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メシアの生涯(124)—弟子たちへの教え(3)—
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弟子たちへの教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。
「弟子たちへの教え(3)」
ルカ12:22~34
1.はじめに
(1)文脈の確認
①パリサイ人の家の食卓で、イエスはパリサイ人たちの儀式主義を糾弾した。
②その直後に、イエスの回りにおびただしい数の人たちが集まって来た。
③イエスは、弟子たちに、そして、群衆に霊的真理を語った。
④これまでに学んだこと
*弟子たちへの教え①(恐れずに証しせよ)
*弟子たちへの教え②(貪欲に注意せよ)
⑤今回は、弟子たちへの教え③(心配するな)
⑥「心配」「不安」は、すべての人が経験することである。
*経済問題、健康、家族のこと
*ここでは、経済問題(食物と衣服)に関する不安が取り上げられている。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
§108~110は、ひとかたまりと考えるべきである。
①§108 ルカ12:1~59
②§109 ルカ13:1~9
③§110 ルカ13:10~21
(3)内容
①ルカ12:1~53 弟子たちへの教え 5つのテーマ
②ルカ12:54~13:21 群衆への教え 4つのテーマ
(4)アウトライン(12:1~53)
①恐れずに証しせよ(12:1~12)
②貪欲に注意せよ(12:13~21)
③心配するな(12:22~34)
④その日に備えよ(12:35~48)
⑤誤解されることを恐れるな(12:49~53)
(今回は③を取り上げる)
3.結論:
(1)不安への解決法(1):正しい自己認識
(2)不安への解決法(2):バランス感覚
(3)不安への解決法(3):終末論的確信
弟子たちへの教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。
Ⅲ.心配するな(12:22~34)
1.22~24節
Luk 12:22 それから弟子たちに言われた。「だから、わたしはあなたがたに言います。いのちのことで何を食べようかと心配したり、からだのことで何を着ようかと心配したりするのはやめなさい。
Luk 12:23 いのちは食べ物よりたいせつであり、からだは着物よりたいせつだからです。
Luk 12:24 烏のことを考えてみなさい。蒔きもせず、刈り入れもせず、納屋も倉もありません。けれども、神が彼らを養っていてくださいます。あなたがたは、鳥よりも、はるかにすぐれたものです。
(1)心配が愚かなことである理由(その1)
①生きるということは、何を食べるか、何を着るかということ以上のものである。
②この時代、暴飲暴食は社会のあらゆる層に影響を与えていた。
*ローマ社会での悪癖:美食と暴飲暴食
③それゆえイエスは、食物に関して何度も警告を発している。
(2)食物と衣服の獲得が人生における最大のゴールとなるなら、それはクリスチャン
生活への脅威となる。
①キリストに従うことを妨害するものは、すべて脅威である。
②クリスチャンの自己認識:神の国の大使としてこの世に派遣されている。
③勤勉に働いて収入を得、将来のことは神に委ねる。これがクリスチャン生活。
(2)烏を用いた「大から小への議論」(カル・バホメル)
①ギリシア人の哲学者やユダヤ人のラビは、自然界の事象を例に取って教えた。
②烏は、雀とは違って食用にはならない。汚れた鳥である。
③烏は蒔きもせず、刈り入れもせず、納屋も倉もない。
④しかし神は、彼らを養ってくださる。
*愚かな金持ちは、倉の建て替えで心を悩ました。
*愚かな金持ちと烏との対比は、劇的である。
⑤ましてや、あなた方のことを心配してくださらないはずはない。
⑥これは、労働しなくてもいいという意味ではない。
*聖書は、怠惰を厳しく戒めている。
2.25~28節
Luk 12:25 あなたがたのうちのだれが、心配したからといって、自分のいのちを少しでも延ばすことができますか。
Luk 12:26 こんな小さなことさえできないで、なぜほかのことまで心配するのですか。
Luk 12:27 ゆりの花のことを考えてみなさい。どうして育つのか。紡ぎもせず、織りもしないのです。しかし、わたしはあなたがたに言います。栄華を窮めたソロモンでさえ、このような花の一つほどにも着飾ってはいませんでした。
Luk 12:28 しかし、きょうは野にあって、あすは炉に投げ込まれる草をさえ、神はこのように装ってくださるのです。ましてあなたがたには、どんなによくしてくださることでしょう。ああ、信仰の薄い人たち。
(1)心配が愚かなことである理由(その2)
①心配しても、状況を変えることはできない。
(2)寿命を例に用いた「大から小への議論」(カル・バホメル)
①心配することで、寿命を1時間でも伸ばすことができるか。
*あるいは、身長を少しでも伸ばすことができるか。
②それさえできないのだから、他のより大きなことを心配する必要はない。
(3)ゆりの花とソロモンを用いた「大から小への議論」(カル・バホメル)
①ソロモンは、イスラエルの歴史上最も富を蓄えた王である。
「シェバの女王は、ソロモンのすべての知恵と、彼が建てた宮殿と、その食卓の
料理、列席の家来たち従者たちが仕えている態度とその服装、彼の献酌官たち、
および、彼が【主】の宮でささげた全焼のいけにえを見て、息も止まるばかりで
あった」(1列10:4)
②栄華を極めたソロモンでさえ、ゆりの花の美しさには負ける。
