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使徒の働き(57)―ピリピでの伝道(1)―
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第二次伝道旅行について学ぶ。
「ピリピでの伝道(1)」
使徒16:11~15
1.はじめに
(1)パウロは、トロアスでマケドニア人の幻を見た。
①一行は、ただちにトロアスから船に乗ってマケドニアに向った。
②地図で確認:ローマ帝国内の3つの重要な州(マケドニア、アカヤ、アジア)
*エーゲ海の北-マケドニア-テサロニケ
*エーゲ海の西-アカヤ-コリント
*エーゲ海の東-アジア-エペソ
③この箇所でのパウロの旅程
*トロアス→サモトラケ→ネアポリス→ピリピ
(2)マケドニア人に関する予備的説明
①彼らは、ひとつの人種グループである。
*ギリシア人との連帯意識が強かった。
②ローマの支配に対しては、最後まで抵抗した。
③福音に対しても頑な反応を示したが、一旦信じると、忠実な信者となった。
④マケドニア州でのパウロの訪問地
*ピリピ、テサロニケ、ベレア
(3)ルカは、ピリピ伝道に最多のスペースを割いている。
①第二次と第三次伝道旅行で訪問したどの町の情報よりも多い。
②ピリピ滞在が短期間であったにもかかわらず、情報量が多い。
*ピリピは、パウロが伝道した最初のヨーロッパの都市である。
*福音が、アジア大陸からヨーロッパ大陸に伝わったのである。
*しかし、当時の人たちには、そういう意識はなかった。
*帝国内のアジア州からマケドニア州に福音が伝わったという認識である。
(4)アウトライン
①パウロの旅程(11節)
②ピリピ到着(12節)
③安息日の出来事(13節)
④ルデヤの回心(14~15節)
結論:伝道の三段跳び
ピリピでの伝道(1)について学ぶ。
Ⅰ.パウロの旅程(11節)
1.11節
Act 16:11 そこで、私たちはトロアスから船に乗り、サモトラケに直航して、翌日ネアポリスに着いた。
(1)トロアスからサモトラケへ
①最初の日に、130キロ以上を航海した。
②サモトラケは、トロアスとネアポリスの中間地点にある島である。
(2)サモトラケからネアポリスへ
①翌日、サモトラケからネアポリスまで、さらに130キロ以上を航海した。
②2日間で260キロを移動するのは、超スピードの旅と言える(順風)。
*これが逆風なら、4日間かかっていた。
③ネアポリスは、現代のカヴァラという町である。
*イタリア南部のナポリと混同してはならない。
(3)ネアポリスからピリピへ
①ネアポリスは、ピリピの玄関口に当たる港町である。
②ネアポリスからイグナチオ街道を北西に約15キロ進めば、ピリピに着く。
Ⅱ.ピリピ到着(12節)
1.12節
Act 16:12 それからピリピに行ったが、ここはマケドニヤのこの地方第一の町で、植民都市であった。私たちはこの町に幾日か滞在した。
(1)ピリピの歴史
①前42年に、この近辺で大戦争が起こった。
*アントニウスとオクタビアヌスvs.カシウスとブルータス
*オクタビアヌスは、後のアウグストである。
②この戦争の結果、ローマは共和制から帝政に移行することになった。
(2)「ここは、マケドニアのこの地方第一の町で、植民都市であった」
①マケドニアは、4つの地方に分割されていた。
*マケドニア人が一体化して抵抗することを防ぐための方策である。
*ピリピは、その中のひとつの地方における主要都市であった。
②前42年の戦争の後、ピリピはローマの「植民都市」(コロニー)となった。
*植民都市は、軍事上の拠点となる地に設立された町である。
*まさに小ローマがそこに存在したということである。
*住民にはローマの市民権が与えられた。
*税制上の特権も与えられた。
③新約時代におけるピリピの重要性
*農業生産
*海路と陸路をつなぐ通商上の拠点
*金鉱の存在
*ローマの植民地としての地位
*有名な医学学校の存在
(3)使徒の働きに登場するローマの植民都市
①ピリピだけが植民都市と表記されている。
*これから起こることをよりよく理解するための情報であろう。
②それ以外に、5都市がある。
*ピシデヤのアンテオケ、ルステラ、トロアス
*コリント、トレマイ(プトレマイス)
③植民都市に住むのは、ローマに住むのと実質的に同じである。
(4)パウロの一行は、この町に幾日か滞在した。
①パウロは、安息日になってから行動を開始する。
②先ずユダヤ人に、次に異邦人にという原則を守るためである。
③それまでの数日間、町の調査や生活費稼ぎの仕事をしていたと思われる。
Ⅲ.安息日の出来事(13節)
1.13節
Act 16:13 安息日に、私たちは町の門を出て、祈り場があると思われた川岸に行き、そこに腰をおろして、集まった女たちに話した。
(1)通常は、パウロは安息日に会堂を訪問して、そこで福音を語っていた。
①しかし、ピリピには会堂はなかった。
*これほどのサイズの町に会堂がないのは驚きである。
②ユダヤ人の成人男子が10人もいなかったからである。
(2)そこで4人は、祈り場を探した。
①会堂がない場合、川岸に集まり、会堂での礼拝と同じことをする習慣があ
った。
