私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
出エジプト記(31)—シナイ契約(4)—
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モーセの律法の現代的適用を学ぶ。
出エジ31 出エジプト記21章1節~22章15節
「シナイ契約(4)」
1.文脈の確認
(1)シナイ契約は宗主契約である。
①当時の政治的な契約形式を採用している。
②この契約によって、神はイスラエルの民を正式な契約関係へと招かれた。
(2)シナイ契約の構造
①両者が同意する条項(命令と祝福)(20:3~17)
②挿入句(20:18~26)
③基本条項に付加された諸条項(21:1~23:33)
(3)モーセの律法に関する理解の変遷
①19世紀終わりまでの理解
*モーセの律法は、ローマ法よりも千年も古い最古の法典。
*モーセの律法のユニークさが強調された。
②20世紀初頭、ハムラビ法典(前1700年頃)の発掘
*バビロニアの王ハムラビが布告した。
*モーセの律法よりも少なくとも300年も前にできている。
*判例法の体系は、類似している。
*同態復讐法も、類似している。
*モーセの律法は、ハムラビ法典を手本にしているという説が生まれた。
③20世紀半ば、ウル・ナンム法典(前2000年頃)の発掘
*メソポタミア文明のウル第三王朝・初代王ウル・ナンムによって発布。
*現存する世界最古の法典
*ハムラビ法典よりもさらに古い法典があることが分かった
④古代中近東の法体系には、ある一定の特徴がある。
*モーセの律法も、その特徴に基づいて作られている。
*古代法では、祭儀法(祭司が司る)と市民法(王が司る)とは分離。
*モーセの律法では、祭儀法と市民法は、同じ法体系の中に含まれる。
2.アウトライン
(1)奴隷の扱い(21:1~11)
(2)傷害事件(21:12~32)
(3)物権の侵害(21:33~22:15)
3.きょうのメッセージから、現代的適用を学ぶ。
このメッセージは、モーセの律法の現代的適用を学ぼうとするものである。
Ⅰ.奴隷の扱い(21:1~11)
1.前文(1)
①モーセが仲介者として神の命令を民に伝える。
②イスラエル人の基本的人権を守るための規定
③違反した場合の罰則規定
2.男奴隷(2~6)
(1)ヘブル人の奴隷
①この時代にあっては、貧者には奴隷制は必要不可欠なものであった。
②経済的理由で自分を売る場合がある。
③盗みの代償を支払うために自分を売る場合もある(22:3)。
(2)6年仕え、7年目に去ることができる。
①自由の身として無償で去ることができる。
②手ぶらでなく、物質的祝福を与えて去らせる。
「彼を自由の身にしてやるときは、何も持たせずに去らせてはならない。必ず、
あなたの羊の群れと打ち場と酒ぶねのうちから取って、彼にあてがってやらなけ
ればならない。あなたの神、【主】があなたに祝福として与えられたものを、彼
に与えなければならない。 あなたは、エジプトの地で奴隷であったあなたを、
あなたの神、【主】が贖い出されたことを覚えていなさい。それゆえ、私は、き
ょう、この戒めをあなたに命じる」(申15:13~15)
「彼を自由の身にしてやるときには、きびしくしてはならない。彼は六年間、雇
い人の賃金の二倍分あなたに仕えたからである。あなたの神、【主】は、あなた
のなすすべてのことにおいて、あなたを祝福してくださる」(申15:18)
(3)妻があれば、妻ともに去る。
(4)主人から与えられた妻なら、その妻と、生まれた子どもを置いて行く。
①その妻と子どもは、主人の所有物である。
(5)自由意思による奴隷
①主人のもとに留まり、家族とともに住むことを願った場合
②ある儀式によってその願いが確定する。
「その主人は、彼を神のもとに連れて行き、戸または戸口の柱のところに連れて
行き、彼の耳をきりで刺し通さなければならない。彼はいつまでも主人に仕える
ことができる」(6節)
*彼はその家の所有物となる。
2.女奴隷(7~11)
(1)男奴隷よりも扱いが優しい。
①父が経済的理由で自分の娘を女奴隷として売る。
(2)7年目に去るのとは男奴隷と同じ。
(3)女奴隷だけにある規定
①主人がめかけとなった女奴隷を嫌った場合
*旧約聖書は、めかけの制度を禁止していない。
*彼女が、家族、親戚、友人などによって贖い出されるようにする。
*残った年数を基に、その価格を決める。
*異邦人に売ってはならない(男奴隷の場合も同じ)。
②息子の嫁とした場合は、娘として取り扱う。
③複数のめかけを持った場合、彼女たちを平等に扱う。
*食べ物
*着物
*夫婦の務め(夫婦の交わり)
*このことを行わないなら、女奴隷は無償で去ることができる。
*聖書は、男女の結婚関係を祝福している。雅歌のテーマである。
Ⅱ.傷害事件(21:12~32)
