ヨハネの福音書(9)弟子訓練とサマリア人の回心ヨハ4:27~42

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弟子訓練とサマリア人の回心について学ぶ。

ヨハネの福音書(9)

弟子訓練とサマリア人の回心

ヨハ4:27~42

1.文脈の確認

(1)前書き(1:1~18)

(2)イエスの公生涯(1:19~12:50)

  ①公生涯への序曲(1:19~51)

  ②初期ガリラヤ伝道(2:1~12)

  ③最初のエルサレム訪問(2:13~3:36)

  ④サマリア伝道(4:1~42)

    *サマリアの女との対話(4:1~26)

    *弟子訓練(4:27~38)

    *サマリア人の回心(4:39~42)

2.注目すべき点

(1)弟子訓練における強調点

  ①伝道した者への報酬

  ②伝道の緊急性

  ③伝道における協力関係

(2)ユダヤ人の応答vs.サマリア人の応答

  ①ユダヤ人よりもサマリア人(異邦人)のほうが積極的に応答する。

  ②福音書でも使徒の働きでも、同じ傾向が見られる。

3.アウトライン

(1)弟子訓練 (27~38節)

(2)サマリア人の回心 (39~42節)

3.結論

(1)イエスの動きと教会の宣教の広がりの対比

(2)第2の糧の原則

(3)伝道の原則

弟子訓練とサマリア人の回心

Ⅰ.弟子訓練(27~38節)

1.27節

Joh 4:27 そのとき、弟子たちが戻って来て、イエスが女の人と話しておられるのを見て驚いた。だが、「何をお求めですか」「なぜ彼女と話しておられるのですか」と言う人はだれもいなかった。

