私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
メシアの生涯(116)—70人の派遣—
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70人の奉仕から、霊的教訓を学ぶ。
「70人の派遣」
ルカ10:1~24
1.はじめに
(1)文脈の確認
①この箇所の内容は、ルカだけが記録している。
②恐らくユダヤでの出来事であろう。
③イエスが行われた多くの業のほんの一例である。
④人数について、70人という写本と、72人という写本がある。
*原典から写本を作る際に、どちらかが間違った。
*ともに信頼性の高い写本なので、どちらが正しいか断定できない。
*ここでは、新改訳の「70人」を採用する。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
「70人の奉仕とキリストの喜び」(§102)
ルカ10:1~24
2.アウトライン
(1)70人の派遣(1~12節)
(2)不信仰な町の叱責(13~16節)
(3)70人の帰還(17~20節)
(4)イエスの喜び(21~24節)
3.結論:
(1)12人と70人
(2)クリスチャンの喜び
(3)イエスの喜び
70人の奉仕から、霊的教訓を学ぶ。
Ⅰ.70人の派遣(1~12節)
1.1節
「その後、主は、別に七十人を定め、ご自分が行くつもりのすべての町や村へ、ふたりずつ先にお遣わしになった」(1節)
(1)12使徒を派遣した記事に似ている(マタ10章、ルカ9章)が、違いがある。
①12使徒はガリラヤで伝道した。
②70人は、イエスがエルサレムに上る旅の途中で伝道した。
③70人の伝道は、一時的なものであった。
(2)70人の特徴
①イエスの後を、多数の弟子たちが付き従っていた。
②イエスは、その中から70人を選ばれた。
*彼らは、無名の弟子たちである。
③彼らは、主イエスの先駆者としての働きを展開した。
*その点では、ミニ・バプテスマのヨハネと言える。
④「ふたりずつ」とあるのは、証しのためであり、実際的な目的のためでもある。
*最低、35の町々をカバーできる。
2.2~4節
「そして、彼らに言われた。『実りは多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。さあ、行きなさい。いいですか。わたしがあなたがたを遣わすのは、狼の中に小羊を送り出すようなものです。財布も旅行袋も持たず、くつもはかずに行きなさい。だれにも、道であいさつしてはいけません』」(2~4節)
(1)祈る人は、行動を起こす人である。
①収穫の主に働き手を送って下さいと祈る人は、自ら働き手になる人である。
(2)「狼の中に小羊を送り出す」とは、格言である。
①ユダヤ人たちは自分たちのことを、「狼(異邦人)の中にいる羊」と見た。
②キリストの弟子は、危険な場所に派遣される。
③この世は、基本的に神に敵対する。
④この世から歓迎されることを期待するな。
(3)快適な生活を求めることは許されない。
①財布:物質的快適さ
②旅行袋:食物の保存
③くつ(サンダル):予備のものを持つなということであろう。
④何も持っていないが、すべてを持っている状態
「悲しんでいるようでも、いつも喜んでおり、貧しいようでも、多くの人を富ませ、何も持たないようでも、すべてのものを持っています」(2コリ6:10)
(4)伝道以外のことで時間を浪費するな。
①道でのあいさつとは、東洋的な長々としたあいさつである。
②他人に悪い印象を与えるべきではないが、無駄なあいさつもいけない。
3.5~9節
「どんな家に入っても、まず、『この家に平安があるように』と言いなさい。もしそこに平安の子がいたら、あなたがたの祈った平安は、その人の上にとどまります。だが、もしいないなら、その平安はあなたがたに返って来ます。その家に泊まっていて、出してくれる物を飲み食いしなさい。働く者が報酬を受けるのは、当然だからです。家から家へと渡り歩いてはいけません。どの町に入っても、あなたがたを受け入れてくれたら、出される物を食べなさい。そして、その町の病人を直し、彼らに、『神の国が、あなたがたに近づいた』と言いなさい」(5~9節)
(1)歓迎されたなら、その家に留まる。
①当時のユダヤ教では、旅人へのもてなしがきわめて重要であった。
②先ず、「この家に平安があるように」と声をかける。
③そのあいさつ(祈り)が受け入れられたなら、その家には平和の子がいる。
④平和の子とは、平和のメッセージを受け入れる人のことである。
(2)歓迎されなくても、落胆しない。
①その平和は、彼らに返って来る。
②平和の祈りは無駄にはならない。他の人が受け取ることになる。
(3)同じ家に留まる。
