私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
ヨハネの福音書(2)「公生涯への序曲」-イエスに従った5人の型―ヨハ1:19~51
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公生涯への序曲について学ぶ。
ヨハネの福音書(2)
「公生涯への序曲」-イエスに従った5人の型―
ヨハ1:19~51
1.はじめに
(1)前書きの内容は、神学的なものである。
①イエスは、神である。
②イエスは、神の子が人となられたお方である。
③イエスは、罪人に永遠のいのちを与えるために来られた。
(2)文脈の確認
①前書き(1:1~18)
②イエスの公生涯(1:19~12:50)
*公生涯への序曲(1:19~51)
2.アウトライン
(1)ヨハネの婉曲的証し(19~28節)
(2)ヨハネの直接的証し(29~34節)
(3)証しへの応答(35~42節)
(4)証しの広がり(42~51節)
公生涯への序曲について学ぶ。
Ⅰ.ヨハネの婉曲的証し(19~28節)
1.19~20節
Joh 1:19
さて、ヨハネの証しはこうである。ユダヤ人たちが、祭司たちとレビ人たちをエルサレムから遣わして、「あなたはどなたですか」と尋ねたとき、
Joh 1:20
ヨハネはためらうことなく告白し、「私はキリストではありません」と明言した。
(1)ユダヤ人たちが、祭司たちとレビ人たちをエルサレムから遣わした。
①ここでの「ユダヤ人たち」とは、ユダヤの住民たちである。
②サンヘドリンは、ローマ公認の自治組織(司法、行政、立法機関)である。
*70名の議員と1名の議長(大祭司)から成る。
*祭司長(サドカイ派)、律法学者(パリサイ派)、長老(一般人の代表)
③サンヘドリンは、ヨハネが指導している神の国運動を無視できなくなった。
*エルサレムから派遣されたことが、3度も出てくる(19、22、24節)。
(2)審問と回答
①「あなたはどなたですか」
②「私はキリストではありません」
2.21~24
Joh 1:21
彼らはヨハネに尋ねた。「それでは、何者なのですか。あなたはエリヤですか。」ヨハネは「違います」と言った。「では、あの預言者ですか。」ヨハネは「違います」と答えた。
Joh 1:22
それで、彼らはヨハネに言った。「あなたはだれですか。私たちを遣わした人たちに返事を伝えたいのですが、あなたは自分を何だと言われるのですか。」
Joh 1:23
ヨハネは言った。「私は、預言者イザヤが言った、『主の道をまっすぐにせよ、と荒野で叫ぶ者の声』です。」
Joh 1:24彼らは、パリサイ人から遣わされて来ていた。
(1)審問と回答
①「あなたはエリヤですか」(マラ4:5の預言)。
②「違います」
③「では、あの預言者ですか」(申18:15の預言)
④「違います」
⑤「あなたは自分を何だと言われるのですか」
⑥ヨハネは自分を、「荒野で叫ぶ者の声」として紹介した(イザ40:3)。
*ヨハネは「声」であり、イエスは「ことば」である。
*ヨハネは、メシアの先駆者としての自分の使命をよく理解していた。
3.25~27節
Joh 1:25
彼らはヨハネに尋ねた。「キリストでもなく、エリヤでもなく、あの預言者でもないなら、なぜ、あなたはバプテスマを授けているのですか。」
Joh 1:26
ヨハネは彼らに答えた。「私は水でバプテスマを授けていますが、あなたがたの中に、あなたがたの知らない方が立っておられます。
Joh 1:27
その方は私の後に来られる方で、私にはその方の履き物のひもを解く値打ちもありません。」
(1)審問と回答
①無資格の身でありながら、なぜバプテスマを授けているのか。
②水でバプテスマを授けているのは、メシアが現れるための準備である。
③メシアと比較すると、自分は奴隷以下の存在だ。
4.28節
Joh 1:28
このことがあったのは、ヨルダンの川向こうのベタニアであった。ヨハネはそこでバプテスマを授けていたのである。
(1)「ヨルダンの川向こうのベタニア」
①ユダのベタニアとは異なる場所である。
②霊的覚醒は、辺境の地から始まる。
Ⅱ.ヨハネの直接的証し(29~34節)
1.29~31節
Joh 1:29
その翌日、ヨハネは自分の方にイエスが来られるのを見て言った。「見よ、世の罪を取り除く神の子羊。
Joh 1:30
『私の後に一人の人が来られます。その方は私にまさる方です。私より先におられたからです』と私が言ったのは、この方のことです。
Joh 1:31
