足のちりを払い落として、イコニオンに行った。
Act 13:52 弟子たちは喜びと聖霊に満たされていた。
Ⅲ.第2の質問(3節)
Gal 3:3 あなたがたはそんなにも愚かなのですか。御霊によって始まったあなたがたが、今、肉によって完成されるというのですか。
(1)神はどのような方法であなたがたを聖化へと導いておられるのか。
①この質問は、信仰によって御霊を受けたということを前提としたもの。
②彼らは、御霊の働きによって福音を信じることができた。
③また、福音を信じた結果、御霊を受けた。
④このようにして、恵みによって信仰生活が始まった。
(2)それなのに、恵み以外の原則で聖化が進むと思うのは、愚かなことである。
①「愚か」は、1節の「愚かなガラテヤ人」と同じ言葉である(アノエイトス)。
②恵みの原則と律法の原則は、相反する概念である。
③義認も聖化も、恵みによって与えられる。
Ⅳ.第3の質問(4節)
Gal 3:4 あれほどの経験をしたのは、無駄だったのでしょうか。まさか、無駄だったということはないでしょう。
(1)あなたがたの経験は、無駄だったのか。
①「あれほどの経験をしたのは、」
*「斯程(かほど)まで多くの苦難(くるしみ)を受けしことは」(文語訳)
②これは、パウロとバルナバ、また信者になった者たちが経験した迫害である。
③使14:21~22
Act 14:21 二人はこの町で福音を宣べ伝え、多くの人々を弟子としてから、リステラ、イコニオン、アンティオキアへと引き返して、
Act 14:22
弟子たちの心を強め、信仰にしっかりとどまるように勧めて、「私たちは、神の国に入るために、多くの苦しみを経なければならない」と語った。
弟子たちの心を強め、信仰にしっかりとどまるように勧めて、「私たちは、神の国に入るために、多くの苦しみを経なければならない」と語った。
(2)「無駄だったのでしょうか」
①信仰により、恵みによって救われた結果、迫害に遭った。
*迫害したのは、律法に熱心なユダヤ人たちであった。
*もし律法を守っていたなら、迫害に遭わなかった。
②律法による聖化を求めることは、かつて自分たちを迫害したユダヤ人たち
が正しかったと認めることである。
③もしそうなら、迫害に遭ったことは無意味だったことになる。
④まさか、迫害の体験が無駄だったということはないだろう。
Ⅴ.第4の質問(5節)
Gal 3:5 あなたがたに御霊を与え、あなたがたの間で力あるわざを行われる方は、あなたがたが律法を行ったから、そうなさるのでしょうか。
それとも信仰をもって聞いたから、そうなさるのでしょうか。
(1)あなたがたが目撃した奇跡の原因は何か。
①使14:3(イコニオン)
Act 14:3 それでも、二人は長く滞在し、主によって大胆に語った。主は彼らの手によってしるしと不思議を行わせ、その恵みのことばを証しされた。
②使14:8~10(リステラ)
Act 14:8 さてリステラで、足の不自由な人が座っていた。彼は生まれつき足が動かず、これまで一度も歩いたことがなかった。
Act 14:9 彼はパウロの話すことに耳を傾けていた。パウロは彼をじっと見つめ、癒やされるにふさわしい信仰があるのを見て、
Act 14:10 大声で「自分の足で、まっすぐに立ちなさい」と言った。すると彼は飛び上がり、歩き出した。
(2)御霊が与えられたり、奇跡が行われたりするのは、人間の業に対する神から
の報いなのか。
①ガラテヤの信者たちは、そもそもモーセの律法を知らなかった。
②それらの御業は、福音を信じたことに対する神からの祝福である。
③ガラテヤの信者たちは、自らの体験を基に、義認と聖化は、恵みと信仰を通
して与えられるということを確認できたはずである。
結論:
1.偽教師の背後に潜む悪魔
(1)ガラ3:1
Gal 3:1 ああ、愚かなガラテヤ人。十字架につけられたイエス・キリストが、目の前に描き出されたというのに、だれがあなたがたを惑わしたのですか。
(2)ここでの「だれが」は、単数形である。
(3)パウロは、律法主義者の教えの背後に悪魔を見たのであろう。
(4)ヨハ8:44(表面的な信仰しかないユダヤ人たちに向かって)
Joh 8:44
あなたがたは、悪魔である父から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと思っています。悪魔は初めから人殺しで、真理に立っていません。彼のうちには真理がないからです。悪魔は、偽りを言うとき、自分の本性から話します。なぜなら彼は偽り者、また偽りの父だからです。
あなたがたは、悪魔である父から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと思っています。悪魔は初めから人殺しで、真理に立っていません。彼のうちには真理がないからです。悪魔は、偽りを言うとき、自分の本性から話します。なぜなら彼は偽り者、また偽りの父だからです。
2.人間の心に宿る欲望
(1)創3:4~5
Gen 3:4 すると、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。
Gen 3:5 それを食べるそのとき、目が開かれて、あなたがたが神のようになって善悪を知る者となることを、神は知っているのです。」
①人間は、ナンバーワンになりたい、神のようになりたいと願っている。
②悪魔はそこに隙を見出し、人間を誘惑した。
(2)人間は、恵みと信仰による救いをそのまま受け取ることができない。
(3)その救いが高価あればあるほど、自分もそこに貢献したと思っている。
(4)悪魔は、人間の本質的な欲望に訴えかけてくる。
(5)もし救われるために人間の業が必要なら、それは「ほかの福音」である。
3.聖霊がもたらす救い
(1)聖霊は、罪人の心に働きかけ、福音を信じるように促す。
①ヨハ6:37
Joh 6:37 父がわたしに与えてくださる者はみな、わたしのもとに来ます。そして、わたしのもとに来る者を、わたしは決して外に追い出したりはしません。
(2)聖霊は、信者の内に宿り、聖化のプロセスを導かれる。
①使5:32
Act 5:32 私たちはこれらのことの証人です。神がご自分に従う者たちにお与えになった聖霊も証人です。」
②使9:17
Act 9:17
そこでアナニアは出かけて行って、その家に入り、サウロの上に手を置いて言った。「兄弟サウロ。あなたが来る途中であなたに現れた主イエスが、私を遣わされました。あなたが再び見えるようになり、聖霊に満たされるためです。」
そこでアナニアは出かけて行って、その家に入り、サウロの上に手を置いて言った。「兄弟サウロ。あなたが来る途中であなたに現れた主イエスが、私を遣わされました。あなたが再び見えるようになり、聖霊に満たされるためです。」
③使10:44
Act 10:44 ペテロがなおもこれらのことを話し続けていると、みことばを聞いていたすべての人々に、聖霊が下った。
④ロマ15:16
Rom 15:16
異邦人のためにキリスト・イエスに仕える者となったからです。私は神の福音をもって、祭司の務めを果たしています。それは異邦人が、聖霊によって聖なるものとされた、神に喜ばれるささげ物となるためです。
異邦人のためにキリスト・イエスに仕える者となったからです。私は神の福音をもって、祭司の務めを果たしています。それは異邦人が、聖霊によって聖なるものとされた、神に喜ばれるささげ物となるためです。
⑤2コリ3:8
2Co 3:8 御霊に仕える務めは、もっと栄光を帯びたものとならないでしょうか。
(3)ルカ12:32
Luk 12:32 小さな群れよ、恐れることはありません。あなたがたの父は、喜んであなたがたに御国を与えてくださるのです。
①恵みによって私たちを救うことは、神にとって喜びである。
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