1.死刑が求められる事件
(1)殺人事件(12~14)
①殺人犯は、必ず殺されなければならない。
②過失致死の場合は、逃れの場所に逃げ込むことができる(民35:6~28)。
③遺族は、復讐することができない。
④もし殺人犯がそこに逃げ込んだ場合は、無理やりにでも連れ出し、殺す。
(2)誘拐事件(16)
①いかなる場合でも、犯人は殺されなければならない。
(3)両親への侮辱(15、17節)
①両親に暴力を振るった者は、殺される。
②両親に暴言を吐いた者は、殺される。
2.補償が要求される事件
(1)傷害事件(18~19)
①休業補償をする。
(2)奴隷に暴力を働いた場合(20~21)
①即死させた場合は、相応の罰(死刑ではない)を受ける。
②そうでない場合は、自分で自分の財産を破壊したと解釈される。
③主人が奴隷に暴力を働くことを抑制するための規定
(3)流産の場合(22~23)
①流産させた場合
*その女の夫との交渉で罰金を支払う。
②その女に対する殺傷事故となった場合
*「いのちにはいのち」とは、いのちに値する対価を払うこと。
(4)同態復讐法(24~25)
「目には目。歯には歯。手には手。足には足。やけどにはやけど。傷には傷。打ち傷
には打ち傷」
①過剰な裁きを行わないようにとの意図がある。
②字義通りに解釈すると
*二通りの解釈がある。
*実践においては、物質的補償を差し出すことが多い。
(5)奴隷の人権(26~27)
①目の代償として、その奴隷を自由の身とする。
②歯の代償として、その奴隷を自由の身とする。
3.その他の事件(28~32)
(1)牛が人を殺した場合
①牛は石打ちの刑に処す。
②肉は食べてはならない。
③牛の持ち主は無罪である。
(2)持ち主が、牛に突くくせがあることを知っていた場合
①牛は石で撃ち殺される。
②持ち主は殺人犯と見なされる。
*未必の故意
*死刑か、それに相当する罰金刑
(3)牛が奴隷を殺した場合
①奴隷の主人に、銀貨30シェケルを支払う。
②牛を石打ちの刑に処す。
Ⅲ.物権の侵害(21:33~22:15)
1.物権を侵害した場合
①失われた物と同価の補償を支払う。
2.盗みを働いた場合(22:1)
①数倍にして償う。
②牛は5倍、羊は4倍
③生きたままで見つかった場合は、2倍。
3.どちらに責任があるか分からない場合は、神の前に出て誓う。
①具体的方法は書かれていない。
結論:このメッセージは、モーセの律法の現代的適用を学ぼうとするものである。
1.盗みを働いた場合の償い
(1)牛は5倍、羊は4倍
(2)ルカ19:7~9
「これを見て、みなは、『あの方は罪人のところに行って客となられた』と言ってつぶや
いた。ところがザアカイは立って、主に言った。『主よ。ご覧ください。私の財産の半分
を貧しい人たちに施します。また、だれからでも、私がだまし取った物は、四倍にして返
します』。イエスは、彼に言われた。『きょう、救いがこの家に来ました。この人もアブラ
ハムの子なのですから』」
①モーセの律法が機能していた時代
②ザアカイは、救われた。
*信仰が、モーセの律法に従うという形で明らかになった。
(3)私たちも、信仰によって救われるが、信仰は行動によって表現される。
2.牛が奴隷を殺した場合
(1)奴隷の主人に、銀貨30シェケルを支払う。
①死んだ奴隷の値段
②どんな奴隷でも同じ値段
(2)マタ26:15
「そのとき、十二弟子のひとりで、イスカリオテ・ユダという者が、祭司長たちのところ
へ行って、こう言った。『彼をあなたがたに売るとしたら、いったいいくらくれますか』。
すると、彼らは銀貨三十枚を彼に支払った」
①イエスを売る提案をしたのは、イスカリオテのユダ
②値踏みをしたのは、ユダヤ人の指導者たち
*銀貨30枚とは、銀貨30シェケルのこと。
*イエスを見下した値段である。
③イエスの生涯は、奴隷のそれであった。
3.奴隷
(1)古代世界では、奴隷になることは神々から見捨てられたことを意味する。
(2)契約の民の間では、そうではない。
①7年後に次のチャンスが与えられる。
②やり直しがきく。
③永遠に主人の所有物になるのではない。
(3)自由意志の奴隷(bond slave)という道がある。
①彼は自由になった。
②しかし、家族への愛、主人への愛のゆえに、戸口の柱のところに立つ。
③耳をきりで刺し通される。
(4)ロマ1:1
「神の福音のために選び分けられ、使徒として召されたキリスト・イエスのしもべパウロ」
①「しもべ」とはギリシア語で「デューロス」。
②この言葉は、自由意志の奴隷(bond slave)である。
③パウロは自らを、「デューロス」と呼び、生涯そのように生きた。
④私たちはキリストにあって自由となり、キリストにあって「デューロス」となった。
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