ヨハネの黙示録(30)—宗教的バビロンの崩壊—

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大淫婦の滅亡について学ぶ。

「宗教的バビロンの崩壊」

黙17:1~18

1.はじめに

(1)キリストの再臨の前に何が起こるかを見ている。

  ①15章~16章では、大患難時代後半の3年半に起こる出来事が取り上げられた。

    *16章は、第7のラッパの裁きである。

    *「第7のラッパの裁き」=「7つの鉢の裁き」で、最も激しい裁きである。

  ②7つ鉢の裁きに続く出来事が、キリストの再臨である(19章)。

(2)17章と18章の内容

  ①ヨハネは、見た順番に幻を記しているが、幻自体は、時間順には並んでいない。

  ②17章と18章は、「再記述の法則」で解釈する必要がある。

*17章は、大患難時代の前半に起こることの再記述である。

*18章は、大患難時代の後半に起こることの再記述である。

    (3)黙17章と18章に出てくる「バビロン」の意味

      ①文字通り、ユーフラテス川沿いにあるバビロンの町

      ②神に敵対する宗教的・経済的システム

      ③今日の「ウォールストリート」という言葉も、2つの意味を持っている。

  2.アウトライン

    (1)大バビロンの描写(1~6節)

    (2)大バビロンの解説(7~14節)

    (3)大バビロンの滅亡(15~18節)

  3.結論

    (1)神の主権

    (2)忠実な者たち

大淫婦の滅亡について学ぶ。

Ⅰ.大バビロンの描写(1~6節)

   1.1~2節

Rev 17:1 また、七つの鉢を持つ七人の御使いのひとりが来て、私に話して、こう言った。「ここに来なさい。大水の上にすわっている大淫婦へのさばきを見せましょう。

Rev 17:2 地の王たちは、この女と不品行を行い、地に住む人々も、この女の不品行のぶどう酒に酔ったのです。」

     (1)大淫婦と不品行

      ①旧約聖書では、「淫婦」は「偽の宗教」を象徴する言葉である。

      ②「淫行」は、偶像礼拝を象徴する言葉である。霊的姦淫である。

        *通常は、真の神を信じると告白しながら、偶像を拝む行為を指す。

      ③エレ2:20

Jer 2:20 実に、あなたは昔から自分のくびきを砕き、/自分のなわめを断ち切って、/『私は逃げ出さない』と言いながら、/すべての高い丘の上や、/すべての青々とした木の下で、/寝そべって淫行を行っている。

      ④その他の聖句

        *エレ3:6~9

        *エゼ20:30

     (2)この大淫婦は、背教の教会を指す。

      ①組織化された背教の教会が、反キリストの思いを実行するようになる。

      ②携挙の時に地上に残された人たちが、その支配下に入る。

      ③「大水の上に座っている」

*あらゆる民族、国々が、その支配下に置かれることを意味している。

*王たち(政治権力)が、大淫婦を支援している。

      ④「この女と不品行を行い」

        *性的な罪はなく、偶像礼拝のことである。

      ⑤「ぶどう酒に酔った」

        *ぶどう酒には、飲む人を支配する力がある。

        *それと同じように、偽の宗教にも人を酔わせる力がある。

        *偽の宗教に酔ったことのある人を霊的に導くのは、至難の業である。

    (3)大淫婦の登場は、大患難時代の前半に起こる。

      ①その大淫婦は、神の裁きを受けようとしている。

  2.3~4節

Rev 17:3 それから、御使いは、御霊に感じた私を荒野に連れて行った。すると私は、ひとりの女が緋色の獣に乗っているのを見た。その獣は神をけがす名で満ちており、七つの頭と十本の角を持っていた。

