コリント人への手紙第一(13)結婚に関する教え(2)―結婚に関する基本原則―7:17~24

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結婚に関する基本原則について学ぶ。

コリント人への手紙第一 13回

結婚に関する教え(2)

―結婚に関する基本原則―

7 :17~24

はじめに

1.文脈の確認

(1)イントロダクション(1:1~9)

(2)教会内の分裂(1:10~4:21)

(3)教会内の無秩序(5~6)

(4)教会からの質問(7~16)

  ①結婚に関する教え(7:1~40)

    *既婚者への助言(1~16節)

    *結婚に関する基本原則(17~24節)

    *未婚の者たちへの助言(25~40節)

2.注目すべき点

(1)パウロは、「前の手紙」で、いくつかの指示を出した。

(2)コリントの信者たちは、それに関する質問を書いてきた。

  ①根底には、パウロの教えに対する反発心がある。

(3)パウロは、「○〇について」(ペリ・デ)という用語を用いて、各質問に答える。

(4)7~16章は、各質問に対する回答である。

(5)その最初が、結婚に関する教えである。

3.アウトライン(結婚に関する基本原則)

(1)信者への警告(17節)

(2)割礼があるか無割礼か(18~20節)

(3)奴隷か自由人か(21~23節)

(4)まとめ(24節)

4.結論:聖書は奴隷制を容認しているのか。

結婚に関する基本原則について学ぶ。

Ⅰ.信者への警告(17節)

1.17節

1Co 7:17

ただ、それぞれ主からいただいた分に応じて、また、それぞれ神から召されたときのままの状態で歩むべきです。私はすべての教会に、そのように命じています。

(1)「ただ」(エイ・メイ)は、警告を発するためのことばである。

  ①1コリ7:15

1Co 7:15
しかし、信者でないほうの者が離れて行くなら、離れて行かせなさい。そのような場合には、信者である夫あるいは妻は、縛られることはありません。神は、平和を得させようとして、あなたがたを召されたのです。

  ②離婚することが望ましいと考える者たちがいた。

  ③コリントの信者たちは、霊的であるという意味を誤解していた。

(2) 「それぞれ神から召されたときのままの状態で歩むべきです」

  ①これは、神の摂理的導きを受け入れるべきであるという勧告である。

  ②信者になったときの状態を無理に変えるべきではない。

  ③既婚であっても、独身であっても、そのままの生活を続ければよい。

  ④信者同士の結婚であっても、不信者との結婚であっても、そのままでよい。

(3) 「私はすべての教会に、そのように命じています」

  ①この表現は、この書簡で4回も出てくる。

    *4:17、7:17、11:16、14:33

    *この教えは、普遍的な教えである。

  ②現状維持の具体例が、2つ挙げられる。

    *割礼か無割礼か

    *奴隷か自由人か

Ⅱ.割礼があるか無割礼か(18~20節)

1.18節

1Co 7:18

召されたとき割礼を受けていたのなら、その跡をなくそうとしてはいけません。また、召されたとき割礼を受けていなかったのなら、割礼を受けてはいけません。

(1)割礼がある信者(ユダヤ人)に対して

  ①信じたときに割礼を受けていたのなら、その跡をなくそうとしてはならない。

  ②ユダヤ人は、異邦人のようになる必要はない。

  ③ユダヤ人は、ユダヤ人として信仰生活を始めればよい。

  ④当時、割礼の痕跡を消すユダヤ人たちがいた。

    *この時代、ユダヤ人はヘレニズム文化の影響を受けていた。

    *ヘレニズム文化では、裸体の美が重んじられた。

    *ジムナジウムでの運動や競技は、裸体での参加が一般的であった。

    *ヘレニズム文化圏では、割礼された身体は異質であると見なされた。

    *ユダヤ人の中には、同化のために割礼の跡を隠す手術を受ける者がいた。

(2)無割礼の信者(異邦人)に対して

  ①異邦人として信じたのなら、異邦人として信仰生活を始めればよい。

  ②異邦人は、ユダヤ人のようになる必要はない。

2.19~20節

1Co 7:19

割礼は取るに足りないこと、無割礼も取るに足りないことです。重要なのは神の命令を守ることです。

1Co 7:20 それぞれ自分が召されたときの状態にとどまっていなさい。

(1)神は、外見ではなく、内面をご覧になる。

  ①割礼も無割礼も、取るに足りないことである。

  ②重要なのは、神の命令を守ることである。

(2)信者は、神から与えられた摂理的状況の中で生きるように召されている。

  ①罪に関係した状況でない限り、急激な変化を求めるべきではない。

  ②信者は、状況を超越した状態に引き上げられたのである。

(3)その状況が罪に関係したものである場合は、変化を求めるべきである。

  ①倫理的に問題のある職業に就いているなら、転職すべきである。

      (例話)めかけが信者になった場合、どうするか。

Ⅲ.奴隷か自由人か(21~23節)

