使徒の働き(80)―ミレトからツロへ―

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第三次伝道旅行について学ぶ。

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「ミレトからツロへ」

使徒21:1~6

1.はじめに

(1)文脈の確認

 ①前回の最後の聖句(使20:37~38)

Act 20:37 みなは声をあげて泣き、パウロの首を抱いて幾度も口づけし、

Act 20:38 彼が、「もう二度と私の顔を見ることがないでしょう」と言ったことばによって、特に心を痛めた。それから、彼らはパウロを船まで見送った。

 ②パウロは、エルサレムに行こうとしている。

 ③パウロは、ミレトからエルサレムに向かって移動する。

  *ルカは、エルサレムに上る旅について詳細な記録を残している。

  *使21:1~18は、3度目の「私たち章句」(we section)である。

  *その箇所には、深い神学的意味がある。

  *ルカは、イエスとパウロを対比させようとしている。

 ④ミレトを発ったパウロは、コス→ロドス→ツロと移動する。

 ⑤ツロに着いたパウロは、そこに7日間滞在する。

 

 

(2)アウトライン

 ①ミレトからコス、ロドス、パタラへ(1節)

 ②パタラからツロへ(2~3節)

 ③ツロの弟子たちとの交わり(4~6節)

 

結論 :パウロとイエスの対比

 

エルサレムへの旅から霊的教訓を学ぶ

Ⅰ.ミレトからコス、ロドス、パタラへ(1節)

1.1節

Act 21:1 私たちは彼らと別れて出帆し、コスに直航し、翌日ロドスに着き、そこからパタラに渡った。

(1)ミレトからコスへ

 ①パウロが乗った船は小型船で、沿岸地帯を航行する。

  *パウロがこの船を雇った可能性がある。

 ②小型船の場合は、海岸沿いを航行し、夜になると港に停泊した。

  (ILL)日本の千石船(せんごくぶね)

  *北前船は、積載重量約150トン(それ以上のものもあった)。

 ③コスは、ミレトから約65キロ南にある島である。

 ④コス島は、「ヒポクラテスの誓い」で有名なヒポクラテス誕生の地である。

  *この「誓い」は、医師の倫理・任務などについてのギリシア神への宣誓文。

  *コス島には、医学校があった。

 

 

(2)コス島からロドス島へ

 ①ロドス島にある主要都市の名前がロドス(バラの花という意味)である。

 ②コス島からロドス島へは、約140キロの航海である。

 ③ロドスは、コスモポリタンの町である。

 ④世界の七不思議

  *ギザのピラミッド

  *バビロンの空中庭園

  *エペソのアルテミス神殿

  *オリンピアのゼウス像

  *ハリカルナッソスのマウソロス霊廟

  *ロドス島の巨像

  *アレクサンドリアの大灯台

 ⑤ロドス島の巨像

  *紀元前3世紀頃に建造された。

  *太陽神ヘリオスをかたどった彫像である。両足を広げて立つ灯台である。

  *全長34m、台座まで含めると約50m(自由の女神像に匹敵する大きさ)。

  *ヘリオスは、同じ太陽神のアポロン(ローマ名アポロ)と混同されたため、

   「アポロの巨像」とも呼ばれる。

  *パウロの時代には、この像は壊れていた。

 

 

(3)ロドス島からパタラへ

 ①約95キロ東に航海するとパタラの港に着く。

 ②ミレトからパタラまでは、3日間で移動できたはずである。

 ③ここまでは、内海を航海する小型船での移動であった。

 ④何百という船が、この航路を往き来していた。

Ⅱ.パタラからツロへ(2~3節)

