メシアの生涯(103)—3人の弟子候補—

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真の弟子になることを妨げる3つのことがらについて学ぶ。

「3人の弟子候補」

§093 マタ8:19~22、ルカ9:57~62

1.はじめに

  (1)文脈の確認

①ガリラヤでの弟子訓練が終わった。

②前回の箇所から、イエスは御顔をエルサレムに向けて進み始めた。

③サマリヤを通過する際、サマリヤ人から拒否された。

④道を進んで行く間も、イエスは弟子訓練を行われた。

      ⑤3人の弟子候補が登場する。

        *表面だけでなく、内面の動機を読み取る必要がある。

      ⑥救いは、信仰と恵みによる。

      ⑦この箇所は、救われた後の歩みがテーマである。

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

「3人の弟子候補」(§93)

マタ8:19~22、ルカ9:57~62

2.アウトライン

  (1)最初の弟子候補(57~58節)

  (2)第2の弟子候補(59~60節)

  (3)第3の弟子候補(61~62節)

  3.結論

    (1)最初の弟子候補の例

    (2)第2の弟子候補の例

    (3)第3の弟子候補の例

真の弟子になることを妨げる3つのことがらについて学ぶ。

Ⅰ.最初の弟子候補:急ぎ足太郎(57~58節)

   1.57節

「さて、彼らが道を進んで行くと、ある人がイエスに言った。『私はあなたのおいでになる所なら、どこにでもついて行きます』」

  (1)ある人がイエスに弟子入りを申し込んだ。

①この人は、律法学者である(マタ8:19)。

②ユダヤ人の習慣では、弟子志願者が教師を自分で見つけるのが普通である。

③イエスの場合は、イエスが主導権を握って、先に声をかける場合があった。

    (2)この律法学者の特徴

      ①イエスから招かれるのを待たなかった。

      ②自身満々である。「あなたのおいでになる所なら、どこにでもついて行きます」

      ③過剰な熱心さが見られる。

      「底ひなき 淵やはさわぐ 山川の 浅き瀬にこそ 仇波は立て」

  2.58節

「すると、イエスは彼に言われた。『狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には枕する所もありません』」

   (1)この律法学者の問題点

    ①彼は、快適な生活や富の所有を放棄しようとしていない。

    (例話)富を嫌う高名な哲学者。生徒に法外な要求をすることで、吟味する。

    ②彼は、弟子になるための犠牲を計算していない。

  (2)イエスのことば

    ①イエスの公生涯は、十字架への道であった。

    ②使命を全うするために、イエスは家を捨て、旅に出た。

    ③当時の庶民は貧しかったが、ほとんどの人は住む家を持っていた。

    ③イエスの生活は、他者の善意に頼るものであった。

    ④自然界が狐や鳥に約束している安息以下のものしか与えられていない。

    ⑤イエスの弟子になろうとするなら、この世の快適さに束縛されてはならない。

  (3)イエスを哀れに思う必要はない。

    ①自分の献身を妨げる家があるなら、それこそ哀れに思うべきである。

Ⅱ.第2の弟子候補:決断のび太(59~60節)

   1.59節

「イエスは別の人に、こう言われた。『わたしについて来なさい。』しかしその人は言った。

『まず行って、私の父を葬ることを許してください』」

   (1)この人の場合は、イエスから声をかけている。

    ①マタイの召命の場面に似ている(ルカ5:27)。

    ②この人には、召命に応答する信仰と決意があったのであろう。

    ③いわば、時が満ちているのである。

   (2)しかし、この人は行動を先延ばしにしている。

    ①「まず行って、私の父を葬ることを許してください」

    ②この人の父は、死んでいない。また、死にそうな状態でもない。

    ③モーセの律法は、両親を敬えと教えている。

    ④タルムードの命令

      *長男の最大の役割は、父の埋葬である。

      *長男は父が死ぬまでともに住まなければならない。

      *父の死後、さらに1年留まって、「カディッシュ」という祈りを唱える。

      *悲しみの中でも神をたたえるという祈りである。

    ⑤タルムードは、モーセの律法以上のものを要求している。

2.60節

「すると彼に言われた。『死人たちに彼らの中の死人たちを葬らせなさい。あなたは出て

行って、神の国を言い広めなさい』」

   (1)「死人たちに彼らの中の死人たちを葬らせなさい」

    ①「死人たち」とは、霊的に死んでいる人たちのこと。

    ②次の「死人たち」とは、肉体的に死んだ人たちのこと。

  (2)「あなたは出て行って、神の国を言い広めなさい」

    ①優先順位から言うと、福音の伝達の方が重要であり、緊急性がある。

    ②不信者にできることは、不信者にまかせよ。

    ③信者にしかできないことを優先すべきである。

  (3)父親はどうするのかという疑問

    ①ここでは、父親を放棄することを容認しているわけではない。

    ②先延ばしにしようとしている心の状態が問題である。

    ③信者には、マタ6:33の約束が与えられている。

    「だから、神の国とその義とをまず第一に求めなさい。そうすれば、それに加え

て、これらのものはすべて与えられます」

Ⅲ.第3の弟子候補:二股かけ次郎(61~62節)

