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創世記(27)—イシュマエルの誕生—
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アブラハムの失敗から霊的教訓を学ぶ。
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創世記27 創世記16章1節~16節
「イシュマエルの誕生」
イントロ:
1.前回までの復習
(1)神はアブラムを選び、彼とその子孫を通して全人類を救おうとされた。
(2)神は、カナンの地に移り住んだアブラムと契約を締結された。
①アブラハム契約
②無条件契約
(3)アブラムには、星の数ほどの子孫が与えられる。
2.きょうの箇所
(1)神の計画とは異なった形で、最初の子が誕生する。
(2)その影響は、今日にまで及んでいる。
3.メッセージのアウトライン
(1)サライとハガル(人の失敗)
(2)ハガルと主の使い(神の恵み)
(3)イシュマエルの誕生(失敗の結果)
4.きょうのメッセージは、私たちに何を教えているか。
(1)アブラハムの子孫とは誰か。
①ユダヤ性はアブラハムによって規定されるものではない。
②ユダヤ人とは、ヤコブの子孫のことである。
(2)現在のイスラエル人とアラブ人の紛争の源流がここにある。
(3)厳しい時代にあって、アブラハムの失敗から霊的教訓を学ぶ。
このメッセージは、アブラハムの失敗から霊的教訓を学ぼうとするものである。
Ⅰ.サライとハガル(人の失敗)
1.イシュマエル誕生の状況説明(1節)
(1)サライは、子を産まなかった。
①神はアブラムに息子を約束したが、この段階ではまだそれが成就していない。
②また、サライが子を産むということまでは啓示されていない。
(2)サライには、エジプト人の女奴隷がいて、その名をハガルと言った。
①エジプト人の女奴隷を得る可能性があったのは、エジプトに下った時だけ(創12:6)。
②ラビ的伝承では、ハガルはパロの娘とされている。
③ハガルはヘブル語で、「逃亡者となる」、「逃げる」などの意味。
④恐らく、アブラムかサライが、エジプトでの体験にちなんで付けたのであろう。
2.サライの提案(2節)
(1)創世記11:30で、「サライは不妊の女で、子どもがなかった」とあった。
(2)不妊を理由に、アブラムに提案をする。
「どうぞ、私の女奴隷のところにお入りください」
(3)この提案は、ハムラビ法典、ヌジ文書の規定通りである(ともに2000年B.C.)。
「もし妻が不妊であれば、夫の家系を絶やさないために、女奴隷を与えて、夫が彼女によって子を得るようにする義務がある」
(4)サライの提案は、当時の法に適っているが、これは彼女の信仰の欠如を示している。
①アブラムに子が与えられるのであれば、サライを通してであることが暗黙の了解。
②アブラムには、サライしか妻はいないのである。
③とは言え、当時の法に従えば、女奴隷を与えることは妻の権利である。
(5)提案の理由
「たぶん彼女によって、私は子どもの母になれるでしょう」
①ヘブル語の直訳は、「彼女によって、建てられる、確立される、栄える」など。
②女奴隷から生まれた子は、正妻の子となるのが当時の習慣。
(6)アブラムの承認
「アブラムはサライの言うことを聞き入れた」
①これもまた、アブラムの信仰の欠如である。エジプトに下ったのと同じ。
②彼は、神の声ではなく、サライの声を聞いた。
③創世記3:17と似ている。
「あなたが、妻の声に聞き従い、食べてはならないとわたしが命じておいた木から食べたので、土地は、あなたのゆえにのろわれてしまった。あなたは、一生、苦しんで食を得なければならない」
④アダムもアブラムも、ともに否定的な結果をもたらした。
(7)かくして、ハガルはアブラムのめかけとなった。
①以上のことは、不道徳なことではなく、すべて合法的であった。
②しかし、不信仰の行為であった。
3.サライとハガルの対立(3~5節)
(1)カナンの地に来て10年が経っていた。
①信仰不足の原因
②アブラムは85歳、サライは75歳。
