メシアの生涯(127)—群衆への教え(1)—

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群衆への教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。

「群衆への教え(1)」

ルカ12:54~59

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①弟子たちへの教え 5つのテーマ

    ②群衆への教え 4つのテーマ

    ③イエスの教えの目的

        *群衆は、イエスを目撃し、その教えに耳を傾けてきた。

*しかし、イエスがメシアであることをいまだに信じていなかった。

*そこでイエスは、群衆に信仰の決断を迫った。

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

    §108~110は、ひとかたまりと考えるべきである。

    ①§108 ルカ12:1~59

    ②§109 ルカ13:1~9

    ③§110 ルカ13:10~21

  (3)群衆への教え(4つ)

    ①ルカ12:54~59 「今のこの時代」について

    ②ルカ13:1~9 悔い改めについて

    ③ルカ13:10~17 人間が抱える必要について

    ④ルカ13:18~21 御国のプログラムについて

    (今回は①を取り上げる)

  2.アウトライン

    (1)自然界に見られるしるし(54~55節)

    (2)この時代のしるし(56~57節)

    (3)裁判のたとえ話(58~59節)

  3.結論:

    (1)イエスの教えの要約

    (2)私たちにとっての「今のこの時代」

群衆への教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。

Ⅰ.自然界に見られるしるし(54~55節)

  1.54節

Luk 12:54 群衆にもこう言われた。「あなたがたは、西に雲が起こるのを見るとすぐに、『にわか雨が来るぞ』と言い、事実そのとおりになります。

     (1)西に雲が起こる。

      ①地中海から雨雲が立ち、東に流れてくる。

      ②西の雨雲は、雨が降るしるしである。

    (2)群衆は、知識とそれを受け入れる意志とを持っていた。

  2.55節

Luk 12:55 また南風が吹きだすと、『暑い日になるぞ』と言い、事実そのとおりになります。

     (1)南風が吹きだす。

      ①これは、砂漠から吹いてくる熱風である。

      ②春から夏への移行期に、この風が吹く。

      ③花や草は、一日で枯れる。

    (例話)ガリラヤ湖で、南風の体験をしたことがある。

    (2)群衆は、知識とそれを受け入れる意志とを持っていた。

Ⅱ.この時代のしるし(56~57節)

   1.56節

Luk 12:56 偽善者たち。あなたがたは地や空の現象を見分けることを知りながら、どうして今のこの時代を見分けることができないのですか。

(1)自然界のしるしは見分けても、「今のこの時代」は見分けることができない。

      ①群衆は、霊的しるしについては盲目である。

    (2)「時代のしるし」という言葉

      ①マタイは、「時代のしるし」という言葉を使っている(マタ16:3)。

        *英語では、「the signs of the times」である。

      ②福音書では、「時代のしるし」とは、メシアの初臨のことである。

      ③メシアの初臨は、「今の時代」を見分けるための「時代のしるし」である。

   2.57節

Luk 12:57 また、なぜ自分から進んで、何が正しいかを判断しないのですか。

     (1)訳文の比較

    「また、なぜ自分から進んで、何が正しいかを判断しないのですか」(新改訳)

    「あなたがたは、何が正しいかを、どうして自分で判断しないのか」(新共同訳)

    「また、あなたがたは、なぜ正しいことを自分で判断しないのか」(口語訳)

    「また何故みづから正しき事を定めぬか」(文語訳)

    (2)メシアの初臨がすでに成就していることを認めないのは、彼らの責任である。

      ①パリサイ的ユダヤ教は、聖書を大幅に再解釈していた。

      ②そのため、預言者たちが語った預言の本来の意味が不明瞭になっていた。

      ③その例が、ダニエル書9章の預言である。

        *70週の預言と呼ばれる箇所である。

*これは、メシア到来のタイムスケジュールを教えている。

      ④それゆえ、自ら願うなら、誰でも真理を学ぶことはできる。

      ⑤彼らは、メシアの到来と、御国の提供を目撃している世代である。

    (3)群衆を糾弾することばの中には、イエスの愛が表現されている。

      ①イエスは、その世代の者たちに下る裁きを逃れる道があることを教えている。

      ②その世代の者たちに下る裁きとは、紀元70年に下る物理的な裁きである。

③裁きを逃れる道とは、神との和解である。

④神との和解の必要性について教えているのが、次のたとえ話である。

Ⅲ.裁判のたとえ話(58~59節)

