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メシアの生涯(195)—ピラトによる2回目の裁判—
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ヘロデによる2度目の裁判の意味について考える。
「ピラトによる2回目の裁判」
ヨハ18:39~19:16
1.はじめに
*1961年制作のイタリア映画『バラバ』
*スウェーデンの作家ペール・ラーゲルクヴィストの1951年度ノーベル文学賞受賞
小説の映画化
*主演は、アンソニー・クイン
(1)文脈の確認
①宗教裁判の3段階
②政治裁判の3段階
③今回は、政治裁判の第3段階を取り上げる。
④ピラトはイエスをヘロデのもとに送ったが、戻されてきた。
⑤そこでピラトは、自分でイエスを裁かざるを得なくなった。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
§161 ピラトの前での2度目の裁判
マコ15:6~15、マタ27:15~26、ルカ23:13~25、ヨハ18:39~19:16
2.アウトライン
(1)3度目の無罪宣言(39~40節)
(2)4度目の無罪宣言(1~7節)
(3)5度目の釈放の努力(8~12節)
(4)6度目の釈放の努力(13~16節)
3.結論
(1)バラバについて
(2)イエスの受難について
ヘロデによる2度目の裁判の意味について考える。
Ⅰ.3度目の無罪宣言(39~40節)
1.イエスはピラトのもとに戻されてきた。
(1)ルカ23:13~16にあるピラトの言葉
①ヘロデもまたこの人に罪を見つけることができなかった。
②この人は死罪に当たることは何一つしていない。
③懲らしめたうえで、釈放する。
2.ピラトは、当時の習慣を利用してイエスを釈放しようと努力する(39節)。
Joh 18:39 しかし、過越の祭りに、私があなたがたのためにひとりの者を釈放するのがならわしになっています。それで、あなたがたのために、ユダヤ人の王を釈放することにしましょうか。」
(1)過越の祭りの期間、ひとりの罪人を釈放することになっていた。
①ローマは、このような習慣を容認していた。
*民衆の要求に応えて、集団で釈放する場合もあった。
②2種類の釈放があった。
*有罪になっている者の釈放
*裁判にかかる前の釈放(ピラトはこれを意図している)。
(2)ユダヤ人の王か強盗のバラバか。
①ピラトは、民衆はイエスを支持していると思っていた。
②民衆の声を取り上げることで、祭司長、長老たちの圧力をかわそうとした。
③ピラトは、ユダヤ人の王を釈放しようと提案した。
3.裁判の中断
(1)マタ27:19
Mat 27:19 また、ピラトが裁判の席に着いていたとき、彼の妻が彼のもとに人をやって言わせた。「あの正しい人にはかかわり合わないでください。ゆうべ、私は夢で、あの人のことで苦しいめに会いましたから」
①ピラトの妻がエルサレムまで同行していた。
②ローマ世界では、妻が私的助言によって夫に高貴な行動を促すことがあった。
③ピラトの妻がイエスについての夢を見た。
*イエスは正しい人であるので、かかわり合うべきではない。
(2)裁判中にこの知らせが届いたので、裁判は一時中断となった。
①ピラトの妻はイエスを助けようとしたが、結果は逆になった。
②祭司長、長老たちは、民衆を説得する時間を得た。
③教会の伝承では、彼女の名はクローディアで、後に信者になったという。
4.40節
Joh 18:40 すると彼らはみな、また大声をあげて、「この人ではない。バラバだ」と言った。このバラバは強盗であった。
(1)扇動された群衆が、イエスではなくバラバだと、大声で答えた。
①これはピラトにとっては想定外の展開であった。
②イエスを釈放しようとするピラトの努力は失敗に終わった。
Ⅱ.4度目の無罪宣言(1~7節)
1.1~3節
Joh 19:1 そこで、ピラトはイエスを捕らえて、むち打ちにした。
Joh 19:2 また、兵士たちは、いばらで冠を編んで、イエスの頭にかぶらせ、紫色の着物を着せた。
Joh 19:3 彼らは、イエスに近寄っては、「ユダヤ人の王さま。ばんざい」と言い、またイエスの顔を平手で打った。
