十字架のことば(4)—第3のことば:愛のことば—

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第3のことば:愛のことばの意味について考えます。

十字架のことば(4)

―第3のことば:愛のことば―

ヨハ19:25~27

  1.はじめに

(1)「十字架のことば」には7つある。

  ①前半:午前9時から正午までの間の3時間

    *3つのことば

    *他人に関するものである。

②後半:正午から午後3時までの間の3時間

    *4つのことば

    *自分に関するものである。

(2)第1のことばは、赦しの祈りである。

「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」

(ルカ23:34)

(3)第2のことばは、救いを約束することばである。

「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいま

す」 (ルカ23:43)

(4)第3のことばは、愛のことばである。

「女の方。そこに、あなたの息子がいます」 (ヨハ19:26)

「そこに、あなたの母がいます」 (ヨハ19:27)

  2.アウトライン

    (1)愛の力

    (2)愛の飛躍

  3.結論:このことばの現代的意味

このメッセージは、第3のことばの意味について考えるものである。

Ⅰ.愛の力

   1.憎しみの中で輝く愛

兵士たちはこのようなことをしたが、イエスの十字架のそばには、イエスの母と母

の姉妹と、クロパの妻のマリヤとマグダラのマリヤが立っていた」 (25節)

    (1)兵士たちは、4人いた。

      ①彼らは、マニュアル通りに、イエスを十字架につけた。

      ②彼らは、慣例通りに、イエスの着物を4分した。

      ③ここには、無関心、残酷さ、利己心、貪欲が渦巻いている。

    (2)十字架のそばには、婦人たちが4人いた。

①イエスの母(マリア)、母の姉妹(恐らくサロメであろう)、

クロパの妻のマリヤ、マグダラのマリヤ

      ②弟子たちは逃げていたが、彼女たちは、十字架のイエスに寄り添っていた。

      ③受刑者の親族、友人は、立ち会うことを許されたか?

      ③愛は、危険を冒し、犠牲を払う。

  2.痛みの中で輝く愛

    (1)子を失くす母の痛み

      ①人間が感じる最大の痛みであろう。

      ②幼子の死、友人に囲まれての死には、痛みを和らげる要因がある。

      ③しかし、人生の最盛期の死には、それがない。

      ④しかもイエスは、敵に囲まれて死に臨もうとしている。

      ⑤シメオンがマリアに語った預言が成就した。

      「ご覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人が倒れ、また、立ち上がる

ために定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています。剣が

あなたの心さえも刺し貫くでしょう。それは多くの人の心の思いが現れるた

めです」(ルカ2:34~35)

    (2)ラケルの嘆き

      ①ラケルは、ユダヤ人の母親の象徴である。

      ②ベツレヘムで2歳以下の男の子が殺された時、ラケルは嘆き悲しんだ。

      「ラマで声がする。泣き、そして嘆き叫ぶ声。ラケルがその子らのために泣

いている。ラケルは慰められることを拒んだ。子らがもういないからだ」(マ

タ2:18)

③これは、エレ31:15からの引用である。

  *バビロン捕囚に引かれていく我が子を見て、母親が嘆いている。

④マリアの嘆きは、イスラエルの母たちの嘆きの集大成である。

    (3)母の痛みを見る息子の痛み

      ①イエスの肉体的苦しみは、筆舌に尽くし難い。

      ②しかし、イエスにとっては、母の痛みを見ることの方がより苦しい。

      ③精神的痛みのゆえに、肉体的痛みを忘れるほどであった。

  3.使命の中で輝く愛

    (1)この時、宇宙の歴史の中で、最大の出来事が起こっていた。

      ①アダムによって堕落した人類の罪の贖いがなされようとしていた。

      ②アダムの堕落によって呪われた宇宙が、再創造に向かおうとしていた。

      ③イエスは、宇宙大の使命を実行しておられた。

    (2)しかしイエスは、自分に最も身近な人のことを忘れてはいなかった。

      ①この時マリアは、40代半ばから後半であろう。

      ②この年代の婦人は、子どもの世話になるしかない。

      ③しかし、イエスの弟たちはガリラヤにおり、まだ信者ではない。

      ④そこでイエスは、母と弟子を結びつける。

    (3)第3のことば

    「イエスは、母と、そばに立っている愛する弟子とを見て、母に『女の方。そこ

に、あなたの息子がいます』と言われた。それからその弟子に『そこに、あなた

の母がいます』と言われた。その時から、この弟子は彼女を自分の家に引き取っ

た」 (26~27節)

  ①「愛する弟子」とは、ヨハネのことである。

  ②12弟子の中では、ヨハネだけが十字架のそばにいた。

  ③イエスは、母マリアを弟子ヨハネに委ねた。

    *これは証人たちの前で語られた遺言であり、法的効力がある。

    *母マリアと弟子ヨハネの間に親子関係が成立した。

  ④ヨハネにとっては、大変な特権である。

    *ユダヤ的文脈では、弟子たちは師を「父」と呼ぶことがあった。

    *師の母を自分の母とすることは、師から栄誉を受けたことになる。

  ⑤「この弟子は彼女を自分の家に引き取った」

     *ヨハネはエルサレムに住まいを持っていたのであろう。

    *マリアが死ぬまで、エルサレムに留まった。

Ⅱ.愛の飛躍

   1.マリアとイエスの関係の進展

    (1)イエスが公生涯に入る前

      ①ルカ1:35 受胎告知

      ②ルカ2:19 羊飼いたちの言葉を心に納めて、思いを巡らしていた。

      ③ルカ2:34~35 剣が心を刺し貫くと言われた。

      ④ルカ2:48~51 イエスが12歳の時、エルサレムに上った。

    (2)イエスが公生涯に入って以降

      ①ヨハ2:4

      「すると、イエスは母に言われた。『あなたはわたしと何の関係があるので

しょう。女の方。わたしの時はまだ来ていません』」

  「女の方」とは、敬意を込めた言葉である。

  *イエスとマリアの親子関係に制限が加わった。

②ルカ8:19~21

「イエスのところに母と兄弟たちが来たが、群衆のためにそばへ近寄れなか

った。それでイエスに、『あなたのお母さんと兄弟たちが、あなたに会おう

として、外に立っています』という知らせがあった。ところが、イエスは人々

にこう答えられた。『わたしの母、わたしの兄弟たちとは、神のことばを聞

いて行う人たちです』」

③ヨハ19:25~27

  *再び、「女の方」という呼びかけが使われた。

  *イエスの遺言は、マリアとの親子関係の断ち切りであった。

  2.血によるつながりから、愛によるつながりへ

    (1)イエスが復活して以降

      ①使1:14

      「この人たちは、婦人たちやイエスの母マリヤ、およびイエスの兄弟たちと

ともに、みな心を合わせ、祈りに専念していた」

  *マリアは信者の群れの中の一員となっている。

  *これ以降、マリアが聖書に登場することはない。

  *彼女は、その信仰のゆえに称賛されるべきであるが、崇拝されるべき

ではない。

    (2)血によるつながりから、信仰によるつながりへ

      ①マリアはイエスを、自分の息子ではなく、主(救い主)と認識した。

結論:このことばの現代的意味

1. 私たちへの教訓

  (1)責務vs家族への愛

2.新しい関係の認識

  (1)血によるつながりではない関係

  (2)愛によるつながりという関係

  (3)神を父とする新しい生き方

  (4)ヨハ1:12

  「しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の

子どもとされる特権をお与えになった」

(5)すべては変わっても、この親子関係は変わらない。

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