ガラテヤ人への手紙(1)―あいさつ―

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ガラテヤ人への手紙のあいさつについて学ぶ。

ガラテヤ人への手紙 1

「あいさつ」

ガラ 1 1 5

1.はじめに

(1)ガラテヤ人への手紙の位置づけ

①特定の教会や個人ではなく、ガラテヤ地方の複数の教会に宛てられたもの。

②2節に、「ガラテヤの諸教会」と書かれている。

③パウロは、第1次伝道旅行でこの地方に複数の教会を設立した(地図)。

*ピシデヤのアンテオケ、イコニオム、ルステラ、デルベの諸教会

④パウロが設立した諸教会を、ユダヤ主義者と呼ばれる人々が訪問した。

*彼らは、元パリサイ派で、律法を守ることに固執していた。

*エルサレム教会は、ユダヤ主義者の立場に反対していた。

*ユダヤ主義者よりも、律法主義者という名称の方がよい。

⑤パウロは、律法主義者の教えを論駁するために、この書簡を書いた。

⑥アンテオケで紀元48年頃に執筆したと思われる。

*タイミングは、エルサレム会議の前である。

 

 

(2)ガラテヤ人への手紙の特徴

①ローマ人への手紙の短縮版である。

②ローマ人への手紙は、ガラテヤ人への手紙の拡大版である。

③宗教改革の土台となった書簡である。

④キリスト者の「マグナ・カルタ」(自由の大憲章)と言われる。

(3)ガラテヤ人への手紙のアウトライン

個人的弁明:パウロの使徒職(1:1~2:21)

②教理的教え:信仰義認(3:1~4:31)

③実践的教え:キリスト者の自由(5:1~6:18)

 

 

2.メッセージのアウトライン

(1)差出人(1節)

(2)宛先(2節)

(3)あいさつ(3節)

(4)頌栄(4~5節)

 

 

3.結論

(1)使徒職の弁明

(2)パウロが伝えた福音

 

 

ガラテヤ人への手紙のあいさつについて学ぶ。

 

 

Ⅰ.差出人( 1 節)

1.1節

Gal 1:1 人々から出たのではなく、人間を通してでもなく、イエス・キリストと、キリストを死者の中からよみがえらせた父なる神によって、使徒とされたパウロと、

(1)ギリシア語では、最初に「パウロ」という名前が出て来る。

①この手紙を書いているのは、誰あろうパウロである。

②あなたがたをキリストに導き、ガラテヤの諸教会を設立したパウロである。

③ヘブル名はサウロ、ラテン名はパウロである。

④異邦人に向けて書いているので、ラテン名を使用している。

 

 

(2)続いて、「使徒」というタイトルが出て来る。

①ギリシア語では「アポストロス」である。

②このタイトルは、パウロのアイデンティティを証明するためのものである。

③言葉の位置から、このタイトルが強調されていることが分かる。

④ガラテヤの諸教会には、パウロの使徒職を疑う者たちがいた。

⑤パウロは、自分は12使徒とは異なる別の範疇の使徒であると主張する。

 

(3)パウロは、誰から使徒に任命されたのか。

①人間がこの任命の源になっている訳ではない。

*エルサレム教会の重鎮たちではない。

②人間というチャネルを通してこの任命が与えられた訳でもない。

*アンテオケ教会の長老たちでもない。

③任命者は、イエス・キリストと父なる神である。

④律法主義者との対比は鮮明である。

*彼らは、エルサレム教会から派遣されたかのように振る舞った。

*実際は、エルサレム教会から認定を受けたわけではなかった。

*律法主義者たちは、人からの権威も、神からの権威も受けていなかった。

⑤パウロは、イエス・キリストと父なる神から任命を受けた。

*父なる神は、キリストを死者の中からよみがえらせたお方である。

*信者の復活は、キリストの死と復活によって保証されている。

*キリストの復活は、初穗としての復活である。

*初穗は、それに続く収穫を保証している(初穗は、ヘブル的イメージ)。

⑥死後の復活の希望は、キリスト教と他の宗教を区別する特徴である。

 

Ⅱ.宛先( 2 節)

1.2節

Gal 1:2 私とともにいるすべての兄弟たちから、ガラテヤの諸教会へ。

(1)通常パウロは、手紙には2人の名前までしか書かない。

①1テサ1:1では、シルワノとテモテの名が書かれている。

②2テサ1:1でも、同じである。

③パウロは、少人数で移動していた。

④彼らは、パウロのメッセージと宣教の証人たちである。

 

