私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
メシアの生涯(145)—富に関する教え(1)—
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富に関する教えについて学ぶ。
「富に関する教え(1)」
マコ10:17~31、マタ19:16~20:16、ルカ18:18~30
1.はじめに
(1)文脈の確認
①イエスは、エルサレムへの途上で、さまざまなテーマについて教えた。
②前回は、離婚に関する教えが出て来た。
*パリサイ人たちの質問がきっかけとなった。
*離婚の問題は、当時のユダヤ人社会では論争の的になっていた。
③今回は、富に関する教えが出て来る。
④§123 「幼子を祝福するイエス」は、結論のところで取り上げる。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
§124 富に関する教え
マコ10:17~31、マタ19:16~20:16、ルカ18:18~30
2.アウトライン
(1)富める青年との対話(16~22節)
(2)弟子たちとの対話(23~26節)
(3)ペテロとの対話(27~30節)
(4)ぶどう園の労働者のたとえ話(20:1~16)
(今回は、(1)と(2)を取り上げる)
3.結論
(1)§123と§124の対比
(2)唯一の救いの方法
(3)クリスチャンと富の関係
富に関する教えについて学ぶ。
Ⅰ.富める青年との対話(16~22節)
1.16~17節
Mat 19:16 すると、ひとりの人がイエスのもとに来て言った。「先生。永遠のいのちを得るためには、どんな良いことをしたらよいのでしょうか。」
Mat 19:17 イエスは彼に言われた。「なぜ、良いことについて、わたしに尋ねるのですか。良い方は、ひとりだけです。もし、いのちに入りたいと思うなら、戒めを守りなさい。」
(1)ひとりの人
①青年である(ネアニスコス)(マタ19:20)。20歳から40歳くらいまでの成人
②資産家である(マタ19:22)。
③役人である(ルカ18:18)。「サンヘドリンの議員」か「会堂管理者」である。
④御前にひざまずいた(マコ10:17)。熱心な探究心を示している。
(2)「永遠のいのちを得るためには、どんな良いことをしたらよいのでしょうか」
①ラビ的ユダヤ教によれば、彼はすでに神の恵みを得ている。裕福であるから。
②しかし、彼は救いの確信を得たいと願っている。
*永遠の命を得ているという確信が、救いの確信である。
(3)彼は、「尊い先生」と呼びかけている(マコ10:17)
①この青年は、イエスを霊的指導者として尊敬している。
②しかし、彼にとってイエスは、あくまでも人間である。
③彼は、「アガソス」という言葉を使用している(本質的に善)。
*「尊い」も「良い」も同じギリシア語の「アガソス」である。
*「カロス」という言葉もある(外面的な善)。
④「尊い」とは、ラビに呼びかける際に使用する言葉ではない。
(4)イエスは、「良い方は、ひとりだけです」と答えた。
①「なぜ、わたしを『尊い』と言うのですか。尊い方は、神おひとりのほかには、
だれもありません」(マコ10:18)
②これは正しい神学である。人は堕落しており、神だけが尊いお方である。
③ユダヤ人たちは、神が良い方であることを強調した。「the Good」というと神。
④イエスは、自らの神性を否定しているのではない。
⑤ここでイエスは、この青年が答えるのを待たれた。
*「あなたこそ尊いお方、神です」という告白を期待された。
*そうすれば、「あなたは永遠の命を得ている」と宣告されたはずである。
(5)しかし、青年が答えないので、イエスはモーセの律法を示した。
①「もし、いのちに入りたいと思うなら、戒めを守りなさい」
②業による救いは不可能であることを示そうとされた。
③律法は、人に認罪を与える。
2.18~20節
Mat 19:18 彼は「どの戒めですか」と言った。そこで、イエスは言われた。「殺してはならない。姦淫してはならない。盗んではならない。偽証をしてはならない。
Mat 19:19 父と母を敬え。あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ。」
Mat 19:20 この青年はイエスに言った。「そのようなことはみな、守っております。何がまだ欠けているのでしょうか。」
(1)青年は、非常に敏感で、察しが早い。
①「どの戒めですか」と尋ねている。
②パリサイ派の口伝律法も守るべきなのかという意図がある。
(2)イエスは、十戒の後半(5~10戒)、人間関係に関する律法を示した。
①第5戒:両親を敬え。
②第6戒:殺すな。
③第7戒:姦淫するな。
④第8戒:盗むな。
⑤第9戒:偽証をするな。
⑥第10戒:隣人のものを欲しがるな(隣人愛)。
(3)青年は、「そのようなことはみな、守っております。何がまだ欠けているのでし
ょうか」と言った。
①彼は、霊的に盲目である。
②内的確信としては、「守っている」と思い込んでいる。
③それでも、彼は何かが不足していると感じていた。
④「イエスは彼を見つめ、その人をいつくしんで言われた」(マコ10:21)
*イエスは、彼を愛された。
*彼が神の国に入ることを願われた。
3.21~22節
Mat 19:21 イエスは彼に言われた。「もし、あなたが完全になりたいなら、帰って、あなたの持ち物を売り払って貧しい人たちに与えなさい。そうすれば、あなたは天に宝を積むことになります。そのうえで、わたしについて来なさい。」
