コリント人への手紙第一(08)分裂の問題の解決法4:6~21

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分裂の問題の解決法について学ぶ。

コリント人への手紙第一 8回

分裂の問題の解決法

4 :6~21

はじめに

1.文脈の確認

(1)イントロダクション(1:1~9)

(2)教会内の分裂(1:10~4:21)

  ①分裂という現実(1:10~17)

  ②分裂の原因(1:18~4:5)

  ③分裂の問題の解決法(4:6~21)

2.アウトライン

(1)誤った誇り(6~13節)

(2)最後の訴えと勧め(14~21節)

3.注目すべき点

(1)皮肉や反語法などの修辞的手法が用いられる。

(2)分派の原因は、プライド(思い上がり)である。

(3)分派の解決法は、パウロを見習うことである。

4.結論

(1) 分派の原因

(2)分派の解決

分裂の問題の解決法について学ぶ。

Ⅰ.誤った誇り(6~13節)

1.6節

1Co 4:6

兄弟たち。私はあなたがたのために、私自身とアポロに当てはめて、以上のことを述べてきました。それは、私たちの例から、「書かれていることを越えない」ことをあなたがたが学ぶため、そして、一方にくみし、他方に反対して思い上がることのないようにするためです。

(1)パウロは、種々の例話を用いてきた。

  ①農夫、建築家、しもべ、管理者

  ②次に出てくるのは、パウロとアポロを例に取った議論である。

(2) 「『書かれていることを越えない』ことをあなたがたが学ぶため」

  ①聖書(この場合は旧約聖書)が教えていることを越えない。

  ②つまり、人間を過度に評価しないということである。

  ③特定の指導者をあがめ、他の指導者を拒否したりしないということである。

  ④1人の人が、すべての真理を持っているわけではない。

  ⑤特定の指導者に付くのは、思いあがっている(高ぶっている)からである。

(3)パウロとアポロから学ぶ教訓

  ①パウロとアポロは、共通の目的のために働く同労者である。

  ②彼らは、人間(自分)を誇ることはしない。

  ③彼らの奉仕の姿勢から、キリストのしもべのあるべき姿を学ぶことができる。

  ④パウロとアポロを手本にするなら、分派の問題は解決する。

(4)問題の原因は、ギリシア・ローマ的価値観である。

  ①謙遜は、奴隷の悲しむべき性質である。

  ②謙遜は、弱さのしるしであり、偉大な人物の特徴ではない。

  ③コリントの信者たちの問題は、高慢にある。

2.7~8節

1Co 4:7

いったいだれが、あなたをほかの人よりもすぐれていると認めるのですか。あなたには、何か、人からもらわなかったものがあるのですか。もしもらったのなら、なぜ、もらっていないかのように誇るのですか。

1Co 4:8

あなたがたは、もう満ち足りています。すでに豊かになっています。私たち抜きで王様になっています。いっそのこと、本当に王様になっていたらよかったのです。そうすれば、私たちもあなたがたとともに、王様になれたでしょうに。

(1)コリントの信者たちの高慢な姿

  ①彼らには、何か、人からもらわなかったものはない。

  ②にもかかわらず、彼らは、もらっていないかのように誇り高ぶっている。

  ③彼らを導いた使徒たちは謙遜に歩んでいるが、彼ら自身は傲慢になっている。

(2)パウロの皮肉(irony)と当てこすり(sarcasm)

  ①古代ギリシア・ローマ世界の対話では、皮肉や当てこすりは、よく用いられた。

  ② 「あなたがたは、もう満ち足りています」

  ③ 「すでに豊かになっています」

  ④ 「私たち抜きで王様になっています」

  ⑤つまり、キリストの御座の裁きが終わったかのような状態になっている。

  ⑥この誤解を解くために、パウロは、当てこすり(sarcasm)を用いる。

(例話)京都の老舗のお茶屋の息子が、新茶を買いに行った。

(3) 「いっそのこと、本当に王様になっていたらよかったのです。そうすれば、私

たちもあなたがたとともに、王様になれたでしょうに」

  ①コリントの信者たちの間には、終末的祝福の先取りが見られる。

  ②今は、王として支配する時ではない。

  ③クリスチャン生活は、しもべとして神の計画に仕える生活である。

3.9~10節

1Co 4:9

私はこう思います。神は私たち使徒を、死罪に決まった者のように、最後の出場者として引き出されました。こうして私たちは、世界に対し、御使いたちにも人々にも見せ物になりました。

1Co 4:10

私たちはキリストのために愚かな者ですが、あなたがたはキリストにあって賢い者です。私たちは弱いのですが、あなたがたは強いのです。あなたがたは尊ばれていますが、私たちは卑しめられています。

(1)ローマの凱旋将軍の比ゆ

  ①勝利した将軍は、凱旋行列を率いて行進する。

  ②凱旋行列の最後に、捕虜たちの群れが続く。

  ③やがて捕虜たちは、闘技場に引き出され、野獣と対決させられる。

  ④使徒たちは、捕虜たちと同じように「見せ物」になった。

(2)コリントの信者たちと使徒たちの対比

  ①彼らは賢い者であるが、使徒たちは愚かな者である。

  ②彼らは強いが、使徒たちは弱い。

  ③彼らは尊ばれているが、使徒たちは卑しめられている。

  ④彼らは、使徒たちを見倣うのではなく、すでに勝利者になっている。

4.11~13節

1Co 4:11

今この時に至るまで、私たちは飢え、渇き、着る物もなく、ひどい扱いを受け、住む所もなく、

1Co 4:12

労苦して自分の手で働いています。ののしられては祝福し、迫害されては耐え忍び、

1Co 4:13中傷されては、優しいことばをかけています。私たちはこの世の屑、あらゆるものの、かすになりました。今もそうです。

(1)さらにパウロは、福音のためにどこまで苦難を負っているかを証しする。

  ① 「飢え、渇き、着る物もなく、ひどい扱いを受け、住む所もなく」

  ② 「苦労して自分の手で働いています」

    *ギリシア人は、肉体労働を軽蔑した。

  ③ 「ののしられては祝福し、迫害されては耐え忍び、中傷されては、優しいことばをかけています」

    *キリストの足跡をたどっている。

  ④ 「私たちはこの世の屑、あらゆるものの、かすになりました。今もそうです」

    *コリントの信者たちとは、対照的である。

Ⅱ.最後の訴えと勧め(14~21節)