私自身もこの方を知りませんでした。しかし、私が来て水でバプテスマを授けているのは、この方がイスラエルに明らかにされるためです。」
(1)テンポの速い展開
①「その翌日」(29、35、43節)
②「それから三日目に」(2章1節)
③およそ1週間後に、イエスと弟子たちはカナの婚礼に参列することになる。
(2)「見よ、世の罪を取り除く神の子羊」
①紀元1世紀のユダヤ人たちは、「子羊」について2つの概念を持っていた。
*過ぎ越しの子羊という概念(出12章)
*メシア的子羊という概念(イザ53章)
②ヨハネは両方の意味で、イエスを「神の子羊」と呼んだ。
(3)「その方は私にまさる方です。私より先におられたからです」
①イエスは人間としては、ヨハネよりも6か月後に誕生した。
②しかし、神の子としては、宇宙が創造される前から存在しておられた。
③イエスは人間性と神性の両方を持たれた。
2.32~34節
Joh 1:32
そして、ヨハネはこのように証しした。「御霊が鳩のように天から降って、この方の上にとどまるのを私は見ました。
Joh 1:33
私自身もこの方を知りませんでした。しかし、水でバプテスマを授けるようにと私を遣わした方が、私に言われました。『御霊が、ある人の上に降って、その上にとどまるのをあなたが見たら、その人こそ、聖霊によってバプテスマを授ける者である。』
Joh 1:34
私はそれを見ました。それで、この方が神の子であると証しをしているのです。」
(1)ヨハネは、イエスがヨハネから洗礼を受けたことを前提に書いている。
①イエスの上に御霊が鳩のように天から下るのを見た。
②「それで、この方が神の子であると証しをしているのです」
Ⅲ.証しへの応答(35~42節)
1.35~37節
Joh 1:35その翌日、ヨハネは再び二人の弟子とともに立っていた。
Joh 1:36そしてイエスが歩いて行かれるのを見て、「見よ、神の子羊」と言った。
Joh 1:37二人の弟子は、彼がそう言うのを聞いて、イエスについて行った。
(1)イエスの最初の弟子たちは、バプテスマのヨハネの弟子たちであった。
①「二人の弟子」とは、アンデレと本書の著者ヨハネである。
②2人はイエスについて行った(ヨハネの証しへの応答)。
③バプテスマのヨハネは、自分の弟子を失うことになる。
④彼の使命は、メシアを指し示すことである。
2.38~40節
Joh 1:38
イエスは振り向いて、彼らがついて来るのを見て言われた。「あなたがたは何を求めているのですか。」彼らは言った。「ラビ(訳すと、先生)、どこにお泊まりですか。」
Joh 1:39
イエスは彼らに言われた。「来なさい。そうすれば分かります。」そこで、彼らはついて行って、イエスが泊まっておられるところを見た。そしてその日、イエスのもとにとどまった。時はおよそ第十の時であった。
Joh 1:40
ヨハネから聞いてイエスについて行った二人のうちの一人は、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。
(1)ラビが弟子を取るときのユダヤ的習慣
①志願者は、ラビの教えに耳を傾けながら、距離を置いてその後に付いて行く。
②ラビが、「何を求めているのか(誰を探しているのか)」と質問する。
③志願者は、「ラビ。どこにお泊りですか(お住まいですか)」と問いかける。
④「お前と何の関係があるのか」は、断りのことばである。
⑤「来なさい。そうすれば分かります」は、承認のことばである。
(2)この日、アンデレとヨハネは、イエスをメシアと信じた。
①「時はおよそ第十の時であった」
*ユダヤ式時間では、午前6時から数えて第10時。午後4時。
*ローマ式時間では、午前0時から数えて第10時。午前10時。
*恐らく午前10時であろう(ヨハネの福音書はエペソで執筆された)。
②彼らは、イエスと親しく話し合った。
*その内容は、旧約聖書(律法と預言者)のメシア預言であろう。
3.41~42節
Joh 1:41
彼はまず自分の兄弟シモンを見つけて、「私たちはメシア(訳すと、キリスト)に会った」と言った。
Joh 1:42
彼はシモンをイエスのもとに連れて来た。イエスはシモンを見つめて言われた。「あなたはヨハネの子シモンです。あなたはケファ(言い換えれば、ペテロ)と呼ばれます。」
(1)「彼はまず自分の兄弟シモンを見つけて、」
①何をするよりも先に自分の兄弟シモンを見つけてという解釈が多い。
②別の解釈も可能である(ギリシア語のプロトス)。
*ヨハネも兄弟を探したが、アンデレの方が先に自分の兄弟を見つけた。
(2)「私たちはメシア(訳すと、キリスト)に会った」