(2)アブラムは、ハガルを妻に迎えた。
①彼女は、肉欲のためのそばめ(めかけ)ではない。
②これは、子を残すための合法的な結婚である。
③創世記では、妻であることとそばめであることとは、両立する。
(3)ハガルはみごもった。
(4)聖書時代、不妊の女は見下された(神の評価ではなく、人の評価)。
(5)ハガルの態度が変化した。
①「見下げるようになった」(口語訳、新改訳)、「軽んじた」(新共同訳)。
②ヘブル語では、「カラル」。
*創世記12:3
「あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地上のすべての民族は、あなたによって祝福される」
*「あなたをのろう者」、「カラル」
*「わたしはのろう」、「アラール」
*ハガルは、サライをのろい、軽んじた。
(6)サライの不平
①サライは、アブラムにその責任を押し付けた。
②訳語比較
「わたしが受けた害はあなたの責任です」(口語訳)
「私に対するこの横柄さは、あなたのせいです」(新改訳)
「わたしが不当な目に遭ったのは、あなたのせいです」(新共同訳)
4.ハガルの逃避(6節)
(1)アブラムの応答
「あなたの女奴隷は、あなたの手の中にある。彼女をあなたの好きなようにしなさい」
(2)当時の法律では、ハガルは依然としてサライの所有物、女奴隷。
①もし彼女を、アブラムの妻の地位から、女奴隷に戻したければ、それができた。
②妊娠したので、彼女を他人に売ることはできないが、女奴隷に戻すことはできる。
(3)そして、アブラムとハガルの間の肉体関係も、これで途絶える。
(3)ハガルの逃避
①訳語比較
「そしてサライが彼女を苦しめたので、彼女はサライの顔を避けて逃げた」(口語訳)
「それで、サライが彼女をいじめたので、彼女はサライのもとから逃げ去った」(新改訳)
「サライは彼女につらく当たったので、彼女はサライのもとから逃げた」(新共同訳)
②「アナー」という動詞。出エジプト1:11~12に出て来る。
「そこで、彼らを苦役で苦しめるために、彼らの上に労務の係長を置き、パロのために倉庫の町ピトムとラメセスを建てた。しかし苦しめれば苦しめるほど、この民はますますふえ広がったので、人々はイスラエル人を恐れた」
③ユダヤ人の婦人が、エジプト人を苦しめている。これは、皮肉な出来事である。
Ⅱ.ハガルと主の使い(神の恵み)
1. 主の使いの登場(7節)
(1)「主の使い(天使)」として、48回登場する。
(2)「神の使い(天使)」として、11回登場する。
(3)常に、三位一体の第2位格。つまり、受肉前のメシアである。
2.場所
(1)「泉(エイン)」という言葉が、初めて登場。
(2)「荒野」とは、ネゲブの荒野である。
(3)「シュルへの道」とは、エジプトとカナンの地を結ぶ幹線道路。
(4)彼女は、ネゲブとシナイ半島の境にいた。
(5)つまり、エジプトに戻ろうとしていた。
3.主の使いの2つの質問(8節)
(1)「あなたはどこから来て、どこへ行くのか」
(2)ハガルは、最初の質問にだけ答えている。
「私の女主人サライのところから逃げているところです」
(3)エジプトに向かっているが、実際は、行き先が見えずにさ迷っていたのであろう。
4.主の使いの命令(9節)
(1)アブラムの家に帰れ。
(2)サライを見下してはいけない。つまり、いじめられても、謙遜に仕えよということ。
5.主の使いの預言(10~12節)
(1)「あなたの子孫は、わたしが大いにふやすので、数えきれないほどになる」
①「主の使い」は、神ご自身のように語っている。
②アブラムの子孫が数えられないほどの数になるように、アラブ民族もそうなる。
③族長たちは同様の約束を受けたが、女性でこの約束を受けたのは、ハガルだけである。
(2)「見よ。あなたはみごもっている。男の子を産もうとしている。その子をイシュマエルと名づけなさい」
①子どもの性別が預言される。
②神がその子の名を選ばれた。
③イシュマエル(神は聞かれる)
④誕生前に神によって名が与えられた最初の子である。
*イサク 創17:19
*イエス マタ1:21、ルカ1:31
