使徒の働き(58)―ピリピでの伝道(2)―

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第二次伝道旅行について学ぶ。

「ピリピでの伝道(2)」
使徒16:16~24

 

1.はじめに
 (1)パウロは、トロアスでマケドニア人の幻を見た。
 ①一行は、ただちにトロアスから船に乗ってマケドニアに向った。
 ②パウロの旅程
  *トロアス→サモトラケ→ネアポリス→ピリピ
 ③マケドニア州でのパウロの訪問地
  *ピリピ、テサロニケ、ベレア

 

  (2)ルカは、ピリピ伝道に最多のスペースを割いている。
 ①第二次と第三次伝道旅行で訪問したどの町の情報よりも多い。
 ②ピリピ滞在が短期間であったにもかかわらず、情報量が多い。
 ③ピリピは、パウロが伝道した最初のヨーロッパの都市である。
 ④使16:12
Act16:12それからピリピに行ったが、ここはマケドニヤのこの地方第一の町で、植民都市であった。私たちはこの町に幾日か滞在した。
  *植民都市とは、小ローマである。
  *その町の住民は、ローマの市民権を持っていた。

 

  (3)使16:14
Act16:14テアテラ市の紫布の商人で、神を敬う、ルデヤという女が聞いていたが、主は彼女の心を開いて、パウロの語る事に心を留めるようにされた。
 ①ルデヤとその家族が福音を信じ、洗礼を受けた。

 

  (4)アウトライン
 ①悪霊との対決(16~17節)
 ②女奴隷の解放(18節)
 ③迫害(19~21節)
 ④投獄(22~24節)

 

結論:伝道の底流

 

ピリピでの伝道(2)について学ぶ。
Ⅰ.悪霊との対決(16~17節)
 1.16節
Act16:16
私たちが祈り場に行く途中、占いの霊につかれた若い女奴隷に出会った。この女は占いをして、主人たちに多くの利益を得させている者であった。
  (1)悪霊との対決のタイミング
 ①恐らく、ルデヤが救われた安息日の翌週の出来事であろう。
 ②パウロの一行は、安息日に祈り場に向っていた。
  *ルデヤと他の婦人たちもいっしょに移動していたと思われる。
  *目的地は、川岸にある祈り場である。

 

  (2)「占いの霊につかれた若い女奴隷に出会った」
 ①女奴隷は、「パイディスケイ」である。
  *使12:13に「ロダという女中」が出て来る。
 ②この女奴隷は、悪霊の導きによって伝道の邪魔をしようとしたのであろう。
  *彼女は、悪霊につかれていた(内面が悪霊によって支配されていた)。
  *これは、並の悪霊ではない。
  *「占いの霊」は、ギリシア語で「πνεῦμαπύθων」である。
  *彼女は、「πύθων」という悪霊につかれていた。
 ③「πύθων」は、「デルフォイの神託」の背後にいる悪霊である。
  *デルフォイのアポロン神殿は、神託を得られる場所として有名であった。
  *人々は、戦争、健康問題、投資などについて、神託を求めた。
  *アポロン神殿の巫女が、恍惚状態になり、「πύθων」の御告げを聞いた。
  *「πύθων」は、神秘的な蛇だと考えられていた。
 ④この女奴隷は、デルフォイの神託の背後にあるのと同じ悪霊につかれていた。
 (ILL)人気占い師・当たる占い師の店デルフィー 恵比寿駅徒歩1分

 

  (3)「この女は占いをして、主人たちに多くの利益を得させている者であった」
 ①悪霊の力は現実的なものである。
 ②悪霊は、偶像礼拝者に利益をもたらすことができる。
 ③主人たちは、この女奴隷を共同所有し、利用していた。

 

 2.17節
Act16:17
彼女はパウロと私たちのあとについて来て、「この人たちは、いと高き神のしもべたちで、救いの道をあなたがたに宣べ伝えている人たちです」と叫び続けた。
  (1)彼女は、パウロとその一行のあとについて来た。
 ①伝道の妨害をするためである。

 

  (2)しかし、彼女が叫んでいる内容は、間違ってはいない。
 ①この人たちは、いと高き神のしもべたちである。
 ②救いの道をあなたがたに宣べ伝えている人たちである。
 ③彼女は、この情報をどのようにして手に入れたのか。
  *悪霊どもは、超自然的な知識を持っている。

