創世記(44)—ヤコブとラバンの契約—

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神の公平さと、復讐の愚かさを学ぶ。

創世記44 創世記30章25節~31章16節

「ヤコブとラバンの契約」

イントロ:

1.寄留の地で生活するヤコブは、11人の息子を得た。

(1)レアの4人の息子たち

(2)ビルハの2人の息子たち

(3)ジルパの2人の息子たち

(4)レアの2人の息子たち

(5)ラケルの息子

2.きょうの箇所

(1)ヤコブとラバンの契約

(2)ラバンの欺き

(3)ヤコブの復讐

(4)決断の時

3.きょうのメッセージは、私たちに何を教えているか。

(1)神は摂理を通して私たちを公平に扱っておられる。

(2)それゆえ、人は復讐してはならない。

このメッセージは、神の公平さと、復讐の愚かさを学ぼうとするものである。

Ⅰ.ヤコブとラバンの契約

1.ヤコブの要請

(1)ヤコブには11人の息子が生まれた。

(2)彼は、花嫁料のために、14年間働いた。ラバンの冷酷さが見られる。

(3)ラバンに騙されたが、彼はラバンを騙さなかった。

(4)彼が所有した財産は、2人の妻、2人の女奴隷、11人の息子だけであった。

(5)これまでは、住居と食物だけのために働いてきたが、大家族の将来が心配。

(6)そこで彼は、カナンの地への帰還を考えた。

①「私の故郷の地」とは、カナンの地である。

(7)ラバンは、ヤコブの働きぶりをよく知っていた。

「私の妻たちや子どもたちを私に与えて行かせてください。私は彼らのためにあなたに仕えてきたのです。あなたに仕えた私の働きはよくご存じです」

2.ラバンの逆提案

「もし、お前さえ良ければ、もっといてほしいのだが。実は占いで、わたしはお前のお陰で、主から祝福をいただいていることが分かったのだ」(新共同訳)

(1)占いは「ナホッシュ(ニハシュティ)」

(2)蛇は「ナハッシュ」

(3)「占い」という言葉は、「蛇」と同じ語幹を持つ。

①直訳すると、蛇を通して占いをするという意味。

②ラバンはオカルト的占いをしていた。

(4)彼は、ヤコブの神、主(ヤハウェ)が祝福を与えていてくれることを知った。

①「お前のお陰で」とは、ヤコブとの関係のゆえに、という意味である。

②ラバンはこの14年間、アブラハム契約の祝福の側面を体験していた。

③(創12:3)

「あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう」

(5)ラバンはこの祝福を失いたくない。

(6)そこで、ヤコブを引き留めるために、報酬を支払うことを提案する。

3.ヤコブの答え

(1)ラバンは、ヤコブが忠実に働いたことを知っている。

(2)その結果、ラバンの家畜が爆発的に増加した。

(3)「それは、私の行く先で【主】があなたを祝福されたからです」

①ラバンは、アブラハム契約の祝福の受け手となった。

②彼は偶像礼拝者であったが、ヤコブとの関係のゆえに、祝福を受けた。

(4)ヤコブは、自分と家族のために経済的安定を求めた。

4.ラバンの質問

(1)報酬はどれくらい欲しいか。

5.ヤコブの答え

(1)控え目な要求をしている。

①前払いをしなくてもよい。

②ひとつの条件を呑んでくれるなら、ラバンのもとに留まり続ける。

(2)3種類の家畜

「私はきょう、あなたの群れをみな見回りましょう。その中から、ぶち毛とまだら毛のもの全部、羊の中では黒毛のもの全部、やぎの中ではまだら毛とぶち毛のものを、取り出してください。そしてそれらを私の報酬としてください」

①ぶち毛とまだら毛のもの全部(総論的言葉)

*ぶち毛:黒の中に白点がある。

*まだら毛:白の中に黒点がある。

②黒毛の羊全部

*中東の羊は、普通は白である。黒は珍しい。

③まだら毛とぶち毛のやぎ

*中東のやぎは、普通は黒か濃い茶色。まだら毛とぶち毛は珍しい。

(3)以上の3種類は、数が少ない。

(4)しかも、彼はそれらの家畜から生まれてくる子羊や子やぎだけを要求した。

(5)もっと大胆な要求を出す権利があったが、最低限のところからスタートした。

(6)そして、自分の正直さを示す方法まで提示した。

「後になってあなたが、私の報酬を見に来られたとき、私の正しさがあなたに証明されますように。やぎの中に、ぶち毛やまだら毛でないものや、羊の中で、黒毛でないものがあれば、それはみな、私が盗んだものとなるのです」

6.ラバンの同意

(1)ラバンは、自分に有利な条件なので、すぐに同意した。

「そうか。あなたの言うとおりになればいいな」(新改訳)

「よろしい。お前の言うとおりにしよう」(新共同訳)

Ⅱ.ラバンの欺き

1.ラバンは汚い手を使った。

「ラバンはその日、しま毛とまだら毛のある雄やぎと、ぶち毛とまだら毛の雌やぎ、いずれも身に白いところのあるもの、それに、羊の真っ黒のものを取り出して、自分の息子たちの手に渡した」

