メシアの生涯(136)—不正な管理人のたとえ—

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不正な管理人のたとえについて学ぶ。

「不正な管理人のたとえ」

ルカ16:1~13

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①「後の者が先になり、先の者が後になる」という教えがあった。

    ②失われた羊、失くした銀貨、いなくなった息子、という3つのたとえ話

③この箇所では、イエスは弟子たちに教えている。

    ④弟子訓練のためのたとえ話である。

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

    §117 管理人についての3つのたとえ話(16:1~17:10)

    ①不正な管理人のたとえ(弟子たちに)

    ②パリサイ人たちとの対決

    ③金持ちとラザロの物語(パリサイ人たちに)

    ④赦しと奉仕に関する教え(弟子たちに)

  (3)「不正な管理人のたとえ」は、極めて難解である。

    ①イエスが不正を奨励しているかのように読める。

    ②解釈の鍵は、「不正の富」という言葉にある。

    ③このたとえ話は、「悪事」を用いて「良いこと」を教えているのである。

  2.アウトライン

    (1)管理人の不正の発覚(1~2節)

    (2)管理人の悪知恵(3~7節)

    (3)主人の評価(8節)

    (4)イエスによる適用(9~13節)

  3.結論

    (1)富に関する誤解

    (2)富に関するバランスある理解

    (3)ふたりの主人

不正な管理人のたとえについて学ぶ。

Ⅰ.管理人の不正の発覚(1~2節)

   1.1節a

Luk 16:1 イエスは、弟子たちにも、こういう話をされた。

     (1)イエスは、弟子たちに話している。

①これは、弟子訓練のためのたとえ話である。

②聴衆が誰かを判断することが、たとえ話の解釈のために重要である。

    (2)その周りで、パリサイ人たちも聞いている。

      ①彼らは、イエスの教えをあざ笑う(14節)。

  2.1節b~2節

「ある金持ちにひとりの管理人がいた。この管理人が主人の財産を乱費している、という訴えが出された。

Luk 16:2 主人は、彼を呼んで言った。『おまえについてこんなことを聞いたが、何ということをしてくれたのだ。もう管理を任せておくことはできないから、会計の報告を出しなさい。』

    (1)ある金持ちが、ひとりの管理人を雇っていた。

      ①管理人とは、現代のファイナンシャルプランナーや管財人に相当する。

      ②イエス時代、金持ちは資産運用のために管理人を雇うことが一般的だった。

        *管理人は、奴隷の場合も、自由人の場合もあった。

      ③資産は主人のものであり、管理人はその運用を任されているだけである。

    (2)この管理人は、主人の財産を乱費していた。

      ①放蕩息子が父の遺産を浪費したのと似ている。

      ②その噂が主人の耳に入った。

    (3)訳文の比較(2節)

    「おまえについてこんなことを聞いたが、何ということをしてくれたのだ。もう管理

を任せておくことはできないから、会計の報告を出しなさい」(新改訳)

「お前について聞いていることがあるが、どうなのか。会計の報告を出しなさい。も

う管理を任せておくわけにはいかない」(新共同訳)

「あなたについて聞いていることがあるが、あれはどうなのか。あなたの会計報告を

出しなさい。もう家令をさせて置くわけにはいかないから」(口語訳)

「帳簿をごまかしているそうだな。 もっぱらのうわさだぞ。 なんてことだ。 こうな

った以上、やめてもらおう。 報告書を整理しておくんだな」(リビングバイブル)

(4)最初主人は管理人のことを、不正直というよりも無責任と考えている。

  ①それゆえ、解雇する前に、管理人に帳簿を整理する時間を与えた。

Ⅱ.管理人の悪知恵(3~7節)

   1.3節

Luk 16:3 管理人は心の中で言った。『主人にこの管理の仕事を取り上げられるが、さてどうしよう。土を掘るには力がないし、物ごいをするのは恥ずかしいし。

     (1)管理人の頭は急速に回転した。

       ①土掘りは、奴隷か、それ以外に能力のない者の仕事である。

      ②物ごいは、不名誉な職業である。

  2.4~6節

Luk 16:4 ああ、わかった。こうしよう。こうしておけば、いつ管理の仕事をやめさせられても、人がその家に私を迎えてくれるだろう。』

Luk 16:5 そこで彼は、主人の債務者たちをひとりひとり呼んで、まず最初の者に、『私の主人に、いくら借りがありますか』と言うと、

Luk 16:6 その人は、『油百バテ』と言った。すると彼は、『さあ、あなたの証文だ。すぐにすわって五十と書きなさい』と言った。

     (1)主人の債務者たちとは、小作農であろう。

      ①主人に収穫量の中からある歩合を払うことになっている。

      ②収穫期までは、支払う必要はない。

      ③管理人は、負債を減らしてやれば将来自分を雇ってくれるだろうと考えた。

    (2)最初の者

      ①油100バテ → 50バテ

      ②バテとは、「娘」。一人の少女が運べる水の量。

③1バテは、約8.5ガロン(約32リットル)

