メシアの生涯(197)—十字架上での最初の3時間(1)—

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十字架での最初の3時間の意味について考えてみよう。

「十字架上での最初の3時間(1)」

ヨハ19:18~27

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①イエスは、刑場(ゴルゴタ)に着いた。

②午前9時から正午までの3時間

*人の怒りを体験する時間

③正午から午後3時までの3時間

*神の怒りを体験する時間

      ④今回は、最初の3時間の前半について学ぶ。

    (2)A.T.ロバートソンの調和表

      §164 十字架上での最初の3時間

マコ15:24~32、マタ27:35~44、ルカ23:33~43、ヨハ19:18~27

2.アウトライン

  (1)十字架の形状(18節)

  (2)罪状書き(19~22節)

(3)最初の祈り(ルカ23:34)

  (4)着物の分配(23~24節)

  3.結論:旧約聖書の預言の成就

    (1)十字架を担うイエス

    (2)町の外で苦しむイエス

    (3)十字架上で苦しむイエス

(4)着物をはぎ取られるイエス

(5)ふたりの犯罪人とともに十字架につけられるイエス

十字架での最初の3時間の意味について考えてみよう。

Ⅰ.十字架の形状(18節)

   1.18節

Joh 19:18 彼らはそこでイエスを十字架につけた。イエスといっしょに、ほかのふたりの者をそれぞれ両側に、イエスを真ん中にしてであった。

     (1)イエスは、午前9時に十字架につけられた。

①「十字架につける」という動詞は、「スタウロオウ」である。

      ②「十字架」という名詞は、「スタウロス」である。

    (2)十字架の形状(4種類)

      ①一本の柱

②X字型(ペテロは、X字型の十字架にさかさまにつけられたという伝承がある)

      ③T字型

      ④十字型

    (3)イエスがつけられた十字架はどれか。

①イエスの頭上に罪状書きが釘付けにされた。

  *マタ27:37、マコ15:26

②このことから考えると、①一本の柱、または、④十字型に絞られる。

        *①一本の柱と②X字型は、主にイタリア国内で用いられた。

*100%確実ではないが、④十字型の可能性が大である。

    (4)地面に置かれた十字架の上に寝かされ、体に釘が打ち込まれた。

      ①もし十字型であるなら、3本の釘が用いられた。

        *両手にそれぞれ1本で計2本が打ち込まれた。

          ・手のひらではなく、手首に釘が打たれた。

          ・手のひらに打ったなら、体重を支えることができない。

        *両足を揃えて1本

      ②次に、十字架が立てられ、あらかじめ掘っておいた穴の中に落とされた。

        *罪人は、この状態で数時間から数日生き延びた。

        *水分のみ与えられた。

    (5)イエスを真ん中にして2人の罪人が十字架につけられた。

      ①恐らく、バラバの反乱に加わっていた反逆者たちであろう。

Ⅱ.罪状書き(19~22節)

   1.19~20節

Joh 19:19 ピラトは罪状書きも書いて、十字架の上に掲げた。それには「ユダヤ人の王ナザレ人イエス」と書いてあった。

Joh 19:20 それで、大ぜいのユダヤ人がこの罪状書きを読んだ。イエスが十字架につけられた場所は都に近かったからである。またそれはヘブル語、ラテン語、ギリシヤ語で書いてあった。

     (1)ピラトが罪状書きを書いた。

①罪状書きを付けて十字架刑を執行するのは、当時の習慣である。

②この場合の罪状書きは、「ユダヤ人の王ナザレ人イエス」というタイトルである。

    (2)ヘブル語、ラテン語、ギリシア語で書いてあった。

①都に入る門のそばであったので、そこを通る多くのユダヤ人がそれを読んだ。

      ②文字が読める人は、全員イエスの主張を読むことができた。

   2.21~22節

Joh 19:21 そこで、ユダヤ人の祭司長たちがピラトに、「ユダヤ人の王、と書かないで、彼はユダヤ人の王と自称した、と書いてください」と言った。

Joh 19:22 ピラトは答えた。「私の書いたことは私が書いたのです。」

     (1)祭司長たちは、「ユダヤ人の王」というタイトルを事実として扱うことを嫌った。

      ①彼らは、「彼はユダヤ人の王と自称した」と書き直すことを要求した。

    (2)ピラトは、それを拒否した。

      ①「私の書いたことは私が書いたのです」とは、ピラトの皮肉である。

      ②これまでに十分、お前たちの悪事に協力してきたという思いがある。

      ③神の皮肉は、ここに至ってピラトはようやく真理を宣言したということ。

Ⅲ.最初の祈り(ルカ23:34)

