メシアの生涯(101)—赦しに関する教え—

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教会時代のクリスチャンが実行すべき赦しの原則について学ぶ。

「赦しに関する教え」

§092 マタ18:15~35

1.はじめに

  (1)文脈の確認

①弟子訓練が佳境に入っている。

②3つの問題

*プライド(誰が一番偉いかという議論)

  *分派意識(プライドから出てくるもの)

  *兄弟間の赦し

    (2)「教会」という言葉

      ①ギリシア語でエクレシア(呼び出された者)

        *普遍的教会とは、使徒2章から携挙までにイエスを信じる人の総体。

        *地域教会とは、時間的、地理的に制約がある。未信者も含んでいる。

      ②マタ16:18

      「ではわたしもあなたに言います。あなたはペテロです。わたしはこの岩の上に

わたしの教会を建てます。ハデスの門もそれには打ち勝てません」

  *これは、普遍的教会である。

③マタ18:17

  *これは、地域教会である。

  (3)A.T.ロバートソンの調和表

「他の兄弟に対して罪を犯した人の、正しい取り扱い方」(§92)

マタ18:15~35

2.アウトライン

  (1)赦しに関する4つのステップ(15~20節)

  (2)ペテロの質問に対する答え(21~22節)

  (3)多額の借金を免除された人のたとえ(23~35節)

  3.結論:3つの誤解を解く

    (1)18節

    (2)19~20節

    (3)この箇所全体

教会時代のクリスチャンが実行すべき赦しの原則について学ぶ。

Ⅰ.赦しに関する4つのステップ(15~17節)

  「また、もし、あなたの兄弟が罪を犯したなら、行って、ふたりだけのところで責めなさ

い。もし聞き入れたら、あなたは兄弟を得たのです。もし聞き入れないなら、ほかにひと

りかふたりをいっしょに連れて行きなさい。ふたりか三人の証人の口によって、すべての

事実が確認されるためです。それでもなお、言うことを聞き入れようとしないなら、教会

に告げなさい。教会の言うことさえも聞こうとしないなら、彼を異邦人か取税人のように

扱いなさい」

   1.訳文の比較

「また、もし、あなたの兄弟が罪を犯したなら、」(新改訳)

  「兄弟があなたに対して罪を犯したなら、」(新共同訳)

