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使徒の働き(15)―サンヘドリンの前に立つペテロとヨハネ(1)―
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サンヘドリンでの裁判の内容について学ぶ。
「サンヘドリンの前に立つペテロとヨハネ(1)」
使徒4:1~12
1.はじめに
(1) 初代教会は、暖かさと畏怖の念が共存する群れであった。
①「使徒たちによって多くの不思議としるしが行われた」(2:43)
②そのひとつの例が、生まれつき足の不自由な人の癒しである。
③ペテロは、集まって来た群衆に向ってメッセージを語った。
*この男の癒しは、復活したイエスの力によるものである。
*イスラエルの民族的救いは、メシアの再臨とメシア的王国をもたらす。
④ペテロのメッセージの途中に邪魔が入った。
⑤ここから、ユダヤ教の権威との衝突が始まる。
(2)メッセージのアウトライン
②裁判(5~6節)
③弁明(7~12節)
(2)救いに至る唯一の道
サンヘドリンでの裁判の内容について学ぶ。
Ⅰ.逮捕(1~4節)
1.1節
Act 4:1 彼らが民に話していると、祭司たち、宮の守衛長、またサドカイ人たちがやって来たが、
(1)初代教会への最初の迫害が始まろうとしている。
①迫害は、宗教的指導者たちからやって来た。
(2)ルカは、3つのグループを上げている。
①祭司たち
*ヨセフスによれば、当時、約2万人の祭司たちがいた。
*24の組に分かれていたので、24人の祭司長たちがいた。
*ここので「祭司たち」とは、何人かの祭司長たちであろう。
②宮の守衛長
*ヘブル語で「イシュ・ハル・ハバイアット」(神殿の丘の男)という。
*神殿警察の長のような役割を果たした。
*神殿域では、大祭司に次ぐ権威を有していた。
③サドカイ人たち
*祭司たちも宮の守衛長も、サドカイ派に属していた。
*ここでの「サドカイ人たち」とは、それ以外のサドカイ派の人たちである。
*サドカイ派は、祭司たちと貴族階級の者たちから成っていた。
*政治的には、親ローマである。一般大衆の支持はなかった。
*神学的には、モーセの五書しか神のことばとして認めていなかった。
・パリサイ派の口伝律法に強く反発した。
・天使や悪霊の存在を否定した。
・魂の永遠性を否定し、肉体の復活も否定した。
(3)W. Graham Scroggie (1877-1958)(英国人牧師、神学者)のコメント
①祭司たちは、宗教的非寛容の象徴である。
②宮の守衛長は、政治的敵意の象徴である。
③サドカイ人たちは、合理主義的不信仰の象徴である。
2.2~3節
Act 4:2 この人たちは、ペテロとヨハネが民を教え、イエスのことを例にあげて死者の復活を宣べ伝えているのに、困り果て、
Act 4:3 彼らに手をかけて捕らえた。そして翌日まで留置することにした。すでに夕方だったからである。
(1)彼らが困り果てた理由
①使徒たちが神殿域で教えていることに反発した。
*無学な者たちがそこで教えることは許さない。
②使徒たちが死者の復活を宣べ伝えていることに反発した。
*サドカイ派の神学と対立する。
(2)逮捕の理由
①すでに夕方であった。ユダヤの法では、日没後の裁判は禁止されていた。
*イエスの裁判では、それが無視された。
②サンヘドリン(ユダヤ議会)は、翌朝裁判を行うことにした。
③ペテロとヨハネ(恐らく癒された男も)は、神殿内の牢獄に留置された。
3.4節
Act 4:4 しかし、みことばを聞いた人々が大ぜい信じ、男の数が五千人ほどになった。
(1)信じた人の数は、男が5000人ほどになった。
①すでに信じていた3000人の弟子たちを含む数だと主張する学者もいる。
②自然に読めば、この日信じた男の数が5000人と読める。
③「弟子の数」という言葉がない。
(2)伝える人が投獄されても、福音は縛られていない。
①これが、使徒の働きを貫くテーマである。
②ペテロとヨハネは投獄されたが、神のことばは生きて働いていた。
Ⅱ.裁判(5~6節)
1.5節
Act 4:5 翌日、民の指導者、長老、学者たちは、エルサレムに集まった。
(1)使徒の働きには、サンヘドリン(最高裁)での裁判が4回出て来る。
①ここではペテロとヨハネが裁かれている。
②使5:27では、使徒たち全員が裁かれている。
③使6:12では、ステパノが裁かれている。
④使22:30では、パウロが裁かれている。
(2)サンヘドリンは、バビロン捕囚からの帰還後に設立された。
①イスラエルの最高裁であり、国会である。
②議員数は大祭司を含めて71名であった。
*サンヘドリンは、2つの政党から成る国会だと思えばよい。
③サンヘドリンの権威は、ローマ帝国とヘロデ王朝の王の支配下に置かれた。
④紀元1世紀のサンヘドリンは、ローマ帝国により大きな権威を認められていた。
*ただし、死刑宣告は認められていなかった。
*唯一の例外は、異邦人が隔ての中垣を超えて婦人の庭に侵入した場合。
(3)ルカは、サンヘドリンを構成する3組の人たちを上げている。
①民の指導者たち:24人の祭司長たち
②長老たち:パリサイ派の重鎮たち
③学者たち:口伝律法の専門家たち(パリサイ人とサドカイ人)
*彼らは、イエスの教えに強く反発した。
(4)開廷のためには、最低23名の議員の出席が必要とされた。
①今回の場合も、71名の議員が出席したと考える必要はない。
2.6節
Act 4:6 大祭司アンナス、カヤパ、ヨハネ、アレキサンデル、そのほか大祭司の一族もみな出席した。