 

(2)ここでは、「私とともにいるすべての兄弟たち」となっている。

①これは、この手紙がアンテオケで執筆されたことの証拠である。

(3)宛先は、ガラテヤの諸教会である。

①パウロが、第1次伝道旅行で設立した教会である。

*ピシデヤのアンテオケ、イコニオム、ルステラ、デルベ

②これらの教会には、ユダヤ人信者と異邦人信者がいた。

③この手紙は、回覧書簡である。

 

Ⅲ.あいさつ( 3 節)

1.3節

Gal 1:3 私たちの父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたにありますように。

(1)ギリシア語では、「恵みと平安」という言葉がこの文の冒頭に出て来る。

①これは単なる挨拶の言葉ではなく、パウロ神学の本質を突いた言葉である。

②彼の書簡は、常にこの挨拶で始まる。

*過ちを矯正するための手紙にも、この挨拶を使っている。

③例外は、2つのテモテへの手紙である。

*「恵みとあわれみと平安がありますように」

*テモテは、「あわれみ」を必要としていた。

 

 

(2)「恵み」は、ギリシア語で「カリス」である。

①恵みとは、神が一方的な愛に基づいて罪人に示してくださる好意のこと。

②さらに、この愛は契約に基づく愛である。

「恵み」は、パウロ神学のキーワードとして、最も重要なものである。

④ヨハネも恵みに関して同じ確信を持っていた(ヨハ1:16~17)。

Joh 1:16 私たちはみな、この方の満ち満ちた豊かさの中から、恵みの上にさらに恵みを受けた。

Joh 1:17 律法はモーセによって与えられ、恵みとまことはイエス・キリストによって実現したからである。

 

 

(3)「平安」は、ギリシア語で「エイレイネイ」である。

①これは、ヘブル語の「シャローム」以上の意味を持つ言葉である。

②ヨハ14:27

Joh 14:27 わたしはあなたがたに平安を残します。わたしの平安を与えます。わたしは、世が与えるのと同じようには与えません。あなたがたは心を騒がせてはなりません。ひるんではなりません。

③ピリ4:7

Php 4:7 そうすれば、すべての理解を超えた神の平安が、あなたがたの心と思いをキリスト・イエスにあって守ってくれます。

 

 

(4)「恵みと平安」という言葉の順番は、不変である。

①恵みは、基本となる祝福であり、平安の原因である。

②平安は、恵みがもたらす結果である。

「恵みと平安」は、どこから来るのか。

*父なる神から来る。

*また、主イエス・キリストから来る。

④人生の成功を判定する基準は、「平安」である。

 

 

Ⅳ.頌栄( 4 5 節)

1.4節

Gal 1:4 キリストは、今の悪の時代から私たちを救い出すために、私たちの罪のためにご自分を与えてくださいました。私たちの父である神のみこころにしたがったのです。

(1)ここまで書いて、パウロは神の御名を称えずにはおれなくなった。

①頌栄は、単なる区切りでも、空白を埋めるための言葉でもない。

②神学的思索が、パウロを礼拝へと導いたのである。

*「礼拝のない神学はなく、神学のない礼拝もない」

 

 

(2)恵みと平安の源である主イエス・キリストをほめ称える理由は何か。

①キリストは、私たちの罪のためにご自身を与えてくださった。

*信者は、イザヤ53章の「受難のしもべ」を思い出したはずである。

*キリストの犠牲によって、私たちの罪は赦された。

②その目的は、今の悪の時代から私たちを救い出すためである。

*信者は、創世3:15の「女の子孫」を思い出したはずである。

*「女の子孫」は、蛇の頭を打ち砕く。

*信者は、「今の悪の時代」から救い出された。

*信者は、聖霊に導かれて信仰によって歩む。

*律法に導かれて歩むのではない。

*律法主義者の教えは、「今の悪の時代」の一部である。

③キリストの御業は、父なる神の御心に従ったものである。

 

 

2.5節

Gal 1:5 この神に、栄光が世々限りなくありますように。アーメン。

(1)この神とは、主イエス・キリストと父なる神である。

①パウロは、神の偉大さに打たれている。

 

 

(2)御子イエスは、父なる神に従順に従うことによって、神の栄光を表わした。

①御子イエスによって救われた信者も、神の栄光を表わすように召された。

②神は、救われた人たちからのみ、栄光をお受けになる。

③律法主義者は、神にではなく、自分に栄光を帰している。

④詩29:1~2

Psa 29:1 力ある者の子らよ。【主】に帰せよ。/栄光と力を【主】に帰せよ。

Psa 29:2 御名の栄光を【主】に帰せよ。/聖なる装いをして【主】にひれ伏せ。

 