(1)むち打ちは、イエスを釈放しようとするための策略である。
①ピラトは、血を見れば群衆は満足するだろうと考えた。
(2)兵士たちも、イエスを嘲った。
①いばらの冠を頭にかぶらせた。
②紫色の着物を着せた。
③顔を平手で打った。
2.4~5節
Joh 19:4 ピラトは、もう一度外に出て来て、彼らに言った。「よく聞きなさい。あなたがたのところにあの人を連れ出して来ます。あの人に何の罪も見られないということを、あなたがたに知らせるためです。」
Joh 19:5 それでイエスは、いばらの冠と紫色の着物を着けて、出て来られた。するとピラトは彼らに「さあ、この人です」と言った。
(1)ピラトは、再度イエスをユダヤ人たちの前に連れてきた。
①「見よ、この人だ」は、「エッケ ホモ」(ラテン語)である。
②この時のイエスは、見るも無残な姿であっただろう。
3.6~7節
Joh 19:6 祭司長たちや役人たちはイエスを見ると、激しく叫んで、「十字架につけろ。十字架につけろ」と言った。ピラトは彼らに言った。「あなたがたがこの人を引き取り、十字架につけなさい。私はこの人には罪を認めません。」
Joh 19:7 ユダヤ人たちは彼に答えた。「私たちには律法があります。この人は自分を神の子としたのですから、律法によれば、死に当たります。」
(1)血に飢えたユダヤ人たちを静める方法はなかった。
①彼らは、「十字架につけろ」と激しく叫んだ。
(2)ピラトは、4度目の無罪宣言を行った。
①ピラトは、なんとしても関わりたくなかったのである。
(3)ユダヤ人たちは、本音を口にした。
①「この人は自分を神の子とした」
Ⅲ.5度目の解放の努力(8~12節)
1.8節
Joh 19:8 ピラトは、このことばを聞くと、ますます恐れた。
(1)ピラトは、ローマ流布していた神々が人間の姿を取って現れ、人間を裁くという
物語を聞いていたはずである。
①神々を軽視していた者もいたが、敬意を表する者も多くいた。
②ここでは、イエスの主張とユダヤ人たちの証言が、ピラトに恐れを与えた。
③イエスが持っている静かな威厳が、ピラトに良心の呵責を与え始めた。
(2)新しい訴因が出て来たので、裁判のやり直しが始まる。
①ここで、ピラトは再度官邸に入る。
2.9~11節
Joh 19:9 そして、また官邸に入って、イエスに言った。「あなたはどこの人ですか。」しかし、イエスは彼に何の答えもされなかった。
Joh 19:10 そこで、ピラトはイエスに言った。「あなたは私に話さないのですか。私にはあなたを釈放する権威があり、また十字架につける権威があることを、知らないのですか。」
Joh 19:11 イエスは答えられた。「もしそれが上から与えられているのでなかったら、あなたにはわたしに対して何の権威もありません。ですから、わたしをあなたに渡した者に、もっと大きい罪があるのです。」
(1)ピラトは、イエスの出身地を聞いた。
①単純な質問である。
②彼は、イエスがガリラヤ出身であることを知っていた。
③ピラトには、イエスに対する恐れが芽生えていた。
(2)イエスは沈黙された。
①ピラトは、イエスが自分を弁護しないので不思議に思った。
②ピラトは、自分にはイエスを救う力があると告げた。
(3)イエスは2つのことを告げた(自己弁護ではない)。
①ピラトの権威は、限定的に委託されたものである。
②ピラトよりも、イエスを十字架に付けるために渡した者たちの罪の方が重い。
*ピラトにも罪はある。使3章のペテロのメッセージ。
*使徒信条の中にピラトの名が出てくる。
3.12節
Joh 19:12 こういうわけで、ピラトはイエスを釈放しようと努力した。しかし、ユダヤ人たちは激しく叫んで言った。「もしこの人を釈放するなら、あなたはカイザルの味方ではありません。自分を王だとする者はすべて、カイザルにそむくのです。」
(1)5度目の釈放の努力
①イエスの罪を見出すことができない。
(2)ユダヤ人たちはピラトを脅迫した。
①自分を王とする者はカイザルに背く者である。
②もしイエスを釈放するなら、カイザルに背く行為に加担したことになる。
③そうなれば、あなたは「カイザルの友」ではなくなる。
④当時の皇帝は、テベリオである。
*病気になっており、猜疑心が強く、残酷な状態にあった。
*ピラトは、ユダヤ人たちが皇帝に直訴するのを恐れた。