   1.58~59節

Luk 12:58 あなたを告訴する者といっしょに役人の前に行くときは、途中でも、熱心に彼と和解するよう努めなさい。そうでないと、その人はあなたを裁判官のもとにひっぱって行きます。裁判官は執行人に引き渡し、執行人は牢に投げ込んでしまいます。

Luk 12:59 あなたに言います。最後の一レプタを支払うまでは、そこから決して出られないのです。」

     (1)これは借金のゆえの投獄に関するたとえ話である。

      ①返済できなければ、投獄される。

②次に、奴隷にされる。

③最後の1レプタを支払うまでは、自由人とはなれない。

*やもめの献金はレプタ2枚(マタ12:42)。

*最小単位の銅貨

      ④唯一の望みは、家族や知人が弁済してくれることである。

      ⑤あるいは、貸主と和解することである。

    (2)4種類の人たちが登場する(すべて法律用語)。

      ①告訴する者

      ②役人

      ③裁判官

④執行人

    (3)たとえ話の適用

      ①4種類の人たちは、すべて神を指していると考えられる。

      ②地上の係争においては、告訴する者との和解が重要である。

③ましてや、告訴する者が神であるなら、和解はさらに重要な課題となる。

結論

  1.イエスの教えの要約

    (1)自分が住んでいる時代を見分けるべきである。

    (2)迫りくる裁きを逃れる道がある。

    (3)その道とは、自ら進んで預言を学び、イエスをメシアとして信じること。

    (4)ユダヤ人信者は、紀元70年の神殿崩壊において、誰ひとり死ななかった。

    (5)イエスの教えは、その通りに成就した。

    「しかし、エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づ

いたことを悟りなさい。そのとき、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。都の中にい

る人々は、そこから立ちのきなさい。いなかにいる者たちは、都に入ってはいけませ

ん」(ルカ21:20、21)

  ①熱心党がエルサレムを占拠し、ローマに反乱を企てた。

  ②ローマはエルサレムに進攻した。

  ③ユダヤ人信者たちは、これを終末論的出来事として捉えた。

  ④紀元66年、一時的にローマ軍の包囲が解かれた。

  ⑤ユダヤ人信者たちは、ヨルダン川東岸のペラに逃亡し、滅亡を免れた。

  ⑥紀元68年、ローマ軍は再びエルサレムの包囲を開始した。

  ⑦紀元70年、エルサレムは神殿とともに破壊された。

  ⑧この時、約100万人のユダヤ人たちが殺害された。

  ⑨これを境に、一般のユダヤ人とユダヤ人信者の間に溝ができた。

  2.私たちにとっての「今のこの時代」

    (1)明確な聖書の意味が分からなくなっている時代

    (2)自由主義神学

      ①最初から聖書を神のことばとは認めていない。

      ②一般書店に並んでいるキリスト教関係の本は、ほぼこの系統に属するもの。

      ③奇跡の否定

        *出エジプト記の奇跡の否定

        *処女降誕の否定

        *イエスの神性の否定

      ④きょうの箇所は、自由主義神学では読み解けない。

        *イエスの到来がなぜ「時代のしるし」と言えるのか。

        *イエスを信じることが、なぜ逃れの道なのか。

        *イエスはなぜ、エルサレム崩壊を予告できたのか。

    (3)比ゆ的解釈に基づく神学

      ①ユダヤ的解釈から離れた結果、比ゆ的解釈が広まった。

      ②教会は新しいイスラエルであると教える。

      ③これを置換神学という。

        *教会がイスラエルに取って代わった。

        *神がイスラエルために立てておられる計画が分からなくなった。

    (4)字義通りの解釈の回復が重要である。

      ①神は、「時代のしるし」を用意しておられる。

      ②メシアニックジューの増加

    (例話)LCJE(ローザンヌ・ユダヤ人伝道協議会)のジム・メルニック氏

        *9月20日、お茶の水の集会で通訳をした。

        *迫害下のロシアのユダヤ人たち(無神論、ユダヤ性の保持)

        *ロシアからの移住

        *最も福音に心が開かれている。

        *救われたロシア系のユダヤ人たちの影響は大である。

    (5)迫りくる裁きと救いの道

      ①ノアの時代

      ②イエスの時代

      ③そして、「今のこの時代」

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