1.21節

1Co 7:21

あなたが奴隷の状態で召されたのなら、そのことを気にしてはいけません。しかし、もし自由の身になれるなら、その機会を用いたらよいでしょう。

(1)奴隷が救われた場合、どうすべきか。

  ①奴隷であることを気にする必要はない。

  ②主人に反抗し、自由を要求すべきではない。

  ③奴隷であっても、祝された信仰生活を送ることができる。

(2) 「もし自由の身になれるなら、その機会を用いたらよいでしょう」

  ①新改訳2017の解釈

    *「自由になる機会があるなら、自由の身になればよい」

    *自由人のほうが、より良く神に仕えることができる。

  ②共同訳の解釈

    *「自由の身になれるとしても、そのままでいなさい」

    *奴隷状態のままでも、キリストを証しすることは可能である。

2.22節

1Co 7:22

主にあって召された奴隷は、主に属する自由人であり、同じように自由人も、召された者はキリストに属する奴隷だからです。

(1)現状変更を求める必要がない理由

  ①奴隷で救われた者は、キリストに属する自由人となった。

    *彼は、罪と悪魔の束縛から解放された。

  ②自由人として救われた者は、キリストに属する奴隷となった。

    *彼は、自由意志でキリストに仕えるしもべとなった。

(2)優先順位を確立することが重要である。

  ①奴隷は、自由人となったことに目をとめるべきである。

  ②自由人は、奴隷とされたことに目をとめるべきである。

  ③私たちには、可能性にではなく、限界に目をとめるという傾向がある。

3.23節

1Co 7:23

あなたがたは、代価を払って買い取られたのです。人間の奴隷となってはいけません。

(1)信者は、代価を払って買い取られた。

  ①代価とは、キリストの血潮である。

    *奴隷は高価である。

(2)1コリ6:20(遊女との交わり)

1Co 6:20 あなたがたは、代価を払って買い取られたのです。ですから、自分のからだをもって神の栄光を現しなさい。

  ①信者は、神の所有物となった。

  ②霊的な意味で、人間の奴隷となってはならない。

  ③信者は、キリストの導きと教えに従うべきである。

Ⅳ.まとめ(24節)

1.24節

1Co 7:24 兄弟たち、それぞれ召されたときのままの状態で、神の御前にいなさい。

(1)これが、この箇所のまとめである。

  ①割礼や奴隷の例が出てきたが、文脈上、結婚と独身がテーマであった。

  ②既婚者であっても独身であっても、そのままの状態で神に仕えることができる。

  ③より効果的に神に仕える道が開かれるなら、その機会を利用すればよい。

結論:聖書は奴隷制を容認しているのか。

1.当時の奴隷は、アメリカ史における奴隷とは異なる。

(1)コリントの人口の約3分の1は奴隷であった。

  ①奴隷階級は、安定した社会の維持に大いに貢献した。

  ②彼らは、主人から生活を保障されていた。

  ③中には、主人と利益を分け合う奴隷もいた。

  ④自分のいのちの所有者は主人であるという意味で、奴隷は奴隷であった。

(2)ストア学派は、主人と奴隷は倫理的・道徳的に対等になれると教えた。

  ①マーカス・アウレリウス(紀元2世紀の皇帝)は、ストア派であった。

  ②その彼でも、自らの哲学的確信を現実社会に適用しようとはしなかった。

(3)奴隷による反乱は、徹底的に鎮圧された。

  ①スパルタクスによる反乱(前73~71年)

  ②ローマ時代、奴隷による反乱はすべて鎮圧された。

2.パウロは、現実的な対応策を採用した。

(1)それ以外の方法では、キリスト教は初期段階で消滅していたであろう。

  ①パウロは、自由を求めて戦うように奴隷たちに勧める。

  ②その勧めに応答して、奴隷たちが反乱を起こす。

  ③ローマ軍がその反乱を鎮圧する。

  ④パウロを初めとする指導者たちが逮捕され、教会は消滅する。

  ⑤キリスト教の広がりは、そこで終わる。

3.キリスト教の本質

(1)キリスト教は、政治運動ではない。

  ①主イエスもパウロも、急激な社会変革を教えなかった。

(2)キリスト教には、社会を変革する力がある。

  ①福音は、個人の心を変える。

  ②福音には、社会を変革するための原則が含まれている。

  ③創1:27

Gen 1:27

神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして人を創造し、男と女に彼らを創造された。

(3)パウロの現実的教え

  ①エペ6:5~7

Eph 6:5

奴隷たちよ。キリストに従うように、恐れおののいて真心から地上の主人に従いなさい。

Eph 6:6

ご機嫌取りのような、うわべだけの仕え方ではなく、キリストのしもべとして心から神のみこころを行い、

Eph 6:7 人にではなく主に仕えるように、喜んで仕えなさい。

  ②エペ6:9

Eph 6:9

主人たちよ。あなたがたも奴隷に対して同じようにしなさい。脅すことはやめなさい。あなたがたは、彼らの主、またあなたがたの主が天におられ、主は人を差別なさらないことを知っているのです。

(4)キリスト教が広がった国では、福音的なリーダーによって奴隷制は廃止された。

  ①イギリス:1833年の奴隷制度廃止法

  ②アメリカ:南北戦争後の1865年に奴隷制が廃止された。

(5)奴隷の問題は、現代的課題でもある。

  ①世界に2,700万人以上の奴隷がいると言われている。

  ②強制労働、性産業、人身売買など

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