*バプテスマのヨハネ ルカ1:13
⑤イシュマエルという名の理由は、「【主】があなたの苦しみを聞き入れられたから」。
(3)「彼は野生のろばのような人となり、その手は、すべての人に逆らい、すべての人の手も、彼に逆らう。彼はすべての兄弟に敵対して住もう」
①「野生のろばのような人になる」「wild ass」
②これは、罵倒する言葉ではない。イシュマエルは、荒野を渡り歩く遊牧民となる。
③「その手は、すべての人に逆らい」
*荒野の移動の中で、他民族と遭遇する。彼は、攻撃的な性格を示す。
④「すべての人の手も、彼に逆らう」
*攻撃された方が、報復攻撃を仕かけてくる。
*1948年以降の、アラブ人のイスラエルへの攻撃と、イスラエルの側の報復。
⑤「彼はすべての兄弟に敵対して住もう」
*弟のイサクと隣り合って住むが、平和的にではなく、敵対心を持って住む。
6.ハガルの応答(13節)
「そこで、彼女は自分に語りかけられた【主】の名を『あなたはエル・ロイ』と呼んだ」
(1)彼女は、主の天使が神ご自身であることを認識した。
(2)「エル・ロイ」とは、「ご覧になる神」という意味。
(3)「それは、『ご覧になる方のうしろを私が見て、なおもここにいるとは』と彼女が言ったからである」
(4)モーセが同じ体験をしている。出33:22~23
「わたしの栄光が通り過ぎるときには、わたしはあなたを岩の裂け目に入れ、わたしが通り過ぎるまで、この手であなたをおおっておこう。わたしが手をのけたら、あなたはわたしのうしろを見るであろうが、わたしの顔は決して見られない」
Ⅲ.イシュマエルの誕生(失敗の結果)
1.ハガルは、男の子を出産した。
「ハガルは、アブラムに男の子を産んだ。アブラムは、ハガルが産んだその男の子をイシュマエルと名づけた」
(1)ハガルは実母であるが、法的な母はサライである。
(2)命名しているのは、アブラムである。
①ハガルが、自らの体験を告げ、イシュマエルという名にすべきと進言していた。
②アブラムは、それを信じた。
2.アブラムの年齢は、86歳。
「ハガルがアブラムにイシュマエルを産んだとき、アブラムは八十六歳であった」
3.イシュマエルは、約束の子ではない。
(1)アブラムは、さらに14年待たねばならない。
(2)約束の子は、神の恵みによって与えられる。
結論
1.人の失敗
(1)合法的なことが必ずしも神の御心ではない。
(2)不信仰の原因は、時間を見、自分の肉体的な状態を見たことにある。
(3)神のことばへの信頼こそ、真の信仰である。
2.神の恵み
(1)アブラムはハガルを見捨て、サライは彼女をいじめた。
(2)しかし、神は見ておられた。
(3)ハガルは、主の使いが神ご自身であることを認識した。
(4)その方の名を「エル・ロイ」と呼んだ。「ご覧になる神」という意味。
(5)ハガルの窮状に目を留められた神は、私たちの歩みの上にも目を注いでおられる。
3.失敗の結果
(1)アブラムを試されたように、神は私たちをも試される。
(2)「神の約束」は、人間の手によってではなく、神ご自身の時と方法によって成就する。
(3)新約聖書では、ガラテヤ4:21~31に、この秘訣が描かれている。
①パウロは、信仰義認の真理を教えるために、イシュマエルとイサクの関係を例に引く。
②イシュマエルは「女奴隷の子」、イサクは、「自由の女の子」として描かれている。
「兄弟たちよ。あなたがたはイサクのように約束の子どもです。しかし、かつて肉によって生まれた者が、御霊によって生まれた者を迫害したように、今もそのとおりです。しかし、聖書は何と言っていますか。『奴隷の女とその子どもを追い出せ。奴隷の女の子どもは決して自由の女の子どもとともに相続人になってはならない』。こういうわけで、兄弟たちよ。私たちは奴隷の女の子どもではなく、自由の女の子どもです」(ガラ4:28~31)
(4)私たちは、御霊によって生まれ、御霊に導かれて生活をする「自由の女の子ども」。
(5)律法主義的な生活ではなく、御霊に導かれた生活を志そうではないか。
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