使徒の働き(39)―アンテオケ教会の誕生と成長―

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アンテオケ教会の誕生と成長について学ぶ。

「アンテオケ教会の誕生と成長」

使徒 11:19~26

1.はじめに

(1)この箇所は、使 8:4 とつながっている。

Act 8:4 他方、散らされた人たちは、みことばを宣べながら、巡り歩いた。

①この後、ピリポはサマリヤの町で伝道した。

②それ以外の人たちがどうなったのかという話が、ここから始まる。

 

(2)これまでの教会成長の過程

①最初は、ユダヤ人信者だけで構成されていた(2 章)。

②次にサマリヤ人信者が加えられた(8 章)。

③最後に、異邦人信者が加えられた(10 章)。

とは言え、カイザリヤの信者は少数であった。

*もし大量の異邦人信者が教会に加えられたら、どうなるか。

*ユダヤ人信者と異邦人信者の人口バランスが崩れる。

*ユダヤ人伝道の将来が心配になる。

④アンテオケ教会の誕生と成長は、神によるものである。

 

2.アウトライン

(1)アンテオケでの異邦人伝道(19~21 節)

(2)バルナバの派遣(22~24 節)

(3)サウロの再登場(25~26 節)

 

結論:クリスチャンという呼び名

 

アンテオケ教会の誕生と成長について学ぶ。

I.アンテオケでの異邦人伝道(19~21 節)

1.19 節

Act 11:19 さて、ステパノのことから起こった迫害によって散らされた人々は、フェニキヤ、キプロス、アンテオケまでも進んで行ったが、ユダヤ人以外の者にはだれにも、みことばを語らなかった。

(1)ステパノの死をきっかけに、エルサレムの教会に対する大規模な迫害が起こった。

①ヘレニストのユダヤ人信者たちは、エルサレムから逃避した。

②彼らは、ディアスポラのユダヤ人共同体が存在する町々に散って行った。

 

(2)エルサレムからアンテオケまでのルート

①フェニキヤ(イスラエルの北、地中海岸沿いの地域。現在のレバノン)

②キプロス(イスラエルと小アジアの間に浮かぶ島。バルナバの故郷)

③ダマスコ(すでに取り上げたので、ここには出て来ない)

④アンテオケ(シリアのアンテオケ。1939 年にトルコ領に編入された)

*エルサレムから約 500 キロの距離にある。

 

(3)彼らは、ユダヤ人にしか「みことば」(福音)を語らなかった。

①これは、カイザリヤの出来事について知らなかったときのことである。

②異邦人伝道は、彼らの発想の中にはなかった。

③それゆえ、ユダヤ人伝道だけを行っていた。

*ディアスポラのユダヤ人共同体を訪問しての伝道である。

 

2. 20 節

Act 11:20 ところが、その中にキプロス人とクレネ人が幾人かいて、アンテオケに来てからはギリシヤ人にも語りかけ、主イエスのことを宣べ伝えた。

(1)アンテオケという町

①古代世界には、同名の町が 16 もあった。

②シリアのアンテオケが最も大きく、最も有名であった。

*シリア属州の首都で、ローマ、アレキサンドリアに次ぐ 3 番目の都市。

*人口は 50 万人前後。

*この町のユダヤ人人口は、約 14 パーセント。

③交通の要衝の地(東と西を結ぶ地)

④罪と偶像礼拝で有名な町

*アシュタロテ礼拝と神殿娼婦

 

(2)アンテオケに来てから、異邦人伝道を開始した人たちがいた。

①キプロス人(キプロス島出身のユダヤ人)

②クレネ人(北アフリカのクレネ出身のユダヤ人)

③彼らは、全員ヘレニストのユダヤ人である(ディアスポラのユダヤ人)。

④彼らの行動は、画期的なものであった。

 

(3)伝道の対象は、ギリシア人であった。

①彼らは、神を恐れる異邦人であったと思われる。

②彼らは、コルネリオと同じような霊的状態にあった。

*彼らには、福音のメッセージを理解する素地があった。

 

(4)彼らは、「主イエスのことを宣べ伝えた」。

①ユダヤ人に対してはイエスがメシアであることを強調する。

②しかし、異邦人に対してはイエスが主であることを強調する。

 

3. 21 節

Act 11:21 そして、主の御手が彼らとともにあったので、大ぜいの人が信じて主に立ち返った。

(1)「主の御手が彼らとともにあった」

①これは、旧約聖書的表現である。

②神が異邦人伝道に同意されたという意味である。

 

(2)「大ぜいの人が信じて主に立ち返った」

①信じるということと主に立ち返るということを、別の行動と考える必要はない。

②この 2 つのことは、同時に起こっている。

 

(3)「主」(キュリオス)という言葉

①「主の御手が彼らとともにあった」の「主」は、神を指す。

②「主に立ち返った」の「主」は、キリストを指す。

③初期の頃から、信者たちはイエスの神性を信じていた。

 

II.バルナバの派遣(22~24 節)

1. 22 節

Act 11:22 この知らせが、エルサレムにある教会に聞こえたので、彼らはバルナバをアンテオケに派遣した。

(1)エルサレム教会は、すぐに反応した。

①多くの異邦人信者が教会に加えられると、教会内の人口バランスが崩れる。

②大混乱に陥る危険性があった。

③そこで母教会は、代表としてバルナバを派遣した。

*レビ人、ディアスポラの地出身のヘレニストのユダヤ人、使徒

*バルナバは、非常に信頼されていた。

 

