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メシアの生涯(173)—過越の食事(1)—
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過越の食事を通して新しい契約について学ぶ。
「過越の食事(1)」
(1)「食前のことば」 ルカ22:14~16
(2)「第一の杯」 ルカ22:17~18
1.はじめに
(1)文脈の確認
①ベタニヤで晩餐会とユダの裏切りで、火曜日が終わった。
②水曜日は休息の日であった。
③木曜日に、ペテロとヨハネは過越の食事の準備をした。
④日没後(金曜日)、過越の食事が始まった。
(2)過越の食事の手順(ロバートソンの順番とは異なる)
①食前のことば
②第一の杯
③洗足とユダの裏切りの予告(1)
④カルパス(野菜)とユダの裏切りの予告(2)
⑤2枚目の種なしパン(マッツァ)
⑥ハロセットとユダの裏切りの予告(3)
⑦第三の杯
⑧偉大さに関する教え
⑨ペテロの拒否の予告
⑩ハレル(賛美)
(3)A.T.ロバートソンの調和表
§144a 「食前のことば」 ルカ22:14~16
§148 「第一の杯」 ルカ22:17~18
2.アウトライン
(1)食前のことば(ルカ22:14~16)
(2)第一の杯(ルカ22:17~18)
3.結論:ルカ22:15
(1)意味の解説
(2)私たちへの適用
過越の食事を通して新しい契約について学ぶ。
Ⅰ.食前のことば(ルカ22:14~16)
1.14節
Luk 22:14 さて時間になって、イエスは食卓に着かれ、使徒たちもイエスといっしょに席に着いた。
(1)木曜日の日没後に、イエスは二階の大広間に来られた。
①午後6時過ぎに食事が始まる。
②使徒たちもいっしょに席に着いた。
*ギリシア語で「アナピプトウ」。英語で「recline」。横になる。
③当時は、コの字型の低いテーブルで食事をした。
*左肘をついて横になり、右手で食べた。
*日常の食事は、座って食べていた。
④ユダもともに席に着いた。
(2)過越の食事(セデル)の手順は、中間時代に始まったとされている。
①それが今日まで継続している。式文はハガダー。
②イエスと弟子たちは、ユダヤ人たちが今も行っている手順で過越の食事をした。
(3)テーブルの上に用意された食事(出エジプトの象徴)
①小羊のロースト
②種なしパン(マッツァ)
③カルパス(野菜)
④ハロセット(クルミとリンゴを混ぜたもの)
⑤マロール(苦菜)
2.15節
Luk 22:15 イエスは言われた。「わたしは、苦しみを受ける前に、あなたがたといっしょに、この過越の食事をすることをどんなに望んでいたことか。
(1)「苦しみを受ける前に」
①イエスは、十字架の死が目前に迫っていることを認識していた。
(2)「あなたがたといっしょに」
①イエスをメシアと信じた人たち
②イエスの招きに応答した人たち
③家も仕事も捨てた人たち
④3年間生活を共にしたひとたち
(3)「この過越の食事をすることをどんなに望んでいたことか」
①過越の祭りは、エジプトからの解放を記念する祭りである。
②さらに、子羊の血による贖いを記念する祭りでもある。
③この過越の食事が、過越の祭りの成就である。
④イエスは、過越の子羊の成就である。
⑤イエスは、新しい出エジプトを成就される。
3.16節
Luk 22:16 あなたがたに言いますが、過越が神の国において成就するまでは、わたしはもはや二度と過越の食事をすることはありません。」
(1)禁欲の誓いは、当時のユダヤ人たちの間では日常的なことであった。
①「○○となるまでは、私は○○を食べない」
②「○○となるまでは、私は○○を控える」
(2)「過越が神の国において成就するまでは」
①「神の国」とは、メシア的王国である。
②旧約聖書は、メシアの来臨とメシア的王国の設立を預言していた。
③メシアの初臨は成就したが、メシア的王国の設立はまだ成就していない。
④メシア的王国が設立されたなら、旧約聖書の預言はすべて成就する。
⑤その時、神はご自身の民を安息へと導かれたことになる。
(3)これは、メシア的王国が設立される前に食される最後の過越の食事である。
①また、新しい契約が締結される食事でもある。
②贖いの血によって新しい契約が締結される。
Ⅱ.第一の杯(ルカ22:17~18)
1.17節
Luk 22:17 そしてイエスは、杯を取り、感謝をささげて後、言われた。「これを取って、互いに分けて飲みなさい。
(1)過越の食事には4つの杯がある。
①感謝の杯(祝福の杯)(聖めの杯)
②裁きの杯
③贖いの杯
④賛美の杯
*①と②は食事の前に飲んだ。
*福音書には①と③だけが出て来る。
(2)ルカ22:17の杯は、①感謝の杯である。
①「感謝をささげて後」とある。
(3)「杯」は単数形である。
①ひとつの杯を回し飲みした。
②4回これが行われた(4つの杯があった)。
2.18節
Luk 22:18 あなたがたに言いますが、今から、神の国が来る時までは、わたしはもはや、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」
(1)イエスは、同じことを繰り返された。
①メシア的王国が地上に設立される。
②そうなるまでは、過越の食事をしない。
(2)「ぶどうの実で造ったもの」
①過越の食事で飲むぶどう酒は、自然発酵したもの。
②酵母を加えて発酵を促進したものは「コシェル」ではない。
(3)ヨハ19:30
Joh 19:30 イエスは、酸いぶどう酒を受けられると、「完了した」と言われた。そして、頭をたれて、霊をお渡しになった。
①イエスは、過越の食事をしないと言われた。
②酸いぶどう酒は、それに当たらない。
結論:ルカ22:15
1.意味の解説
Luk 22:15 イエスは言われた。「わたしは、苦しみを受ける前に、あなたがたといっしょに、この過越の食事をすることをどんなに望んでいたことか。
(1)訳文の比較
「どんなに望んでいたことか」(新改訳)
「切に願っていた」(新共同訳)
「切に望んでいた」(口語訳)
「望みに望みたり」(文語訳)
「With desire I have desired」(KJV、ASV)
(2)この表現は、ヘブル語(アラム語)ではよく使われた。
①ルカは、ヘブル語をギリシア語に翻訳している。
(3)ヨハ3:29の場合
Joh 3:29 花嫁を迎える者は花婿です。そこにいて、花婿のことばに耳を傾けているその友人は、花婿の声を聞いて大いに喜びます。それで、私もその喜びで満たされているのです。
①「with joy rejoices」
(4)イエスの情熱的な願望の表現である。
2.私たちへの適用(聖餐式の時に、この内容を思い出す必要がある)
(1)これは、愛する弟子たちとの別れの食事である。
(2)これは、愛する弟子たちに最後の説教をする場である(ヨハ13~17章)。
(3)これは、より偉大な出エジプト(解放)が始まるきっかけとなる食事である。
(4)これは、イエスが私たちとの親しい交わりを切望しておられることを示す食事で
ある。
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