メシアの生涯(71)—からし種のたとえ、パン種のたとえ—

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このメッセージでは...

からし種のたとえとパン種のたとえを理解し、適用するために学びます。
(チャート資料「神の国」を添付してあります)

「からし種のたとえ、パン種のたとえ」

§064 マコ4:30~32、マタ13:33~35

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①イエスの教えは、たとえ話が中心となった。

    ②9つのたとえ話のテーマは、「奥義としての王国」である。

    ③チャートで「奥義としての王国」の意味を確認する。

  (2)「奥義としての王国」に関する9つのたとえ話

    ①種蒔く人のたとえ(詳細な解説がある)

    ②種のたとえ

    ③毒麦のたとえ(詳細な解説がある)

    ④からし種のたとえ

    ⑤パン種のたとえ

    ⑥畑に隠された宝のたとえ

    ⑦高価な真珠のたとえ

    ⑧網のたとえ

    ⑨一家の主人のたとえ

(3)A.T.ロバートソンの調和表

      「最初の主要なたとえ話群」(§64)

2.アウトライン

  (1)からし種のたとえ(マコ4:30~32)

  (2)パン種のたとえ(マタ13:33)

  (3)たとえで話す理由(マタ13:34~35)

  3.結論:現代への適用

このメッセージは、からし種のたとえとパン種のたとえを理解し、適用するためのものである。

Ⅰ.からし種のたとえ(マコ4:30~32)

   1.30節

「また言われた。『神の国は、どのようなものと言えばよいでしょう。何にたとえたらよ

いでしょう』」

   (1)2重の質問

    ①弟子たちは、いくつかのたとえ話とその解き明かしを聞いてきた。

    ②ここでイエスは、弟子たちに考えるチャンスを与えている。

    ③弟子たちは、「奥義としての王国」の性質について考え始める。

  (2)イエスのたとえ話は、弟子たちが想像したものとは大いに異なる。

    ①種のたとえでは、奥義としての王国は「種蒔き」から始まることが示された。

    ②これは、当時のユダヤ人たちが抱いていた神の国のイメージとは異なる。

    ③今回は、種の中でも特に小さい「からし種」が取り上げられる。

2.31節

「それはからし種のようなものです。地に蒔かれるときには、地に蒔かれる種の中で、一

番小さいのですが、」

   (1)からし種

    ①「からし種」がなんであるか、学者の間に論争がある。

    ②恐らく「黒胡椒」であろう。

    ③イエス時代、最も小さな種として知られていた。

      *からし種1グラムの中に725~760粒の種がある。

    ④胡椒は調味料として、また油を搾る種として珍重された。

  (2)「地に蒔かれる種の中で、一番小さい」

    (例話)この言葉を聞いて、聖書の霊感に疑いを持った人がいる。

    ①ヘブル的には、「からし種」は格言的言葉で、最も小さなものを象徴している。

    ②イエスは、誇張法を用いて話している。

    ③「奥義としての王国」の始まりは、実に取るに足りないものである。

    ④イエスの弟子たちは、少数であった。

    ⑤イエスの教えは、この世の価値観とは正反対のものであった。

3.32節

「それが蒔かれると、生長してどんな野菜よりも大きくなり、大きな枝を張り、その陰に

空の鳥が巣を作れるほどになります」

  (1)からし種は、木ではない。

    ①日本語聖書では、「野菜」と訳されている。

    ②ギリシア語では「ラカノン」である。灌木、ハーブ。

    ③木ではないが、木のように枝を張る。

    ④一年生植物である。

  (2)「生長してどんな野菜よりも大きくなり、」

     ①パレスチナでは、3.5~4.5メートルにもなるものがある。

  (3)「大きな枝を張り、その陰に空の鳥が巣を作れるほどになります」

     ①野生の鳥がその枝に宿るようになる。

    ②小さな始まりが、大きな結果につながることを教えている。

  4.空の鳥とは何か

    (1)マコ4:13

    「このたとえがわからないのですか。そんなことで、いったいどうしてたとえの理解

ができましょう」

  ①種蒔く人のたとえが、それ以外のたとえ話を解釈する基準である。

  ②鳥(複数形)とは、サタンや悪霊の象徴であった。

  ③それと同じ解釈をする必要がある。

(2)生長したからし種は、「奥義としての王国」である。

  ①小さな始まりと、大きな生長が、その特徴である。

②それは、キリスト教界を意味する(本物の教会と偽の教会が混在する)。

(3)空の鳥(複数形)は、サタンや悪霊の象徴である。

  ①福音の真理を否定するカルトや異端が、空の鳥である。

Ⅱ.パン種のたとえ(マタ13:33)