(1)ラバンには、息子たちが誕生していた。これは、ヤコブの到着以降の出来事。

(2)彼が選別して自分の息子たちに渡したのは、ヤコブの元手になる家畜たち。

(3)ヤコブはその家畜たちが生み出すものを、将来の賃金としようとしていた。

(4)ヤコブは、ゼロから始めなければならなくなった。

(5)ラバンがヤコブを欺くのは、これが2度目である。

2.ラバンは、ヤコブの群れが増える可能性をなくした。

「そして、自分とヤコブとの間に三日の道のりの距離をおいた。ヤコブはラバンの残りの群れを飼っていた」

(1)ラバンの息子たちの群れと、ヤコブの群れとが交配する可能性はゼロ。

(2)いくら経っても、ヤコブが受け取る群れは誕生しないということである。

(3)ラバンは、ヤコブの財産が増えないようにして、長く彼を留めようとした。

3. 誰が誰を欺いているか、注意する必要がある。

(1)ヤコブは非常に控え目な提案をしたが、ラバンは策を弄した。

(2)しかし、ヤコブは忠実に働いた。

(3)勧善懲悪のドラマならば、仕事人の出番である。

Ⅲ.ヤコブの復讐

1.第1の策

(1)家畜にさかりがつく場所で、彼は奇妙なことをし始めた。

「ヤコブは、ポプラや、アーモンドや、すずかけの木の若枝を取り、それの白い筋の皮をはいで、その若枝の白いところをむき出しにし、その皮をはいだ枝を、群れが水を飲みに来る水ため、すなわち水ぶねの中に、群れに差し向かいに置いた」

(2)その結果

「こうして、群れは枝の前でさかりがついて、しま毛のもの、ぶち毛のもの、まだら毛のものを産んだ」

①親の毛色とは異なった子どもが誕生した。

②これは、契約ではヤコブの群れとなる。

2.第2の策

(1)普通の群れと、自分の所有となる群れとを分けた。

(2)次に、両者を対面させた。

(3)普通の群れは「しま毛のもの、ぶち毛のもの、まだら毛のもの」を産んだ。

3.第3の策

(1)強いものの群れがさかりがついた時には、木の枝を水ぶねの中に置いた。

(2)弱いものの群れの場合は、そうしなかった。

(3)強い群れから、「しま毛のもの、ぶち毛のもの、まだら毛のもの」が誕生した。

(4)こうして、ラバンの群れは弱いものとなっていった。

4.復讐の結果

「それで、この人は大いに富み、多くの群れと、男女の奴隷、およびらくだと、ろばとを持つようになった」

(1)7年間の間に、急速に裕福になった。

(2)ヤコブが用いた手法は、当時の迷信である。

①さかりの時(子を宿した時)に視覚に刺激を与えると、胎児に影響が現れる。

②ヤコブはそれを信じ、それを行っている。

Ⅳ.決断の時

1.ラバンの息子たちとの関係が悪化。

(1)古代のヌジ文書によれば、息子がない場合は、義理の息子が相続人となる。

(2)ラバンには息子たちが生まれた。彼らは、ラバンの相続人である。

(3)それゆえ、自分たちの財産が減っていくのを悲しんでいる。

 「ヤコブはわれわれの父の物をみな取った。父の物でこのすべての富をものにしたのだ」

(4)これは嘘である。事実は、この逆である。

2.ラバンとの関係の悪化

(1)ヌジ文書では、義理の息子にも少しは相続させる。

(2)ラバンは、これに反している。

3.神からの語りかけ

「あなたが生まれた、あなたの先祖の国に帰りなさい。わたしはあなたとともにいる」

(1)2回目の顕現

(2)20年間の間隔があいている。

4.2人の妻との会話

(1)野に呼び寄せた。誰にも聞かれないで、ゆっくり相談ができる。

(2)ヤコブは、ことの次第を妻たちに告げた。

(3)ヤコブは、裕福になった真の原因を明かす。

(4)夢の中の光景

「群れにかかっている雄やぎは、しま毛のもの、ぶち毛のもの、また、まだら毛のものであった」

5.神からの語りかけ

(1)御使いは言われた。「ヤコブよ」

(2)「目を上げて見よ。群れにかかっている雄やぎはみな、しま毛のもの、ぶち毛のもの、まだら毛のものである」

(3)「ラバンがあなたにしてきたことはみな、わたしが見た」

①木の若枝を利用する必要はなかった。神がしておられた。

②アブラハム契約の呪いの側面。同じ種類の呪い。

(4)「わたしはベテルの神。あなたはそこで、石の柱に油をそそぎ、わたしに誓願を立てたのだ。さあ、立って、この土地を出て、あなたの生まれた国に帰りなさい」

(5)「御使い」、あるいは、「神の御使い」とは、目に見える形で現れた神である。

(6)「ベテルの神」。ヤコブの霊的原点に引き戻す。生まれた国に帰れ。

6.妻たちの応答

(1)父への不満がある。

(2)自分たちは商品扱いされた。

(3)花嫁料はもらえなかった。

(4)彼女たちも、父が与えなかったものを、神が与えてくださったと理解した。

結論

1.
神は摂理を通して私たちを公平に扱っておられる。

(1)ヤコブが群れを増やすために用いた手法

①木の若枝を利用した繁殖法

②自分の群れとラバンの群れを対面させ、交配させた。

③強い群だけに木の若枝を利用した。

(2)しかし、神はすべてを見ておられ、つじつまがあうようにされた。

2.
それゆえ、人は復讐してはならない。


ロマ
12:19「愛する人たち。自分で復讐してはいけません。神の怒りに任せなさい。それは、こう書いてあるからです。『復讐はわたしのすることである。わたしが報いをする』、と主は言われる」

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