私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
創世記(38)—エサウとヤコブの誕生—
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神の選びと人の応答の必要性のバランスを学ぶ。
創世記38 創世記25章19節~34節
「エサウとヤコブの誕生」
イントロ:
1.創世記は11のトルドットに区分される。
2.第6のトルドットは、創11:27~25:11で、「テラの歴史」。
3.第7のトルドットは、創25:12~18で、「イシュマエルの歴史」
4.第8のトルドットは、創25:19~35:29で、「イサクの歴史」
2.きょうの箇所とメッセージのアウトライン
(1)誕生前の預言
(2)ふたごの誕生
(3)ふたごの成長
(4)長子の権利の売り渡し
3.きょうのメッセージは、私たちに何を教えているか。
(1)神の選びの確かさ
(2)選びに対する人の応答の必要性
このメッセージは、神の選びと人の応答の必要性のバランスを教えるものである。
Ⅰ.誕生前の預言(25:19~23)
1.イサクのトルドットの始まり
「これはアブラハムの子イサクの歴史である。アブラハムはイサクを生んだ」
(1)他のトルドット同様、「これはイサクの歴史である」というタイトルで始まる。
(2)「イサクの歴史」とは、イサクの息子たちに何が起こったかという記録である。
2.イサクは40歳で結婚。
(1)妻はリベカ
①パダン・アラムのアラム人(シリア人)ベトエルの娘
②アラム人ラバンの妹
③リベカは不妊の女であった。20年間子が与えられない。
(2)イサクはリベカのために主に祈願した。
①イサクの生活については記述がないが、主に祈ったことだけは書かれている。
②父アブラハムのように「めかけ」によって子を得ることはしなかった。
③イサクの祈りは聞かれた。
3.リベカは妊娠した。
「子どもたちが彼女の腹の中でぶつかり合うようになったとき、彼女は、『こんなことでは、
いったいどうなるのでしょう。私は』と言った。そして【主】のみこころを求めに行った」
(1)子どもたちが彼女の体内で押し合った。
(2)彼女は不安になった。命の危険さえも感じた。
(3)彼女もまた、主に祈った。
4.主からの答えがあった。
「すると【主】は彼女に仰せられた。『二つの国があなたの胎内にあり、二つの国民があな
たから分かれ出る。一つの国民は他の国民より強く、兄が弟に仕える』」
(1)ヘブルの詩の形式。韻を踏むのではなく、並列法での記述。
(2)1行目 「二つの国があなたの胎内にあり」
①「国」は、「ゴイム」である。
②イスラエルについても、異邦人についても、「ゴイム」が用いられる。
(3)2行目 「二つの国民があなたから分かれ出る」
①イスラエルとエドムの誕生。
②エドムは、多くある異邦人国家のひとつ。
(4)3行目 「一つの国民は他の国民より強く」
①イスラエルはエドムよりも強い。
(5)4行目 「兄が弟に仕える」
①エドムはイスラエルの奴隷となる。
Ⅱ.ふたごの誕生(25:24~26)
1.「出産の時が満ちると、見よ、ふたごが胎内にいた」(24節)
2.兄の誕生の様子
「最初に出て来た子は、赤くて、全身毛衣のようであった。それでその子をエサウと名づ
けた」
(1)「赤くて」は、「アドモニ」。ここから、「エドム」という言葉が出てきた。
(2)「アドモニ」は、ここ以外ではダビデに関してのみ出てくる言葉。
①Ⅰサム16:12
「エッサイは人をやって、彼を連れて来させた。その子は血色の良い顔で、目が
美しく、姿もりっぱだった」
②17:42
「ペリシテ人はあたりを見おろして、ダビデに目を留めたとき、彼をさげすんだ。
ダビデが若くて、紅顔の美少年だったからである」
(3)エサウとは、「毛深い」の意味。
①個人名のエソウは、毛深いところから付けられた名。
②民族名のエドムは、毛の色が赤かったところから付けられた名。
3.弟の誕生の様子
「そのあとで弟が出て来たが、その手はエサウのかかとをつかんでいた。それでその子を
ヤコブと名づけた」
(1)かかとは「アケブ」である(新共同訳)。
(2)ヤコブと「かかと(アケブ)」は同じ語根から出た言葉である。