Rev 17:4 この女は紫と緋の衣を着ていて、金と宝石と真珠とで身を飾り、憎むべきものや自分の不品行の汚れでいっぱいになった金の杯を手に持っていた。

    (1)ヨハネは、よく見える場所から「ひとりの女」を見た。

①女は、緋色の獣に乗っていた。

    (2)この獣は、黙13:1に出て来たものと同じである(反キリスト)。

      ①ダニ7章の第4の獣(帝国主義)と同じである。

        *いかなる獣にもたとえられない異様な姿をしていた。

*大きな鉄のきばと10本の角を持っていた(10本の角は10人の王)。

*11本目の小さな角が出てきて、初めの角のうち3本が引き抜かれた。

*この小さな角は人格を持ち、豪語する口を持っていた(反キリスト)。

      ②默17:3は、時間的には默13:1よりも前である。

        *獣はまだ政治的権威を掌握していない。

        *今は、女が反キリストを支配している段階にある。

    (3)獣の描写

      ①「緋色」は、反キリストの華麗さを示している。

      ②「神を汚す名で満ちていた」は、神に敵対する性質を示している。

      ③「七つの頭と十本の角」は、後にその意味が解き明かされる。

    (4)女の描写

      ①背教の教会は、多くの富を有し、外面的には非常に魅力的である。

      ②古代世界では、淫婦(娼婦)は、豪華な衣装を身にまとっていた。

        *江戸・吉原における上級遊女(花魁)も、豪華に着飾っていた。

      ③今日でも、ある教派では、高位の聖職者が豪華絢爛な衣装をまとっている。

    (5)金の杯は、儀礼的宗教の象徴である。

      ①金の杯は、外面的には魅力的である。

      ②しかし、その杯は汚れに満ちている。

      ③エレ51:7

Jer 51:7 バビロンは主の手にある金の杯/これが全世界を酔わせた。国々はその酒を飲み/そのゆえに、国々は狂った。

  3.5節

Rev 17:5 その額には、意味の秘められた名が書かれていた。すなわち、「すべての淫婦と地の憎むべきものとの母、大バビロン」という名であった。

    (1)「すべての淫婦と地の憎むべきものとの母、大バビロン」

      ①古代ローマ世界では、娼婦は自分の名を書いた布で額を覆っていた。

      ②大淫婦も、自分の名を額に記していた。

    (2)偽の宗教は、バビロンから始まり、バビロンで終わる。

      ①ニムロデは、バベルを建設した人物である(創10:8~12)。

      ②バベルの塔の出来事(創11:1~9)

      ③バベルは後にバビロンと呼ばれるようになった。

      ④大患難時代の前半、統一化された教会の中心がバビロンに置かれる。

   4.6節

Rev 17:6 そして、私はこの女が、聖徒たちの血とイエスの証人たちの血に酔っているのを見た。私はこの女を見たとき、非常に驚いた。

     (1)大淫婦は、偽のキリストの花嫁である。

      ①偽の教会は、大患難時代の前半に、多くの聖徒たちの命を奪う。

      ②第5の封印の裁きでは、多くの殉教者が出ていた。

    (2)大患難時代の後半になると、組織化された背教の教会は別のものに置き換わる。

      ①反キリストを礼拝することを要求する、偽の宗教が出現する。

Ⅱ.大バビロンの描写の解説(7~14節)

   1.7節

Rev 17:7 すると、御使いは私にこう言った。「なぜ驚くのですか。私は、あなたに、この女の秘義と、この女を乗せた、七つの頭と十本の角とを持つ獣の秘義とを話してあげましょう。

     (1)ヨハネが幻の意味を理解できなかったので、天使が解説を始める。

      ①獣の解説(7~14節)

        *大淫婦を支援している政治権力の本質が明らかになる。

      ②女の解説(15~18節)

        *大バビロンの崩壊の預言が与えられる。

  2.8節

Rev 17:8 あなたの見た獣は、昔いたが、今はいません。しかし、やがて底知れぬ所から上って来ます。 そして彼は、ついには滅びます。 地上に住む者たちで、世の初めからいのちの書に名を書きしるされていない者は、その獣が、昔はいたが、今はおらず、やがて現れるのを見て驚きます。

