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メシアの生涯(202)—墓の封印—
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メシア復活のための舞台設定について考えてみよう。
「墓の封印」
マタ27:61~28:1
1.はじめに
(1)文脈の確認
①福音の三要素が展開されて行く。
*キリストの死
*埋葬
*復活
(2)ユダヤ的時間の確認
①木曜の日没後、イエスは弟子たちと過越の食事を食した。
②金曜の午前9時、イエスは十字架にかけられた。
・祭司長たちは、同じ時間に過越の子羊をほふった。
③金曜の午後3時、イエスは息を引き取った。
・この日は、種なしパンの祭り(7日間続く)の第1日目である。
④金曜の日没前に、イエスは埋葬された。
⑤土曜日(安息日)に、墓に封印がされた。
⑥日曜日(安息日が明けると)、女たちが行動を開始した。
(3)A.T.ロバートソンの調和表
§168 イエスの墓を見張る女たち
マコ15:47、マタ27:61~66、ルカ23:55~56
§169 イエスの墓を訪問する女たち
マコ16:1、マタ28:1
2.アウトライン
(1)女たち
(2)祭司長とパリサイ人たち
(3)ピラト
(4)女たち
3.結論:
(1)三日目の復活
(2)復活の神学的意義
メシア復活のための舞台設定について考えてみよう。
Ⅰ.女たち
1.61節
Mat 27:61 そこにはマグダラのマリヤとほかのマリヤとが墓のほうを向いてすわっていた。
(1)マコ15:47
Mar 15:47 マグダラのマリヤとヨセの母マリヤとは、イエスの納められる所をよく見ていた。
①マグダラのマリア
②ヨセの母マリア(クロパの妻マリア)
(2)彼女たちは、アリマタヤのヨセフとニコデモが去った後も、そこに残った。
①彼女たちは、墓の番をしていた(安息日でなければ、徹夜をしただろう)。
②彼女たちは、イエスの復活を予期していなかった。
③安息日は休んで、その翌日、墓に来ようとしていた。
④イエスの埋葬を完全に行うためか、自分たちも何かしたいと思った。
(3)ベタニヤのマリアがいない。
①彼女は、イエスのそばに座って教えを聞いていたことがある。
②彼女は、すでにイエスのために「埋葬の準備」を終えていた。
Ⅱ.祭司長とパリサイ人たち
1.62節
Mat 27:62 さて、次の日、すなわち備えの日の翌日、祭司長、パリサイ人たちはピラトのところに集まって、
(1)次の日、つまり、安息日である。
①女たちは休んでいる。
②祭司長、パリサイ人たちは、活発に動いている。
・イエスを墓に閉じ込めたままにしておくことに深い関心を払っている。
・彼らの「敬虔さ」とは、自分に都合のよいものである。
③彼らは、ピラトのところに集まり、ある要求を出す。
2.63‐64節
Mat 27:63 こう言った。「閣下。あの、人をだます男がまだ生きていたとき、『自分は三日の後によみがえる』と言っていたのを思い出しました。
Mat 27:64 ですから、三日目まで墓の番をするように命じてください。そうでないと、弟子たちが来て、彼を盗み出して、『死人の中からよみがえった』と民衆に言うかもしれません。そうなると、この惑わしのほうが、前の場合より、もっとひどいことになります。」
(1)「あの、人をだます男」
①彼らは、イエスという名を口にしない。
②辱めを受けた人物の名を排除するのは、ユダヤ人の伝統である。
・「その名とその記憶が消し去られるように」
(2)「『自分は三日の後によみがえる』と言っていたのを思い出しました」
①彼らはイエスを信じなかったが、イエスのことばは覚えていた。
②彼らは、イエスを悪霊つきと断罪していた。
③彼らは、イエスを「人をだます男」と呼んでいる。
(3)もちろん彼らは、イエスが復活することを信じたわけではない。
①彼らは、弟子たちが死体を盗み出して、復活をでっちあげることを恐れた。
②もしそうなれば、それは生前にイエスが行った惑わしよりもひどいものになる。
(4)イエスの弟子たちも、イエスが復活することを信じていなかった。
Ⅲ.ピラト
1.65‐66節
Mat 27:65 ピラトは「番兵を出してやるから、行ってできるだけの番をさせるがよい」と彼らに言った。
Mat 27:66 そこで、彼らは行って、石に封印をし、番兵が墓の番をした。
(1)ピラトは許可を出した。
①兵士の派遣に同意した。
(2)兵士たちは、墓石に封印をした。
①この墓は、石灰石の岩盤に掘られた横穴式の墓である。
②入り口は、円形の石版でふさがれた。
③家族が中に入る時には、この墓石をころがして入り口を開ける。
④たすき掛けにロープをかけて、恐らく5ケ所に封印をしたのであろう。
・粘土やロウを使用する。
・ローマの印が押された。
⑤この封印を破ると、破った人も、兵士も死刑になる。
⑥ローマ兵にとっては、封印を守る仕事は命がけのものとなった。
(3)ここには、大いなる皮肉がある。
①イエスの敵は、これ以上事態が悪化しないように画策した。
②しかし、彼らがしたことは、結果的にイエスの復活を証言する証拠となった。
③ローマの権力が、封印した墓が開き、空になったことを証言したのである。
・夜、弟子たちがやって来て死体を盗んでという主張を信じる人などいない。
Ⅳ.女たち
1.1節
Mat 28:1 さて、安息日が終わって、週の初めの日の明け方、マグダラのマリヤと、ほかのマリヤが墓を見に来た。
