ローマ人への手紙(59)—総まとめ—

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ロマ書のまとめを学ぶ。
チャート「神の義の啓示」

「総まとめ」

1.はじめに

    (1)執筆の意図

  ①使徒としての使命

    *所々、かなり大胆に書いた(15:15)。

  ②使徒としての奉仕の原則

    *他人の土台の上に建てない(15:20)。

*これまで、ローマ教会を訪問することができなかった理由がこれである。

      ③スペイン伝道の計画

*ローマ教会からの援助を期待している。

    (2)ロマ書の構造

    ①1~8章が教理

    ②9~11章がイスラエルの救い

    ③12~16章が適用

  (3)ロマ書の講解を終えての感想

    ①12~16章こそ、パウロが最も伝えたかった点ではないか。

    *牧会者としてのパウロ

    ②実践のための土台として、教理の解説がある。

  2.アウトライン

    (1)キリスト者の実践

    (2)義認

    (3)聖化

    (4)栄化

(5)イスラエルの救い

このメッセージは、ロマ書のまとめを学ぼうとするものである。

Ⅰ.キリスト者の実践

 1.全き献身(12:1)

 「そういうわけですから、兄弟たち。私は、神のあわれみのゆえに、あなたがたにお願いし

ます。あなたがたのからだを、神に受け入れられる、聖い、生きた供え物としてささげなさ

い。それこそ、あなたがたの霊的な礼拝です」

  (1)勧告の土台は、「神のあわれみ」である。

    ①これは、1~11章の要約である。

  (2)勧告の内容は、自分の全存在を捧げることである。

   ①旧約時代の供え物は、死んだ動物であった。

   ②新約時代の供え物は、他の命を犠牲にしない。

   ③それは、自発的な供え物である。

   ④それは、霊的な礼拝であり、当然なすべき礼拝である(ロギコス)。

 (3)自発的奴隷としての生活

   ①罪の奴隷から解放された。

   ②自由の身となった。

   ③自らの選択によって神の奴隷となった。

   ④「キリスト・イエスのしもべ」とは、逆説的言葉である。

  2.2つの命令(12:2)

  「この世と調子を合わせてはいけません。いや、むしろ、神のみこころは何か、すなわち、

何が良いことで、神に受け入れられ、完全であるのかをわきまえ知るために、心の一新に

よって自分を変えなさい」

  (1)否定形の命令(外的要素)

  ①「調子を合わせる」は、「サスケイマチゾウ」という動詞である。

  ②受動態(あるいは、中間態。その行動が自分に戻ってくる)

  ③「この時代」が何かの行動を起こし、その影響を受けるということ。

  ④否定的命令形の要点は、「この時代」の要求に同意しないということ。

(2)肯定形の命令(内的要素)

  ①「変える」は、「メタモルフォウ」という動詞である。

  ②これは受動態である。新改訳はこれを能動態に訳しているが、問題あり。

    *ロマ書7章クリスチャンに回帰する危険性がある。

  ③動作の主体は自分以外である。

  ④神が主体の場合、「divine passive」(神的受動態)という言葉がある。

    *聖化は、「divine passive」(神的受動態)の結果起こる祝福である。

  3.教会内での行動(12:3~21)

    (1)みからだの教理

      ①一体性(同じからだに属する)

  ②多様性(異なった働きがある)

  ③調和(愛による賜物の行使)

    (2)プライドへの警告(12:3b)

    「だれでも、思うべき限度を越えて思い上がってはいけません。いや、むしろ、神が

おのおのに分け与えてくださった信仰の量りに応じて、慎み深い考え方をしなさい」

  ①謙遜の勧め

(3)愛の勧め(12:9~21)

  ①19の愛の勧めが記されている。

  4.教会外での行動(13:1~14)

    (1)地上の権威に従う。

      ①権威は、神によって立てられている。

(2)しかし、その権威が神に反抗する場合は、声を上げ、抵抗する。

  ①権威の悪魔化の現象である。

  ②杉原千畝氏、デートリッヒ・ボンヘッファーの例などがある。

  5.グレーゾーンの問題(14:1~15:13)

    (1)ユダヤ人信者と異邦人信者の背景の違い

      ①ロマ書は57年頃に書かれた。

      ②キリストの死と復活から、20数年しか経過していない。

      ③ローマ教会が教会として確立してから、20年前後であろう。

  ④教理的な部分は理解したとしても、実生活の面で分からないことが多い。

    (2)第2次的なことに関しては、議論しない。

      ①自由に振る舞っている人は、信仰の強い人である。

      ②強い人は、弱い人を見下さない(15:1)

「あなたがたは信仰の弱い人を受け入れなさい。その意見をさばいてはいけませ

ん」(新改訳)

「信仰の弱い人を受け入れなさい。その考えを批判してはなりません」(新共同訳)

③弱い人は、強い人を裁かない。

    (3)キリストが私たちの手本である(15:3)

    「キリストでさえ、ご自身を喜ばせることはなさらなかったのです。むしろ、『あなた

をそしる人々のそしりは、わたしの上にふりかかった』と書いてあるとおりです」

Ⅱ.
義認(1~5章)