    (1)「昔いたが、今はいません。しかし、やがて底知れぬ所から上って来ます」

①これは、反キリストの描写である。

      ②反キリストは、殺されるまでは生きていた。

③今や、底知れぬ所から上がって来ようとしている。

  *黙13:3~4、12~14

    (2)「そして彼は、ついには滅びます」

      ①黙19:20

Rev 19:20 すると、獣は捕らえられた。また、獣の前でしるしを行い、それによって獣の刻印を受けた人々と獣の像を拝む人々とを惑わしたあのにせ預言者も、彼といっしょに捕らえられた。そして、このふたりは、硫黄の燃えている火の池に、生きたままで投げ込まれた。

    (3)「世の初めからいのちの書に名を書きしるされていない者」

      ①この書は、「小羊のいのちの書」である。

②黙13:8

Rev 13:8 地に住む者で、ほふられた小羊のいのちの書に、世の初めからその名の書きしるされていない者はみな、彼を拝むようになる。

      ③名を記されていない者たちは、不信者たちである。

      ④彼らは、反キリストの復活を見て驚く。

  3.9~10節

Rev 17:9 ここに知恵の心があります。七つの頭とは、この女がすわっている七つの山で、七人の王たちのことです。

Rev 17:10 五人はすでに倒れたが、ひとりは今おり、ほかのひとりは、まだ来ていません。 しかし彼が来れば、しばらくの間とどまるはずです。

     (1)「ここに知恵の心があります」

①「知恵のある考えが必要である」(新共同訳)という意味である。

②獣の正体は複雑なので、それを理解するためには知恵が必要である。

    (2)獣の正体

      ①「7つの山」は、ローマのことではない。

      ②7つの頭=7つの山=7人の王たち

      ③5人はすでに倒れたが、ひとりは今おり、ほかのひとりはまだ来ていない。

        *ヨハネが黙示録を書いている時点での状況である。

      ④7つの頭(7人の王たち)とは誰か。

        *エジプト、アッシリヤ、バビロン、メド・ペルシヤ、ギリシア

        *ローマ

*反キリスト

      ⑤フルクテンバウム説

        *第4の獣(帝国主義)を7段階に区分する。

        *第7段階が、反キリストの段階である。

    (3)「しかし彼が来れば、しばらくの間とどまるはずです」(新改訳)

      ①「この王が現れても、位にとどまるのはごく短い期間だけである」(新共同訳)

      ②黙13:5では、3年半である。

Rev 13:5 この獣にはまた、大言と冒涜の言葉を吐く口が与えられ、四十二か月の間、活動する権威が与えられた。

  4.11~13節

Rev 17:11 また、昔いたが今はいない獣について言えば、彼は八番目でもありますが、先の七人のうちのひとりです。そして彼はついには滅びます。

Rev 17:12 あなたが見た十本の角は、十人の王たちで、彼らは、まだ国を受けてはいませんが、獣とともに、一時だけ王の権威を受けます。

Rev 17:13 この者どもは心を一つにしており、自分たちの力と権威とをその獣に与えます。

     (1)反キリストは、7番目の頭(王)である。

      ①と同時に、8番目の角である。

      ②彼は、10人の王たちの中の3人を滅ぼすので、8番目の角となる。

    (2)10本の角=10人の王たち

      ①まだ力を持っていない。

      ②やがて、反キリストによって王としての権威を受け、同じ時期に統治する。

      ③彼らの支配は、短期間で終わる。

      ④彼らは、心を一つにして、反キリストに仕える。

  5.14節

Rev 17:14 この者どもは小羊と戦いますが、小羊は彼らに打ち勝ちます。なぜならば、小羊は主の主、王の王だからです。また彼とともにいる者たちは、召された者、選ばれた者、忠実な者だからです。」