(1)マコ16:1
Mar 16:1 さて、安息日が終わったので、マグダラのマリヤとヤコブの母マリヤとサロメとは、イエスに油を塗りに行こうと思い、香料を買った。
①マグダラのマリア
②ヤコブの母マリア(クロパの妻マリア)
③サロメ(イエスの母マリアの姉妹)
(2)安息日が終わったということは、土曜日の日没になったということ。
①店が開くのは、土曜日の日没後である(ユダヤ的時間では、週の初めの日)。
②女たちは、店に行って香料を買った。
③大急ぎで行われた埋葬を完成させるためであろう。
(3)これで、復活の出来事の舞台が整った。
結論:
1.三日目の復活
(1)マタ16:21
Mat 16:21 その時から、イエス・キリストは、ご自分がエルサレムに行って、長老、祭司長、律法学者たちから多くの苦しみを受け、殺され、そして三日目によみがえらなければならないことを弟子たちに示し始められた。
(2)マタ26:61
Mat 26:61 言った。「この人は、『わたしは神の神殿をこわして、それを三日のうちに建て直せる』と言いました。」
(3)マタイ12:39~40
Mat 12:39 すると、彼らに答えて言われた、「邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、預言者ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう。
Mat 12:40 すなわち、ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるであろう。
(4)以上の表現は、すべて同じ意味である。
①ユダヤ的時間では、少しでもその日にかかっていれば、それは1日である。
②イエスは金曜日の午後3時に死に、日曜日(土曜日の夕刻以降)に復活した。
2.復活の神学的意義
(1)イエスに関して
①ロマ1:4
Rom 1:4 聖なる霊によれば、死人からの復活により、御力をもって神の御子と定められた。これがわたしたちの主イエス・キリストである。
*イエスは神の御子であることが証明された。
②1コリ15:20~23
1Co 15:20 しかし、今やキリストは、眠った者の初穂として死者の中からよみがえられました。
1Co 15:21 というのは、死がひとりの人を通して来たように、死者の復活もひとりの人を通して来たからです。
1Co 15:22 すなわち、アダムにあってすべての人が死んでいるように、キリストによってすべての人が生かされるからです。
1Co 15:23 しかし、おのおのにその順番があります。まず初穂であるキリスト、次にキリストの再臨のときキリストに属している者です。
*これまでも蘇生した人たちはいた。
*しかし、栄光の体に復活したのはキリストが最初である。
*キリストの復活は初穂であり、それに続く復活がある。
③ピリ2:6~9
Php 2:6 キリストは神の御姿である方なのに、神のあり方を捨てられないとは考えず、
Php 2:7 ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられました。人としての性質をもって現れ、
Php 2:8 自分を卑しくし、死にまで従い、実に十字架の死にまでも従われました。
Php 2:9 それゆえ神は、この方を高く上げて、すべての名にまさる名をお与えになりました。
*父なる神は、キリストが律法の要求をすべて満たしたことを宣言された。
(2)信者に関して
①ロマ4:24~25
Rom 4:24 また私たちのためです。すなわち、私たちの主イエスを死者の中からよみがえらせた方を信じる私たちも、その信仰を義とみなされるのです。
Rom 4:25 主イエスは、私たちの罪のために死に渡され、私たちが義と認められるために、よみがえられたからです。
*復活は、信者は義とされていることを保証する。
②エペ1:17~21
Eph 1:17 どうか、私たちの主イエス・キリストの神、すなわち栄光の父が、神を知るための知恵と啓示の御霊を、あなたがたに与えてくださいますように。
Eph 1:18 また、あなたがたの心の目がはっきり見えるようになって、神の召しによって与えられる望みがどのようなものか、聖徒の受け継ぐものがどのように栄光に富んだものか、
Eph 1:19 また、神の全能の力の働きによって私たち信じる者に働く神のすぐれた力がどのように偉大なものであるかを、あなたがたが知ることができますように。
Eph 1:20 神は、その全能の力をキリストのうちに働かせて、キリストを死者の中からよみがえらせ、天上においてご自分の右の座に着かせて、
Eph 1:21 すべての支配、権威、権力、主権の上に、また、今の世ばかりでなく、次に来る世においてもとなえられる、すべての名の上に高く置かれました。
*復活は、信者に働く神の全能の力を保証する。
③エペ1:22~23
Eph 1:22 また、神は、いっさいのものをキリストの足の下に従わせ、いっさいのものの上に立つかしらであるキリストを、教会にお与えになりました。
Eph 1:23 教会はキリストのからだであり、いっさいのものをいっさいのものによって満たす方の満ちておられるところです。
*復活は、キリストが教会のかしらであることを保証する。
*この真理は、信徒にとっても指導者にとっても、チャレンジである。
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