*アネモネは最も一般的な花
*白ユリは稀な花
*赤ユリはもっと稀な花
③パレスチナの花は、短命である。
④はかない運命にあるゆりの花でさえも、神は豪華に装ってくださる。
⑤ましてや、あなたがたのことを心配してくださらないはずはない。
⑥それゆえ、衣服のために労力を消耗する生き方は、愚かである。
3.29~31節
Luk 12:29 何を食べたらよいか、何を飲んだらよいか、と捜し求めることをやめ、気をもむことをやめなさい。
Luk 12:30 これらはみな、この世の異邦人たちが切に求めているものです。しかし、あなたがたの父は、それがあなたがたにも必要であることを知っておられます。
Luk 12:31 何はともあれ、あなたがたは、神の国を求めなさい。そうすれば、これらの物は、それに加えて与えられます。
(1)心配が愚かなことである理由(その3)
①心配するのは、異邦人たちのすることである。
②異邦人=真の神を知らない人たち
③ユダヤ人たちは、異邦人以下にはなりたくないと考えていた。
④神は「自分たちの父」である。しかし、「異邦人の父」ではない。
⑤その異邦人のライフスタイルは、物質的な豊かさの追求である。
(2)イエスの弟子たちは、霊的な豊かさを追求する。
①霊的な豊かさを追求すれば、物質的に必要なものは与えられる。
(3)「何はともあれ、あなたがたは、神の国を求めなさい。そうすれば、これらの物
は、それに加えて与えられます」(31節)
①これが中心聖句である。
②「神の国」=神の支配(霊的な豊かさ)
*神との関係の確立
*神の御心の実行(義の実行)
*神の導きがあるとの実感
4.32~34節
Luk 12:32 小さな群れよ。恐れることはない。あなたがたの父は、喜んであなたがたに御国をお与えになるからです。
Luk 12:33 持ち物を売って、施しをしなさい。自分のために、古くならない財布を作り、朽ちることのない宝を天に積み上げなさい。そこには、盗人も近寄らず、しみもいためることがありません。
Luk 12:34 あなたがたの宝のあるところに、あなたがたの心もあるからです。
(1)再びイエスは、弟子たちに「恐れるな」と語りかけた。
①弟子たちの集団は、自衛力のない「小さな群れ」(羊の群れ)である。
②御国とは、メシア的王国(千年王国)であろう。
③カル・バホメル(大から小へ)の議論
*天の父は、御国を与えてくださる。
*ましてや、あなたがたの日々の必要は満たされる。
(2)さらに、自衛力を弱体化させる命令を与えた。
①持ち物を売って、施しをする。
②物質に束縛された心を解放する行為である。
③地上に富があれば、それに心を奪われる(優先順位の問題である)。
④天に宝を積むなら、それは安全である。
⑤そして、その人の心は天にある。つまり、地上のことで心配しなくなる。
結論
1.不安への解決法(1):正しい自己認識
「小さな群れよ。恐れることはない。あなたがたの父は、喜んであなたがたに御国をお与
えになるからです」(32節)
(1)イエスは弟子たちに、「小さな群れ」と呼びかけた。
①迫害が襲ってくることを予見した言葉である。
②神の守りを約束した言葉である。
(2)クリスチャンは弱者であると同時に、勝利者である。
「しかし、私たちは、私たちを愛してくださった方によって、これらすべてのことの
中にあっても、圧倒的な勝利者となるのです」(ロマ8:37)
①この発言は、勝利主義者のそれではない。
②自らの弱さを認識した上での、イエス・キリストにある勝利の宣言である。
(3)霊的成長とは、謙遜の階段を上ることである。
①成功体験によって、ますます謙遜になる人は幸いである。
2.不安への解決法(2):バランス感覚
「持ち物を売って、施しをしなさい。自分のために、古くならない財布を作り、朽ちるこ
とのない宝を天に積み上げなさい。そこには、盗人も近寄らず、しみもいためることがあ
りません」(33節)
(1)キニク学派(古代ギリシア哲学の一派)(Cynics)
①幸福とは、外的な条件に左右されない有徳な生活である。
②彼らは、無所有と精神の独立を目指した。
③そのライフスタイルを徹底的に追求した者は、乞食生活を送った。
(2)エッセネ派(死海写本で有名)
①死海のほとりのクムランに住んだ。
②彼らは、富の共同所有を実践した。
(3)初代教会の信徒たちは、これを実行した(使2:44~45、4:32~37)。
①その結果、エルサレム教会は貧者の集まりとなった。
②アンテオケ教会は、援助金をエルサレム教会に送った。
③初代教会は、決して理想的な教会のモデルではない。
④「小さな群れ」が失敗を繰り返しながら羊飼いに導かれて行った例である。
(4)イエスは、物の所有を否定してはいない。
①人生における優先順位を問題にされた。
②命の質(quality of life)は、存在そのものの中にある。
③持ち物を売って施しをするのは、物質に束縛された心を解放する行為である。
*これを常に行うべき普遍的命令と考える必要はない。
3.不安への解決法(3):終末論的確信
(1)前回の学び
①人の心は、真空状態ではない。
②内に何かを入れる必要がある。
③貪欲への解決は、イエスを心に迎えることである。
(2)今回の学び
①不安の解消法は、終末論的確信である。
②メシア的王国(千年王国)における祝福が約束されている。
③神の国のために用いた時間と財は、永遠の宝として残る。
(例話)米国で、冷凍庫にアイスキャンデーを一杯詰めている家があった。
(例話)ダイエットをする人は、好きなものを貯蔵庫に一杯詰めておくと効果がある。
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