メシアの生涯(114)—良い牧者のたとえ(1)—

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イエスは、良い牧者である。

「良い牧者のたとえ(1)」

ヨハ10:1~10

1.はじめに

  (1)文脈の確認

①十字架にかかる前の年の仮庵の祭り(半年前)

②イエスは神殿を去ったが、まだエルサレムにとどまっている。

③生まれつきの盲人の癒しが行われた。

④きょうの箇所は、その続きである。

  *ヨハ9:41とヨハ10:1の間に区切りを設けるべきではない。

⑤パリサイ人たちへの厳しい言葉が出て来る。

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

「良い牧者のたとえ」(§101)

ヨハ10:1~21

    (3)良い牧者のたとえついて

  ①中東では、指導者を羊飼い(牧者)、民を羊にたとえるのは、普通のことである。

      ②王や祭司は、自分を羊飼い、民を羊と呼んだ。

  ③聖書でも、「牧者と羊」の比喩は頻繁に出て来る。

  ④羊飼いが職業であった人々

    ・アブラハム、イサク、ヤコブ、モーセ、ダビデ

  ⑤有名な聖書箇所

    ・詩23篇、イザ53章、ルカ15章(いなくなった羊のたとえ)

  ⑥イエスは、以上のような伝統の上に立って、霊的真理を教えた。

    ・たとえ話だという理由で、語られている真理を軽視してはならない。

・たとえ話は、信仰のない者から真理を隠すという効果がある。

  2.アウトライン

  (1)羊飼いと盗人(強盗)の対比(1~6節)

  (2)羊の門と盗人(強盗)の対比(7~10節)

  (3)良い牧者と雇い人の対比(11~18節)

  (4)信じる者と信じない者の対比(19~21節)

    *今回は、(1)と(2)を取り上げる。

  3.結論:

    (1)比喩的言葉について

    (2)羊と羊飼いの関係について

    (3)豊かないのちについて

イエスは、良い牧者である。

Ⅰ.羊飼いと盗人(強盗)の対比(1~6節)

  1.1節

   「まことに、まことに、あなたがたに告げます。羊の囲いに門から入らないで、ほかの所を乗り越えて来る者は、盗人で強盗です」(1節)

     (1)牧場の朝の情景

  ①「羊の囲い」とは、冬の夜に、羊を集めておく場所である。

  ②通常は、石垣で囲まれている。イバラやアザミが生えている。

  ③仮庵の祭りの時期は、冬に近づいている。

  ④門番がいて、夜間の番をしている。

        *獅子、ひょう、狼、熊、ジャッカル、などの野獣がいた。

⑤ひとつの囲いの中で、いくつもの羊の群れが休んでいる。

⑥朝になると、羊飼いは門から入り、自分の群れを連れ出す。

    (2)「まことに、まことに、あなたがたに告げます」

   ①重要な真理を教える際の、常套句である。

  ②文脈は、生まれつきの盲人の癒しである。

③聴衆は、その癒しを目撃したパリサイ人たちと群衆である。

    (3)「盗人と強盗」

  ①ユダヤ教の律法では、盗人と強盗は区別される。

        *盗人は家に押し入る。

    *強盗は荒野に潜んでいて、旅人を襲う。

    *羊飼いは、野獣だけでなく、人間の害にも注意を払う必要があった。

  ②イスカリオテのユダは盗人である(ヨハ12:6)。

  ③バラバは強盗である(ヨハ18:40)。

  ④イエスとともに十字架に付けられた2人も強盗である(マタ27:38、44)。

    (4)「羊の囲いに門から入らないで、ほかの所を乗り越えて来る者」

   ①「claim jumper」というレストランチェーンがある。

*他人の権利を侵害する者という意味

②これは、パリサイ人たちのことである。

  *彼らは、盗人で強盗である。

*羊の囲い(ユダヤ人国家)に力づくで侵入し、他人の財産を奪っていく。

  2.2節

「しかし、門から入る者は、その羊の牧者です」(2節)

   (1)これは、イエスのことである。

    ①イエスは門から入る。

  (2)イエスとパリサイ人たちの対比

  ①イエスは、旧約聖書の預言の成就として来られた。

  ②パリサイ人たちは、口伝律法を作り、羊飼いであるかのように振る舞った。

    *彼らは、モーセの律法を知っていると言いながら、イエスを信じなかった。

*また、イエスを信じた人を会堂から追放した。

3.3~4節

「門番は彼のために開き、羊はその声を聞き分けます。彼は自分の羊をその名で呼んで連れ出します。彼は、自分の羊をみな引き出すと、その先頭に立って行きます。すると羊は、彼の声を知っているので、彼について行きます」(3~4節)

   (1)門番とは誰か。3つの可能性。

  ①旧約聖書の預言者たち

  ②バプテスマのヨハネ

  ③聖霊

    *聖霊は、私たちの心の扉を開いてくださる方である。

  (2)羊は、その声を聞き分ける。

  ①癒された盲人は、パリサイ人たちの声ではなく、イエスの声に従った。

  ②パリサイ人たちは、彼を会堂から追放した。

  ③イエスは、彼を囲い(パリサイ的ユダヤ教)から導き出した。

  (3)羊飼いは、自分の羊の名を呼ぶ。

  ①複数の群れが同じ囲いの中にいる。

  (4)羊飼いは、羊の先頭に立って行く。

  ①羊は、彼について行く。

    ②真の牧者は、羊を追い立てない。

    ③先頭に立って、教え、行動、人格によって羊の群れを導く。

4.5節

「しかし、ほかの人には決してついて行きません。かえって、その人から逃げ出します。その人たちの声を知らないからです」(5節)

