メシアの生涯(125)—弟子たちへの教え(4)—

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弟子たちへの教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。

「弟子たちへの教え(4)」

ルカ12:35~48

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①パリサイ人の家の食卓で、イエスはパリサイ人たちの儀式主義を糾弾した。

    ②その直後に、イエスの回りにおびただしい数の人たちが集まって来た。

    ③イエスは、弟子たちに、そして、群衆に霊的真理を語った。

④これまでに学んだこと

*弟子たちへの教え①(恐れずに証しせよ)

*弟子たちへの教え②(貪欲に注意せよ)

*弟子たちへの教え③(心配するな)

⑤今回学ぶこと

*弟子たちへの教え④(その日に備えよ)

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

  §108~110は、ひとかたまりと考えるべきである。

    ①§108 ルカ12:1~59

    ②§109 ルカ13:1~9

    ③§110 ルカ13:10~21

  (3)内容

    ①ルカ12:1~53 弟子たちへの教え 5つのテーマ

    ②ルカ12:54~13:21 群衆への教え 4つのテーマ

  2.アウトライン(12:35~53)

      ①恐れずに証しせよ(12:1~12)

      ②貪欲に注意せよ(12:13~21)

      ③心配するな(12:22~34)

      ④その日に備えよ(12:35~48)

      ⑤誤解されることを恐れるな(12:49~53)

     (今回は④を取り上げる)

  3.結論:

    (1)しもべに仕える主人

    (2)しもべに全財産を委ねる主人

弟子たちへの教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。

Ⅳ.その日に備えよ(35~48節)

  1.35~36節

Luk 12:35 腰に帯を締め、あかりをともしていなさい。

Luk 12:36 主人が婚礼から帰って来て戸をたたいたら、すぐに戸をあけようと、その帰りを待ち受けている人たちのようでありなさい。

     (1)ここから、第1のたとえ話が始まる。

    (2)当時のユダヤ人の一般的な認識

      ①将来の贖いを待ち望み、その実現のために祈っていた。

      ②しかし、現実生活においては、日々の必要に心が奪われていた。

      ③例外は、エッセネ派のユダヤ人たち。

      ④バプテスマのヨハネの登場以来、メシア待望と終末意識が高まっていた。

      ⑤イエスは、常に目を覚ましていることの重要性を教えた。

⑥たとえ話の中に出て来る主人の帰宅とは、携挙のことである。

    (2)弟子たちが持つべき自己認識とは何か。

      ①イエスの弟子とは、主人が留守の間、家を守っているしもべである。

        *軍隊での歩哨と同じである。

      ②人々が眠っている間も目を覚まし、いつでも行動に移る準備ができている。

    (3)「腰に帯を締め」

      ①帯には、長服を短くまとめる働きがある。

      ②忠実に役目を果たしていることを示す比ゆ的言葉。

      出12:11

      「あなたがたは、このようにしてそれを食べなければならない。腰の帯を引き締

め、足に、くつをはき、手に杖を持ち、急いで食べなさい。これは【主】への過

越のいけにえである」

    (4)「あかりをともしていなさい」

      ①常に怠りない姿勢で仕えていることを示す比ゆ的言葉

      ②婚礼から帰って来る主人を待つしもべのような態度でいなさい。

        *この婚礼に意味づけをする必要はない。

      ③裕福な家には、複数のしもべがいた。

        *門番役のしもべもいて、不審者は排除し、家族のためには戸を開いた。

   2.37~38節

Luk 12:37 帰って来た主人に、目をさましているところを見られるしもべたちは幸いです。まことに、あなたがたに告げます。主人のほうが帯を締め、そのしもべたちを食卓に着かせ、そばにいて給仕をしてくれます。

Luk 12:38 主人が真夜中に帰っても、夜明けに帰っても、いつでもそのようであることを見られるなら、そのしもべたちは幸いです。

    (1)ユダヤ式婚宴は、最長7日間続いた。

      ①通常、遠方からの帰宅の場合は、夜になることはない。

      ②しかし、主人を待つしもべは、油断してはならない。

    (2)帰宅した主人をすぐに迎えることができたしもべたちは、幸いである。

      ①主人が給仕をしてくれる。

      ②ユダヤ式時間区分(夜間を3区分する)

