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メシアの生涯(171)—ベタニヤでの出来事—
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イエスを取り巻く人々の動きから、信仰の本質について学ぶ。
「ベタニヤでの出来事」
(1)「十字架の予告」 マコ14:1~2、マタ26:1~5、ルカ22:1~2
(2)「埋葬の準備」 マコ14:3~9、マタ26:6~13、ヨハ12:2~8
(朗読箇所 マタ26:1~5、ヨハ12:2~8)
1.はじめに
(1)文脈の確認
①「オリーブ山での説教」6回が終わった。
②きょうの箇所で、火曜日が終わる。
③日没後は水曜日である。
④ここから2日後に、過越の祭りとなる。
⑤水曜日は休息の日。木曜日は過越の祭りの準備の日、金曜日は十字架の日。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
§140 イエスは十字架の死を予告する。
マコ14:1~2、マタ26:1~5、ルカ22:1~2
§141 ベタニヤのマリアがイエスの埋葬のために香油を注ぐ。
マコ14:3~9、マタ26:6~13、ヨハ12:2~8
2.アウトライン
(1)十字架の予告(マタ26:1~5)
①イエスによる十字架の死の予告(1~2節)
②ユダヤ人の指導者たちの陰謀(3~5節)
(2)埋葬の準備(ヨハ12:2~8)
①マリアの行為(2~3節)
②弟子たちの反応(4~6節)
③イエスの教え(7~8節)
3.結論:
(1)イスラエルの祭りとメシアの生涯
(2)4組の登場人物たち
(3)マリアの信仰
イエスを取り巻く人々の動きから、信仰の本質について学ぶ。
Ⅰ.十字架の予告(マタ26:1~5)
1.イエスによる十字架の死の予告(1~2節)
(1)1節
Mat 26:1 イエスは、これらの話をすべて終えると、弟子たちに言われた。
①「これらの話をすべて終えると」
*これは、オリーブ山での説教が終わったということ。
②マタイの福音書で、この表現は5回出て来る(7:28、11:1、13:53、19:1)。
③いずれも、イエスの公生涯のターニングポイントとなっている。
④この場面では、十字架の予告が始まる。
(2)2節
Mat 26:2 「あなたがたの知っているとおり、二日たつと過越の祭りになります。人の子は十字架につけられるために引き渡されます。」
①過越の祭りは2日後に迫っていた。
②マコ14:1
「さて、過越の祭りと種なしパンの祝いが二日後に迫っていたので、祭司長、律
法学者たちは、どうしたらイエスをだまして捕らえ、殺すことができるだろうか、
とけんめいであった」
③本来は、過越の祭りは1日の祭り、種なしパンの祭りは7日間の祭り。
④イエス時代には、両者が合体して8日間の祭りとなっていた。
⑤今もユダヤ人たちは、8日間の祭りを祝う。
⑥ニサンの月の14日(この年は木曜日)に小羊をほふり食事の準備をする。
⑦過越の食事は、日没後、つまり15日(この年は金曜日)に食する。
(3)イエスによる十字架の予告
①これは、4度目の十字架の予告である(マタ16:21、17:23、20:18)。
②ここでイエスは、十字架の日を特定された。
③弟子たちは、その意味を理解することができなかった。
④弟子たちにとっては、十字架刑は想像すらできないことであった。
2.ユダヤ人の指導者たちの陰謀(3~5節)
(1)3~4節
Mat 26:3 そのころ、祭司長、民の長老たちは、カヤパという大祭司の家の庭に集まり、
Mat 26:4 イエスをだまして捕らえ、殺そうと相談した。
①祭司長(サドカイ派)、律法学者(パリサイ派)、民の長老たち
②大祭司カヤパ(サドカイ派、サンヘドリンのリーダー)の屋敷に集まった。
③ユダヤ人の指導者たちは、イエスを捕えて殺すことで意見の一致を見ていた。
④有罪判決の前に殺すことを決めるのは、律法違反である。
⑤律法の守護者であるべき人たちが、率先して律法を破っていた。
(2)5節
Mat 26:5 しかし、彼らは、「祭りの間はいけない。民衆の騒ぎが起こるといけないから」と話していた。
①指導者たちの2つのゴール
*民衆が見ていないところでイエスを逮捕する。
*過越の祭りの時にイエスを殺すことは避ける。
②彼らは、民衆の暴動を極度に恐れた。
③ユダヤ総督は、祭りの期間カイザリヤからエルサレムに上り駐在した。
④より多くの兵士が配置され、監視体制が敷かれた。
⑤サドカイ派は親ローマであり、現状維持派である。
(3)神のゴール
①メシアは過越の祭りで死ぬ。
②メシアは十字架にかかって死ぬ。
③イザ53:5
「しかし、彼は、私たちのそむきの罪のために刺し通され、私たちの咎のために
砕かれた。彼への懲らしめが私たちに平安をもたらし、彼の打ち傷によって、私
たちはいやされた」
④詩22:11~18
「どうか、遠く離れないでください。苦しみが近づいており、助ける者がいない
のです。…彼らは私をながめ、私を見ています。彼らは私の着物を互いに分け合
い、私の一つの着物を、くじ引きにします」
(4)過越の祭りは、メシアの死の預言的枠組みである。