  
1.過去形の救い

    (1)信仰による神との和解

    (2)義との宣言を受けること

  2.救いに至る信仰

    (1)知識

    「そのように、信仰は聞くことから始まり、聞くことは、キリストについてのみこと

ばによるのです」(ロマ10:17)

  ①救われるためには、福音の内容を理解しなければならない。

  ②福音の3要素(1コリ15:3~5)

      「私があなたがたに最もたいせつなこととして伝えたのは、私も受けたことであ

って、次のことです。キリストは、聖書の示すとおりに、私たちの罪のために死

なれたこと、また、葬られたこと、また、聖書の示すとおりに、三日目によみが

えられたこと、また、ケパに現れ、それから十二弟子に現れたことです」

        *キリストは、私たちの罪のために死なれた。

        *キリストは、葬られた。

    *キリストは、三日目によみがえられた。

    (2)同意

      ①知識と同意だけでは、人は救われない。

      ②悪霊でさえも、知識と同意はある。

③信じない理由は、「信じたくないから」と言う人がいる。

    (3)信頼(ロマ3:22)

    「すなわち、イエス・キリストを信じる信仰による神の義であって、それはすべての

信じる人に与えられ、何の差別もありません」

  ①イエス・キリストをそのようなお方、救い主として信頼すること

  ②父なる神への信頼

  3. 余分な付加物

    (1)公の場での告白

    (2)罪の告白

    (3)洗礼

    (4)悔い改め

    (5)メシアの主権に従う(ロードシップ論)

Ⅲ.聖化(6~8章前半)

 
 1.現在進行形の救い

    (1)多くの人が陥る罠(ロマ7:18~19)

「私は、私のうち、すなわち、私の肉のうちに善が住んでいないのを知っています。

私には善をしたいという願いがいつもあるのに、それを実行することがないからです。

私は、自分でしたいと思う善を行わないで、かえって、したくない悪を行っています」

  ①これは、パウロが救われてからの体験である。

  ②「私」という言葉が、18~19節だけで5回も出てくる。

      ③彼は自分の体験を普遍的体験として語っている。

(2)最大の悲劇は、律法を行うことによって聖化を達成しようとすること。

  ①この理解は、クリスチャンを律法主義に追い込む。

  ②やがては、信仰の休業状態に陥る。

③私たちはこれを「ロマ書7章クリスチャン」と呼ぶ。

  2.聖書が教える聖化とは

    (1)義認も、聖化も、栄化も、すべて信仰により、恵みによる。

      ①「キリストにあって」(位置的真理)

(2)頭の切り替えが必要である。これを「悔い改め」という。

Ⅳ.栄化(8章後半)

  1.未来形の救い

    (1)これが、クリスチャンの希望である。

    (2)ロマ8:28

    「神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がす

べてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています」

  2.完成を願って3つのものがうめいている。

    (1)被造物のうめき(8:18~22)

    (2)神の子たちのうめき(8:23~25)

    (3)御霊のうめき(8:26~27)

  3.キリストにある神の愛から私たちを切り離すものは、存在しない(8:38~39)。

  「私はこう確信しています。死も、いのちも、御使いも、権威ある者も、今あるものも、

後に来るものも、力ある者も、高さも、深さも、そのほかのどんな被造物も、私たちの主

キリスト・イエスにある神の愛から、私たちを引き離すことはできません」

Ⅴ.イスラエルの救い(9~11章)

  1.このテーマの重要性

(1)イスラエルの救いは、神の愛と義に係る重大問題である。

(2)イスラエルは神が人類をどう扱われるかのリトマス試験紙である。

  2.イスラエルの優先性(ロマ1:16)

  「私は福音を恥とは思いません。福音は、ユダヤ人をはじめギリシヤ人にも、信じるすべ

ての人にとって、救いを得させる神の力です」

3.神の知恵に基づく計画

  (1)拒否の現実:イスラエル人の一部しか救われていないのは、神の計画である。

  (2)拒否の理由:イスラエルの拒否の理由は、彼らの頑なさにある。

    ①イスラエルの頑なさは、神の義についての無知から来ている。

  (3)拒否の解決:神の計画通りに進んでいる。

①レムナントの存在がある。イスラエル全体が拒否したのではない。

②イスラエルの拒否は一時的である。

③福音は、異邦人に届けられた(異邦人は、接ぎ木された野生種の枝)。

      ④しかし、やがてイスラエルは民族的救いを経験する。

      ⑤終末論は、イスラエルの救いを土台にして考えなければ、開かれてこない。

  4.異邦人として考えるべきこと

    (1)異邦人信者の使命

      ①ユダヤ人に「ねたみ」を起こさせること

      ②教会は、ユダヤ人に「ねたみ」ではなく、「怒り」を起こさせてきた。

(2)置換神学からの脱却

  ①ロマ11章には、傲慢な異邦人信者へのパウロの怒りが見える。

  ②イスラエルが不信仰に陥ったので、イスラエルを見下す異邦人がいた。

  ③彼らは、異邦人の救いこそ神の計画のクライマックスであると考えた。

  ④置換神学の内容

    *イスラエルは不信仰のゆえに、契約の民としての特権を失った。

    *旧約聖書でイスラエルに約束されていた祝福の預言は、教会が引き継いだ。

(3)聖書のクライマックスは、神の計画がすべて成就し、神の栄光が現れること。

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