    (1)ここでの罪とは、必ずしも道徳的なものではない。

      ①道徳的な罪に関しては、長老たちにそれを取り除く権威がある。

      ②1コリ5:1~5

      「あなたがたの間に不品行があるということが言われています。しかもそれは、

異邦人の中にもないほどの不品行で、父の妻を妻にしている者がいるとのことで

す。それなのに、あなたがたは誇り高ぶっています。そればかりか、そのような

行いをしている者をあなたがたの中から取り除こうとして悲しむこともなかった

のです。私のほうでは、からだはそこにいなくても心はそこにおり、現にそこに

いるのと同じように、そのような行いをした者を主イエスの御名によってすでに

さばきました。あなたがたが集まったときに、私も、霊においてともにおり、私

たちの主イエスの権能をもって、このような者をサタンに引き渡したのです。そ

れは彼の肉が滅ぼされるためですが、それによって彼の霊が主の日に救われるた

めです」

③基本的には、兄弟間の争いである。

  2.4つのステップ

(1)傷つけられた人が、罪を犯した人と対面する段階

      ①これは、標準的なユダヤ人の処理法である。

*ラビたちは、他者からの叱責を受け入れるように教えている。

②聞き入れられたなら、兄弟を得たことになる。

③もし相手が聞き入れないなら、次の段階に進む。

④この手順を踏まない場合は、教会内に問題が広がる。

(2)ひとりかふたりの証人を連れて行って悔い改めを迫る。

①これもまたユダヤ的手順である。イエスはモーセの律法の教えを採用している。

②申19:15

  「どんな咎でも、どんな罪でも、すべて人が犯した罪は、ひとりの証人によって

は立証されない。ふたりの証人の証言、または三人の証人の証言によって、その

ことは立証されなければならない」

③これは、その兄弟がいかに霊的に深刻な状態にあるかを示している。

④これは、罪を犯した兄弟を回復させるための手順である。

(3)それでもだめなら、地域教会に事実を告げる。

  ①弟子たちは、会衆に告げることをイメージしたであろう。

  ②ペンテコステ以降、この命令はさらに深みを増したはずである。

  ③信者同士の争いを法廷に持ち込むのは禁じられている(1コリ6:1~8)。

  ④信者と未信者の争いでは、法廷に持ち込んでもよい。

(4)それさえも拒否したなら、異邦人か取税人のように扱う。

  ①ユダヤ人が異邦人や取税人を扱っていた方法にならうという意味である。

    *イエスが異邦人や取税人を見下していたわけではない。

  ②つまり、教会の交わりから追放するということである。

  ③その兄弟が真に悔い改めたなら、交わりに回復する。

  「その人にとっては、すでに多数の人から受けたあの処罰で十分ですから、あな

たがたは、むしろ、その人を赦し、慰めてあげなさい。そうしないと、その人は

あまりにも深い悲しみに押しつぶされてしまうかもしれません。そこで私は、そ

の人に対する愛を確認することを、あなたがたに勧めます」(2コリ2:6~8)

  3.文脈を無視して解釈される危険性のある聖句

    (1)18節

    (2)19~20節

Ⅱ.ペテロの質問に対する答え(21~22節)

  「そのとき、ペテロがみもとに来て言った。『主よ。兄弟が私に対して罪を犯した場合、何

度まで赦すべきでしょうか。七度まででしょうか。』イエスは言われた。『七度まで、など

とはわたしは言いません。七度を七十倍するまでと言います』」

   1.ペテロの質問

    (1)ここでペテロが質問を挟む。

      ①彼は、7度までと言い、自らの寛大さを示そうとしたのであろう。

    (2)パリサイ人の教えでは、3度まで赦すとなっていた。

 2.イエスの答え

(1)7の70倍

①これは、490回のことではない。

*無限に赦せという意味である。

    (2)赦しとは、内面に起こることである。

      ①毎回数えているなら、内面での赦しは起こっていない。

      ②これを教えるために、次のたとえ話が出てくる。

Ⅲ.多額の借金を免除された人のたとえ(23~35節)

  「このことから、天の御国は、地上の王にたとえることができます。王はそのしもべたち

と清算をしたいと思った。清算が始まると、まず一万タラントの借りのあるしもべが、王

のところに連れて来られた。しかし、彼は返済することができなかったので、その主人は

彼に、自分も妻子も持ち物全部も売って返済するように命じた。それで、このしもべは、

主人の前にひれ伏して、『どうかご猶予ください。そうすれば全部お払いいたします』と言

った。しもべの主人は、かわいそうに思って、彼を赦し、借金を免除してやった」 (23~27

節)

1.借金を赦した王の物語

(1)異邦人の王と借金のあるしもべ(家来)

  ①このしもべは、王から徴税を委ねられた地方統治者であろう。

  ②彼は、自分の取り分を除いた額を、王に収める義務があった。

(2)しかし彼は、その義務を果たさず、借金が1万タラントにも達していた。

  ①もし払えなければ、妻子や持ち物を売ってでもお金を作らねばならない。

  ②「どうかご猶予ください。そうすれば全部お払いいたします」

        *借金を抱えた人の多くが、時間があれば返済できると思い込んでいる。

    (3)借金の額は1万タラント

      ①恐らく王の年収以上の額であろう。

      ②1タラントは6千デナリ。

      ③1万タラントは、6千万デナリ。労働者の約16万年分の収入。

      ④これは、到底返せない額を示す誇張法である。

    (4)王は、彼の懇願に応えて、借金を帳消しにしてやった。

  2.借金を赦さないしもべの話

  「ところが、そのしもべは、出て行くと、同じしもべ仲間で、彼から百デナリの借りのあ

る者に出会った。彼はその人をつかまえ、首を絞めて、『借金を返せ』と言った。彼の仲間

は、ひれ伏して、『もう少し待ってくれ。そうしたら返すから』と言って頼んだ。しかし彼

は承知せず、連れて行って、借金を返すまで牢に投げ入れた」 (28~30節)