   1.61節

  「別の人はこう言った。『主よ。あなたに従います。ただその前に、家の者にいとまごいに帰らせてください』」

   (1)1番目と2番目をミックスしたような人

    ①自分から申し出ている(1番目のパターン)。

    ②しかし、条件を付けている(2番目のパターン)。

  (2)「ただその前に、家の者にいとまごいに帰らせてください」

    ①エリヤとエリシャの例

    「エリヤはそこを立って行って、シャファテの子エリシャを見つけた。エリシャ

は、十二くびきの牛を先に立て、その十二番目のくびきのそばで耕していた。エ

リヤが彼のところを通り過ぎて自分の外套を彼に掛けたので、エリシャは牛をほ

うっておいて、エリヤのあとを追いかけて行って言った。『私の父と母とに口づけ

させてください。それから、あなたに従って行きますから。』エリヤは彼に言った。

『行って来なさい。私があなたに何をしたというのか』」(2列19:19~20)

②エリシャの場合は許されているが、この人の場合は許されていない。

③問題は、優先順位が確立していないことである。

   2.62節

   「するとイエスは彼に言われた。『だれでも、手を鋤につけてから、うしろを見る者は、 神の国にふさわしくありません』」

     (1)イエスは、農夫ならよく知っている話を用いて、この人の問題点を指摘する。

      ①畑を耕す時は、前方を見据える必要がある。

      ②後ろを振り返ると、畝が曲がってしまう。

    (2)この人の問題は、イエスに仕えること以外に関心事があることである。

      ①「神の国にふさわしくありません」とは、救いに関することではない。

      ②真の弟子になれるかどうかの問題である。

結論

  はじめに

    (1)3人の弟子候補者たちがどのように応答したかは書かれていない。

    (2)その回答は、私たち自身が書くべきである。

  1.急ぎ足太郎の例

    (1)マタ26:33~35

「すると、ペテロがイエスに答えて言った。『たとい全部の者があなたのゆえにつま ずいても、私は決してつまずきません。』イエスは彼に言われた。『まことに、あなたに告げます。今夜、鶏が鳴く前に、あなたは三度、わたしを知らないと言います。』ペテロは言った。『たとい、ごいっしょに死ななければならないとしても、私は、あなたを知らないなどとは決して申しません。』弟子たちはみなそう言った」

  ①自信満々の時は、危険である。

  ②自分の弱さを知ることは、弟子になるための第一歩である。

  ③ペテロが回復されたことは、私たちにとっては慰めである。

  2.決断のび太の例

    (1)マタ4:18~22

    「イエスがガリラヤ湖のほとりを歩いておられたとき、ふたりの兄弟、ペテロと呼ば

れるシモンとその兄弟アンデレをご覧になった。彼らは湖で網を打っていた。漁師だ

ったからである。イエスは彼らに言われた。『わたしについて来なさい。あなたがた

を、人間をとる漁師にしてあげよう。』彼らはすぐに網を捨てて従った。

そこからなお行かれると、イエスは、別のふたりの兄弟、ゼベダイの子ヤコブと

その兄弟ヨハネが父ゼベダイといっしょに舟の中で網を繕っているのを

ご覧になり、ふたりをお呼びになった。彼らはすぐに舟も父も残してイエスに従った」

   ①舟も父も残してイエスに従ったというのは、興味深い。

  3.二股かけ次郎の例

    (1)ルカ17:31~32

    「その日には、屋上にいる者は家に家財があっても、取り出しに降りてはいけません。

同じように、畑にいる者も家に帰ってはいけません。ロトの妻を思い出しなさい」

  おわりに:なぜイエスの弟子になろうとするのか。

    そうせざるを得ない理由

    (1)本能である。これが、クリスチャンの生きがいである。

(2)キリストの愛が迫ってくる。

    (3)最高の特権である。

    (4)将来の報いがある。

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