①ヤコブの第一義的な意味は、「かかとをつかむ者」である。
②第二義的な意味は、「追い出す者」である。
(3)この言葉には、否定的なニュアンスは含まれていない。
①それが肯定的な意味か、否定的な意味かは、文脈によって決まる。
②名前が与えられた時は肯定的な意味、後に否定的な意味になる。
創 27:36
「エサウは言った。『彼の名がヤコブというのも、このためか。二度までも私を押
しのけてしまって。私の長子の権利を奪い取り、今また、私の祝福を奪い取って
しまった』」
ホセ 12:3
「彼は母の胎にいたとき、兄弟を押しのけた。彼はその力で神と争った」
エレ 9:4
「おのおの互いに警戒せよ。どの兄弟も信用するな。どの兄弟も人を押しのけ、
どの友も中傷して歩き回るからだ」
(4)ヤコブについての評価を再吟味する必要がある。
Ⅲ.ふたごの成長(25:27~28)
1.ふたごの成長
「この子どもたちが成長したとき、エサウは巧みな猟師、野の人となり、ヤコブは穏やか
な人となり、天幕に住んでいた」
2.エサウ
(1)「巧みな猟師」という言葉は、創世記の文脈では否定的な意味を持っている。
(2)ニムロデの場合もそうであった。創10:8~12。
3.ヤコブ
(1)ヤコブの性質について悪く言うのが、キリスト教の伝統のようになっている。
(2)しかし、聖書の評価はそれとは異なる。
(3)誤った解釈:ヤコブは母親っ子、エサウは英雄であり巧みな猟師。
4.エサウに関する正しい解釈
(1)エサウは「野の人」となり、家族の絆の外で生きることを選んだ。
(2)つまり、エサウは、家族への忠誠も家族との契約も捨てた男であった。
(3)神のエサウへの評価は否定的である。
マラ1:2~3
「『わたしはあなたがたを愛している』と【主】は仰せられる。あなたがたは言う。『ど
のように、あなたが私たちを愛されたのですか』と。『エサウはヤコブの兄ではなかっ
たか。──【主】の御告げ──わたしはヤコブを愛した。わたしはエサウを憎み、彼
の山を荒れ果てた地とし、彼の継いだ地を荒野のジャッカルのものとした』」
ヘブ12:16~17
「エサウのような俗悪な者」
5.ヤコブに関する正しい解釈
(1)ヤコブは「穏やかな人」になったという訳を再吟味する必要がある。
①ヘブル語では「タム」である。
②ヨブ1:8、22:3 ヨブに関して 「正しい人」
③創6:9 ノアに関して 「正しい人」
④詩 18:25 神と人に関して用いられている。
「 あなたは、恵み深い者には、恵み深く、全き者には、全くあられ」
(2)ヤコブに関する誤解が先にあり、それに合うような形で訳語が選ばれている。
① 「タム」は、「完全」という意味である。
②罪がないという意味での「完全」ではない。
③神に対する姿勢が正しいという意味での、「義人」である。
④ヨブとノアの例を考えればよい。
(3)「天幕に住んでいた」の意味。
①母親っ子という意味ではない。
②彼は、家族という絆の中で、責任を果たして生きることを選んだ。
③羊飼いという家業を継いだ。アブラハム、イサクの道である。
④羊飼いは、女性的な仕事ではない。
⑤後に展開されるエピソードによって、羊飼いの労働の厳しさが明らかになる。
⑥ダビデが獅子や熊から羊の群れを守ったのと同じことである。
6.両親の偏愛
「イサクはエサウを愛していた。それは彼が猟の獲物を好んでいたからである。リベカは
ヤコブを愛していた」
(1)イサクはエサウを愛した。
①理由は、猟の獲物を好んでいたからである。「獲物が彼の口の中にあった」
②これは、ジビエ(狩猟による鳥獣肉)である。英語ではゲームミート。
③イサクは、神の選びを無視した。
(2)リベカはヤコブを愛していた。
①神もそうであった。マラ1:2~3。
Ⅳ.長子の権利の売り渡し(25:29~34)
1.エサウの粗野な性質
「さて、ヤコブが煮物を煮ているとき、エサウが飢え疲れて野から帰って来た。エサウは
ヤコブに言った。『どうか、その赤いのを、そこの赤い物を私に食べさせてくれ。私は飢え
疲れているのだから』。それゆえ、彼の名はエドムと呼ばれた」
(1)彼は、疲れていただけである。それ以上の状態ではない。
(2)「私に食べさせてくれ」
①「グイグイ飲む」、「あおる」
②動物的な食欲が暗示されている。