    (1)彼は、100デナリの借金が赦せない。

      ①対比は、60万対1である。

      ②多額と小額の劇的な対比がポイントである。

3.赦さない者に下る裁きの話

「彼の仲間たちは事の成り行きを見て、非常に悲しみ、行って、その一部始終を主人に話

した。そこで、主人は彼を呼びつけて言った。『悪いやつだ。おまえがあんなに頼んだから

こそ借金全部を赦してやったのだ。私がおまえをあわれんでやったように、おまえも仲間

をあわれんでやるべきではないか。』こうして、主人は怒って、借金を全部返すまで、彼を

獄吏に引き渡した。あなたがたもそれぞれ、心から兄弟を赦さないなら、天のわたしの父

も、あなたがたに、このようになさるのです」 (31~35節)

  (1)彼は、当然の報いを受けた。

    ①投獄された。

    ②これは、終身刑である。

  4.たとえ話の教訓

    (1)神から多く赦された者は、赦しの心を示すべきである。

(2)天の父は憐れみ深いのだから、私たちはその姿を真似るべきである。

(3)兄弟たちを赦さないなら、神からの赦しを受けることができない。

      ①永遠のいのちに関わる赦しではない。

      ②父なる神との断絶のこと。

      ③クリスチャン生活に障害が生じる。

結論

  1.マタイ18:18は、よく誤解される。

  「まことに、あなたがたに告げます。何でもあなたがたが地上でつなぐなら、それは天に

おいてもつながれており、あなたがたが地上で解くなら、それは天においても解かれてい

るのです」

  (1)文脈を考える。赦しに関する教えが、この箇所の文脈である。

  (2)サタンの縛りとは無関係である。

  (3)「つなぐ」と「解く」は、ラビ用語

    ①つなぐとは、禁止する、有罪を宣言するという意味。

    ②解くとは、許可する、無罪を宣言するという意味。

    ③ペテロにこの権威が与えられた(マタ16:19)。

    ④ここでは、使徒たち全員にこの権威が与えられた。

(4)神の御心に沿った決定は、神がそれを承認しておられる。

  ①交わりを断たれた兄弟の死は、サタンの支配下に置かれる。

  ②魂は救われている。(1コリ5:1~13)

2.マタイ18:19~20も、よく誤解される。

「まことに、あなたがたにもう一度、告げます。もし、あなたがたのうちふたりが、どん

な事でも、地上で心を一つにして祈るなら、天におられるわたしの父は、それをかなえて

くださいます。ふたりでも三人でも、わたしの名において集まる所には、わたしもその中

にいるからです」

  (1)文脈を考えると、これは教会の定義ではない。

  (2)19節の「ふたり」とは、証人のこと。

    ①複数の祈りには力があるが、ここではそれが強調点ではない。

  (3)20節の「ふたりでも三人でも」もまた証人のこと。

    ①教会の定義ではない。教会は権威という秩序のある組織。

    ②4つのステップをイエスが承認しているということ。

  (4)以上のことを、愛を込めて行うなら、イエスはその中におられる。

  3.この箇所全体

    (1)懲戒に関する教えの土台にあるのは、憐みと赦しである。

      ①懲戒を実行する目的は、罪を犯した兄弟を回復するためである。

    (2)なぜ4つのステップを踏む必要があるのか。

      ①兄弟が自分に対して罪を犯したなら、ただちに赦す。

      「お互いに親切にし、心の優しい人となり、神がキリストにおいてあなたがたを

赦してくださったように、互いに赦し合いなさい」(エペ4:32)

  *これによって、自分は自由になる。

  *責めは相手の方に残る。

②まだ相手には、赦したとは伝えていない。

  *その人が悔い改めるまでは、赦しを公に宣言すべきではない。

  *それゆえ、個人的に対面し、愛をこめて叱責するのである。

③もし相手が謝罪し、罪を告白したなら、赦されていることを伝える。

「気をつけていなさい。もし兄弟が罪を犯したなら、彼を戒めなさい。そして悔

い改めれば、赦しなさい。かりに、あなたに対して一日に七度罪を犯しても、『悔

い改めます』と言って七度あなたのところに来るなら、赦してやりなさい」(ルカ

17:3~4)

(例話)第5回「再臨待望聖会」

*メシアニックジューとアラブ人クリスチャンの和解

*終末論的和解

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