2. 23~24 節

Act 11:23 彼はそこに到着したとき、神の恵みを見て喜び、みなが心を堅く保って、常に主にとどまっているようにと励ました。

Act 11:24 彼はりっぱな人物で、聖霊と信仰に満ちている人であった。こうして、大ぜいの人が主に導かれた。

(1)彼は、アンテオケでの霊的覚醒は神からのものであると確信した。

①異邦人の救いは、神の恵みによることである。

②神の恵みは、喜びの源である。

 

(2)慰めの子バルナバは、兄弟たちを励ました。

(新改訳)
「みなが心を堅く保って、常に主にとどまっているようにと励ました」

(新改訳 2017)
「心を堅く保っていつも主にとどまっているようにと、皆を励ました」

(新共同訳)
「固い決意をもって主から離れることのないようにと、皆に勧めた」

(口語訳)
「主に対する信仰を揺るがない心で持ちつづけるようにと、みんなの者を励ました」

 

①感動的な霊的体験の後に、空白がやって来る。

②異教的な町に住む者には、誘惑がやって来る。

 

(3)バルナバの描写

①立派な人物であった。

②聖霊に満ちていた。

③信仰に満ちていた。

 

(4)「こうして、大ぜいの人が主に導かれた」

「こうして、大勢の人たちが主に導かれた」(新改訳 2017)

「こうして、多くの人が主へと導かれた」(新共同訳)

「こうして主に加わる人々が、大ぜいになった」(口語訳)

「ここに多くの人々、主に加はりたり」(文語訳)

「and much people was added unto the Lord.」(ASV)

 

①教会の人数が増加したということ。

*ユダヤ人信者と異邦人信者が混在していた。

②バルナバはそのままアンテオケに留まり、2 年ほど奉仕を続けたと思われる。

③自分ひとりの手に負えない段階になったので、サウロをそこに招くことにした。

*サウロは、ユダヤ人伝道と異邦人伝道を行うためには、最適の人物である。

 

III.サウロの再登場(25~26 節)

1. 25~26 節 a

Act 11:25 バルナバはサウロを捜しにタルソへ行き、

Act 11:26a 彼に会って、アンテオケに連れて来た。

(1)サウロは、タルソに住んでいた。

①使 9:30 の出来事は、約 5 年前の出来事である。

Act 9:30 兄弟たちはそれと知って、彼をカイザリヤに連れて下り、タルソへ送り出した。

②サウロは、タルソ近辺で活発に伝道していたはずである。

③さらに、「シリヤ、キリキヤの地方」でも伝道していた(ガラ 1:21)。

④サウロは、多くのものを失いながら、伝道していた。

⑤ピリ 3:8~9

Php 3:8 それどころか、私の主であるキリスト・イエスを知っていることのすばらしさのゆえに、いっさいのことを損と思っています。私はキリストのためにすべてのものを捨てて、それらをちりあくたと思っています。それは、私には、キリストを得、また、

Php 3:9 キリストの中にある者と認められ、律法による自分の義ではなくて、キリストを信じる信仰による義、すなわち、信仰に基づいて、神から与えられる義を持つことができる、という望みがあるからです。

 

(2)バルナバは、サウロを使徒たちに紹介したことがあった。

①彼は、サウロこそアンテオケ教会での奉仕にふさわしい人物だと確信した。

②そこで、約 160 キロを旅して、サウロを探し出した。

③そしてサウロをアンテオケに連れて来た。

 

2. 26 節 b

Act 11:26b そして、まる一年の間、彼らは教会に集まり、大ぜいの人たちを教えた。弟子たちは、アンテオケで初めて、キリスト者と呼ばれるようになった。

(1)バルナバとサウロによる弟子訓練は、まる一年の間続いた。

①多くのユダヤ人信者と異邦人信者が、訓練を受けた。

②この教会における異邦人信者の数は、少なくても3分の1を越えたと思われる。

 

(2)「弟子たちは、アンテオケで初めて、キリスト者と呼ばれるようになった」

①「キリスト者」=「クリスチャン」=「クリスティアノス」(ギリシア語)

②これは、外部の者が信者に付けたあだ名だと思われる。

③異邦人信者は、「クリスチャン」と呼ばれた。

④ユダヤ人信者は、「ナザレ人」と呼ばれた(使 24:5)。

 

結論:クリスチャンという呼び名

(1)ユダヤ人信者は、いくつかの理由で、自分のことをクリスチャンとは呼ばない。

①キリスト教会がユダヤ人を迫害した歴史を考えると、心情的に受け入れられない。

②ユダヤ人伝道のためには、クリスチャンという呼び名を避けた方がよい。

③元々、クリスチャンという呼称には軽蔑の意味が込められている。

 

(2)ユダヤ人信者の呼称

①ナザレ人(使 24:5)

②この道の者(使 9:2)

③弟子(使 6:1~2)

④信者(使 4:32)

⑤ジューズ・フォー・ジーザス

⑥メシアニックジュー

⑦メシアニック

⑧ユダヤ人信者

⑨ユダヤ人クリスチャン

⑩ヘブル人クリスチャン

 

(3)メシアニック(ヘブル語)=クリスチャン(ギリシア語)

①どの呼び名であっても、キリストを信じた人は神の家族である。

②共通事項

*私たちは、キリストを通して神と和解した。

*私たちは、聖霊を受けている。聖霊の油注ぎ。

*私たちの内に、キリストが生きておられる。

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