*真夜中(the second watch):午後9時~午前0時

        *夜明け(the third watch):午前0時~3時

  3.39~40節

Luk 12:39 このことを知っておきなさい。もしも家の主人が、どろぼうの来る時間を知っていたなら、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。

Luk 12:40 あなたがたも用心していなさい。人の子は、思いがけない時に来るのですから。」

    (1)話題は、「どろぼうに押し入られた家の主人」に変わる。

      ①どろぼうの来る時間は分からない。

      ②隙ができた時に、どろぼうが押し入ってくる。

        *「押し入る」とは、土壁に穴をあけて入ること。

*扉を破る方が手っ取り早いが、困難が伴う。

        *裕福な家では、石壁であった。

    (2)そのように、人の子の来臨(携挙)の時は分からない。

      ①それゆえ、イエスの弟子は、油断のない生き方をすべきである。

  4.41節

Luk 12:41 そこで、ペテロが言った。「主よ。このたとえは私たちのために話してくださるのですか。それともみなのためなのですか。」

     (1)ペテロが質問を挟む。

      ①ユダヤ教では、弟子たちがラビに質問し、教えの内容を確認した。

      ②ペテロがイエスに質問し、たとえ話の内容を確認している。

        *たとえ話の適用範囲を確かめている。

        *自分たちのためなのか、他の人たちのためでもあるのか。

    (2)イエスは、真理を知っているすべての人(弟子)に適用されると教える。

  5.42節

Luk 12:42 主は言われた。「では、主人から、その家のしもべたちを任されて、食事時には彼らに食べ物を与える忠実な賢い管理人とは、いったいだれでしょう。

     (1)ここから、第2のたとえ話が始まる。

①第2のたとえ話は、第1のたとえ話の内容をさらに説明したものである。

    (2)忠実な賢い管理人の話である。

      ①裕福な家では、しもべの上に立つ管理人が置かれていた。

      ②管理人の中心的な使命は、しもべたちの管理である。

        *財産ではなく、人の方が重要である。

      ③直前の文脈で、イエスは貪欲と物質主義に気を付けるように命じていた。

6.43~44節

Luk 12:43 主人が帰って来たときに、そのようにしているのを見られるしもべは幸いです。

Luk 12:44 わたしは真実をあなたがたに告げます。主人は彼に自分の全財産を任せるようになります。

     (1)家のしもべたちの霊的状態に関心を払っているしもべ(管理人)は幸いである。

      ①それを見た主人は大いに喜び、そのしもべに褒賞を与える。

      ②自分の全財産を任せるようになる。

    (2)しもべの中で、昇進という制度があった。

      ①一般の農夫よりも権力と地位と富を有する奴隷もいた。

      ②後に、その富を使って自由人の地位を買い取ることもできる。

  7.45~46節

Luk 12:45 ところが、もし、そのしもべが、『主人の帰りはまだだ』と心の中で思い、下男や下女を打ちたたき、食べたり飲んだり、酒に酔ったりし始めると、

Luk 12:46 しもべの主人は、思いがけない日の思わぬ時間に帰って来ます。そして、彼をきびしく罰して、不忠実な者どもと同じめに会わせるに違いありません。

     (1)管理人は、主人が留守の間だけ、下男や下女を虐待することができた。

①当時、不在地主や不在家主は、決して珍しいことではなかった。

*遠方に他の財産を有する人たちがいたのである。

      ②主人が留守であるということは、誘惑の原因となった。

        *他の奴隷たちの虐待、暴飲暴食など。

        *主人の財産の侵害である。

        *奴隷たちもまた、主人の財産である。

    (2)この管理人は、自称イエスの弟子である。

      ①彼らは、実は不信者である。

      ②これは、パリサイ人たちへの言及であろう。

      ③さらに、終末時代における民の指導者たちであろう。

    (3)ところが、予期せぬタイミングで主人が帰って来る。

      ①キリストの再臨は、本物の信者と偽の信者の違いを明らかにする。

②主人は、彼を厳しく罰して、他の不忠実な者どもと同じ目に会わせる。

      ③「cut him in pieces」(バラバラに切り裂く)

