私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
メシアの生涯(77)—長血の女とヤイロの娘(2)—
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ヤイロの娘の蘇生から学ぶ
「長血の女とヤイロの娘(2)」
§067 マコ5:35~43
1.はじめに
(1)文脈の確認
①イエスの奇跡は、弟子訓練を目的としたものとなった。
②この箇所の奇跡も、弟子訓練という文脈の中で読まねばならない。
(2)連続して起こる奇跡
①自然界の支配
②悪霊の追い出し
③不治の病の癒し
④死者の蘇生
(3)A.T.ロバートソンの調和表
「ヤイロの娘と、イエスの着物を触った女の癒し」(§67)
マコ5:21~43、マタ9:18~26、ルカ8:40~56
(4)サンドイッチ構造
①ヤイロの懇願 → 長血の女の癒し → ヤイロの娘の蘇生
②長血の女の登場は、ヤイロにとっては妨害(中断)であった。
③しかし、その妨害に意味がある。
2.アウトライン
(1)落胆したヤイロへのことば(35~36節)
(2)泣き叫ぶ人々へのことば(37~40節)
(3)死んだ少女へのことば(41~43節)
3.結論:
(1)イエスの弟子訓練の総まとめ
(2)3人の弟子たちの訓練
ヤイロの娘の蘇生から学ぶ。
Ⅰ.落胆したヤイロへのことば(35~37節)
1.35節
「イエスが、まだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人がやって来て言った。『あ
なたのお嬢さんはなくなりました。なぜ、このうえ先生を煩わすことがありましょう』」
(1)娘は亡くなった。
①気温の高いパレスチナでは、葬儀の準備はただちに行われた。
②親に情報を伝える前に、すでに泣き女たちを集める作業を始めていた。
③もう死んだのだから、イエスに来てもらう必要はなくなった。
(2)会堂管理者ヤイロの心配が現実のものとなった。
2.36節
「イエスは、その話のことばをそばで聞いて、会堂管理者に言われた。『恐れないで、た
だ信じていなさい』」
(1)訳文の比較
「イエスは、その話のことばをそばで聞いて」(新改訳)
「イエスはその話をそばで聞いて」(新共同訳)
「イエスはその話している言葉を聞き流して」(口語訳)
①写本の違いが訳文の違いになっている。口語訳の写本が一番よい。
②「Ignoring what they said,」(NIV)
③無視するとは、聞こえてきたが、関心を示さないということ。
(2)無視することについて
①箴4:14~15
「悪者どもの道に入るな。悪人たちの道を歩むな。それを無視せよ。そこを通る
な。それを避けて通れ」
②箴8:33
「訓戒を聞いて知恵を得よ。これを無視してはならない」
(3)「恐れないで、ただ信じていなさい」
①これは、会堂管理者へのことばである。
②会堂管理者は、長血の女の癒しを目撃した。
③それによって、イエスに対する信仰が強められた。
④イエスは、彼の信仰を励ましたのである。
⑤彼もまた、信仰の訓練を受けている。
2.37節
「そして、ペテロとヤコブとヤコブの兄弟ヨハネのほかは、だれも自分といっしょに行く
のをお許しにならなかった」
(1)3人の弟子だけが同行を許された。
①ペテロ、ヤコブ、ヨハネ
②3人の証人を立てている。
(2)その場に残された人たち
①弟子たち9人
②群衆
Ⅱ.泣き叫ぶ人々へのことば(38~40節)
1.38~39節
「彼らはその会堂管理者の家に着いた。イエスは、人々が、取り乱し、大声で泣いたり、
わめいたりしているのをご覧になり、中に入って、彼らにこう言われた。『なぜ取り乱し
て、泣くのですか。子どもは死んだのではない。眠っているのです』」
(1)ヤイロの家は喧噪で満ちていた。
①泣き女たちが仕事をしていた。
②裕福な人の家では、大ぜいの泣き女を雇っていた。
③交互に泣き声を上げることもあった。