   1.ルカ23:34

Luk 23:34 そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」彼らは、くじを引いて、イエスの着物を分けた。

     (1)ルカの視点は、イエスの死が旧約聖書の預言の成就であるという点ではない。

  ①それは、マタイやヨハネの視点である。

  ②ルカは、イエスが死に瀕しても、罪を赦すメシアであることを示そうとする。

(2)イエスは、自分を殺そうとしている人たちのために祈られた。

  ①無知のゆえに、イエスを殺そうとしている人たち

  ②その罪の重さを認識していなかった人たち

  ③この祈りによって、神の怒りが鎮められた。

Ⅳ.着物の分配(23~24節)

   1.23節a

Joh 19:23a さて、兵士たちは、イエスを十字架につけると、イエスの着物を取り、ひとりの兵士に一つずつあたるよう四分した。

     (1)死刑囚の持ち物を死刑執行者の間で分割するのは、当時の習慣である。

      ①イエスの衣服を4分した。手作りの衣服だったので、今よりも高価であった。

      ②アウター、インナー、頭を包む布、サンダル

   2、23節b~24節

Joh 19:23b また下着をも取ったが、それは上から全部一つに織った、縫い目なしのものであった。

Joh 19:24 そこで彼らは互いに言った。「それは裂かないで、だれの物になるか、くじを引こう。」それは、「彼らはわたしの着物を分け合い、わたしの下着のためにくじを引いた」という聖書が成就するためであった。

    (1)縫い目なしの着物

      ①ギリシア語で「キトン」である。

      ②これは「下着」ではない。

      ③体全体を包み込む、首から足先まである上着である。

      ④大祭司の衣との対比があると思われるが、ヨハネはそれには言及していない。

     (2)その上着は4分すると価値がなくなる。

      ①そこで彼らは、くじを引いた。

      ②これが預言の成就となった。

結論:旧約聖書の預言の成就

      ①神の栄光のため

      ②読者への語りかけ

      ③現代のメシアニック・ジューとの関係

  1.十字架を担うイエス

    (1)創22:6

Gen 22:6 アブラハムは全焼のいけにえのためのたきぎを取り、それをその子イサクに負わせ、火と刀とを自分の手に取り、ふたりはいっしょに進んで行った。

    (2)たきぎを負いながらモリヤの山に登るイサクは、イエスの型である。

      ①父アブラハムに従順に従うイサク

②イエスは、その型の成就である。

  2.町の外で苦しむイエス

    (1)ヘブ13:11~13

Heb 13:11 動物の血は、罪のための供え物として、大祭司によって聖所の中まで持って行かれますが、からだは宿営の外で焼かれるからです。

Heb 13:12 ですから、イエスも、ご自分の血によって民を聖なるものとするために、門の外で苦しみを受けられました。

Heb 13:13 ですから、私たちは、キリストのはずかしめを身に負って、宿営の外に出て、みもとに行こうではありませんか。

    (2)宿営の外で焼かれるいけにえの動物は、イエスの型である。

①イエスは罪のための供え物として、門の外で苦しまれた。

②私たちへの適用は、宿営の外に出て、みもとに行くことである。

  3.十字架上で苦しむイエス

    (1)詩22:14

Psa 22:14 私は、水のように注ぎ出され、/私の骨々はみな、はずれました。/私の心は、ろうのようになり、私の内で溶けました。

    (2)十字架が立てられ、穴に落ち込むときに、体に衝撃が走る。

      ①体中の関節がはずれる。

      ②イエスの苦しみは、この預言の成就である。

  4.着物をはぎ取られるイエス

    (1)詩22:18

Psa 22:18 彼らは私の着物を互いに分け合い、/私の一つの着物を、くじ引きにします。

    (2)イエスは、最後の持ち物まで取り上げられた。

      ①イエスの愛は、「余すところのない愛」である。

  5.ふたりの犯罪人とともに十字架につけられるイエス

    (1)イザ53:12

Isa 53:12 それゆえ、わたしは、多くの人々を彼に分け与え、/彼は強者たちを分捕り物としてわかちとる。/彼が自分のいのちを死に明け渡し、/そむいた人たちとともに数えられたからである。/彼は多くの人の罪を負い、/そむいた人たちのためにとりなしをする。

    (2)イエスは罪人と同じようになられた。

      ①イエスは罪人の罪を負って死なれた。

      ②イエスは、復活し、昇天し、今は大祭司として執り成しをしておられる。

      ③信者は、イエスにあってすでに天のところに置かれている。

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