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ヘブル人への手紙(30)―祝祷―
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締めくくりの部分について学ぶ。
「祝祷」
ヘブル13:18~25
1.はじめに
(1)この手紙は、ユダヤ教への回帰を考えていた第2世代のメシアニック・ジューた
ちを励ますために書かれた。
①教理的学び
②学んだことの適用
④この箇所は、締めくくりの部分に当たる。
(2)祝祷(20~21節)
(3)終わりの挨拶(22~25節)
(2)この手紙の今日的意義は何か。
締めくくりの部分について学ぶ。
Ⅰ.祈りの要請(18~19節)
1.18節
Heb 13:18 私たちのために祈ってください。私たちは、正しい良心を持っていると確信しており、何事についても正しく行動しようと願っているからです。
(1)これは、個人的な祈りの要請である。
①「私たちのために」とある。
②パウロ書簡では、締めくくりの部分に同労者を含むことがよくある。
(2)この要請の内容から、著者とその協力者たちが試練に会っていたことが分かる。
①著者は獄中にあった可能性がある。
②少なくとも、彼の信頼性に疑問符が付いていたことは確かである。
③著者とその同労者たちを支えていた確信とは、「正しい良心」である。
*神の前における良心
*その確信こそが試練を乗り越える最終的な力である。
④良心への言及もまた、パウロ書簡の特徴である。
2.19節
Heb 13:19 また、もっと祈ってくださるよう特にお願いします。それだけ、私があなたがたのところに早く帰れるようになるからです。
(1)ここで初めて、「私」のための祈りの要請になっている。
①著者は、この手紙の受取人たちとともにいたことがある。
②今は、なんらかの理由で彼らと離れている。
(2)「あなたがたのところに早く帰れるようになるからです」
①著者は投獄されていた可能性がある。
②あるいは、病気になっていた可能性もある。
③あるいは、旅をすることを妨害するなんらかの理由があったのかもしれない。
Ⅱ.祝祷(20~21節)
1.20~21節
Heb 13:20 永遠の契約の血による羊の大牧者、私たちの主イエスを死者の中から導き出された平和の神が、
Heb 13:21 イエス・キリストにより、御前でみこころにかなうことを私たちのうちに行い、あなたがたがみこころを行うことができるために、すべての良いことについて、あなたがたを完全な者としてくださいますように。どうか、キリストに栄光が世々限りなくありますように。アーメン。
(1)聖書の中で、最も麗しい祝祷のひとつである。
①民6:24~26
Num 6:24 『【主】があなたを祝福し、/あなたを守られますように。
Num 6:25 【主】が御顔をあなたに照らし、/あなたを恵まれますように。
Num 6:26 【主】が御顔をあなたに向け、/あなたに平安を与えられますように。』
②2コリ13:13
2Co 13:13 主イエス・キリストの恵み、神の愛、聖霊の交わりが、あなたがたすべてとともにありますように。
(2)この祝祷は、「平和の神」への祈りである。
①旧約時代の聖徒たちは、完全な良心を持つことができなかった。
Heb 9:9 この幕屋はその当時のための比喩です。それに従って、ささげ物といけにえとがささげられますが、それらは礼拝する者の良心を完全にすることはできません。
②新約時代の聖徒たちは、「神との平和」と「神の平安」を持っている。
Rom 5:1 ですから、信仰によって義と認められた私たちは、私たちの主イエス・キリストによって、神との平和を持っています。
Php 4:7 そうすれば、人のすべての考えにまさる神の平安が、あなたがたの心と思いをキリスト・イエスにあって守ってくれます。
③私たちに対して神は、「平和の神」となられた。
(3)この祝福は、キリストの御業によって成就したものである。
①神は、主イエスを死者の中から復活させた。
②復活は、御子の死が、罪の問題を完璧に解決したというしるしである。
(4)主イエスは、「永遠の契約の血による羊の大牧者」である。
①主イエスは、血を流すことによって永遠の契約を結ばれた。
②新しい契約は、永遠の契約である。
③その結果、主イエスは羊の大牧者となられた。
④主イエスは、良い牧者である。
Psa 23:1 【主】は私の羊飼い。/私は、乏しいことがありません。
Joh 10:11 わたしは、良い牧者です。良い牧者は羊のためにいのちを捨てます。
⑤大牧者は、再び戻って来られる。
1Pe 5:4 そうすれば、大牧者が現れるときに、あなたがたは、しぼむことのない栄光の冠を受けるのです。
(5)「あなたがたがみこころを行うことができるために、」
*ここには、神の導きと人間の努力の不思議な調和がある。
①神は、御前でみこころにかなうことを私たちのうちに行われる。