(2)「なぜ取り乱して、泣くのですか。子どもは死んだのではない。眠っているので
す」
①これは、泣き叫ぶ人々へのことばである。
②イエスは、少女がこん睡状態にあると言っているのではない。
③また、肉体の死と復活の間、魂は眠りの状態にあると教えているわけでもない。
④観察者の目から見て、彼女は蘇生するので、眠りから覚めたような状態になる。
2.40節
「人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなを外に出し、ただその子どもの父
と母、それにご自分の供の者たちだけを伴って、子どものいる所へ入って行かれた」
(1)少女のいる部屋に入ったのは、少数の者であった。
①父と母
②3人の弟子たち
(2)この癒しは私的な空間で行われる。
①イエスのメシア性を証明する奇跡は、公の空間で行われた。
②ここでは、イエスは個人の信仰に答える形で奇跡を行っておられる。
Ⅲ.死んだ少女へのことば(41~43節)
1.41節
「そして、その子どもの手を取って、『タリタ、クミ』と言われた。(訳して言えば、「少
女よ。あなたに言う。起きなさい」という意味である)」
(1)イエスは、死体に触れている。
①儀式的汚れの問題を解決している。
②死の問題も解決している。
(2)「タリタ、クミ」
①これは、アラム語である。
②紀元1世紀の中東では、アラム語とギリシア語は、共通語であった。
③ヘブル語は、ユダヤ人の日常語であった(紀元3世紀頃まで)。
④それ以降、ヘブル語は日常語としての機能を失い、祈りの言葉となった。
⑤19世紀になって、エリエゼル・ベン・イェフダがヘブル語を復活させた。
⑥この時代のユダヤ人は、ヘブル語とアラム語を流暢に話せた。ギリシア語は、
個人差があった。
⑦イエスと弟子たちはアラム語を話したとされてきた。
⑧しかし、当時の状況から判断すると、ヘブル語を中心に話したと考えられる。
(3)少女の状態は、絶望でも、変更不可能でもない。
2.42~43節
「すると、少女はすぐさま起き上がり、歩き始めた。十二歳にもなっていたからである。
彼らはたちまち非常な驚きに包まれた。イエスは、このことをだれにも知らせないように
と、きびしくお命じになり、さらに、少女に食事をさせるように言われた」
(1)12歳の少女
①結婚前の処女であろう。許嫁がいた可能性が高い。
②希望に満ちた将来が待っているだけに、その死はより一層悲劇的である。
(2)癒しは即座に行われた。
①少女はすぐさま起き上がり、歩き始めた。
②彼らは仰天した。
*3人の弟子たち
*父と母
(3)イエスの2つの命令
①沈黙せよとの命令
*誤った動機で人々がイエスに近づかないように。
②少女に食事をさせよとの命令
*少女は死から健康体に戻った。
*これは復活の体とは異なる。
*食事によって維持される必要のある体である。
結論:
1.イエスの弟子訓練の総まとめ
(1)しるし
①イスラエルへのしるしから、弟子たちへのしるしへの変化
(2)奇跡
①信仰のない大衆から、信仰のある個人への変化
②宣伝から、沈黙への変化
(3)メッセージ
①会堂や町々での宣言から、沈黙への変化
(4)教え
①明白な教えから、たとえ話による教えへの変化
2.3人の弟子たちの訓練
(1)ペテロ、ヤコブ、ヨハネの3人は特別な訓練を受けた。
(2)マコ9:2
「それから六日たって、イエスは、ペテロとヤコブとヨハネだけを連れて、高い山に
導いて行かれた。そして彼らの目の前で御姿が変わった」
(3)マコ14:32~33
「ゲツセマネという所に来て、イエスは弟子たちに言われた。『わたしが祈る間、こ
こにすわっていなさい。』そして、ペテロ、ヤコブ、ヨハネをいっしょに連れて行か
れた。イエスは深く恐れもだえ始められた」
(4)十字架と復活の意味についての訓練
(5)私的聖書解釈は無視すべきであるが、使徒たちの教えは無視すべきでない。
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