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使徒の働き(86)―サンヘドリンの前に立つパウロ―
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第三次伝道旅行について学ぶ。
「サンヘドリンの前に立つパウロ」
使徒22:30~23:11
1.はじめに
(1)文脈の確認
①パウロを神殿で見かけたユダヤ人たちは、騒動を起こした。
②殺される寸前で、千人隊長の介入があった。
③パウロは、千人隊長の許可を得て、群衆に語りかけた。
④パウロが異邦人伝道について話し始めると、群衆は激怒した。
⑤千人隊長はパウロを拘束し、むちを打って自白させようとした。
⑥しかしパウロがローマ市民であることを知り、計画を変更した。
(2)アウトライン
①サンヘドリンの召集(22:30)
②パウロの証言(23:1~5)
③作戦の変更(23:6~10)
④主からの励まし(23:11)
結論: 重要な3つのポイント
パウロの福音の神髄について学ぶ。
Ⅰ.サンヘドリンの召集(22:30)
1.30節
Act 22:30 その翌日、千人隊長は、パウロがなぜユダヤ人に告訴されたのかを確かめたいと思って、パウロの鎖を解いてやり、祭司長たちと全議会の召集を命じ、パウロを連れて行って、彼らの前に立たせた。
(1)千人隊長は、パウロがなぜ問題の原因になっているのか理解できない。
①神殿内の秩序を維持することは、彼の責務であった。
②そこで彼は、ユダヤ議会(サンヘドリン)をアントニア要塞に召集した。
③サンヘドリンの議員の中には、かつてのパウロの同僚たちもいたことであろう。
*主の恵みがなければ、パウロもその中に座していたはずである。
(2)千人隊長がサンヘドリンを召集した理由
①パウロの宗教的罪があるかどうか、サンヘドリンに裁かせる。
②問題がないと分かれば、パウロを釈放する。
③サンヘドリンが、パウロに政治的罪があると言えば、ローマの総督に裁かせる。
(3)サンヘドリンがキリスト(弟子たち)の主張を審議するのは、これで6回目。
①ヨハ11:47~53(ラザロ蘇生の報告を受けて)
②マタ26:57~68(イエスの裁判)
③使4:5~22(ペテロとヨハネの尋問)
④使5:21~40(12使徒たちの尋問)
⑤使6:12~7:60(ステパノの尋問)
⑥使23:1~10(パウロの尋問)
(4)大祭司アナニヤについて
①紀元47年~59年に、大祭司であった(ローマの任命による)。
②ヨセフスは、アナニヤを軽蔑すべき人間として描いている。
*一般の祭司に渡すべき什一献金を私物化した。
*ローマの高官に賄賂を渡した。
*ユダヤ・サマリア戦争の責任を問われローマに呼ばれたが、裁きは免れた。
*目的のためには、暗殺者を用いることも厭わなかった。
*政治的には、極めて親ローマの立場であった。
③紀元66年(この裁判から約9年後)、ユダヤ人たちによって暗殺された。
Ⅱ.パウロの証言(23:1~5)
1.1~2節
Act 23:1 パウロは議会を見つめて、こう言った。「兄弟たちよ。私は今日まで、全くきよい良心をもって、神の前に生活して来ました。」
Act 23:2 すると大祭司アナニヤは、パウロのそばに立っている者たちに、彼の口を打てと命じた。
(1)「兄弟たちよ」は、ユダヤ人たちが使っていた正式な呼びかけの言葉である。
①パウロは、自分がユダヤ教に忠実であることを示そうとした。
(2)「私は今日まで、全くきよい良心をもって、神の前に生活して来ました」
①自分の行為は、御心に反することでも、ユダヤ教の伝統に反することでもない。
②これは、自分には罪がないという意味ではない。
(3)大祭司アナニヤは、そばにいた兵者たちに、パウロの口を打つように命じた。
①パウロが「全くきよい良心」に言及したので、大祭司が怒ったのである。
②彼は、パウロは有罪だという予断に基づいて行動している。
③彼は、サドカイ派であるが、パウロはパリサイ派である。
(4)主イエスも同じ経験をされた(ヨハ18:20~22)。