Mat 19:22 ところが、青年はこのことばを聞くと、悲しんで去って行った。この人は多くの財産を持っていたからである。
(1)ここでイエスは、彼の本当の問題を指摘された。
①富が、彼の心を支配していた。
②もし彼が義人(イエスを神と信じる信仰によって義とされている)であるなら、
彼は貧しい人たちに愛を示すはずである。
(2)青年は、悲しんで去って行った。
①彼は、隣人を自分自身のように愛していなかったのである。
②つまり、彼はイエスが指摘した戒めを実行していなかったのである。
③彼は救われていない。
④この青年がその後どうなったかは、記されていない。
⑤恐らく、富を手放すことができなかったのであろう。
⑥これは、第1戒の違反である。
「あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない」(出20:3)
Ⅱ.弟子たちとの対話(23~26節)
1.23~24節
Mat 19:23 それから、イエスは弟子たちに言われた。「まことに、あなたがたに告げます。金持ちが天の御国に入るのはむずかしいことです。
Mat 19:24 まことに、あなたがたにもう一度、告げます。金持ちが神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい。」
(1)弟子たちへの教え
「金持ちが天の御国に入るのはむずかしいことです」
「金持ちが神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通るほうがもっとやさしい」
①誇張法である。
②針の穴とは、そういう名称の門ではない。
*中世になってから、「針の穴」という門が出現した。
③縫い針の穴である。
④ルカでは、手術用の針の穴である。
⑤イエスは、人間的な業による救いが不可能であることを教えている。
2.25節
Mat 19:25 弟子たちは、これを聞くと、たいへん驚いて言った。「それでは、だれが救われることができるのでしょう。」
(1)弟子たちもパリサイ派の神学の影響を受けていたことが分かる。
①金持ちは、神の祝福を受けているとの教えがあった。
②金持ちでも救われないとしたら、誰が救われるというのか。
3.26節
Mat 19:26 イエスは彼らをじっと見て言われた。「それは人にはできないことです。しかし、神にはどんなことでもできます。」
(1)人間には不可能なことを、神はなさる。
①金持ちが救われるのは、難しい。
*見える物に信頼しているので、見えない神を信頼することができない。
*神だけが、それを可能にしてくださる。
(2)金持ちにも、貧しい人にも、救いの可能性は備えられている。
①霊的な物乞いになるなら、神は救ってくださる。
結論
1.§123と§124の対比
(1)§123 「幼子たちを祝福するイエス」 マタ19:13~15
Mat 19:13 そのとき、イエスに手を置いて祈っていただくために、子どもたちが連れて来られた。ところが、弟子たちは彼らをしかった。
Mat 19:14 しかし、イエスは言われた。「子どもたちを許してやりなさい。邪魔をしないでわたしのところに来させなさい。天の御国はこのような者たちの国なのです。」
Mat 19:15 そして、手を彼らの上に置いてから、そこを去って行かれた。
①マコ10:14で、イエスは憤っておられる。
②イエスは幼子たちを愛し、彼らを祝福された。
③「天の御国はこのような者たちの国なのです」と言われた。
④無力な幼子は、親に信頼するしか生きる方法はない。
⑤幼子のような信仰を持つことが、救いを得る方法である。
(2)§124 「富める青年」
①彼は、富を神としていた。
②それゆえ、幼子のような信仰を持つことができなかった。
③聖書を学ぶことは、単純の信仰を持つことである。
2.唯一の救いの方法
(1)持っている物をすべて売れば、救われるというのではない。
(2)救いの道は、たった一つである。主イエスに対しる信仰がそれである。
①自分は罪人で、神の聖なる要求に応えることができないとの認識が必要。
②この青年は、持ち物を売って隣人愛を実践することができなかった。
③「もしそれば救いの条件なら、私にはできません。自分の努力によって自分を
救うことはできません。それゆえ、あなたの恵みによって私を救ってください」
と言うべきであった。
3.クリスチャンと富の関係
(1)これは、クリスチャンは金持ちになってはいけないと教えているのではない。
①神は私たちに物質的祝福も与えてくださる。
②クリスチャンは、富の管理者としても召されている。
③将来に備えて、賢く富を管理する責任がある。
(2)クリスチャンは、富の管理者としての使命を再認識すべきである。
①富に縛られる人は、良き管理者ではない。
②今の世界には、助けを必要とする人たちが満ちている。
③今は、主の再臨が近い時代である。
④主は、地上に宝を積むよりも、天に宝を積むように教えておられる。
「自分の宝を地上にたくわえるのはやめなさい。そこでは虫とさびで、きず物に
なり、また盗人が穴をあけて盗みます。分の宝は、天にたくわえなさい。そこで
は、虫もさびもつかず、盗人が穴をあけて盗むこともありません。あなたの宝の
あるところに、あなたの心もあるからです」(マタ6:19~21)
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