 

  (3)女奴隷の存在が、なぜ伝道の妨害になるのか。
 ①人々は、パウロが伝えるメッセージと占いの霊が関連していると誤解する。
 ②イエス・キリストの福音の純粋性が、悪霊との関連づけによって汚される。

 

Ⅱ.女奴隷の解放(18節)
 1.18節
Act16:18
幾日もこんなことをするので、困り果てたパウロは、振り返ってその霊に、「イエス・キリストの御名によって命じる。この女から出て行け」と言った。すると即座に、霊は出て行った。
  (1)「幾日もこんなことをするので、困り果てたパウロは、」
 ①なぜパウロは、もっと早く対応しなかったのか。
 ②人の心を開くのは神の御業であるが、悪霊の追い出しもそれと同じである。
 ③悪霊の追い出しのタイミングが、まだ来ていなかった。
 ④神はパウロに伝道の機会を与えていた。
 ⑤悪霊の追い出しが起こると、パウロは町を去らねばならなくなる。

 

  (2)パウロは悪霊の追い出しを行った。
 ①直接悪霊に語りかけた。
 ②イエス・キリストの御名によって命じた。
  *イエス・キリストがパウロを通して悪霊を追い出している。
 ③命令の内容は、「この女から出て行け」である。
 ④悪霊は即座にその命令に従った。

 

  (3)この女が信者になったかどうかは、記されていない。
 ①これほどの体験をしたのだから、信者になったに違いない。
 ②ルカは、この出来事がどのような結果をもたらしたかに関心がある。

 

Ⅲ.迫害(19~21節)
 1.19~20節a
Act16:19彼女の主人たちは、もうける望みがなくなったのを見て、パウロとシラスを捕らえ、役人たちに訴えるため広場へ引き立てて行った。
Act16:20aそして、ふたりを長官たちの前に引き出してこう言った。
  (1)主人たちは激怒した。
 ①女奴隷が正気に戻ったので、彼女を使って儲けることができなくなった。
 ②彼らは、パウロとシラスを捕らえて、訴えた。
 ③これまでの迫害は、ユダヤ人たちから来た。
  *原因は、福音宣教に対する反発であった。
 ④この町にはユダヤ人がいないので、迫害は異邦人から来た。
  *原因は、経済的損失から来る怒りである。

 

  (2)裁判は、広場(アゴラ)で行われた。
 ①植民都市には、2人の長官が置かれていた。
 ②「役人」と「長官」は、同一人物である。
 ③長官は、ギリシア語で「ストゥラテゴイ」。
  *文語訳では「司」と訳されている。
  *2人の長官が裁判官であった。

 

 2.20b~21節
Act16:20b 「この者たちはユダヤ人でありまして、私たちの町をかき乱し、
Act16:21ローマ人である私たちが、採用も実行もしてはならない風習を宣伝しております。」
  (1)女奴隷の主人たちは、本当の動機を隠して訴えを起している。
 ①経済的損失というテーマを愛国心というテーマに切り替えている。

 

  (2)この訴因には、反ユダヤ的要素が存在している。
 ①この者たちはユダヤ人である。
 ②私たちの町をかき乱している。
 ③ローマの宗教があるのに、非合法な宗教を伝えようとしている。
  *ユダヤ教には、公認宗教としての地位が与えられていた。
  *しかし、ローマ市民を改宗させることは違法であった。
 ④主人たちも、長官たちも、ユダヤ教とキリスト教の区別をつけていない。

 

Ⅳ.投獄(22~24節)
 1.22~23節
Act16:22群衆もふたりに反対して立ったので、長官たちは、ふたりの着物をはいでむちで打つように命じ、
Act16:23何度もむちで打たせてから、ふたりを牢に入れて、看守には厳重に番をするように命じた。
  (1)植民都市における反ユダヤ的雰囲気
 ①紀元49年か50年に、クラウデオ帝はすべてのユダヤ人をローマから追放した。
 ②反ユダヤ的雰囲気は、ここピリピにまで伝わっていた。
 ③群衆は、理由なくしてふたりに反対して立った。

 

  (2)長官は、事実関係を調査しないで、結論を出した。
 ①むち打ち
 ②投獄

 