(1)弟子たちは、町へ買い物に出かけていた。

  ①生卵、果物、野菜などのコシェルの食物を探す。

  ②代価を払って食物を買う。

  ③それを持って、イエスのもとに帰って来た。

(2)彼らは、あり得ない光景を見て驚いた。

  ①ユダヤ教のラビたちは、婦人との会話を控えるように教えた。

  ②彼らは、公の場での妻との対話さえ疑問視した。

    *誘惑に陥らないために

    *他者から批判されないために

  ③イエスの弟子たちは、3重の意味で驚いた。

    *イエスが、公の場で婦人と話している。

    *しかも、この婦人はサマリア人である。

    *さらに、道徳的に問題のありそうな婦人である。

(3)弟子たちは、イエスを信頼していた。

  ①彼らは、イエスに状況説明を求めなかった。

  ②理解できなくても、師であるイエスに信頼した。

2.28節

Joh 4:28 彼女は、自分の水がめを置いたまま町へ行き、人々に言った。

(1)彼女がその場を離れた理由

  ①イエスに自分の過去を言い当てられたため、大いに驚いた。

  ②弟子たちが帰って来たので、2人だけの対話が難しくなった。

(2)彼女は、自分の水がめを置いたまま町へ行き、人々に言った。

  ①ここには、目撃者情報の雰囲気がある。

  ②水がめを置いて帰ったのは、最初の目的を忘れたということである。

  ③このエピソードは、彼女の驚きの大きさを示している。

  ④ユダヤ人の間では、婦人の証言(特に罪の女の証言)は重視されなかった。

  ⑤サマリア人の間でも、同じであろう。

  ⑥しかし彼女は、自分が出会ったメシアを町の人たちに紹介しようとした。

  ⑦ヨハ1:46

Joh 1:46 ナタナエルは彼に言った。「ナザレから何か良いものが出るだろうか。」ピリポは言った。「来て、見なさい。」

3.29節

Joh 4:29 「来て、見てください。私がしたことを、すべて私に話した人がいます。もしかすると、この方がキリストなのでしょうか。」

(1)彼女の伝道法には知恵がある。

  ①彼女は、キリストに出会ったとは断言していない。

    *断定的に伝えたとしても、拒否されたであろう。

  ②「もしかすると、この方がキリストなのでしょうか」と疑問文を使っている。

    *町の人たちに、自分で確かめるように提案している。

(2)彼女は、イエスをキリストだと考える理由を述べた。

  ①イエスの行為

  *イエスは、彼女の人生における主要な出来事を言い当てた(行為)。

    *「私がしたことを、すべて私に話した人がいます」は、誇張法である。

  ②イエスのことば

    *「あなたと話しているこのわたしがそれです」(26節)と言った。

4.30節

Joh 4:30 そこで、人々は町を出て、イエスのもとにやって来た。

(1)人々は、町を出て、イエスのもとにやって来た。

  ①自分の目と耳で、イエスは誰かを判断するためである。

  ②彼らは、仕事を中断して、井戸のそばまで来た。

  ③中には、彼女との関係がばれることを恐れた男たちがいたかもしれない。

5.31~32節

Joh 4:31 その間、弟子たちはイエスに「先生、食事をしてください」と勧めていた。

Joh 4:32 ところが、イエスは彼らに言われた。「わたしには、あなたがたが知らない食べ物があります。」

(1)弟子たちはイエスに食事を勧めた。

  ①イエスは、疲れ切っていた。

  ②空腹と渇きで苦しんでいた。

(2)しかしイエスは、この機会を弟子訓練のために用いた。

  ① 「わたしには、あなたがたが知らない食物があります」

  ②ここでは、「食物」ということばが比ゆとして用いられている。

  ③旧約聖書では、この比ゆは「召命」と関連して用いられることがある。

  ④エレ15:16

Jer 15:16 私はあなたのみことばが見つかったとき、/それを食べました。/そうして、あなたのみことばは、私にとって/楽しみとなり、心の喜びとなりました。/万軍の神、【主】よ、/私はあなたの名で呼ばれているからです。

  ⑤弟子たちは、肉体の糧しか考えていないが、第2の糧というものがある。

  ⑥イエスにとっては、肉体の糧よりも、父の御心を行うことのほうが重要。

  ⑦今まさに、サマリアの町に霊的覚醒が起ころうとしていた。

6.33~34節

Joh 4:33 そこで、弟子たちは互いに言った。「だれかが食べる物を持って来たのだろうか。」

Joh 4:34 イエスは彼らに言われた。「わたしの食べ物とは、わたしを遣わされた方のみこころを行い、そのわざを成し遂げることです。

(1)弟子たちは、第1の糧(肉体の糧)について論じた。

  ①苦労して食物を買って来た。

  ②持って来るのが遅すぎたので、誰か別の人が食物を持ってきたのだろうか。

(2)イエスは、第2の糧(比ゆ的意味での糧)について解説した。

  ①イエスの使命は、自分を派遣された父なる神の御心を実行することである。

    *これは、ヨハネの福音書の最初からのテーマである。

  ②父なる神の御心を実行することは、霊的力となり喜びとなる。

    *サマリアの女に伝道したことは、イエスにとっては喜びであった。

    *永遠のいのちを届けることは、霊的力となり喜びとなる。

      (例話)アンケートのコメント:疲れていたが、礼拝に出て、元気になった。

7.35節

Joh 4:35 あなたがたは、『まだ四か月あって、それから刈り入れだ』と言ってはいませんか。しかし、あなたがたに言います。目を上げて畑を見なさい。色づいて、刈り入れるばかりになっています。

(1)収穫時期に関する格言

  ①麦の種を蒔いて発芽してから、収穫までに4か月ある。

  ②これは、自然界の収穫のことである。

  ③イエスは、知っていることから知らないことへと導く(霊的収穫のこと)。

(2) 「目を上げて畑を見なさい。色づいて、刈り入れるばかりになっています」

  ①霊的世界の収穫は、別の原理で動いている。

  ②「色づいて」(新改訳2017)(共同訳)(口語訳)

  ③「黄ばみて」(文語訳)

  ④ギリシア語は「リューコス」(白)である。

  ⑤緑色が、薄い白や黄色に変わると、収穫の時となる。

  ⑥イエスは、白い衣を着たサマリア人が大勢やって来るのを見たのであろう。

8.36~38節

Joh 4:36 すでに、刈る者は報酬を受け、永遠のいのちに至る実を集めています。それは蒔く者と刈る者がともに喜ぶためです。

Joh 4:37 ですから、『一人が種を蒔き、ほかの者が刈り入れる』ということばはまことです。

Joh 4:38 わたしはあなたがたを、自分たちが労苦したのでないものを刈り入れるために遣わしました。ほかの者たちが労苦し、あなたがたがその労苦の実にあずかっているのです。」

(1)蒔く者と刈る者に関する格言

  ①イエスが登場して以降、常に収穫の時である。

  ②刈る者と蒔く者が、ともに喜ぶ。

  ③この文脈では、蒔く者とはイエスとサマリアの女である。

  ④刈る者とは、サマリア人の救いを目撃する弟子たちである。。

(2) 「わたしはあなたがたを、自分たちが労苦したのでないものを刈り入れるた

めに遣わしました」

  ①イエスは、預言的に語っている。

  ②イエスは、十字架と復活後の視点を持っていた。

Ⅱ.サマリア人の回心(39~42節)