1.14~15節

1Co 4:14

私がこれらのことを書くのは、あなたがたに恥ずかしい思いをさせるためではなく、私の愛する子どもとして諭すためです。

1Co 4:15

たとえあなたがたにキリストにある養育係が一万人いても、父親が大勢いるわけではありません。この私が、福音により、キリスト・イエスにあって、あなたがたを生んだのです。

(1)パウロは、新しい比ゆ(父と子の関係)に移行する。

  ① 「あなたがたに恥ずかしい思いをさせるためではなく、」

    *この手紙は、他教会でも読まれる。

  ②高慢は、決して軽い罪ではなく、重大な霊的欠陥である。

  ③それゆえ、霊の父としてやさしく諭す。

  ④父として諭す内容が拒否されるなら、より強硬な手段に訴えることになる。

(2)キリストにある養育係が一万人いようとも、霊の父はパウロだけである。

  ①パウロの伝道によって、彼らは救われた。

  ②その後、彼らを霊的に指導した教師たちがたくさん出た。

    *養育係は、子どもの家庭教師となるローマ時代の奴隷である。

2.16節

1Co 4:16 ですから、あなたがたに勧めます。私に倣う者となってください。

(1) 「私に倣う者となってください」

  ①ユダヤ人の子どもは、父親の姿をまねて育つ。

  ②ユダヤ教のラビと弟子の関係は、父と子の関係にたとえられる。

  ③勝利主義から、しもべの生活への移行が勧められている。

3.17節

1Co 4:17

そのために、私はあなたがたのところにテモテを送りました。テモテは、私が愛する、主にあって忠実な子です。彼は、あらゆるところのあらゆる教会で私が教えているとおりに、キリスト・イエスにある私の生き方を、あなたがたに思い起こさせてくれるでしょう。

(1)さらにパウロは、弟子のテモテを送ったと言う。

  ①テモテもパウロの霊の子で、教えと行動が一致している神の器である。

  ②テモテは、パウロの代理人として奉仕をする。

  ③そのテモテから学びなさいというのである。

4.18~20節

1Co 4:18

あなたがたのところに私が行くことはないだろうと考えて、思い上がっている人たちがいます。

1Co 4:19

しかし、主のみこころであれば、すぐにでもあなたがたのところに行きます。そして、思い上がっている人たちの、ことばではなく力を見せてもらいましょう。

1Co 4:20 神の国は、ことばではなく力にあるのです。

(1)コリントの教会には、パウロの権威を疑う者たちがいた。

  ①彼らは、パウロはすぐに計画を変更すると考えていた(2コリ 1:17)。

  ②パウロの手紙は重みがあるが、実際は弱々しいと思っていた(2コリ 10:10)。

(2)パウロは、主の御心なら、すぐにでもコリントに行く用意があると語る。

  ①その際には、高慢でことば数だけが多い人たちの力を見せてもらおう。

  ② 「神の国は、ことばにはなく力にあるのです」

    *この神の国は、千年王国ではなく、普遍的な神の支配である。

    *この力は、聖霊の力である。

    *パウロは、この力を用いて伝道した。

    *パウロは、同じ力を訓戒のために用いる。

    *ことば数の多さではなく、神の力を体験しているかどうかである。

5.21節

1Co 4:21

あなたがたはどちらを望みますか。私があなたがたのところに、むちを持って行くことですか。それとも、愛をもって柔和な心で行くことですか。

(1) 「むちを持って行く」

  ①ギリシア・ローマの視点では、「むち」は訓戒の象徴である。

  ②コリントの信者たちの態度が変化しないなら、パウロは訓戒者として行く。

  ③変化するなら、柔和な父として行く。

結論

1.分派の原因

(1)コリントの信者たちは、この世の視点で霊的リーダーたちを評価していた。

  ①不信者の視点

(2)霊的リーダーたちを見下すと、彼らの奉仕から最大の祝福を引き出せなくなる。

  ①永遠のいのちの実質を体験できなくなる。

(3)コリントの信者たちは、聖霊が行う聖化の働きを受け入れていなかった。

  ①御霊の賜物は豊かであったが、御霊の実が欠けていた。

2.分裂の解決

(1)指導者たちを見倣うこと。

  ①彼らは、十字架を負って、謙遜に歩んでいる。

(2)指導者たちの召しを理解すること。

  ①彼らには、神の「奥義」が委ねられている。

    *4:1~2

1Co 4:1 人は私たちをキリストのしもべ、神の奥義の管理者と考えるべきです。

1Co 4:2 その場合、管理者に要求されることは、忠実だと認められることです。

  ②彼らは、ゴルゴタへの道を歩むことが期待されている。

    *4:9

1Co 4:9

私はこう思います。神は私たち使徒を、死罪に決まった者のように、最後の出場者として引き出されました。こうして私たちは、世界に対し、御使いたちにも人々にも見せ物になりました。

  ③彼らは、信者を励まし、ときには叱責することが期待されている。

    *4:14

1Co 4:14

私がこれらのことを書くのは、あなたがたに恥ずかしい思いをさせるためではなく、私の愛する子どもとして諭すためです。

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