使徒の働き(8)―ペテロのメッセージ(1)―

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ペテロのメッセージのポイントⅠについて学ぶ。

「ペテロのメッセージ(1)」

使徒2:14~21

1.はじめに

(1)前回の内容の確認

①巡礼者たちの驚き(5~8節)

②巡礼者たちの故郷(9~11節)

③巡礼者たちの反応(12~13節)

 

(2)ここからペテロのメッセージが始まる(14~40節)。

①ペテロのメッセージのテーマは一つである。「イエスは主でありメシアである」

*使2:36

Act 2:36 ですから、イスラエルのすべての人々は、このことをはっきりと知らなければなりません。すなわち、神が、今や主ともキリストともされたこのイエスを、あなたがたは十字架につけたのです。」

②ペテロは、ユダヤ人のために天の御国の扉を開こうとしている。

*マタ16:19

Mat 16:19 わたしは、あなたに天の御国のかぎを上げます。何でもあなたが地上でつなぐなら、それは天においてもつながれており、あなたが地上で解くなら、それは天においても解かれています。」

 

(3)ペテロのメッセージのアウトライン

①この出来事は、預言の成就である(15~21節)。

②イエスは、メシアである(22~32節)。

③昇天したメシアであるイエスは、聖霊を注がれた(33~36節)。

④適用(37~40節)

 

(4)アウトライン

①この出来事は、預言の成就である(15~21節)。

*あざける者たちへの反論(14~15節)

*あざける者たちへの説明(16~21節)

 

結論:

(1)新約聖書における旧約聖書の引用法

(2)変えられた弟子たち

 

ペテロのメッセージのポイントⅠについて学ぶ。

Ⅰ.この出来事は、預言の成就である(15~21節)

1.あざける者たちへの反論(14~15節)

(1)14節

Act 2:14 そこで、ペテロは十一人とともに立って、声を張り上げ、人々にはっきりとこう言った。「ユダヤの人々、ならびにエルサレムに住むすべての人々。あなたがたに知っていただきたいことがあります。どうか、私のことばに耳を貸してください。

①ペテロは、12使徒のスポークスマンとして語っている。

*12使徒がともに立っている。

*その中には、マッテヤも含まれている。

*主を3度も拒んだ臆病なペテロではなく、勇敢なペテロが語っている。

②聴衆は、ユダヤ人である。

「ユダヤの人々」とは、ユダヤに住む人々である。

「エルサレムに住むすべての人々」とは、ディアスポラの地からの巡礼者。

「どうか、私のことばに耳を貸してください」

*人々は、異言についての説明を聞きたがっている。

*ペテロはこの呼びかけによって、聴衆の心を掴むことができた。

 

(2)15節

Act 2:15 今は朝の九時ですから、あなたがたの思っているようにこの人たちは酔っているのではありません。

「この人たち」とは、12使徒のことである。

「この人たち」が酔っている可能性は、全くない。

③当時のユダヤ人の習慣では、ぶどう酒を飲むのは夕刻である。

④朝の9時は、日に3度ある祈りと犠牲を捧げる時間の最初である。

⑤祭りの期間、信仰熱心なユダヤ人たちは午前10時までは飲食を控えた。

 

Ⅱ.あざける者たちへの説明(16~21節)

1.ヨエルの預言の成就(16節)

Act 2:16 これは、預言者ヨエルによって語られた事です。

(1)「これ」とは、12使徒が異言を話している(酔ったようになっている)こと。

①この出来事は、ヨエルの預言の成就という視点から解釈する必要がある。

②ペテロは、ヨエ2:28~32を引用する。

③ヘブル語聖書では、ヨエ3:1~5である。

*(新共同訳)は、ヘブル語聖書と同じ区分を採用している。

 

(2)ペテロは、適用のために若干の変更を加えながら引用している。

①「その後」(ヨエル書)という言葉が、「終わりの日」に変更されている。

②ペテロは、終末論的ニュアンスを聴衆に伝えようとしている。

③預言書では、「終わりの日」という言葉は、「【主】の日」(大患難時代)とそれ

に続く状況を連想させるものである。

*イザ2:2、ミカ4:1

④ペテロは、今は「終わりの日」であるという認識を持った。

*ヘブ1:2

Heb 1:2 この終わりの時には、御子によって、私たちに語られました。神は、御子を万物の相続者とし、また御子によって世界を造られました。

*御子の到来とともに「終わりの時」が始まった。

⑤ユダヤ教のラビたちは、メシア時代のことを「終わりの時」と表現していた。

⑥初代教会において、ペテロとヘブル書の著者は、同じ認識を共有していた。

 

2.ヨエルの預言の3区分(17~21節)

(1)聖霊の傾注(17~18節)

Act 2:17 『神は言われる。/終わりの日に、わたしの霊をすべての人に注ぐ。/すると、あなたがたの息子や娘は預言し、/青年は幻を見、/老人は夢を見る。

Act 2:18 その日、わたしのしもべにも、はしためにも、/わたしの霊を注ぐ。/すると、彼らは預言する。

①聖霊が、「すべての人」に注がれる。

②その結果、身分や地位に関係なしに、老若男女が超自然的な賜物を発揮する。

③この段階でのペテロの理解では、「すべての人」の中に異邦人は含まれていない。

 

(2)天変地異(19~20節)