        *異教の地では、こういう残酷な刑が実行された例がある。

        *不信者と同じ目に会わせるとは、まともな埋葬が拒否されるということ。

        *ユダヤ的には、不信者がゲヘナに投げ込まれるという教えである。

  8.47~48節

Luk 12:47 主人の心を知りながら、その思いどおりに用意もせず、働きもしなかったしもべは、ひどくむち打たれます。

Luk 12:48 しかし、知らずにいたために、むち打たれるようなことをしたしもべは、打たれても、少しで済みます。すべて、多く与えられた者は多く求められ、多く任された者は多く要求されます。

     (1)主への奉仕とその報いに関する大原則が教えられている。

      ①多く与えられた者は、より厳しい基準で裁かれる。

    (2)信者に関して

      ①千年王国においては、忠実度に応じて、褒賞の段階がある。

    (3)不信者に関して

      ①ゲヘナにおいては、神の御心に関する理解度に応じて裁きの段階がある。

      ②すべての人には、なんらかの量の情報が与えられている。

        *自然界を通した啓示

        *良心

        *みことば

結論

  1.しもべに仕える主人

  「帰って来た主人に、目をさましているところを見られるしもべたちは幸いです。まこと

に、あなたがたに告げます。主人のほうが帯を締め、そのしもべたちを食卓に着かせ、そ

ばにいて給仕をしてくれます」(37節)

  (1)ヨハン・アルブレヒト・ベンゲル(18世紀前半に活躍したドイツ人神学者)

    ①新約聖書の本文研究の草分け的な存在

②本文批評の原則を最初に確立した学者

    ③彼は、「この聖句は、神のことば全体の中で最も驚くべきものである」という。

  (2)ピリ2:6~7

「キリストは神の御姿である方なのに、神のあり方を捨てられないとは考えず、ご自

分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられました。人としての性

質をもって現れ、自分を卑しくし、死にまで従い、実に十字架の死にまでも従われま

した。それゆえ神は、この方を高く上げて、すべての名にまさる名をお与えになりま

した」

  ①キリストは神として永遠の昔から存在しておられた。

  ②しかし、私たちに対する愛のゆえに、神としての在り方に固執されなかった。

  ③その結果が、神の子の受肉である。

  ④イエスは、仕える者の姿を取られた。

  ⑤十字架の死に至るまで、忠実に歩まれた。

  ⑥そして今は、父なる神の右に座しておられる(栄光の座におられる)。

  ⑦今は、大祭司として私たちのために執りなしをしておられる。

  ⑧やがてイエスは、王として再臨される。

  ⑨その王が、忠実なしもべたちのために給仕をしてくださるのである。

  2.しもべに全財産を委ねる主人

  「主人が帰って来たときに、そのようにしているのを見られるしもべは幸いです。わたし

は真実をあなたがたに告げます。主人は彼に自分の全財産を任せるようになります」

(43~44節)

  (1)ここでの褒章とは、千年王国においてキリストとともに統治することと関係が         

あるのだろう。

(2)1ペテ5:1~4

「そこで、私は、あなたがたのうちの長老たちに、同じく長老のひとり、キリストの

苦難の証人、また、やがて現れる栄光にあずかる者として、お勧めします。あなたが

たのうちにいる、神の羊の群れを、牧しなさい。強制されてするのではなく、神に従

って、自分から進んでそれをなし、卑しい利得を求める心からではなく、心を込めて

それをしなさい。あなたがたは、その割り当てられている人たちを支配するのではな

く、むしろ群れの模範となりなさい。そうすれば、大牧者が現れるときに、あなたが

たは、しぼむことのない栄光の冠を受けるのです」

  ①ペテロは、イエスのたとえ話を覚えていて、それを長老たちに適用している。

  ②将来のご褒美は、神の御心を行うための動機となる。

  (例話)中学2年の時のアルバイト。額は決まっていないが、楽しみだった。

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