出エジプト記(26)—シナイ契約の準備—

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聖書の救いの構造を理解する。

出エジ26 出エジプト記19章1節~25節

「シナイ契約の準備」

1.文脈の確認

(1)エジプトを出た民は、約束の地を目指して荒野を旅している。

(2)レフィディムから次の宿営地であるシナイの荒野に入った。

  ①15:22~19:2までが、エジプトからシナイの荒野までの旅の記録。

  ②残りの部分(19章から40章)は、すべてシナイの荒野での啓示。

(3)その啓示の内容は、シナイ契約(モーセ契約)と呼ばれるものである。

  ①きょうの箇所は、その契約を結ぶ準備段階である。

  ②契約条項は、20章以降に出てくる。

  2.アウトライン

(1)場所(19:1~2)

(2)イスラエルの召命(19:3~9)

(3)イスラエルの聖別(19:10~15)

(4)神の顕現(シャカイナグローリー)(19:16~25)

  3.きょうのメッセージは、私たちに何を教えているか。

(1)選びの意味

(2)召命の内容

(3)律法と恵みの関係

このメッセージは、聖書の救いの構造を理解するためのものである。

Ⅰ.場所(19:1~2)

  
1.エジプトからシナイの荒野までに要した時間

(1)新改訳 「第三の月の新月のその日に」

  ①3月1日のこと

②1月15日から42日が経過している。

(2)新共同訳 「三月目のその日に」

  ①3月15日のこと

②1月15日からちょうど二ヶ月が経過している。

  ③あるいは、4月15日のことか。

④1月15日からちょうど三ヶ月が経過している。

    (3)いずれにしても、休みながらの移動なので、相当な時間を要した。

(4)これは、出3:12の約束の成就である。

「神は仰せられた。『わたしはあなたとともにいる。これがあなたのためのしるしで

ある。わたしがあなたを遣わすのだ。あなたが民をエジプトから導き出すとき、あな

たがたは、この山で、神に仕えなければならない』」

  ①「しるし」とは、歴史的しるし(後になって分かるしるし)である。

  ②「神に仕える」とは、第一義的には、神を礼拝することである。

  ③モーセは、特別な感慨をもってこの時を迎えたことであろう。

  2.地名と地形

(1)ホレブは山脈、シナイはその山脈の中のひとつの山。

(2)山の麓に広大な平地が広がっている。

  ①恐らく、山の東側であろう。

②200万人前後の民の宿営地として、広大な平地が必要である。

  ③民は、シナイ山に神が下ってこられる様子を目撃する必要があった。

  3.これまでのイスラエルの民の神体験

(1)神の力の体験

  ①エジプトに下った災いの体験

  ②過越の夜の体験

  ③葦の海の体験

(2)神の守りの御手の体験

  ①水の供給

②マナの供給

③アマレクに対する勝利

(3)まだ目覚めていないこと

①神の聖い性質

②神の人類救済計画

③自分たちに与えられた使命

(4)神の視点からは、民の心からエジプトの影響を取り除く作業が待っている。

  ①エジプトの神々は偶像である。

②真の神は唯一である。

③それを教えるために、契約を結ぶ。

④この契約は、宗主契約(宗主国と属国の間の契約)の形式を取っている。

  *【主】が宗主国、イスラエルの民が属国

Ⅱ.イスラエルの召命(19:3~9)

  1.【主】からの呼びかけ(3節)

(1)山の上に雲があり、モーセはそれに向かって上って行った。

  ①シャカイナグローリーのこと

  ②この時点で、山の頂に上ったわけではない。

(2)「あなたは、このように、ヤコブの家に言い、イスラエルの人々に告げよ」

  ①ヤコブの家と、イスラエルの人々は、同じである。

  ②出エジプトの世代のイスラエルの民は、ヤコブ(イスラエル)の子孫である。

  ③過去と現在との連続性を見ることができる。

  ④神は約束をお守りになる。

  2.契約の前提(4節)