(1)大祭司がイスラエルで最も大きな権威を有していた。
①この年の大祭司はカヤパであったが、黒幕はアンナスである。
②アンナスは、前6年~紀元15年まで大祭司であった(21年間)。
③しかし、職を離れてからも、約50年間にわたって権威を振った。
*5人の息子たち、1人の孫、1人の義理の息子が大祭司になった。
*イエスの予備審問は、アンナスが行った。
④神殿での商売をパリサイ人たちは、「アンナスの息子たちのバザール」と呼んだ。
*宮清めをしたイエスは、アンナスの一家の敵となった。
(2)ヨハネとアレキサンデルについては、ここ以外に情報がない。
①そのほか大祭司の一族もみな出席した。
3.7節
Act 4:7 彼らは使徒たちを真ん中に立たせて、「あなたがたは何の権威によって、また、だれの名によってこんなことをしたのか」と尋問しだした。
(1)この言葉をもって裁判が始まった。
①ペテロとヨハネの行為は、権威への挑戦である。
*つまり、サンヘドリンへの挑戦である。
②ペテロは、ユダヤ教の指導者たちに語りかける機会を初めて得た。
Ⅲ.弁明(7~12節)
1.8節a
Act 4:8a そのとき、ペテロは聖霊に満たされて、彼らに言った。
(1)イエスの約束の成就(ルカ12:11~12)
Luk 12:11 また、人々があなたがたを、会堂や役人や権力者などのところに連れて行ったとき、何をどう弁明しようか、何を言おうかと心配するには及びません。
Luk 12:12 言うべきことは、そのときに聖霊が教えてくださるからです。」
2.8b~10節
Act 4:8b 「民の指導者たち、ならびに長老の方々。
Act 4:9 私たちがきょう取り調べられているのが、病人に行った良いわざについてであり、その人が何によっていやされたか、ということのためであるなら、
Act 4:10 皆さんも、またイスラエルのすべての人々も、よく知ってください。この人が直って、あなたがたの前に立っているのは、あなたがたが十字架につけ、神が死者の中からよみがえらせたナザレ人イエス・キリストの御名によるのです。
(1)尋問する側とされる側の立場が瞬時に逆転する。
①あなたがた(指導者たち)は、この男が癒されたことを喜んでいない。
②この男は何年も門の前で座っていたが、あなたがたは癒すことができなかった。
③この男が直ったのは、ナザレ人イエス・キリストの御名による。
(2)そのイエス・キリストを、あなたがたは十字架に付けた。
①サンヘドリンの議員たちは、ほんの数週間前にイエスを異邦人に渡した。
②その記憶は、鮮明に残っている。
③神は、そのイエスを死者の中からよみがえらせた。
3.11節
Act 4:11 『あなたがた家を建てる者たちに捨てられた石が、礎の石となった』というのはこの方のことです。
(1)詩118:22の引用によって、弁明を補強している。
①ユダヤ人たちは、この詩篇をよく知っていた。
②愚かな建築家たちとは、ユダヤ教の指導者たちである。
③彼らが捨てた石とは、イエス・キリストである。
④神は、イエス・キリストを救いの石とされた。
4.12節
Act 4:12 この方以外には、だれによっても救いはありません。天の下でこの御名のほかに、私たちが救われるべき名は人に与えられていないからです。」
(1)ユダヤ人にとっては、これ以上の大胆な宣言はない。
①数週間前にイエスを裏切ったペテロが、この宣言をしている。
結論:
1.詩篇118篇
(1)詩篇113~118篇は、「ハレルヤ詩篇」と呼ばれる。
(2)特に、巡礼祭(過越の祭り、五旬節の祭り、仮庵の祭り)で歌われた。
(3)ペテロが引用した詩118:22は、すべてのユダヤ人の記憶に留まっていた。
(4)特に重要なのは、詩118:26である。
Psa 118:26a 【主】の御名によって来る人に、祝福があるように。
(5)これは、ユダヤ人たちがメシアを迎える時の祈りである。
(6)蛇足であるが、詩118:29はヘブル語賛美「ホドゥ・ラドナイ」の歌詞である。
Psa 118:29 【主】に感謝せよ。主はまことにいつくしみ深い。/その恵みはとこしえまで。
2.救いに至る唯一の道
(1)使4:12
Act 4:12 この方以外には、だれによっても救いはありません。天の下でこの御名のほかに、私たちが救われるべき名は人に与えられていないからです。」
(2)ペテロは、誰に向ってこの宣言をしたのか。
①そこにいたのは、当時の正統派のユダヤ人たちである。
②その彼らに向って、人はユダヤ教によってではなく、イエス・キリストによっ
てのみ救われると宣言した。
(3)これは、イエスの宣言と合致している。
Joh 14:6 イエスは彼に言われた。「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです。わたしを通してでなければ、だれひとり父のみもとに来ることはありません。
(4)使徒の働き全体を通して、使徒たちは誰に向ってこの宣言をしたのか。
①偶像礼拝
②魔術(占い)
③ギリシア哲学
④ギリシア・ローマの神々や女神たち
⑤ユダヤ教
(5)もしこれが真理でないなら、聖書のメッセージは茶番である。
①使徒たちは、このために迫害に会い、殉教の死を遂げた。
②イエスが救いに至る「もう一つの道」を提供しただけなら、イエスの十字架の
死は茶番である。
(6)ユダヤ人も異邦人も、すべての人がイエス・キリストを通して救われる。
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