60分でわかる旧約聖書(21)伝道者の書

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伝道者の書から人生を学ぶ。

60 分でわかる旧約聖書( 21 )「伝道者の書」

1.はじめに

(1)伝道者の書は、聖書の中では異質な書である。

①無神論者が好んで引用する書である。

②ボルテール(18世紀のフランスの思想家、啓蒙主義者)がその好例である。

*合理主義と科学的思考

*彼の思想は、フランス革命に大きな影響を与えた。

③カルト集団も、この書から引用することを好む。

④この書の目的と文脈を無視してそこから聖句を引用すると、大きな過ちを

犯すことになる。

 

(2)書名

「エルサレムでの王、ダビデの子、伝道者のことば」(1節)。

②これが、この書のタイトルである。

③「伝道者の書」(新改訳)(口語訳)

④「コヘレトの言葉」(新共同訳)

*伝道者は、ヘブル語で「コヘレト」である。

*その意味は、「集める者」、「集会を召集する者」などである。

*そこから、講演者、教師、伝道者などの言葉が派生してくる。

⑤「伝道者の書」や「コヘレトの言葉」よりは、「哲学者の言葉」の方が内容

を的確に言い表している。

⑥この書は、神を抜きにした人生探究の書である。

 

(3)著者

①著者は、「エルサレムでの王」、「ダビデの子」である。

②該当者は、ソロモンしかいない。ダビデの子孫の中で、エルサレムからイス

ラエル全土を統治したのはソロモンだけである。

③近年、ソロモンが著作であることを否定する学者も出ているが、伝統的なソ

ロモン著作説を否定するには、証拠不十分である。

⑤この書は、神を抜きにして人生の充足を求めたソロモンの自伝である。

 

(4)執筆の目的

①人間の知恵だけで人生の充足を求めることの愚かさを教えるため。

②後世の者たちが、ソロモンの実験を繰り返すことのないようにするため。

 

伝道者の書から人生を学ぶ。

Ⅰ.伝道者の書のアウトライン

1.人生の問題(1:1~3)

Ecc 1:1 エルサレムでの王、ダビデの子、伝道者のことば。

Ecc 1:2 空の空。伝道者は言う。/空の空。すべては空。

Ecc 1:3 日の下で、どんなに労苦しても、/それが人に何の益になろう。

(1)ソロモンは、人生の問題を提示し、そこから実験を開始する。

①人生はさまざまな苦難を宿し、すばやく過ぎ去って行く。

②その最後は死である。

③死が人生のゴールであるなら、生きている意味や目的はどこにあるのか。

④神を認めないなら、私たちの人生は「空の空」である。

 

2.ソロモンの実験(1:4~12:12)

(1)科学(1:4~11)

(2)知恵と哲学(1:12~18)

(3)快楽(2:1~11)

(4)物質主義(2:12~26)

(5)運命論(3:1~15)

(6)利己主義(3:16~4:16)

(7)宗教(5:1~8)

(8)富(5:9~6:12)

(9)道徳規範(7:1~12:12)

 

3.実験の結果(12:13~14)

 

Ⅱ.伝道者の書の観察(7つの質問)

1.箴言と伝道者の書の違いは、何か。

2. 伝道者の書の内容は、どのようにして生まれたのか。

3.伝道者の書のキーワードは、何か。

4.伝道者の書に出て来る結論は、信用できるか。

5.伝道者の書は、「神のことば」の一部なのか。

6.ソロモンの信仰は、どういう状態にあったのか。

7.ソロモンの実験の結果は、どうであったのか。

 

1.箴言と伝道者の書の違いは、何か。

(1)箴言には、ソロモンの知恵が表現されている。

(2)伝道者の書には、ソロモンの愚かさが表現されている。

①神から離れていた間のソロモンの自伝である。

②それゆえ、この書のタイトルは「哲学者の言葉」とした方が分かりやすい。

 

2. 伝道者の書の内容は、どのようにして生まれたのか。

(1)神を抜きにして人生の意味を探究すると、この書の結論にたどりつく。

(2)この書の中には、聖書の他の箇所の教えと矛盾する内容が多く出て来る。

(3)今も、神を抜きにして人生の充足を求める人がたくさんいるが、それは空し

い試みである。

(4)伝道者の書の内容は、人間の哲学的営みである。

①ソロモンほど知恵のある人はいなかった。

②ソロモンほど富のある人もいなかった。

③ソロモンはあらゆるものを用いて実験したが、結果は空しかった。

(4)ヨブは義人であったが、神は彼が罪人であることを示した。

(5)ソロモンは知者であったが、神は彼が愚か者であることを示した。

 