     (1)彼らは、小羊に打ち負かされる。

      ①ハルマゲドンの戦い

      ②小羊は、主の主、王の王である。

      ③小羊とともにいる者たちは、選ばれた者、忠実な者である。

Ⅲ.大バビロンの滅亡(15~18節)

   1.15節

Rev 17:15 御使いはまた私に言った。「あなたが見た水、すなわち淫婦がすわっている所は、もろもろの民族、群衆、国民、国語です。

    (1)偽の宗教は、全世界を支配するようになる。

      ①「水」は、世界の総人口を示す言葉である。

      ②真の宗教は人々に仕えるが、偽の宗教は人々を支配する。

  2.16~17節

Rev 17:16 あなたが見た十本の角と、あの獣とは、その淫婦を憎み、彼女を荒廃させ、裸にし、その肉を食い、彼女を火で焼き尽くすようになります。

Rev 17:17 それは、神が、みことばの成就するときまで、神のみこころを行う思いを彼らの心に起こさせ、彼らが心を一つにして、その支配権を獣に与えるようにされたからです。

    (1)反キリストが大淫婦に取って代わる。

      ①大患難時代の前半、反キリストは大淫婦を利用しての世界統一化に成功する。

②もはや、大淫婦の助けは不要となった。

      ③そこで、反キリストは、10人の王たちの力を借りて、大淫婦を滅ぼす。

    (2)大患難時代の中間で、反キリストは自分を礼拝するよう人々に迫る。

      ①ダニ9:27、11:26~38

      ②マタ24:15

      ③2テサ2:4

      ④黙13:8、15

      ⑤このことは、すでに学んだ。それゆえ、この箇所を再記述と呼ぶのである。

    (3)反キリストが支配権を持つのは、神の計画によることである。

      ①反キリストの支配は、短命で終わる。

  3.18節

Rev 17:18 あなたが見たあの女は、地上の王たちを支配する大きな都のことです。」

    (1)バビロンは、実際の都である。

      ①と同時に、偽の宗教システムである。

      ②女は、偽の宗教システムの擬人化である。

結論:

  1.神の主権

    (1)キリスト教は、世界観であり、歴史観である。

    (2)人類の歴史は、神の永遠の目的が成就する過程である。

    (3)2テモ1:9

2Ti 1:9 神は私たちを救い、また、聖なる招きをもって召してくださいましたが、それは私たちの働きによるのではなく、ご自身の計画と恵みとによるのです。この恵みは、キリスト・イエスにおいて、私たちに永遠の昔に与えられたものであって、

2Ti 1:10 それが今、私たちの救い主キリスト・イエスの現れによって明らかにされたのです。キリストは死を滅ぼし、福音によって、いのちと不滅を明らかに示されました。

    (4)神は、悪に対して主権を持っておられる。

    (5)神は、悪霊たちが世界の王たちをハルマゲドンに招集することを許された。

      ①黙16:13~16

    (6)10人の王たちの行動の背後に、神の主権が働いている。

      ①黙17:17

Rev 17:17 それは、神が、みことばの成就するときまで、神のみこころを行う思いを彼らの心に起こさせ、彼らが心を一つにして、その支配権を獣に与えるようにされたからです。

    (7)神の主権の最終的な現れが、黙示録21章と22章である。

  2.忠実な者たち

    (1)黙17:14

Rev 17:14 この者どもは小羊と戦いますが、小羊は彼らに打ち勝ちます。なぜならば、小羊は主の主、王の王だからです。また彼とともにいる者たちは、召された者、選ばれた者、忠実な者だからです。」

    (2)信者は、地の基が据えられる前から、召された者、選ばれた者、忠実な者である。

    (3)聖書預言は信頼できる。

      ①メシアの初臨によって、100以上の旧約聖書の預言が成就した。

      ②終末に関する預言も、すべて成就すると信じることができる。

    (4)クリスチャンの間に広がる不可知主義をどう受け止めるか。

    (5)終末時代への備えは、聖書預言を信じることによって可能となる。

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