1.33節

「イエスは、また別のたとえを話された。『天の御国は、パン種のようなものです。女が、

パン種を取って、三サトンの粉の中に入れると、全体がふくらんで来ます』」

  2.女という言葉は、宗教的存在を象徴している。

    (1)これは、聖書全体で使用されている象徴である。

  (2)良い意味での象徴

    ①イスラエルは、「ヤハウェの妻」である。

    ②教会は、「キリストの花嫁」である。

  (3)悪い意味での象徴

    ①黙2:20

    「しかし、あなたには非難すべきことがある。あなたは、イゼベルという女をな

すがままにさせている。この女は、預言者だと自称しているが、わたしのしもべ

たちを教えて誤りに導き、不品行を行わせ、偶像の神にささげた物を食べさせて

いる」

  *イゼベルという名の偽女預言者

②黙17:1~2

「また、七つの鉢を持つ七人の御使いのひとりが来て、私に話して、こう言った。

『ここに来なさい。大水の上にすわっている大淫婦へのさばきを見せましょう。

地の王たちは、この女と不品行を行い、地に住む人々も、この女の不品行のぶど

う酒に酔ったのです』」

  *統一化された偽の教会

  3.パン種という言葉は、罪を象徴している。

    (1)種なしパンの祭りでは、7日間パン種を家から取り除く(出12:15)。

      ①ユダヤ人たちは、その意味を理解した。違反者は共同体から追放された。

    (2)マタ16:6

    「イエスは彼らに言われた。『パリサイ人やサドカイ人たちのパン種には注意して気を

つけなさい』」

(3)マタ16:12

「彼らはようやく、イエスが気をつけよと言われたのは、パン種のことではなくて、

パリサイ人やサドカイ人たちの教えのことであることを悟った」

  (4)マコ8:15には、「ヘロデのパン種」という言葉が出て来る。

  (5)1コリ5:8

  「ですから、私たちは、古いパン種を用いたり、悪意と不正のパン種を用いたりしな

いで、パン種の入らない、純粋で真実なパンで、祭りをしようではありませんか」

(6)ガラ5:9

「わずかのパン種が、こねた粉の全体を発酵させるのです」

  ①ここでは、パン種は「偽りの教理」のことである。

  4.「入れる」という動詞

    (1)訳文の比較

    「女が、パン種を取って、三サトンの粉の中に入れると、全体がふくらんで来ます」

(新改訳)

    「女がこれを取って三サトンの粉に混ぜると、やがて全体が膨れる」(新共同訳)

    「女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」(口語訳)

    (2)ギリシア語で「エンクルプトウ」。隠す、しのばせるという意味。

      英語では、「hide」と訳されている。

    (3)このたとえの背景

      ①ローマの町々にはパン屋があったが、この情景は、ガリラヤ地方の婦人が家で

行うパン焼きである。

②1サトンは約14リットル。3サトンは約42リットル。

③ひとりの婦人が捏ねる最大量である。

④これでパンを焼くと、約100人が食べられる。

  5.このたとえの意味

    (1)偽りの教えが「奥義としての王国」にこっそりと入り込む。

    (2)その結果、キリスト教界全体が影響を受ける。

Ⅲ.たとえで話す理由(マタ13:34~35)

   1.34~35節

  「イエスは、これらのことをみな、たとえで群衆に話され、たとえを使わずには何もお話

しにならなかった。それは、預言者を通して言われた事が成就するためであった。『わた

しはたとえ話をもって口を開き、世の初めから隠されていることどもを物語ろう』」

   (1)群衆から真理を隠すために。

  (2)詩78:2の成就

  「私は、口を開いて、たとえ話を語り、昔からのなぞを物語ろう」

結論:現代への適用

  1.偽りの教えが混ぜられた結果、何が起こったか。

    (1)キリスト教界が3分割された。

      ①ローマ・カトリック教会

      ②東方正教会

      ③プロテスタント教会

    (2)3分割された教会は、それぞれが程度の差こそあれ、偽りの教えを内包している。

  2.歴史的経緯

    (1)紀元70年のエルサレムと神殿の崩壊

      ①エルサレム教会消滅。中心はアンテオケ教会、エペソ教会(80年頃)に移行。

      ②それでも、紀元1世紀末までは、メシアニックジューが教会を指導した。

    (2)バル・コクバの反乱(132~135年)以降

      ①メシアニックジューと他のユダヤ人の間に決定的な分裂が起こる。

      ②異邦人教会からメシアニックジューとの間に距離を置こうとする動きが出る。

      ③キリスト教からユダヤ的な要素をすべて除き去ろうとする動きが起こる。

        *ユダヤ人がユダヤ教の律法を守ることが、否定された。

        *土曜日安息から、日曜日への移行。

        *太陰暦から太陽暦への移行(イースターを過越の祭りと別の日にする)

    (3)ミラノ勅令(313年)以降

      ①異邦人教会の拡大とメシアニックジュー消滅の時代

      ②321年には、日曜日を安息日とする法律が作られた。

      ③392年には、キリスト教が国教化された。

④反ユダヤ主義的な神学体系は、4世紀には出来上がっていた。

    (4)1054年の「相互破門」(大シスマ)

      ①教会の東西分裂

      ②相互破門は解消されたが、教会「合同」は実現していない。

    (5)16世紀の宗教改革

      ①プロテスタント教会の誕生

    (6)異邦人教会が、メシアニックジューを排除したところから分裂が始まっている。

      ①それ以降、「あなたたちが間違っており、私たちは正統派である」という論理

が使われてきた。

②異邦人教会とメシアニックジューの和解こそ、分裂解消の鍵となる。

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