Ⅳ.6度目の解放の努力(13~16節)
1.13~14節
Joh 19:13 そこでピラトは、これらのことばを聞いたとき、イエスを外に引き出し、敷石(ヘブル語ではガバタ)と呼ばれる場所で、裁判の席に着いた。
Joh 19:14 その日は過越の備え日で、時は第六時ごろであった。ピラトはユダヤ人たちに言った。「さあ、あなたがたの王です。」
(1)官邸の中庭の「敷石」と呼ばれる場所で判決が下される。
①この日は、7日間の種なしパンの祭りの備え日であた。
②第6時とは、午前6時である。
③ピラトは、「あなたがたがの王」ですと皮肉を言った。
2.15~16節
Joh 19:15 彼らは激しく叫んだ。「除け。除け。十字架につけろ。」ピラトは彼らに言った。「あなたがたの王を私が十字架につけるのですか。」祭司長たちは答えた。「カイザルのほかには、私たちに王はありません。」
Joh 19:16 そこでピラトは、そのとき、イエスを、十字架につけるため彼らに引き渡した。
(1)ユダヤ人たちは、「殺せ。殺せ。十字架につけろ」と激しく叫んだ。
(2)マタ27:24~25
Mat 27:24 そこでピラトは、自分では手の下しようがなく、かえって暴動になりそうなのを見て、群衆の目の前で水を取り寄せ、手を洗って、言った。「この人の血について、私には責任がない。自分たちで始末するがよい。」
Mat 27:25 すると、民衆はみな答えて言った。「その人の血は、私たちや子どもたちの上にかかってもいい。」
①ピラトは水で手を洗ったが、それで罪がなくなったわけではない。
②「その人の血は、私たちや子どもたちの上にかかってもいい」
③この成就は、紀元70年のエルサレム崩壊である。
④マタイだけがこのことを記している。
*赦されない罪の結果を追いかけているのは、マタイだけである。
(3)「あなたがたの王を私が十字架につけるのですか」
①6度目の解放の努力
(4)ユダヤ人たちは、「カイザルのほかには、私たちに王はありません」と答えた。
①ユダヤ人の王(メシア)を拒否した。
②ローマへの忠誠を誓った。
③イエスが死刑判決を受け、バラバが釈放された。
結論
1.バラバについて
(1)相当な悪人である。
①ピラトは、バラバとイエスを並べたなら、民衆はイエスを選ぶと思った。
②バラバは、強盗であった。ギリシア語の「レイステイス」。
*反逆者、愛国心を隠れ蓑にして暴力行為を行う者たちのリーダー
*当時は、このような反逆行為は頻繁に起こっていた。
(2)バラバは名前ではなく、タイトルである。
①バル(息子)+アバ(よく知られた父)
②アラム語の本名は、「イェシュア バル アバ」である。
*オリゲネスが記している。
*イエスと同じ名前である。
(3)イエスの罪状は、そのままバラバのものであった。
①イエスはそのバラバの身代わりとなった。
②バラバは、私たちクリスチャンの象徴でもある。
2.イエスの受難について
(1)むち打ち
①ユダヤ人のむち打ち
*39回で止める(申25:3は40回までと規定している)。
*短い革のひもに取っ手を付け、背中だけを打つ。痛いが、死ぬことはない。
*パウロは、5回ユダヤ人のむち打ちを経験している。
②ローマ人のむち打ち
*回数の制限はないので、死に至ることもあった。兵士が疲れるまで打った。
*長い革のひもを使った。
*ひもの先に、釘、ガラス、羊の骨、鋭利な金属片などを付けていた。
*背中だけでなく、胸、わき腹、顔まで打たれた。
*背骨が見えたり、内臓が飛び出たりすることもあった。
*むち打ちの後のイエスの顔は破壊されていたであろう。
*イザ52:14
Isa 52:14 多くの者があなたを見て驚いたように、/──その顔だちは、/そこなわれて人のようではなく、/その姿も人の子らとは違っていた──
(2)嘲りの数々
①茨の冠
②紫色の着物
③顔を打たれる。
④つばきをかけられる(マタ27:30)。
⑤創3:18
Gen 3:18 土地は、あなたのために、/いばらとあざみを生えさせ、/あなたは、野の草を食べなければならない。
(3)イエスは、主のしもべとして、私たちの罪をご自身の上に背負われた。
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