②神は、そのことをイエス・キリストを通して行われる。
③そして私たちは、みこころを行うようになる。
Ⅲ.終わりの挨拶(22~25節)
1.22節
Heb 13:22 兄弟たち。このような勧めのことばを受けてください。私はただ手短に書きました。
(1)「このような勧めのことばを受けてください」
①勧めとは、ユダヤ教(儀式的宗教)を離れ、心からキリストに従うこと。
②著者は、読者に決断を迫っている。
(2)「私はただ手短に書きました」
①13章もある書簡を、「手短」と呼べるのか。
②書きたいことは山ほどあるという点からは、ほんの一部を書いたと言える。
2.23節
Heb 13:23 私たちの兄弟テモテが釈放されたことをお知らせします。もし彼が早く来れば、私は彼といっしょにあなたがたに会えるでしょう。
(1)テモテへの言及があるので、パウロ著者説の可能性が高い。
①しかし、著者が誰なのかは、確実には分からない。
3.24節
Heb 13:24 すべてのあなたがたの指導者たち、また、すべての聖徒たちによろしく言ってください。イタリヤから来た人たちが、あなたがたによろしくと言っています。
(1)この挨拶も、パウロ書簡に特徴的なものである。
①指導者たち
②すべての聖徒たち
(2)「イタリヤから来た人たち」
①原文では、「イタリヤの人たち」である。
②2つの可能性
*著者は、イタリヤでこの手紙を書いた。
*著者は、イタリヤにいるメシアニック・ジューに向けてこの手紙を書いた。
4.25節
Heb 13:25 恵みが、あなたがたすべてとともにありますように。
(1)新しい契約のキーワードは、恵みである。
①私たちは、イエス・キリストにあって、値なしに永遠のいのちを受けた。
結論:
1.この手紙が書かれた目的は達成されたのか。
(1)3人の証人による証言がある。
①ヨセフス
*紀元1世紀のユダヤ人の歴史家
*未信者
②ヘギシパス
*紀元2世紀のメシアニック・ジュー
③エウセビオス
*紀元4世紀の教会史家
(2)この手紙を読んだメシアニック・ジューたちは、その勧告に従った。
①彼らは、ユダヤ教と完全に決別した。
(3)手紙の執筆から2年も経たないうちに、第1次ユダヤ戦争勃発(紀元66年)。
①メシアニック・ジューは全員、ヨルダン川の東にあるペラという町に非難した。
*何万人という数のメシアニック・ジューたちである。
③ペラは、ガリラヤ湖の南に位置する町で、戦火が及ばない場所にあった。
*デカポリスのひとつで、ギリシア風の町であった。
④メシアニック・ジューたちはそこで戦争が終わるのを待った。
(4)4年後の紀元70年に、エルサレムとそこにある神殿は崩壊した。
①主イエスの預言が成就した。
②この戦いで、約100万人のユダヤ人たちが死んだ。
(5)第一次ユダヤ戦争で死んだメシアニック・ジューは、ひとりもいなかった。
①ヘブル人への手紙は、その目的を達成した。
2.この手紙の今日的意義とは何か。
(1)今日、ユダヤ教は世界の主要な宗教ではない。
①当時は、ユダヤ教が主要な宗教のひとつであった。
②口伝律法を中心とした宗教であった。
*バビロン捕囚からの帰還以降に口伝律法が発展した。
*紀元2~3世紀にかけて、ラビ・ユダ・ハナシが成文化した。
(2)しかし、律法主義の精神は、今も健在である。
①C.I.Scofield 博士は、これを「教会のユダヤ主義化」と呼んでいる。
*これは、教会の使命を妨害する最大の要因である。
*「教会のパリサイ主義化」と呼んでもよい。
②キリスト教界には、律法主義的習慣や考え方が蔓延している。
③そのため、本来クリスチャンが目指すべきゴールが曖昧になっている。
(3)何が問題か。
①世俗的な価値観を重視する。
*富の追求
*儀式や礼典の強調
*建物としての教会建設
②信者はすべて祭司であることを教えない。
*信者は、自分でみことばを読み、それを解釈する権利と責務を有する。
*信者は、いつでもどこでも、イエス・キリストを通して神の臨在の前に出
ることができる。
*信者は、神にいけにえを捧げるという奉仕に召されている。
・自分自身を捧げる。
・くちびるの果実を捧げる。
・所有している物を捧げる。
③聖職者と信徒を区別する。
*これは、新約時代の教会に旧約時代のレビ的規定を適用することである。
*神は、至聖所の垂れ幕を自らの聖い手で二つに引き裂かれた。
*神は、「わたしから離れてここにいなさい。私に近づいてはならない」とは
言われない。
④ユダヤ主義化したキリスト教からの脱却
*私たちには、よりすぐれた契約がある。
*私たちには、よりすぐれた仲介者がおられる。
*私たちには、よりすぐれた希望がある。
*私たちには、よりすぐれた約束がある。
*私たちには、よりすぐれた故郷がある。
*私たちには、よりすぐれた祭司がおられる。
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