「あなたがたは、わたしがエジプトにしたこと、また、あなたがたを鷲の翼に載せ、わた

しのもとに連れて来たことを見た」

(1)過去の回顧

  ①【主】はイスラエルの民をエジプトから解放した。

  ②「鷲の翼に載せ」とは、追って来る敵の手からすみやかに救出したことを指す。

*申32:11

*黙12:14

  ③「わたしのもとに連れて来た」とは、神の山シナイ山に来たことを指す。

(2)イスラエルの民は、以上のことの目撃者となった。

  3.契約の条件(条項)(5a節)

「今、もしあなたがたが、まことにわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るなら」

  (1)訳語の問題

  ①「今」(新改訳、新共同訳)

②「それで」(口語訳)

③神からこれほどの恵みを受けた者として、神に対する責務がある。

(2)「まことにわたしの声に聞き従い」

①真心から

②注意深く耳を傾け

③喜んで従うこと。

(3)「わたしの契約を守るなら」

①これから啓示されることがら

②神からの祝福の啓示

③イスラエルの民の責務の啓示

  4.祝福の約束(5b~6a節)

(1)「あなたがたはすべての国々の民の中にあって、わたしの宝となる。全世界はわ

たしのものであるから」(5b)

①【主】は、全世界の所有者である。

②【主】は、御心のままに祝福し、罰することができる。

③イスラエルの民は、特別な宝(神の私有財産)となる。

④イザ43:4の約束

「わたしの目には、あなたは高価で尊い。わたしはあなたを愛している。だから

わたしは人をあなたの代わりにし、国民をあなたのいのちの代わりにするのだ」

  *この約束は、第一義的にはイスラエルの民に与えられた。

  *神はイスラエルの民を守るために、エジプトを罰した。

  *異邦人クリスチャンは、アブラハム契約の幹に接ぎ木された枝である。

(2)「あなたがたはわたしにとって祭司の王国、聖なる国民となる」(6a節)

①祭司の王国

*奴隷の民ではなく、独立国となる。

  *神を王とした王国となる。

  *神の律法(法律)が統治原則となる。

  *その王国には、祭司職が設けられ、神との交流が維持される。

  *イスラエルの民は、諸国民に対して祭司職を行う民となる。

②聖なる国民

*諸国の中から分離された国民

  *神を知る知識と、神への礼拝を保持する国民

  *神の律法に従って歩む聖なる国民

  5.民の応答(6b~8節)

   (1)「これが、イスラエル人にあなたの語るべきことばである」

  ①あなたがたは、神の力と恵みを体験した。

  ②それゆえ、神の声に聴き従い、神との契約を守りなさい。

  ③そうすれば、あなたがたは神にとって特別な民となる。

(2)モーセは民の長老たちに【主】のことばを伝えた(7節)。

(3)「私たちは【主】が仰せられたことを、みな行います」(8節)。

①民は同意した。

  ②余りにも軽すぎる同意である。

  ③自分の限界を知らなさ過ぎる。

(4)モーセは、民のことばを【主】に届けた。

6.【主】からの答え(9節)

(1)シャカイナグローリーの中から、【主】はモーセに語る。

(2)民は、その声を聞く。

  ①モーセが本当に神と語っていることを知るため

  ②モーセのリーダーシップを民が認めるため

Ⅲ.イスラエルの聖別(19:10~15)

  
1.契約締結のための準備

(1)2日間かけた準備

  ①体と衣服を洗う。内面の聖めを教えるために、外側の聖めを命じる。

  ②男女関係を避ける。

(2)3日目には、【主】がシナイ山に降りて来られる。

  ①民全体の目の前で

  ②シャカイナグローリーそのものである。

  2.シナイ山は聖なる山となる。

(1)周囲に境を設ける必要性が出て来た。

①人間も動物も、その境を越えることは許されない。

(2)角笛の音が長く鳴り響く時、山に登らねばならない。

  3.モーセは民にその通りのことを行わせた。

Ⅳ.神の顕現(シャカイナグローリー)(19:16~25)