(3)「煮物」という言葉は使わずに、「赤いの」「赤いの」と言っている。
(4)ヘブ12:6では、「俗悪な者」という評価が下されている。
(5)彼は「エドム(赤)」と呼ばれるようになり、子孫たちは先祖の性質を引き継ぐ。
2.ヤコブの提案
「するとヤコブは、『今すぐ、あなたの長子の権利を私に売りなさい』と言った」
(1)ヌジ文書では、長子の権利は売買が可能である。
(2)長子の権利の内容
①物質的祝福 申21:17 2倍の分け前
②霊的祝福 Ⅰ歴5:1~2 祭祀を仕切る権利
③メシアの系図に連なるという祝福。アブラハム契約に基づく長子の権利
④土地の所有
(3)アブラハム契約では、霊的祝福が前面に出ている。
(4)それゆえ、エサウは長子の権利に興味を示さなかった。
3.エサウの回答
「エサウは、『見てくれ。死にそうなのだ。長子の権利など、今の私に何になろう』と言っ
た」
(1)エサウは、自分の状態を誇張している。
(2)他の天幕に行けば、いくらでも食物はあったであろう。
(3)新改訳は、「長子の権利など、今の私に何になろう」と訳している。
【口語訳】
エサウは言った、「わたしは死にそうだ。長子の特権などわたしに何になろう」。
【新共同訳】
「ああ、もう死にそうだ。長子の権利などどうでもよい」とエサウが答えると、
(4)彼は、「長子の権利に何の益があろうか」と言っているのである。
①長子の権利には、大いなる祝福が込められている。
②彼には、霊的祝福への興味がない。
4.売買成立
(1)「誓い」によって、この取引は法的に有効なものとなった。
「それでヤコブは、『まず、私に誓いなさい』と言ったので、エサウはヤコブに誓った。
こうして彼の長子の権利をヤコブに売った」
(2)ヤコブは長子の権利のための代価を払い、エサウはそれを受け取った。
「ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えたので、エサウは食べたり、飲んだ
りして、立ち去った。こうしてエサウは長子の権利を軽蔑したのである」
①食べた
②飲んだ
③立った
④去った
(3)ヤコブが不正を働いたという表現はない。
(4)聖書は、エサウの非を責めている。
①「エサウは長子の権利を軽蔑した」
②「軽蔑した」とは、価値のないものとして扱ったということ。
③エサウには、神のことに関する感受性がなかった。
④神の計画の一部になりたいという思いがない。
⑤エサウは、長子の権利を売っただけでなく、それをさげすんだ。
結論:神の選びと人の責務のバランス
1.ロマ9:10~12は、神の選びの確かさについて教えている。
「このことだけでなく、私たちの父イサクひとりによってみごもったリベカのこともあり
ます。その子どもたちは、まだ生まれてもおらず、善も悪も行わないうちに、神の選びの
計画の確かさが、行いにはよらず、召してくださる方によるようにと、『兄は弟に仕える』
と彼女に告げられたのです。『わたしはヤコブを愛し、エサウを憎んだ』と書いてあると
おりです」
(1)同意するのが難しい箇所である。
(2)アブラハムから出る者がすべて子ではない。信仰が必要である。
(3)異邦人である私たちこそ、神の選びの祝福を受けている。
(4)ヨハネ15:16
「あなたがたがわたしを選んだのではありません。わたしがあなたがたを選び、あな
たがたを任命したのです。それは、あなたがたが行って実を結び、そのあなたがたの
実が残るためであり、また、あなたがたがわたしの名によって父に求めるものは何で
も、父があなたがたにお与えになるためです」
2.ヘブ12:16~17は、人の責務について教えている。
「また、不品行の者や、一杯の食物と引き替えに自分のものであった長子の権利を売った
エサウのような俗悪な者がないようにしなさい。あなたがたが知っているとおり、彼は後
になって祝福を相続したいと思ったが、退けられました。涙を流して求めても、彼には心
を変えてもらう余地がありませんでした」
(1)業による義を求めても、それは不可能である。
(2)信仰による義を求めること。
(3)そうすれば、道は開ける。
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