Joh 18:20 イエスは彼に答えられた。「わたしは世に向かって公然と話しました。わたしはユダヤ人がみな集まって来る会堂や宮で、いつも教えたのです。隠れて話したことは何もありません。
Joh 18:21 なぜ、あなたはわたしに尋ねるのですか。わたしが人々に何を話したかは、わたしから聞いた人たちに尋ねなさい。彼らならわたしが話した事がらを知っています。」
Joh 18:22 イエスがこう言われたとき、そばに立っていた役人のひとりが、「大祭司にそのような答え方をするのか」と言って、平手でイエスを打った。
2.3節
Act 23:3 そのとき、パウロはアナニヤに向かってこう言った。「ああ、白く塗った壁。神があなたを打たれる。あなたは、律法に従って私をさばく座に着きながら、律法にそむいて、私を打てと命じるのですか。」
(1)ユダヤ教の律法では、有罪が証明されるまでは、無罪と見なされた。
①しかし、アナニヤは尋問が始まる前にパウロを打った。
②パウロは、激怒した。
③律法の執行者が、律法に反した行いをした(これは、偽善者の行いである)。
(2)「白く塗った壁」は、しっくいで上塗りされた壁である。
①外側は美しいが、内側は汚れている。
②エゼ13:10~16、マタ23:27(白く塗った墓)
(3)「神があなたを打たれる」
①あなたが私を打ったように、神はあなたを打たれる。
②この預言は、紀元66年に成就した。
3.4~5節
Act 23:4 するとそばに立っている者たちが、「あなたは神の大祭司をののしるのか」と言ったので、
Act 23:5 パウロが言った。「兄弟たち。私は彼が大祭司だとは知らなかった。確かに、『あなたの民の指導者を悪く言ってはいけない』と書いてあります。」
(1)議員たちは、大祭司の命令には驚かなかったが、パウロの言葉には驚いた。
①彼らは、「あなたは神の大祭司をののしるのか」と言った。
(2)パウロは、彼を打つように命じた人物が、大祭司であることを知らなかった。
①パウロは、エルサレムを20年以上離れていた。
②アナニヤは、大祭司の衣装を着用していなかった(議会の召集は緊急だった)。
③パウロが皮肉を言っている可能性はある。
(3)「確かに、『あなたの民の指導者を悪く言ってはいけない』と書いてあります」
①出22:28からの引用
②律法は、個人的な資質とは無関係に、大祭司の職を敬うように命じている。
Ⅲ.作戦の変更(23:6~10)
1.6節
Act 23:6 しかし、パウロは、彼らの一部がサドカイ人で、一部がパリサイ人であるのを見て取って、議会の中でこう叫んだ。「兄弟たち。私はパリサイ人であり、パリサイ人の子です。私は死者の復活という望みのことで、さばきを受けているのです。」
(1)正当な尋問を受けられないと判断したパウロは、作戦を変更する。
①サンヘドリンは、サドカイ派の議員と、パリサイ人の議員から成っていた。
②両者は、死者の復活に関して意見が異なっていた(百年以上続く論争)。
(2)パウロは、自分が根っからのパリサイ人であることを宣言する。
①それゆえ、「死者の復活という望み」は、パウロの宣教の土台であった。
②メシアは、死者の中からの復活によって、イスラエルを救われる。
③この確信は、ヘブル語聖書(旧約聖書)の預言に基づくものである。
2.7~9節
Act 23:7 彼がこう言うと、パリサイ人とサドカイ人との間に意見の衝突が起こり、議会は二つに割れた。
Act 23:8 サドカイ人は、復活はなく、御使いも霊もないと言い、パリサイ人は、どちらもあると言っていたからである。
Act 23:9 騒ぎがいよいよ大きくなり、パリサイ派のある律法学者たちが立ち上がって激しく論じて、「私たちは、この人に何の悪い点も見いださない。もしかしたら、霊か御使いかが、彼に語りかけたのかもしれない」と言った。
(1)サンヘドリンが2つに割れた。
①サドカイ人は、復活、天使、悪霊などを信じなかった。
②ユダヤ人の議論は、騒々しいものである。
③この状態では、パウロに対する尋問を継続することはできない。
(2)パリサイ派は、パウロの側に付いた。
①パウロが見た2つの幻(ダマスコ途上、神殿の中)を認め始めた。
