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使徒の働き(95)―カイザリヤからクレテへ―
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カイザリヤからクレテまでの旅程について学ぶ。
「カイザリヤからクレテへ」
使徒27:1~8
1.はじめに
(1)文脈の確認
①パウロは、カイザリヤからローマに向かう(27:1~28:15)
②ルカは、この船旅を詳細に記録している。
*パウロを守る神の御手(彼がローマに行くことは神の御心である)
*福音の異邦人世界への広がり
*主の主権による教会建設
③パウロは、ローマに上るというゴールを常に意識していた。
④使19:21
Act 19:21 これらのことが一段落すると、パウロは御霊の示しにより、マケドニヤとアカヤを通ったあとでエルサレムに行くことにした。そして、「私はそこに行ってから、ローマも見なければならない」と言った。
*危険が待っているという警告が何度も発せられたが、意志を曲げなかった。
*マケドニア、アカヤ、エルサレム、そしてローマという旅程を実現する。
*実際に数々の危機が襲ってきたが、パウロの決心は揺るぎなかった。
*数ヶ月の予想が、2年以上にも及んだ。
⑤ここには、神の主権による支配とそれに信頼する人間の責務の調和が見られる。
⑥この後悔では、囚人であるパウロがリーダーとして奉仕するようになる。
*嵐の場面でも、パウロのリーダーシップが発揮される。
⑦今回は、カイザリヤからクレテ(クレタ)までの旅程を取り上げる。
(2)アウトライン
①出帆(1~2節)
②シドンからミラ(3~5節)
③クレテの島陰から良い港(6~8節)
結論:
(1)ルカの記録の信頼性
(2)ヨナとパウロの対比
(3)イエスとパウロの対比
カイザリヤからクレテまでの旅程について学ぶ。
Ⅰ.出帆(1~2節)
1.1節
Act 27:1 さて、私たちが船でイタリヤへ行くことが決まったとき、パウロと、ほかの数人の囚人は、ユリアスという親衛隊の百人隊長に引き渡された。
(1)「私たち」
①船は、カイザリヤの港から出帆する。
②ルカが同行している。
*パウロがピリピを去ってから(20:5)、パウロと行動をともにしている。
*ルカは、カイザリヤでの2年間も、パウロに仕えたと思われる。
③4回目の「私たち章句」であるが、これが最も長い(27:1~28:16)。
*「私たち章句」は、ルカの記録に信憑性を与えている。
(2)「パウロと、ほかの数人の囚人」
①パウロは、カイザルに上訴したローマ市民である。
②他の囚人よりも、丁寧な扱いを受けたはずである。
*囚人の名前と人数は分からない。
*裁判にかかるか、剣闘士との戦いで見世物となる異邦人の囚人であろう。
(3)「ユリアスという親衛隊の百人隊長」
①「皇帝直属部隊の百人隊長ユリウスという者」(新共同訳)
*名誉ある部隊の百人隊長である。
②ユリウスもまた高貴な人格を持つ百人隊長であった。
*パウロに慈悲の心を示すようになる。
*ここに、神の摂理の御手が見える。
③カイザリヤの百人隊長コルネリオは、最初の異邦人信者となった。
2.2節
Act 27:2 私たちは、アジヤの沿岸の各地に寄港して行くアドラミテオの船に乗り込んで出帆した。テサロニケのマケドニヤ人アリスタルコも同行した。
(1)「アドラミテオの船」
①この船は、アドラミテオ港をベースとする船である。
②アドラミテオ港は、小アジアのトロアスから東南東に位置する港である。
③この船は、沿岸に沿って航行する小型船である。
④冬の嵐の季節が来る前に、母港に戻ろうとしている船である。
⑤百人隊長は、この船に乗り、途中でローマ行きの船に乗り換えようとしている。
(2)「テサロニケのマケドニヤ人アリスタルコも同行した」
①アリスタルコも、ルカと同じようにカイザリヤでの2年間パウロに仕えた。
②同行者たちの存在は、大きな意味を持っていた。
*パウロへの励まし
*パウロという人物の信頼性の証明
Ⅱ.シドンからミラ(3~5節)
1.3節
Act 27:3 翌日、シドンに入港した。ユリアスはパウロを親切に取り扱い、友人たちのところへ行って、もてなしを受けることを許した。
(1)「翌日、シドンに入港した」
①カイザリヤから約110キロ北にシドンがある。
②フェニキアの港町である。
(2)「ユリアスはパウロを親切に取り扱い、友人たちのところへ行って、もてなしを
受けることを許した」
①ユリアスはパウロに親切心を示した。
②友人たちのところに行って、もてなしを受けることを許可した。
*パウロは、兵士たちと鎖でつながれて移動した。
③友人たちとは、シドンにあった教会の信者たちである。
*そこでパウロは、信者たちとの交わりを楽しんだ。
*さらに彼は、みことばを教えたことであろう。