  (3)むち打ち
 ①パウロはなぜ自分がローマ市民だと言わなかったのか。
  *群衆の声に、パウロの言葉がかき消された可能性がある。
 ②どれくらい激しいむち打ちであったかは、書かれていない。
  *何度もむちで打たせたとある。
  *パウロは、合計3度のむち打ちを経験している。2コリ11:25。
  *1テサ2:2
1Th2:2
ご承知のように、私たちはまずピリピで苦しみに会い、はずかしめを受けたのですが、私たちの神によって、激しい苦闘の中でも大胆に神の福音をあなたがたに語りました。

 

  (4)投獄
 ①「看守には厳重に番をするように命じた」
  *看守は、命懸けで番をするように命じられた。

 

 2.24節
Act16:24この命令を受けた看守は、ふたりを奥の牢に入れ、足に足かせを掛けた。
  (1)看守は、パウロとシラスを重罪犯のように扱った。
 ①看守は、通常は退役軍人がなった。
  *上官の命令に忠実である。
  *戦闘能力がある。
 ②看守の地位は、百人隊長クラスと思われる。

 

  (2)「奥の牢に入れ、足に足かせを掛けた」
 ①獄舎の中の一番奥に造られた、窓のない牢である。
 ②逃亡の危険をなくすために、足かせまで掛けた。

 

結論:伝道の底流
 1.福音は、すべての人に救いをもたらす神の力である。
  (1)ルカは、ピリピで信者となった3人の人たちを描いている。
 ①ルデヤ(上流階級の裕福な婦人)
 ②女奴隷(下層階級の貧しい女)
 ③看守(中流階級の代表)

 

 2.福音を聞く人の心を開くのは、主である。
  (1)使徒の働きは、生けるキリストの働きの記録である。

 

 3.福音を受け入れた人は、天国の市民権を持つようになる。
  (1)ピリピの住民たちの誇りは、ローマの市民権である。
  (2)クリスチャンの誇りは、天国の市民権である。
 ①地上に住みながら、天国の市民権を持っている。
 ②クリスチャンにとっては、地上は天国の植民地である。
 ③私たちは主イエス・キリストが再臨されるのを待ち望んでいる。

 

 4.福音を伝える人は、光の国と闇の国の戦いに巻き込まれている。
  (1)神は、神の国を完成させようとして働いておられる。
 ①神の国の臣民は、聖なる天使たちと救われた人たちである。
 ②神の働きが前進する方法
  *神の直接的な介入
  *天使たちの働き
  *人間の働き

 

  (2)悪魔は、悪魔の国を造ろうとして働いている。
 ①悪魔の国の臣民は、堕落した天使たちと罪人たちである。
 ②悪魔の働きが前進する方法
  *悪魔の直接的な介入
  *悪霊どもの働き
  *罪人たちの働き

 

  (3)光の国と闇の国の衝突
 ①ルカ4:33~35
Luk4:33また、会堂に、汚れた悪霊につかれた人がいて、大声でわめいた。
Luk4:34
「ああ、ナザレ人のイエス。いったい私たちに何をしようというのです。あなたは私たちを滅ぼしに来たのでしょう。私はあなたがどなたか知っています。神の聖者です。」
Luk4:35
イエスは彼をしかって、「黙れ。その人から出て行け」と言われた。するとその悪霊は人々の真ん中で、その人を投げ倒して出て行ったが、その人は別に何の害も受けなかった。
 ②ルカ8:28
Luk8:28
彼はイエスを見ると、叫び声をあげ、御前にひれ伏して大声で言った。「いと高き神の子、イエスさま。いったい私に何をしようというのです。お願いです。どうか私を苦しめないでください。」
 ③使19:15
Act19:15すると悪霊が答えて、「自分はイエスを知っているし、パウロもよく知っている。けれどおまえたちは何者だ」と言った。
  *ユダヤの祭司長スケワという人の七人の息子たち
 ④ルカ4:18~19
Luk4:18
「わたしの上に主の御霊がおられる。/主が、貧しい人々に福音を伝えるようにと、/わたしに油をそそがれたのだから。/主はわたしを遣わされた。/捕らわれ人には赦免を、/盲人には目の開かれることを告げるために。/しいたげられている人々を自由にし、
Luk4:19主の恵みの年を告げ知らせるために。」

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