①家から家へと渡り歩くと、伝道の動機が疑われる。
②質素で感謝にあふれた生活こそ、重要である。
(4)出されたものはなんでもいただく。
①ぜいたくを言わない。
②主の働き人として、食物を受ける資格がある。
(5)個人の場合と同じように、町にも2種類ある。
①働き人を歓迎する町は、祝福を受ける。
②病人が癒される。
③神の国の福音が宣べ伝えられる。
4.10~12節
「しかし、町に入っても、人々があなたがたを受け入れないならば、大通りに出て、こう言いなさい。『私たちは足についたこの町のちりも、あなたがたにぬぐい捨てて行きます。しかし、神の国が近づいたことは承知していなさい。』あなたがたに言うが、その日には、その町よりもソドムのほうがまだ罰が軽いのです」(10~12節)
(1)不信仰な町は、祝福を失う。
①足のちりも払う。敬虔なユダヤ人は、異邦人地区を通過する際にそうした。
②不信仰な町に対しても、神の国の福音は宣言された。
③福音を拒否し続けるなら、これが最後のチャンスだという時がいつか来る。
(2)特権には責務が伴う。
①神の国の福音を聞いた町は、ソドム以上の厳しさで裁かれる。
Ⅱ.不信仰な町の叱責(13~16節)
1.13~15節
「ああコラジン。ああベツサイダ。おまえたちの間に起こった力あるわざが、もしもツロとシドンでなされたのだったら、彼らはとうの昔に荒布をまとい、灰の中にすわって、悔い改めていただろう。しかし、さばきの日には、そのツロとシドンのほうが、まだおまえたちより罰が軽いのだ。カペナウム。どうしておまえが天に上げられることがありえよう。ハデスにまで落とされるのだ。」(13~15節)
(1)イエスは、特権に与ったガリラヤの3つの町を思い出された。
①コラジン、ベツサイダ、カペナウム。
②彼らは、メシアの業を目撃し、神の国の福音を聞いた。
③しかし、信じることも、悔い改めることもしなかった。
(2)古代の異邦人の町ツロとシドンを引き合いに出された。
①もしツロとシドンが同じ特権に与っていたなら、彼らは悔い改めていた。
②それゆえ、コラジンとベツサイダはより厳しく裁かれる。
③今日、コラジンとベツサイダの詳しい位置は分かっていない。
(3)カペナウムは、イエスのホームタウンとなった(Town of Jesus)。
①イエスに選ばれた町であるのに、イエスを受け入れようとしなかった。
2.16節
「あなたがたに耳を傾ける者は、わたしに耳を傾ける者であり、あなたがたを拒む者は、わたしを拒む者です。わたしを拒む者は、わたしを遣わされた方を拒む者です」(16節)
(1)結びの言葉
①70人は、神の国の大使である。
②イエスの権威を受けて、派遣される。
③彼らを拒む者は、イエスを拒む者である。
④イエスを拒む者は、父なる神を拒む者である。
(2)これは、驚くべき言葉である。
①70人は無名であり、その後の記録も残っていない。
②その彼らを拒否することは、主イエスを、そして、父を拒否することである。
③忠実な僕の働きがいかに厳粛なものであるかが示されている。
Ⅲ.70人の帰還(17~20節)
1.17~19節
「さて、七十人が喜んで帰って来て、こう言った。『主よ。あなたの御名を使うと、悪霊どもでさえ、私たちに服従します』。イエスは言われた。『わたしが見ていると、サタンが、いなずまのように天から落ちました。確かに、わたしは、あなたがたに、蛇やさそりを踏みつけ、敵のあらゆる力に打ち勝つ権威を授けたのです。だから、あなたがたに害を加えるものは何一つありません』」(17~19節)
(1)70人は喜んで帰って来た。
①イエスの御名を使うと、悪霊どもが服従した。
(2)「わたしが見ていると、サタンが、いなずまのように天から落ちました」
①悪霊どもは、サタンの指揮下に置かれている。
②70人は、イエスの権威によって悪霊どもを服従させた。
③悪の王国が崩壊しつつある。
④イエスは、このことの先に、サタンが敗北する姿を見た。
⑤これは今起こっているのではなく、将来起こることの預言である。
(3)黙12:7~9
「さて、天に戦いが起こって、ミカエルと彼の使いたちは、竜と戦った。それで、竜とその使いたちは応戦したが、勝つことができず、天にはもはや彼らのいる場所がなくなった。こうして、この巨大な竜、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれて、全世界を惑わす、あの古い蛇は投げ落とされた。彼は地上に投げ落とされ、彼の使いどもも彼とともに投げ落とされた」(黙12:7~9)
①このことは、大患難時代の中間に起こることである。
(4)70人には、すべての害からの守りが約束された。
①彼らに、一時的に与えられた約束である。
2.20節