3.伝道者の書のキーワードは、何か。

(1)「空」(vanity)がキーワードである。

①37回も出て来る。

②『般若心経』にある「色即是空」という仏教の教義とは異なる。

*この世のすべてのものは、永劫不変の実体ではないという教え。

③伝道者の書の「空」は、神なき人生の空しさを表現したものである。

 

(2)「日の下で」(under the sun)がキーフレイズである。

①29回も出て来る。

②ソロモンは、死後の命や世界のことを考慮していない。

③伝道者の書の内容は、地上の生活と人間の体験に限定されている。

④「私は心の中で言った」という表現が繰り返される。

 

(3)人は、全世界を手に入れても、あらゆる快楽を体験しでも、満足を得ること

はできない。

 

(4)キリスト抜きには、真の充足はない。

 

4.伝道者の書に出て来る結論は、信用できるか。

(1)聖書の教えと矛盾する結論

Ecc 2:24 人には、食べたり飲んだりし、自分の労苦に満足を見いだすよりほかに、何も良いことがない。これもまた、神の御手によることがわかった。

Ecc 3:19 人の子の結末と獣の結末とは同じ結末だ。これも死ねば、あれも死ぬ。両方とも同じ息を持っている。人は何も獣にまさっていない。すべてはむなしいからだ。

Ecc 9:5 生きている者は自分が死ぬことを知っているが、死んだ者は何も知らない。彼らにはもはや何の報いもなく、彼らの呼び名も忘れられる。

 

(2)半分真理で半分嘘の結論

Ecc 1:4 一つの時代は去り、次の時代が来る。/しかし地はいつまでも変わらない。

2Pe 3:10 しかし、主の日は、盗人のようにやって来ます。その日には、天は大きな響きをたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれ去り、地と地のいろいろなわざは焼き尽くされます。

 

(3)真理と調和する結論

Ecc 12:1 あなたの若い日に、あなたの創造者を覚えよ。わざわいの日が来ないうちに、また「何の喜びもない」と言う年月が近づく前に。

 

5.伝道者の書は、「神のことば」の一部なのか。

(1)伝道者の書もまた霊感を受けていると言える。

 

(2)聖書の中には、サタンの言葉も含まれている。

Gen 3:4 そこで、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。

Gen 3:5 あなたがたがそれを食べるその時、あなたがたの目が開け、あなたがたが神のようになり、善悪を知るようになることを神は知っているのです。」

①聖書は、サタンの嘘を肯定しているわけではない。

②これを聖書に含めることで、サタンが噓つきであることを示している。

 

(3)伝道者の書は、人間の哲学的営みの空しさを伝えようとしている。

 

6.ソロモンの信仰は、どういう状態にあったのか。

(1)ソロモンは、人生の探究を行っていた間も神を信じていた。

①神という言葉が49回出て来る。

②すべて「エロヒム」である。

③これは、「創造主」という意味で使っている言葉である。

 

(2)しかし、その間の彼の信仰は、救いに至る信仰ではなかった。

①【主】(ヤハウェ)という言葉が1度も出てこない。

②【主】とは、契約の御名である。

 

(3)創造主の存在は、一般啓示から認識できるものである。

 

(4)【主】の存在は、特別啓示からしか認識できない。

 

7.ソロモンの実験の結果は、どうであったのか。

Ecc 12:13 結局のところ、もうすべてが聞かされていることだ。神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってすべてである。

Ecc 12:14 神は、善であれ悪であれ、すべての隠れたことについて、すべてのわざをさばかれるからだ。

(1)「神を恐れよ。神の命令を守れ」というのが、コヘレトの結論である。

 

(2)神を恐れ、神の命令を守る動機は、神の裁きへの恐れである。

①現世における裁きへの恐れ

②死後の裁きへの恐れ

*ソロモンが死後の世界のことを考えていたかどうかは不明である。

*少なくとも私たちは、聖書の啓示を通してその認識を持っている。

 

(3)以上の助言は、知者が理性的に思索した結果出て来たもので、神の啓示に対

する信仰的な応答だということではない。

 

(4)イエス・キリストを信じる私たちは、恐れから解放されている。

1Jn 4:18 愛には恐れがありません。全き愛は恐れを締め出します。なぜなら恐れには刑罰が伴っているからです。恐れる者の愛は、全きものとなっていないのです。

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