②川岸を選ぶ理由は、川が洗礼槽(ミクベ)の役割を果たすからである。
*ユダヤ教のきよめの儀式を行うためである。
③一行は、町から約2.5キロ離れたガンギテス川の川岸に出かけた。
④「祈りの場」とは、小さな建物だった可能性もある。
*ユダヤ教では、「祈りの場」とは会堂のことである。
(3)男はいなくて、集まっていたのは、女たちだけであった。
①女たちの人数は、記されていない。
②男はいなかったが、パウロは構わずに彼女たちに福音を語った。
③かつてのパリサイ人パウロの姿はない。
④パリサイ人たちはこう祈っていた。
*「私は異邦人ではなく、奴隷でもなく、女でもないことを感謝します」
Ⅳ.ルデヤの回心(14~15節)
1.14節
Act 16:14 テアテラ市の紫布の商人で、神を敬う、ルデヤという女が聞いていたが、主は彼女の心を開いて、パウロの語る事に心を留めるようにされた。
(1)聴衆の中に、ルデヤという女がいた。
①テアテラ市出身のビジネスパーソンである。
②テアテラ市はアジア州の町で、染色業で有名であった。
③特に、紫布が重要な産物であった。
*紫布は高価な布であった。
*ローマ時代、紫布を着用してよいのは特定の階級の者だけであった。
④ルデヤの顧客は、特権階級の者たちだけであった。
⑤彼女は、神を敬う異邦人であった。
*まだ新約聖書の教会(キリストの御からだ)の一員にはなっていない。
⑥彼女は、パウロのメッセージに耳を傾けた。
(2)「主は彼女の心を開いて、パウロの語る事に心を留めるようにされた」
①彼女の心を開いたのは、主である。
*彼女の心は、すでに用意されていた。
②伝道の主体は、復活のキリストである。
2.15節
Act 16:15
そして、彼女も、またその家族もバプテスマを受けたとき、彼女は、「私を主に忠実な者とお思いでしたら、どうか、私の家に来てお泊まりください」と言って頼み、強いてそうさせた。
そして、彼女も、またその家族もバプテスマを受けたとき、彼女は、「私を主に忠実な者とお思いでしたら、どうか、私の家に来てお泊まりください」と言って頼み、強いてそうさせた。
(1)その日の内に、彼女は洗礼を受けた。
①回心の直後に洗礼を受けた。
*これは、水に浸かる洗礼である。
②彼女の家族も洗礼を受けた。
*主が心を開いたのは、ルデヤだけでなく家族全員であった。
③家族とは、「オイコス」、英語で「household」である。
*「オイコス」は、しもべたちも含む広い概念である。
*彼女が結婚していたかどうかは、分からない。
④ルデヤの家族でない女たちがどのように反応したかは、書かれていない。
(2)彼女は、パウロによって導かれたヨーロッパにおける最初の信者となった。
①彼女は、パウロの一行を自分の家に招待した。
*4人の客をもてなすことができるほどの大きな家であった。
②これは、その家をピリピでの伝道の拠点にするようにという提案である。
*ローマ世界では、宿泊施設は少なく、あったとしても不快なものであった。
*初期のクリスチャンたちは、巡回伝道者を自分の家に迎えた。
③彼女は、パウロの一行を説得した。
④これは、彼女の信仰が本物であることを示す愛の行為である。
*彼女は信仰によって救われたので、結果としての行為が伴ったのである。
結論:伝道の三段跳び
1.ホップ:福音は、すべての人に救いをもたらす神の力である。
(1)ルカは、ピリピで信者となった3人の人たちを描いている。
①ルデヤ、女奴隷、看守
(2)彼らは、身分も境遇も大いに異なるが、同じ福音によって救われた。
(3)ロマ1:16
Rom 1:16 私は福音を恥とは思いません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、信じるすべての人にとって、救いを得させる神の力です。
2.ステップ:福音を聞く人の心を開くのは、主である。
(1)使徒の働きは、生けるキリストの働きの記録である。
(2)パウロは主から委ねられた福音を語ったので、主が働かれた。
①パウロは、異なった福音を語ったわけではない。
(ILL)宣教学の教授が、使16:14を引用した。
Act 16:14 テアテラ市の紫布の商人で、神を敬う、ルデヤという女が聞いていたが、主は彼女の心を開いて、パウロの語る事に心を留めるようにされた。
3.ジャンプ:福音を受け入れた人は、天国の市民権を持つようになる。
(1)ピリ3:19~20
Php 3:19 彼らの最後は滅びです。彼らの神は彼らの欲望であり、彼らの栄光は彼ら自身の恥なのです。彼らの思いは地上のことだけです。
Php 3:20 けれども、私たちの国籍は天にあります。そこから主イエス・キリストが救い主としておいでになるのを、私たちは待ち望んでいます。
(2)ピリピの住民たちの誇りは、ローマの市民権である。
①彼らは、植民地であるピリピに住みながら、ローマの市民権を持っていた。
②彼らの思いは、地上のことだけである。
(2)クリスチャンの誇りは、天国の市民権である。
①地上に住みながら、天国の市民権を持っている。
②クリスチャンにとっては、地上は天国の植民地である。
③私たちは主イエス・キリストが再臨されるのを待ち望んでいる。
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