④100バテは、約3,200リットル

⑤オリーブの木150本分(1000デナリに相当する)

⑥この人は、現代の貨幣価値で約500万円免除された。

   3.7節

Luk 16:7 それから、別の人に、『さて、あなたは、いくら借りがありますか』と言うと、『小麦百コル』と言った。彼は、『さあ、あなたの証文だ。八十と書きなさい』と言った。

     (1)別の人

      ①小麦100コル → 80コル

      ②100コルは、100エーカーの収穫量(2,500デナリに相当する)

      ③この人もまた、約500万円免除された。

      ④免除された割合は異なるが、ほぼ同額が免除されたことになる。

    (2)両者ともに、かなり裕福な人である。

      ①それゆえ、将来雇ってもらえる可能性がある。

    (3)この管理人には知恵がある。

      ①自分が手を染めるのではなく、負債者に修正させている。

        *負債者に罪を犯させている。

      ②書類上の変更なので、発覚の可能性がより低い。

③当時、干ばつの時には負債を減額し、名声を得る人が多くいた。

      ④もし主人が免除を取り消せば、面目を失くす可能性がある。

       ⑤古代世界では、奴隷が主人を出し抜くという物語が流布していた。

Ⅲ.主人の評価(8節)

1.8節

Luk 16:8 この世の子らは、自分たちの世のことについては、光の子らよりも抜けめがないものなので、主人は、不正な管理人がこうも抜けめなくやったのをほめた。

     (1)主人は、不正をほめたのではない。

      ①これは、悪い事を用いた良い教えである。

    (2)未信者(この世の子ら)と信者(光の子ら)との対比がある。

      ①主人は、管理人が抜け目なくやったことをほめたのである。

      ②この管理人は、物質を用いて、自分の将来の備えをしたのである。

Ⅳ.イエスによる適用(9~13節)

   1.9節

Luk 16:9 そこで、わたしはあなたがたに言いますが、不正の富で、自分のために友をつくりなさい。そうしておけば、富がなくなったとき、彼らはあなたがたを、永遠の住まいに迎えるのです。

     (1)地上の富を、魂を勝ち取るために使用すべきである。

      ①「不正の富」(unrighteous mammon)とは、この世の富のことである。

        *これは、ラビ用語である。

      ②「富がなくなったとき」(when you fail)とは、死んだ時という意味である。

        *ギリシア語の「エクレイポウ」である。

      ③地上の富を用いて伝道したなら、天で迎えてくれる人が出る。

        *富の使用によって天に入れるという意味ではない。

   2.10~12節

Luk 16:10 小さい事に忠実な人は、大きい事にも忠実であり、小さい事に不忠実な人は、大きい事にも不忠実です。

Luk 16:11 ですから、あなたがたが不正の富に忠実でなかったら、だれがあなたがたに、まことの富を任せるでしょう。

Luk 16:12 また、あなたがたが他人のものに忠実でなかったら、だれがあなたがたに、あなたがたのものを持たせるでしょう。

     (1)小さい事

①地上の富のことである。

②不正の富のことである。

③他人のもののことである(富は神のもの)。

    (2)大きい事

      ①永遠に価値あるもの(霊的財産)である。

      ②まことの富のことである。

      ③自分が所有できるもののことである(永遠の命は自分のもの)。

    (3)小さい事に忠実な人に、大きい事が委ねられる。

   3.13節

Luk 16:13 しもべは、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、または一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。」

     (1)ふたりの主人に仕えることはできない。

      ①神に仕えるか。

      ②富(マモン)(アラム語)に仕えるか

結論:

  1.富に関する誤解

(1)パリサイ人たちの教え

      ①神は愛する人を富ませる。

      ②富は、神に愛されている証拠である。

    (2)今日の「繁栄の神学」も、同じ教理的過ちを犯している。

      ①信仰によって、健康、富、成功などが手に入るという教えである。

      ②人格の完成については、ほとんど取り上げない。

  2.富に関するバランスのある理解

    (1)地上の富を軽視するのは間違っている。

      ①光の子らは、この世の子ら以上に、富の管理についてたけている必要がある。

      ②神がすべて与えてくださると言って、無責任になるのはよくない。

    (2)地上の富を重視し過ぎるのも間違っている。

      ①富は、「まことの富」を得るために用いるべきである。

      ②「まことの富」とは、救いであり、主イエスとの関係である。

      ③御国の拡大のためにお金を使う人は、幸いである。

  3.ふたりの主人

    (1)奴隷がふたりの主人を持てば、矛盾した命令が来て、働くことができなくなる。

    (2)光の子らはマモンに仕えるではなく、マモンを利用して神に仕えるべきである。

    (3)1テモ6:9~10

「金持ちになりたがる人たちは、誘惑とわなと、また人を滅びと破滅に投げ入れる、

愚かで、有害な多くの欲とに陥ります。金銭を愛することが、あらゆる悪の根だから

です。ある人たちは、金を追い求めたために、信仰から迷い出て、非常な苦痛をもっ

て自分を刺し通しました」

    (例話)アフリカから帰国した宣教師:出迎える人がいない。

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