1.2節

Act 21:2 そこにはフェニキヤ行きの船があったので、それに乗って出帆した。

(1)パタラで大型船に乗り換えることができた。

 ①各駅停車から急行に乗り換えたようなものである。

 ②パタラから640キロ先のツロに直行する船便である。

  *この船は、穀物か果物を運ぶ輸送船であろう。

  *地中海を横断する5日間の船旅である。

 ③フェニキアは、シリアの海岸地帯のことである。

  *その中心都市が、商業都市のツロである。

  *現在のレバノンに当たる。

 ④当時の船旅は、目的地に向かう船を見つけ、それに乗るしかなかった。

  *船の航行の予定に従うしか方法はない。

 

 

2.3節

Act 21:3 やがてキプロスが見えて来たが、それを左にして、シリヤに向かって航海を続け、ツロに上陸した。ここで船荷を降ろすことになっていたからである。

(1)船は、キプロス島の南側を航行した。

 ①キプロス島は、バルナバの故郷で第一次伝道旅行の最初の訪問地であった。

 ②思い出深い地である、今回はそこには立ち寄らなかった。

 

 

(2)ツロで船が停泊した。船荷を降ろすためである。

 ①パウロは先を急いでいたが、自分で予定を組むことはできなかった。

 ②トロアスで7日間、ツロで7日間滞在した理由は、それである。

 ③しかしパウロは、船が停泊する日数を有効に活用した。

 

 

Ⅲ.ツロの弟子たちとの交わり(4~6節)

1.4節

Act 21:4 私たちは弟子たちを見つけ出して、そこに七日間滞在した。彼らは、御霊に示されて、エルサレムに上らぬようにと、しきりにパウロに忠告した。

(1)私たちとは、パウロと8人の同行者たちである。

 ①その中には、ルカも含まれていた。

 

 

(2)彼らは、ツロの弟子たち(信者たち)を探した。

 ①ツロに教会が出来ていた。

 ②その設立には、パウロも間接的に関わっていた。

 ③使11:19

Act 11:19 さて、ステパノのことから起こった迫害によって散らされた人々は、フェニキヤ、キプロス、アンテオケまでも進んで行ったが、ユダヤ人以外の者にはだれにも、みことばを語らなかった。

 ④パウロによる教会の迫害が、伝道の拡大につながった。

  *このことが、パウロにとっては慰めとなったはずである。

 ⑤一行は、ツロの信者たちと7日間交わりを持った。

  *旅の途上にある兄弟たちをもてなすのは、信者の務めである。

  *安宿に泊まるよりも、はるかに安全で快適であった。

 

 

(3)「彼らは、御霊に示されて、エルサレムに上らぬようにと、しきりにパウロに忠

告した」

 ①御霊がエルサレムに上ることを禁じているという意味でない。

 ②御霊は、ツロの信者たちにも、エルサレムで危険が待っていることを啓示した。

  *これは、それまでにパウロに示されていた内容と同じである。

 ③信者たちは、パウロの身の上を案じ、エルサレムに上らないように忠告した。

 ④御霊の示しは、迫害への準備をするようにという、パウロに対する警告である。

 ⑤パウロの確信

  *エルサレムに上ることは主の御心である。

  *危険が待っているので、あらゆる準備をする必要がある。

 

 

2.5~6節

Act 21:5 しかし、滞在の日数が尽きると、私たちはそこを出て、旅を続けることにした。彼らはみな、妻や子どももいっしょに、町はずれまで私たちを送って来た。そして、ともに海岸にひざまずいて祈ってから、私たちは互いに別れを告げた。

Act 21:6 それから私たちは船に乗り込み、彼らは家へ帰って行った。

(1)船が出帆する時が来た。

 ①この場面は、ミレトの海岸での祈りほど劇的でないが、それでも感動的である。

 ②信者たちは妻子をともない、町外れまで見送りに来た。

 ③パウロの一行は、彼らとともに海岸にひざまずいて祈り、別れを告げた。

 ④たった1週間で、深い信頼関係が生まれていた。

 

 

(2)パウロの一行は船に乗った。

 ①信者たちは家に帰って行った。

 

結論: パウロとイエスの対比

  *エルサレムへの旅は、受難に向かう旅である。

  *3つの類似点を上げてみる。

 