「だがしかし、悪霊どもがあなたがたに服従するからといって、喜んではなりません。ただあなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい」(20節)
(1)70人は、悪霊どもが自分たちに服従することを喜んだ。
①しかしイエスは、そこに潜む危険性を見抜かれた。
(2)喜ぶべきは、自分たちの名が天に書き記されていることである。
①魂が救われていることを喜ぶべきである。
Ⅳ.イエスの喜び(21~24節)
1.21~22節
「ちょうどこのとき、イエスは、聖霊によって喜びにあふれて言われた。『天地の主であられる父よ。あなたをほめたたえます。これらのことを、賢い者や知恵のある者には隠して、幼子たちに現してくださいました。そうです、父よ。これがみこころにかなったことでした。すべてのものが、わたしの父から、わたしに渡されています。それで、子がだれであるかは、父のほかには知る者がありません。また父がだれであるかは、子と、子が父を知らせようと心に定めた人たちのほかは、だれも知る者がありません』」(21~22節)
(1)イエスの喜びは、聖霊による喜びである。
①指導者だけでなく、多くの群衆がイエスを拒否した。
②しかし、少数の者たちはイエスに従った。
③イエスは、彼らを見て喜びに溢れた。
(2)賢い者や知恵ある者と、幼子の対比
①賢い者、知恵ある者とは、パリサイ人たちである。
②彼らは、自らを知者と自認し、イエスのことばに耳を傾けようとしなかった。
③幼子は、イエスに従う無学な者たちである。
④自分の知恵に頼らない者は、イエスのことばを受け入れた。
(3)イエスは、父から渡された霊的「幼子」たちを喜ばれた。
①神の業は、このような単純な信仰を持つ人たちによって実行される。
②これは、神の計画によることである。
2.23~24節
「それからイエスは、弟子たちのほうに向いて、ひそかに言われた。『あなたがたの見ていることを見る目は幸いです。あなたがたに言いますが、多くの預言者や王たちがあなたがたの見ていることを見たいと願ったのに、見られなかったのです。また、あなたがたの聞いていることを聞きたいと願ったのに、聞けなかったのです』」(23~24節)
(1)12弟子への個人的言葉
①弟子たちは、旧約時代の聖徒たちよりも大きな特権に与っている。
②預言者や王たちが、メシアとメシアが行う奇跡を見たい、聞きたいと思った。
③しかし、彼らはそれを見ることがでず、聞くこともできなかった。
(2)イエス時代の人々は、それを見たり聞いたりする特権に与った。
①イエスは、ご自身こそ旧約聖書が預言したメシアであると宣言された。
結論:
1.12人と70人
(1)12人の使徒たち
①12という数字は、イスラエル12部族を代表するものである。
(2)70人の弟子たち
①ユダヤ教の伝統では、異邦人諸国は70あるとする。
②70という数字は、異邦人伝道の象徴と考えられる。
2.クリスチャンの喜び
「だがしかし、悪霊どもがあなたがたに服従するからといって、喜んではなりません。ただあなたがたの名が天に書きしるされていることを喜びなさい」(20節)
(1)イエスが、喜ぶなと命じているのは、ここだけである。
①悪霊に勝利した喜びには、危険性が潜んでいる。
②自らの力と成功を誇る危険性である。
③成功の時こそ、謙遜になり、最高の喜びがなんであるかを黙想すべし。
(2)喜ぶべきは、自分たちの名が天に書き記されていることである。
①この喜びは、神の愛と恵みを思い出すことにつながる。
②神との平和を持っていることを喜ぶべきである。
3.イエスの喜び
「ちょうどこのとき、イエスは、聖霊によって喜びにあふれて言われた。『天地の主であられる父よ。あなたをほめたたえます。これらのことを、賢い者や知恵のある者には隠して、幼子たちに現してくださいました。そうです、父よ。これがみこころにかなったことでした』」(21節)
(1)パリサイ人たちは、救いの道を理解することができなかった。
①自らの知恵で、神のことばを解釈しようとした(パリサイ的ユダヤ教の知恵)。
②その結果、膨大な口伝律法の体系を作り上げた。
③イエスの単純なメッセージに反発した。
(2)幼子たちは、神のことばを単純に受け止めた。
①彼らは、パリサイ的ユダヤ教の教育を受けていなかった。
②聖書のことばだけが頼りであった。
③そのため、イエスが旧約聖書の預言を成就する方であることを理解した。
(3)今日の神学校の役割
①入学すると信仰を失くす人がいる。
②聖書のことばの単純な意味を疑うように教える。
③困難な箇所は、比喩的に解釈するように教える。
④聖書解釈の原則
*文脈
*字義通りの解釈
*最も自然な意味に解釈する。
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