  1.神の啓示の最も驚くべきケースが展開されている。

(1)シャカイナグローリーのモチーフ

  ①雷といなずま

  ②密雲

  ③角笛の音

(2)民はみな震え上がった。

(3)モーセは、神を迎えるために彼らを山のふもとに立たせた。

(4)神が山の上に降りて来られた。

  ①全山が煙っていた。

  ②火の中にあって

  ③かまどの煙のように立ち上り

  ④全山が激しく震えた

*破壊的なほどの揺れではない。

*民に恐れを与えるに十分な揺れがあった。

  ⑤角笛の音がいよいよ高くなった。

(5)モーセと神の対話

  ①この喧噪の中でも、神との対話は可能であった。

  ②民は、神の声を聞いた。

  2.シナイ山に上るモーセ

(1)【主】はシナイ山の頂に降りて来られた。

  ①モーセを山の頂に呼び寄せられた。

  ②モーセがシナイ山の頂に登るのは、これが最初である。

(2)【主】からの戒め(21~22節)

  ①境を越えて【主】に近づかないように。

  ②シャカイナグローリーは、神が自然を超越したお方であることを示している。

  ③人間が神に近づくためには、神が用意した方法によらねばならない。

*この方法は、後に啓示される。

*幕屋と祭儀法は、そのためのものである。

  ④この方法には例外がない。祭司たち(レビ族)も例外ではない。

(3)モーセの答え(23節)

  ①民にはすでに警告を発しているので、再度警告する必要はない。

  ②モーセよりも、神の方がイスラエルの民の本質をよく知っている。

(4)【主】からの再度の戒め(24節)

  ①降りて行け。

  ②次は、アロンといっしょに登れ。

  ③それ以外の者は、境を越えてはならない。

  3.シナイ山を下るモーセ

(1)モーセは【主】の命じられたことを民に伝えた。

(2)これで、契約締結の準備ができた。

結論:このメッセージは、聖書の救いの構造を理解するためのものである。

  1.
選びの意味


(1)イスラエルの民は選びの民である。


  ①選民思想は、現代人には人気のない考え方である。


  ②しかし、これを否定するなら、聖書の救いの歴史は成り立たなくなる。


(2)その選びは、神によるものである。


  ①「アブラハムの選び」の延長線上にある。


  ②先ず神が、イスラエルの民に恵みを与え、彼らをエジプトから解放された。


  ③イスラエルの民は、律法を行ったからではなく、恵みによって選民となった。

  2.召命の内容


(1)選びの目的は、全人類を救うためである。


  ①選びのための選びではなく、方法の選びである。


  ②選ばれたがゆえの責務が伴う。それが召命(calling)である。


(2)特別な祝福


  ①神の宝


  ②祭司の王国


  ③聖なる国民


(3)祭司的使命


  ①神の愛と義を、諸国民に示す。


  ②神と諸国民の間に立って、両者をつなげる。


  ③後の歴史が示すように、イスラエルの民はその使命を果たすことに失敗した。

  3.律法と恵みの関係


(1)ヘブ12:18~22


「あなたがたは、手でさわれる山、燃える火、黒雲、暗やみ、あらし、ラッパの響き、


ことばのとどろきに近づいているのではありません。このとどろきは、これを聞いた


者たちが、それ以上一言も加えてもらいたくないと願ったものです。彼らは、『たと

い、獣でも、山に触れるものは石で打ち殺されなければならない』というその命令に

耐えることができなかったのです。また、その光景があまり恐ろしかったので、モー

セは、『私は恐れて、震える』と言いました。しかし、あなたがたは、シオンの山、

生ける神の都、天にあるエルサレム、無数の御使いたちの大祝会に近づいているので

す」

  ①これは、信仰が後退しつつあるユダヤ人信者への警告である。

  ②律法の時代と恵みの時代の対比がなされている。

(2)モーセの律法は、劇的なシャカイナグローリーの中で与えられた。

  ①民は恐れた。

  ②モーセも恐れた(申9:19)

(3)恵みの時代は、メシア誕生のしらせとともに始まった。

  ①ルカ2:8~14

  ②シャカイナグローリーがある。

  ③羊飼いたちは恐れた。

  ④「恐れることはありません。今、私はこの民全体のためのすばらしい喜びを知

らせに来たのです」

  ⑤天の軍勢による賛美

(4)私たちが近づいているのは、地上のシナイ山ではなく、天のエルサレムである。

  ①生ける神の都

  ②天使たちの大宴会

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