1.ユダヤ人による敵対と、異邦人に引き渡すという陰謀

(1)ルカ18:31~34

Luk 18:31 さてイエスは、十二弟子をそばに呼んで、彼らに話された。「さあ、これから、わたしたちはエルサレムに向かって行きます。人の子について預言者たちが書いているすべてのことが実現されるのです。

Luk 18:32 人の子は異邦人に引き渡され、そして彼らにあざけられ、はずかしめられ、つばきをかけられます。

Luk 18:33 彼らは人の子をむちで打ってから殺します。しかし、人の子は三日目によみがえります。」

Luk 18:34 しかし弟子たちには、これらのことが何一つわからなかった。彼らには、このことばは隠されていて、話された事が理解できなかった。

 

(2)使20:22~23

Act 20:22 いま私は、心を縛られて、エルサレムに上る途中です。そこで私にどんなことが起こるのかわかりません。

Act 20:23 ただわかっているのは、聖霊がどの町でも私にはっきりとあかしされて、なわめと苦しみが私を待っていると言われることです。

 

2.3度繰り返されるエルサレムでの受難の預言

(1)イエスの場合

 ①ルカ9:21~22(弟子たちの信仰告白の後)

Luk 9:21 するとイエスは、このことをだれにも話さないようにと、彼らを戒めて命じられた。

Luk 9:22 そして言われた。「人の子は、必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちに捨てられ、殺され、そして三日目によみがえらねばならないのです。」

 ②ルカ9:43~45(山麓での悪霊の追い出しの後)

Luk 9:43 人々はみな、神のご威光に驚嘆した。/イエスのなさったすべてのことに、人々がみな驚いていると、イエスは弟子たちにこう言われた。

Luk 9:44 「このことばを、しっかりと耳に入れておきなさい。人の子は、いまに人々の手に渡されます。」

Luk 9:45 しかし、弟子たちは、このみことばが理解できなかった。このみことばの意味は、わからないように、彼らから隠されていたのである。また彼らは、このみことばについてイエスに尋ねるのを恐れた。

 ③ルカ18:31~34(エルサレムへの途上。上記に取り上げた聖句)

 

(2)パウロの場合

 ①使20:22~23(上記に取り上げた聖句)

 ②使21:4(ツロ)

Act 21:4 私たちは弟子たちを見つけ出して、そこに七日間滞在した。彼らは、御霊に示されて、エルサレムに上らぬようにと、しきりにパウロに忠告した。

 ③使21:10~11(カイザリヤ)

Act 21:10 幾日かそこに滞在していると、アガボという預言者がユダヤから下って来た。

Act 21:11 彼は私たちのところに来て、パウロの帯を取り、自分の両手と両足を縛って、「『この帯の持ち主は、エルサレムでユダヤ人に、こんなふうに縛られ、異邦人の手に渡される』と聖霊がお告げになっています」と言った。

 

3.エルサレムに上るという堅い意志と、父なる神への従順

(1)ルカ22:42~44

Luk 22:42 「父よ。みこころならば、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願いではなく、みこころのとおりにしてください。」

Luk 22:43 すると、御使いが天からイエスに現れて、イエスを力づけた。

Luk 22:44 イエスは、苦しみもだえて、いよいよ切に祈られた。汗が血のしずくのように地に落ちた。

 

(2)使20:22~24

Act 20:22 いま私は、心を縛られて、エルサレムに上る途中です。そこで私にどんなことが起こるのかわかりません。

Act 20:23 ただわかっているのは、聖霊がどの町でも私にはっきりとあかしされて、なわめと苦しみが私を待っていると言われることです。

Act 20:24 けれども、私が自分の走るべき行程を走り尽くし、主イエスから受けた、神の恵みの福音をあかしする任務を果たし終えることができるなら、私のいのちは少しも惜しいとは思いません。

  *ルカは、パウロの信頼性について証言しているのである。

  *使徒たちの教えは、信頼に足る。

 

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