   (1)ほかの人

   ①盗人と強盗

②別の群れの羊飼い

③ここでは、パリサイ人たちのこと。

    (2)2重の拒否

  ①決してついて行かない。

  ②逃げ出す。

  ③牧会者のゴールは、これである。

        *みことばを教えることで、羊が真の牧者の声を聞き分けるようにする。

     ④ヨハネの福音書の読者は、この羊と自分を重ね合わせたことであろう。

    *彼らの多くが、会堂から追放されていた。

    *それは悲劇ではなく、「ほかの人」から逃げ出したことなのである。

5.6節

「イエスはこのたとえを彼らにお話しになったが、彼らは、イエスの話されたことが何のことかよくわからなかった」(6節)

   (1)イエスは、このたとえ話をパリサイ人たちに話した。

  ①彼らは、理解しなかった。

    ②羊飼いを軽蔑していたので、自分のこととは思わなかった。

  ②イエスの羊ではないので、その声を聞き分けることができない。

Ⅱ.羊の門と盗人(強盗)の対比(7~10節)

   1.7~9節

「そこで、イエスはまた言われた。『まことに、まことに、あなたがたに告げます。わたしは羊の門です。わたしの前に来た者はみな、盗人で強盗です。羊は彼らの言うことを聞かなかったのです。わたしは門です。だれでも、わたしを通って入るなら、救われます。また安らかに出入りし、牧草を見つけます』」(7~9節)

(1)新しい比喩が用いられる。「まことに、まことに、…」

  ①ここで語られている門には、2種類ある。

*囲いの門(1~2節)

    *羊の門(7節)

(2)羊飼いに導かれた羊の群れは、牧草のある場所に来る。

①そこに、羊の囲い地がある。

②羊は、羊の門を使ってその囲い地に出入りする。

③外に出れば水と牧草があり、内に入れば安全がある。

(3)イエスだけが、神の国に入るための門である。

  ①イエスよりも前に来た霊的指導者たちは、盗人で強盗である。

  ②この方以外に、救いはない。

   2.10節

「盗人が来るのは、ただ盗んだり、殺したり、滅ぼしたりするだけのためです。わたしが来たのは、羊がいのちを得、またそれを豊かに持つためです」(10節)

   (1)盗人の動機は、羊を搾取することである。

    ①自分の利益のために、羊を殺すことさえする。

  (2)イエスは、奪うためではなく、与えるために来られた。

  ①羊は命を得る。

    ②その命を豊かに持つ。

結論

  1.比喩的言葉について

    (1)字義通りの解釈とは、比喩は比喩として読むということである。

      ①イエスは、文字通りの門ではない。

      ②イエスの役割と、門の役割に、相関関係があるということである。

    (2)マコ14:22の解釈

    「それから、みなが食事をしているとき、イエスはパンを取り、祝福して後、これを裂き、彼らに与えて言われた。『取りなさい。これはわたしのからだです』」(マコ14:22)

  ①パン=イエスのからだ、ではない。

      ②これは、比喩的言葉である。

  2.羊と羊飼いの関係について

    (1)これもまた、比喩的言葉である。

      ①羊と羊飼いの関係は、私たちと主イエスの関係に似ている。

    (2)羊飼いは、自分の羊に名を付けている。今もその習慣がある。

  ①羊飼いは名を呼んで、自分の羊をみな引き出す。

  ②一頭も残されることはない。

    ③聖書の例

  *出33:17

    「【主】はモーセに仰せられた。『あなたの言ったそのことも、わたしはしよう。あなたはわたしの心にかない、あなたを名ざして選び出したのだから』」

*イザ43:1

「だが、今、ヤコブよ。あなたを造り出した方、【主】はこう仰せられる。イスラエルよ。あなたを形造った方、【主】はこう仰せられる。『恐れるな。わたしがあなたを贖ったのだ。わたしはあなたの名を呼んだ。あなたはわたしのもの』」

*ルカ19:5

  「イエスは、ちょうどそこに来られて、上を見上げて彼に言われた。『ザアカイ。急いで降りて来なさい。きょうは、あなたの家に泊まることにしてあるから』」

  *使10:5

    「さあ今、ヨッパに人をやって、シモンという人を招きなさい。彼の名はペテロとも呼ばれています」

3.豊かないのちについて

「盗人が来るのは、ただ盗んだり、殺したり、滅ぼしたりするだけのためです。わたしが来たのは、羊がいのちを得、またそれを豊かに持つためです」(ヨハ10:10)

  (1)福音の三要素を受け入れ、イエスをそのような方と信じる。

  (2)その瞬間から、新しいいのちが始まる。

    ①現在形の動詞。継続した動作を示す。

  (3)新しいいのちには、種々の段階がある。

  ①豊かに持つ段階へと進む。これも現在形の動詞。

    ②羊は、門を通って出入りする。

      *神の臨在の中に入り、神を礼拝する。

      *礼拝した後、この世に出て行く。

  ③みことばは牧草である。

  ④聖霊の支配に服すれば服するほど、いのちは豊かになる。

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