4.10節
Act 23:10 論争がますます激しくなったので、千人隊長は、パウロが彼らに引き裂かれてしまうのではないかと心配し、兵隊に、下に降りて行って、パウロを彼らの中から力ずくで引き出し、兵営に連れて来るように命じた。
(1)千人隊長は、ユダヤ人たちが騒ぎを起こしている理由が、分からない。
①このままでは、パウロの命が危ない。
②そこで千人隊長は、パウロを保護し、兵営に連行するように命じた。
③サンヘドリンの議論は、そのまま続けさせた。
Ⅳ.主からの励まし(23:11)
1.11節
Act 23:11 その夜、主がパウロのそばに立って、「勇気を出しなさい。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなければならない」と言われた。
(1)主からの幻は、例外なしにパウロが危機的状況に置かれた時に与えられている。
①使9:5、22:17~21、18:9~10、23:11
(2)パウロは、この状況からどうしたら抜け出せるか思案していた。
①その夜、主がパウロのそばに立った。
(3)主からの励ましのことば
①勇気を出しなさい。
②あなたはエルサレムで証しした。
*これは、おほめの言葉である。
③そのように、ローマでも証ししなければならない。
*ローマでの伝道に関する使命意識が生まれた(パウロの忍耐心の源泉)。
結論: 重要な3つのポイント
1.パウロは、自分はパリサイ人であるという自己認識を持っていた。
(1)イエスを信じて20年以上経っていたが、自分はパリサイ人だと考えていた。
(2)パリサイ派の基本的な教理を保持していたからである。
①死者の復活、②魂の不滅、③永遠の報酬と裁き、④天使と悪霊の存在、
⑤神の主権(人間の責務とのバランス)、⑥ヘブル語聖書(旧約聖書)の権威
(3)イエス・キリストを信じることは、パリサイ派の教理と矛盾するものではない。
2.パリサイ人はクリスチャンになれるが、サドカイ人はそうではない。
(1)パリサイ人は、キリストを信じてからも、パリサイ人に留まることができる。
①律法に関する認識は、当然のことながら変化せざるを得ない。
(2)サドカイ人は、その信仰を変えなければ、クリスチャンになることはできない。
①クリスチャンは、死者の復活を否定できない。
②クリスチャンは、魂の不滅を否定できない。
③クリスチャンは、永遠の報酬と裁きを否定できない。
④クリスチャンは、天使と悪霊の存在を否定できない。
⑤また、トーラーだけを認め、預言者を否定するというようなことは出来ない。
3.パウロが伝える福音の神髄は、キリストの復活である。
(1)サンヘドリンの前で証言するのは、これが最後であるという認識があった。
①パウロは、最も重要なメッセージを伝えた。
(2)イエスが復活したという歴史的事実こそが、キリスト教の土台である。
①イエスこそヘブル語聖書が約束していたメシアであることが、証明された。
(3)アグリッパ王への弁明
①使26:6~8
Act 26:6 そして今、神が私たちの父祖たちに約束されたものを待ち望んでいることで、私は裁判を受けているのです。
Act 26:7 私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神に仕えながら、その約束のものを得たいと望んでおります。王よ。私は、この希望のためにユダヤ人から訴えられているのです。
Act 26:8 神が死者をよみがえらせるということを、あなたがたは、なぜ信じがたいこととされるのでしょうか。
②使26:22~23
Act 26:22 こうして、私はこの日に至るまで神の助けを受け、堅く立って、小さい者にも大きい者にもあかしをしているのです。そして、預言者たちやモーセが、後に起こるはずだと語ったこと以外は何も話しませんでした。
Act 26:23 すなわち、キリストは苦しみを受けること、また、死者の中からの復活によって、この民と異邦人とに最初に光を宣べ伝える、ということです。」
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