(3)「アーメン」は、ヘブル語である。

①申7:9の「主は信頼すべき神であり」は、「アーメンなる神」である。

②イザ49:7の「真実である【主】」は、「アーメンなる【主】」である。

③新約聖書では、「その通りです」「そのようになりますように」である。

④主イエスは、重要な内容を話す際に、「アーメン、アーメン」と言われた。

⑤黙3:14の「アーメンである方」は、イエス・キリストである。

 

 

(4)ユダヤ教の会堂では、朗詠の中に「アーメン」が何度も出て来る。

①会衆は、「アーメン」で応じる。

②パウロは、ここで述べた単純な福音に「アーメン」という応答を要求した。

③ガラテヤのクリスチャンたちは、「アーメン」と応じた。

④それでもなお律法主義に生きるなら、それは矛盾である。

 

 

結論

1 .使徒職の弁明

2 .パウロが伝えた福音

1 .使徒職の弁明

1 )「使徒」とは、本来はイエス・キリストの 12 弟子である。

①イスカリオテのユダに代わってマッテヤが選ばれた(使 1 21 22 )。

Act 1:21 ですから、主イエスが私たちと一緒に生活しておられた間、

Act 1:22 すなわち、ヨハネのバプテスマから始まって、私たちを離れて天に上げられた日までの間、いつも私たちと行動をともにした人たちの中から、だれか一人が、私たちとともにイエスの復活の証人とならなければなりません。」

②ここでは、使徒の条件が示されている。

*公生涯の間、イエスと行動をともにした。

*復活のイエスに出会った。

 

2 )「使徒」の一般的な意味は、「遣わされた者」「使者」である。

①この意味に立てば、宣教師と伝道者はすべて、使徒である。

2 コリ 8 23

2Co 8:23 テトスについて言えば、彼は私の仲間であり、あなたがたのために働く同労者です。私たちの兄弟たちについて言えば、彼らは諸教会の使者であり、キリストの栄光です。

*テトスは、パウロの同労者である。

*兄弟たち(パウロが遣わす他の 2 人の兄弟)は、使者である。

・ギリシア語の「アポストロス」である。

・日本語で「使者」、英語で「 messengers 」と訳されている。

③ピリ 2 25

Php 2:25 私は、私の兄弟、同労者、戦友であり、あなたがたの使者で、私の必要に仕えてくれたエパフロディトを、あなたがたのところに送り返す必要があると考えました。

*エパフロディトは、「使者」(アポストロス)である。

④ヘブ 3 1

Heb 3:1 ですから、天の召しにあずかっている聖なる兄弟たち。私たちが告白する、使徒であり大祭司であるイエスのことを考えなさい。

*イエスは、父なる神から派遣されたという意味で使徒(アポストロス)。

 

3 )パウロは、 12 使徒とは別の範疇の使徒である。

①バルナバもまた、この範疇に入る使徒である(使 14 14 )。

②復活のイエスに出会ったことが、第 2 グループの使徒の条件である。

③使 9 3 4

Act 9:3 ところが、サウロが道を進んでダマスコの近くまで来たとき、突然、天からの光が彼の周りを照らした。

Act 9:4 彼は地に倒れて、自分に語りかける声を聞いた。「サウロ、サウロ、なぜわたしを迫害するのか。」

④使 9 17

Act 9:17 そこでアナニアは出かけて行って、その家に入り、サウロの上に手を置いて言った。「兄弟サウロ。あなたが来る途中であなたに現れた主イエスが、私を遣わされました。あなたが再び見えるようになり、聖霊に満たされるためです。」

1 コリ 15 8 9

1Co 15:8 そして最後に、月足らずで生まれた者のような私にも現れてくださいました。

1Co 15:9 私は使徒の中では最も小さい者であり、神の教会を迫害したのですから、使徒と呼ばれるに値しない者です。

 

2 .パウロが伝えた福音

1 )ガラテヤの諸教会の誤りを正すという意図が、すでに見えている。

①クリスチャンは、今の悪の時代から救い出された。

②復活の希望が与えられている。

③その基になっているのは、イエス・キリストの贖いの業である。

④イエス・キリストの御業は、父なる神の御心に従ったことである。

⑤決して、人間の業ではない。

⑥それゆえ、クリスチャンは神の御名を称えるのである。

 

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