1.39節

Joh 4:39 さて、その町の多くのサマリア人が、「あの方は、私がしたことをすべて私に話した」と証言した女のことばによって、イエスを信じた。

(1)多くのサマリア人が、この女の証言によってイエスを信じた。

  ①サマリア人は、メシアを待ち望む信仰を持っていた。

  ②ユダヤ人よりもサマリア人のほうが、積極的に応答した。

  ③彼らは、イエスに出会ったのである。

  ④サマリアの女の証言は、私たちにとって励ましとなる。

2.40節

Joh 4:40 それで、サマリア人たちはイエスのところに来て、自分たちのところに滞在してほしいと願った。そこでイエスは、二日間そこに滞在された。

(1)サマリア人たちは、イエスに、自分たちの村に滞在してほしいと願った。

  ①サマリア人がユダヤ人のラビを招くためには、謙遜が必要である。

(2)イエスは、サマリア人の要請に応えて、そこに2日間滞在した。

  ①「メノウ」(とどまる)という動詞が、2回使用されている。

  ②ヨハ1:39では、弟子たちはイエスのもとにとどまった。

  ③ここでは、イエスはサマリア人の町にとどまった。

  ④このときイエスは、サマリア人の食事を食べ、サマリア人の家で寝た。

  ⑤イエスは、ユダヤ教の「清め・汚れ」の教えを完全に無視された。

3.41~42節

Joh 4:41 そして、さらに多くの人々が、イエスのことばによって信じた。

Joh 4:42 彼らはその女に言った。「もう私たちは、あなたが話したことによって信じているのではありません。自分で聞いて、この方が本当に世の救い主だと分かったのです。」

(1)ここでは、宣教の拡大が見られる。

  ①井戸に来なかった人たちの多くが、イエスのことばによって信じた。

(2)さらに、信仰の深まりが見られる。

  ①最初は、サマリアの女の証言によって信じた。

  ②次は、イエスのことば(ロゴス、単数形)によって信じた。

  ③2重の証言には力がある。

    *信者の証言とみことばの証言

(3) 「この方が本当に世の救い主だと分かったのです」

  ①「世の救い主」という表現は、福音書の中ではここだけに登場する。

  ②イスラエルは、メシアを拒否する方向に進む(1:11)。

  ③サマリア人は、信仰に導かれる。

    *彼らは、軽蔑された民、二級市民ではなくなった。

    *彼らは、救われる非ユダヤ人の初穂である。

結論

1.イエスの動きと教会の宣教の広がりの対比

(1)ヨハネの福音書でのイエスの動き

  ①エルサレム→ユダヤ→サマリア→ガリラヤ(遠隔地)

  ②イエスは弟子たちに、福音の普遍性について教えようとされた。

  ③礼拝の改革の予感はすでにあった。

    *宮清めと3日目の復活

    *礼拝する場所は、問題ではなくなる。

(2)使徒の働きでの宣教の広がり

  ①使1:8

Act 1:8 しかし、聖霊があなたがたの上に臨むとき、あなたがたは力を受けます。そして、エルサレム、ユダヤとサマリアの全土、さらに地の果てまで、わたしの証人となります。」

2.第2の糧の原則

(1)現代人の特徴

  ①物の世界だけが現実であるという認識

  ②目に見えない世界(霊的世界)の軽視

(2)第2の糧の特徴

  ①第1の糧を否定したり軽視したりすべきではない。

  ②第2の糧は、第1の糧よりも優先されるべきものである。

    *ここにあるのは、一時的なものと、永続性のあるものの対比である。

3.伝道の原則

(1)ヨハ4:37~38

Joh 4:37 ですから、『一人が種を蒔き、ほかの者が刈り入れる』ということばはまことです。

Joh 4:38 わたしはあなたがたを、自分たちが労苦したのでないものを刈り入れるために遣わしました。ほかの者たちが労苦し、あなたがたがその労苦の実にあずかっているのです。」

(2)蒔く者

  ①旧約聖書の預言者たち

  ②特に、バプテスマのヨハネ

(3)刈る者

  ①イエスの弟子たち

  ②バプテスマのヨハネは、ペンテコステの祝福の前に死んだ。

(4)蒔く者も、刈る者も、ともに喜ぶ。

  ①ともに報酬に与る。

  ②この報酬は、今の世で与えられ、永遠に続くものでもある。

(5)福音宣教の普遍性に着目する必要がある。

  ①クリスチャンは、互いに宣教のパートナーである。

  ②蒔く者は、刈る者に対して妬みを覚えてはならない。

  ③刈る者は、蒔く者に対して優越感を覚えてはならない。

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