2.4~5節
Act 27:4 そこから出帆したが、向かい風なので、キプロスの島陰を航行した。
Act 27:5 そしてキリキヤとパンフリヤの沖を航行して、ルキヤのミラに入港した。
(1)「向かい風なので、キプロスの島陰を航行した」
①地中海の風
*春と秋には、西から東に吹いた。
*あるいは、北西から吹くことも多かった。
*西に向かう航路は、逆風の中を進む航路である。
②パウロが乗った船は、西ではなく北に進み、キプロス島の東側を航行した。
③さらに北に進んでキリキヤに至った。
④そこから西に進路を取り、パンフリヤの沖を航行した。
⑤そして、ルキヤのミラに入港した。
*ミラは、アジア州最南端の港である。
⑥ここまでで、800キロの船旅。この距離を約14日間で移動したと思われる。
Ⅲ.クレテの島陰から良い港(6~8節)
1.6節
Act 27:6 そこに、イタリヤへ行くアレキサンドリヤの船があったので、百人隊長は私たちをそれに乗り込ませた。
(1)百人隊長は、ミラ港でイタリア行きの船を見つけた。
①これは、アレキサンドリアを母港とする大型船である。
*アレキサンドリアは、エジプトの首都である。
②この船は、穀物(麦)を運ぶ大型船である(38節)。
*当時の大型船:長さ54メートル、幅15メートル、高さ13メートル
*エジプトは、ローマ世界に穀物を供給する最大の輸出国であった。
*当時は、エジプトの大型船が、イスラエル、シリア、小アジアの沿岸を頻
繁に航行していた。
③この船には、少なくとも276人が乗船していた(37節)。
*当時は、客船というものはなかった。
*運搬船に旅人が乗った。
(2)ここで百人隊長は、パウロと他の囚人たちをこの船に乗り込ませた。
①これで、イタリアに向かう目途が立った。
2.7~8節
Act 27:7 幾日かの間、船の進みはおそく、ようやくのことでクニドの沖に着いたが、風のためにそれ以上進むことができず、サルモネ沖のクレテの島陰を航行し、
Act 27:8 その岸に沿って進みながら、ようやく、良い港と呼ばれる所に着いた。その近くにラサヤの町があった。
(1)「クニドの沖に着いた」
①船は、北西の風に進路を阻まれた。
*数日の間、船の進みは遅かった。
②クニドは、アジア州の南西の端に位置する。
③エペソから約170キロ南にある。
④地中海とエーゲ海の境に当たる海域である。
(2)「サルモネ沖のクレテの島陰を航行し、」
①北西の風が吹いたので、船は南西にあるクレテ島の東側と南側を航行した。
(3)「ようやく、良い港と呼ばれる所に着いた」
①恐らく、現代のリメオナス・カルースであろう。
②その近くに、ラサヤの町があった。
結論
1.ルカの記録の信頼性
(1)Sir William Mitchell Ramsay (1851-1939)
(2)スコットランド出身の聖書学者、考古学者
(3)19世紀末、スコットランドの未信者グループが、聖書の間違いを見つけるため
のプロジェクトを開始した。
①ウイリアム・ラムゼイが、ルカの記録の調査官として任命された。
②彼は、使徒の働きの記録が不正確であることを証明するために、パウロの訪問
地を訪れ、現地調査を行った。
(4)ラムゼイは、この調査の後にクリスチャンになった。
①彼は、小アジア研究の第一人者となった。
②彼は、使徒の働きに関する書を何冊か記した。
*「St. Paul, the Traveler and the Roman Citizen」が有名である。
2.ヨナとパウロの対比
(1)ヨナ書の内容
①ヨナは、奇跡的な方法で嵐の海から生還することができた。
②その結果、彼は異邦人の大都市(ニネベ)で宣教することができた。
③多くの異邦人が救われた。
(2)パウロの旅
①パウロは、奇跡的な方法で難破を乗り越えることができた。
②その結果、彼はローマに到着し、そこで宣教することができた。
③多くの異邦人が福音を聞いた。
④使28:30~31
Act 28:30 こうしてパウロは満二年の間、自費で借りた家に住み、たずねて来る人たちをみな迎えて、
Act 28:31 大胆に、少しも妨げられることなく、神の国を宣べ伝え、主イエス・キリストのことを教えた。
3.イエスとパウロの対比
(1)ルカの福音書の中での強調点
①イエスのエルサレムに向けての旅
②エルサレムでの最後の1週間
③この手法によって、イエスの死と復活のインパクトが強調される。
(2)パウロの旅の中での強調点
①ルカの福音書と使徒の働きの内容は継続している。
②パウロは、幾多の苦難と嵐の海を乗り越えてローマに着く。
③福音がローマ帝国の首都で、異邦人に向けて宣言される。
(3)2つの真理
①神の約束は、必ず成就する。
②人間の側の努力と忍耐が必要である。
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