①もしそうでないなら、イエスはいつ逮捕されてもよかったことになる。
Ⅱ.埋葬の準備(ヨハ12:2~8)
1.マリアの行為(2~3節)
(1)2節
Joh 12:2 人々はイエスのために、そこに晩餐を用意した。そしてマルタは給仕していた。ラザロは、イエスとともに食卓に着いている人々の中に混じっていた。
①ベタニヤのツァラアトに冒された人シモンの家(マタ26:6)。
*恐らく、イエスによって癒された人であろう。
*今も病んでいるなら、村に住めない。
*ましてや、多数の人との会食などは許されないことである。
②マルタが給仕していた。
③ラザロは、食卓に着いている人々の中に混じっていた。
④マルタの一家はシモンと近しい関係にあったのだろう。
(2)3節
Joh 12:3 マリヤは、非常に高価な、純粋なナルドの香油三百グラムを取って、イエスの足に塗り、彼女の髪の毛でイエスの足をぬぐった。家は香油のかおりでいっぱいになった。
①マリアは純粋なナルドの香油をイエスに注いだ。
*頭と足に香油を注ぎ、それを髪の毛でぬぐった。
②香油は300グラムもあり、その価値は300デナリ以上であった。
*労働者のほぼ年収分に相当する。
*このような香油は、普通は女性が新婚の夜のために取っておくものである。
③部屋の中は香油の香りで満ちた。
2.弟子たちの反応(4~6節)
Joh 12:4 ところが、弟子のひとりで、イエスを裏切ろうとしているイスカリオテ・ユダが言った。
Joh 12:5 「なぜ、この香油を三百デナリに売って、貧しい人々に施さなかったのか。」
(1)4~5節
①ユダはイエスを裏切ろうとしていた(後で明らかになった情報である)。
②マタ26:8
「弟子たちはこれを見て、憤慨して言った。『何のために、こんなむだなことをす
るのか。この香油なら、高く売れて、貧しい人たちに施しができたのに』」
*弟子たちも憤慨したが、動機は純粋なものだった。
*不平不満は容易に群れ全体に広がるものである。
(2)6節
Joh 12:6 しかしこう言ったのは、彼が貧しい人々のことを心にかけていたからではなく、彼は盗人であって、金入れを預かっていたが、その中に収められたものを、いつも盗んでいたからである。
①ユダの動機は歪んでいた。
②彼は、金入れから預かったものを盗んでいた。
③この香油も、売れば金になると考えた。
3.イエスの教え(7~8節)
(1)7節
Joh 12:7 イエスは言われた。「そのままにしておきなさい。マリヤはわたしの葬りの日のために、それを取っておこうとしていたのです。
①イエスは、マリアがなぜ香油を注いだのかを知っておられた。
②マタ26:12
「この女が、この香油をわたしのからだに注いだのは、わたしの埋葬の用意をし
てくれたのです」
③マリアは、イエスの死の時が近いことを理解した。
(2)8節
Joh 12:8 あなたがたは、貧しい人々とはいつもいっしょにいるが、わたしとはいつもいっしょにいるわけではないからです。」
①弟子たちには、これからも貧しい人々に仕えるチャンスがある。
②イエスの埋葬の用意ができるのは、この時だけである。
③イエスの死後、数名の婦人たちが墓に行ってイエスを埋葬しようとした。
*しかし、それは実現せず、彼女たちは復活のイエスに出会って驚いた。
結論:
1.イスラエルの祭りとメシアの生涯
(1)レビ記23章にイスラエルの祭りに関する規定がある。
①春の祭りは4つある。
*過越の祭り
*種なしパンの祭り
*初穂の祭り
*七週の祭り(五旬節)
②秋の祭りは3つある。
*ラッパの祭り
*贖罪の日
*仮庵の祭り
(2)イスラエルの祭りは、メシアの生涯の枠組みを提供している。
①春の祭りは、メシアの初臨の枠組みである。
*過越の祭りは、メシアの贖罪死の枠組みである。
②秋の祭りは、メシアの再臨の枠組みである。
*秋の祭りが示していることは、これから成就する。
2.4組の登場人物たち
(1)ユダヤ人の指導者たち
①真っ先にイエスを信じ、民にそれを教えるべき人たちである。
②真っ先にイエスを拒否し、イエスを殺そうとした。
③律法を教えながら、自らは律法に違反した。
④いつの時代も、リーダーの責任は重い。
(2)弟子たち
①不平不満が広がって行った。
②動機は、貧しい人たちへの配慮である。
③イエスには、300デナリの価値がないと判断した。
(3)イスカリオテのユダ
①動機そのものから間違っている。彼は盗人である。
②イエスを裏切ろうとしていた。
(4)マリア
①弟子たちでさえも理解していなかったことを理解していた。
②イエスの死が近いことを直感し、全財産をはたいて香油を買ったのであろう。
3.マリアの信仰
(1)ルカ10:41~42
「主は答えて言われた。『マルタ、マルタ。あなたは、いろいろなことを心配して、気
を使っています。しかし、どうしても必要なことはわずかです。いや、一つだけです。
マリヤはその良いほうを選んだのです。彼女からそれを取り上げてはいけません』」
①マリアの信仰は、みことばを聞くことによって生まれたものである。
(2)マリアは、イエスの復活まで理解していたと思われる。
①彼女は、墓に行った婦人たちの中に含まれていない。
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