Act 2:19 また、わたしは、上は天に不思議なわざを示し、/下は地にしるしを示す。/それは、血と火と立ち上る煙である。

Act 2:20 主の大いなる輝かしい日が来る前に、/太陽はやみとなり、月は血に変わる。

①聖霊の傾注に続いて、天変地異が起こる。

②太陽はやみとなり、月は血に変わる。

③これは、大患難時代における出来事の描写である。

④メシアの再臨とメシア的王国設立の前に、このような出来事が起こる。

 

(3)救いの約束(21節)

Act 2:21 しかし、主の名を呼ぶ者は、みな救われる。』

①ヨエ2:32

Joe 2:32 しかし、【主】の名を呼ぶ者はみな救われる。/【主】が仰せられたように、/シオンの山、エルサレムに、/のがれる者があるからだ。/その生き残った者のうちに、/【主】が呼ばれる者がいる。

②ヨエル書では、【主】とは「ヤハウェ」(ヘブル語)である。

③使徒の働きでは、主とは「キュリオス」(ギリシア語)である。

④イエス・キリストは、旧約聖書のヤハウェである。

*ペテロは、これ以降イエスを「キリスト」(メシア)と呼び、「キュリオス」

(ヤハウェ)と呼ぶ。

「主の名を呼ぶ者は、みな救われる」

*イエスをヤハウェと信じ信頼する者は、みな救われる。

*これが、ペテロのメッセージの中心である。

⑥次回、メッセージのポイントⅡで、イエスはメシアであることが証明される。

 

3.ひとつの疑問:ペテロによるヨエル書の引用法に問題はないか。

(1)ヨエルが預言したことは、この五旬節の日に、すべてが成就したわけではない。

①これは、主観的で自分勝手な引用法ではないか。

 

結論:

1.新約聖書における旧約聖書の引用法

(1)預言がそのまま成就した場合

①マタ1:22~23(イザ7:14の引用)

「このすべての出来事は、主が預言者を通して言われた事が成就するためであった。『見よ、処女がみごもっている。そして男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる』(訳すと、神は私たちとともにおられる、という意味である)

②マタ2:5~6(ミカ5:2の引用)

「彼らは王に言った。『ユダヤのベツレヘムです。預言者によってこう書かれているからです。「ユダの地、ベツレヘム。あなたはユダを治める者たちの中で、決して一番小さくはない。わたしの民イスラエルを治める支配者が、あなたから出るのだから」』」

 

(2)歴史的事件を取り上げ、それを「型(タイプ)」として説明する場合

①マタ2:15b(ホセ11:1の引用)

「これは、主が預言者を通して、『わたしはエジプトから、わたしの子を呼び出した』と言われた事が成就するためであった」

②ホセ11:1は、預言ですらない。

③出エジプトの出来事によって表現されたイスラエルへの神の愛を示している。

④「型(タイプ)」があるなら、「本体(オリジナル)」もある。

⑤「本体(オリジナル)」は、御子イエスの救出である。

⑥「エジプト」とは「ヘロデの脅威」のこと。

 

(3)実際の歴史的事件を取り上げ、それを適用する場合(類似点が一つあればOK)

①マタ2:17~18(エレ31:15の引用)

「そのとき、預言者エレミヤを通して言われた事が成就した。『ラマで声がする。泣き、そして嘆き叫ぶ声。ラケルがその子らのために泣いている。ラケルは慰められることを拒んだ。子らがもういないからだ』」

②エレ31:15もまた、預言ではない。

③ユダヤ人の息子たちが、バビロンに連行されようとしている。

④ラマ(エルサレムの北)は、最初の集合地点。そこからバビロンに向かう。

⑤母親たちがラマで嘆いている。

*ラケルは、イスラエルの母の象徴

⑥ベツレヘムの母親たちは、自分の息子を失い、嘆き悲しんでいる。

*相違点は多い。ラマとベツレヘム、捕囚と殺害。

*息子を失ったという意味では、同じ。

 

(4) メシア預言を要約する場合

①マタ2: 23b

「これは預言者たちを通して『この方はナザレ人と呼ばれる』と言われた事が成就するためであった」

②マタ2:23は、「預言者たち」の預言である。

③「この方はナザレ人と呼ばれる」という預言は旧約聖書にはない。

④預言者が複数形である。

⑤ナザレ人の意味が重要である。

*その背後にあるのは、イザ52~53章のイメージである。

 

(5)新約聖書の旧約聖書引用法を根拠にして、比喩的解釈を行ってはならない。

①以上の4つの引用法は、ユダヤ教のラビたちが行っていたものである。

*ペテロのヨエル書からの引用法は、上記(3)に分類される。

*類似点が一つある。「聖霊の傾注」がそれである。

*これは、預言の二重成就ではない。

②新約聖書の記者たちは、聖霊によって導かれて執筆した(霊感)。

*つまり、神がその引用法を認定されたのである。

*私たちが主観的にそのような解釈をしてはならないのである。

 

2.変えられた弟子たち

(1)ペテロを初めとする使徒たちの変化

①イエスを3度裏切った臆病な弟子が、勇猛な獅子のように声を張り上げている。

 

(2)ペテロのメッセージの特徴

①聖霊の力によって語った。

②ゴールは、「しかし、主の名を呼ぶ者は、みな救われる」ということである。

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