①ユダヤ人が長年夢に描いてきたことが実現した。
②これまで師であったバプテスマのヨハネが、この方を指し示した。
③私とヨハネは、そのお方のそばに座り、心ゆくまでその教えに耳を傾けた。
④アンデレは、ペテロをイエスのもとに連れて来た。
(3)イエスの応答
①シモンに目を留めた。その本質を見極めた。
②シモンの名を呼んだ。「ヨハネの子シモン」(バル・ヨハネ・シモン)。
③シモンに新しい名を与えた。
*「ケファ」はアラム語で岩という意味。
*ギリシア語では「ペテロ」(ペテロス)。これもまた岩という意味。
Ⅳ.証しの広がり(43~51節)
1.43~44節
Joh 1:43
その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされた。そして、ピリポを見つけて、「わたしに従って来なさい」と言われた。
Joh 1:44彼はベツサイダの人で、アンデレやペテロと同じ町の出身であった。
(1)ガリラヤに帰ろうとされた時に、ピリポを見つけた。
①今度は、イエスがピリポを招いた。ユダヤ教の習慣にないことである。
(2)ピリポの経歴
①アンデレやペテロと同じくベツサイダ出身(ガリラヤ湖の北東にある町)。
②この時、アンデレやペテロからイエスに関する情報を得たであろう。
③彼もまた、イエスをメシアと信じた。
2.45~46節
Joh 1:45
ピリポはナタナエルを見つけて言った。「私たちは、モーセが律法の中に書き、預言者たちも書いている方に会いました。ナザレの人で、ヨセフの子イエスです。」
Joh 1:46
ナタナエルは彼に言った。「ナザレから何か良いものが出るだろうか。」ピリポは言った。「来て、見なさい。」
(1)ピリポは、ナタナエルを見つけた。
①改宗者は、情熱的な伝道者となる。
②「モーセが律法の中に書き、預言者たちも書いている方に会いました」
*申18:18の預言
*預言者たちの預言
②「ナザレの人で、ヨセフの子イエスです」
(2)ナタナエルの応答
①「ナザレから何か良いものが出るだろうか」
②これは、当時のユダヤ人の普通の反応である。
*メシアは、エルサレムかヘブロンから出ると考えられていた。
③ガリラヤ地方は、ユダヤ(エルサレム)から見ると、格下である。
④そのガリラヤ地方の中でも、ナザレは特に軽蔑の対象であった。
⑤ピリポは、それ以上論じることはせず、「来て、見なさい」と言った。
3.47~49節
Joh 1:47
イエスはナタナエルが自分の方に来るのを見て、彼について言われた。「見なさい。まさにイスラエル人です。この人には偽りがありません。」
Joh 1:48
ナタナエルはイエスに言った。「どうして私をご存じなのですか。」イエスは答えられた。「ピリポがあなたを呼ぶ前に、あなたがいちじくの木の下にいるのを見ました。」
Joh 1:49
ナタナエルは答えた。「先生、あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です。」
(1)イエスのナタナエルに関する評価
①「まさにイスラエル人です。この人には偽りがありません」
②ナタナエルは、イスラエルという名にふさわしい人物である。
③彼には、先祖ヤコブのような偽りがない。
(2)ナタナエルの質問
①「どうして私をご存じなのですか」
②彼の疑問は、初対面の人が、どこからその情報を手に入れたのかということ。
(3)イエスの回答
①「いちじくの木の下にいるのを見ました」
*そこは、安全、休息、黙想の場を指す。
*1列4:25、ミカ4:4、ゼカ3:10
②これは、イエスの神性(全知全能)を啓示している。
(4)ナタナエルの告白
①「先生。あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です」
*「ラビ」「神の子」「イスラエルの王」(2サム7:14、詩2:6~7)
②彼が、三位一体や受肉の真理を理解したということではない。
4.50~51節
Joh 1:50
イエスは答えられた。「あなたがいちじくの木の下にいるのを見た、とわたしが言ったから信じるのですか。それよりも大きなことを、あなたは見ることになります。」
Joh 1:51
そして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに言います。天が開けて、神の御使いたちが人の子の上を上り下りするのを、あなたがたは見ることになります。」
(1)イエスがメシアであることを、より確実な証拠をもって信じるようになる。
①「それよりもさらに大きなこと」とは、2~13章に出てくる奇跡である。
(2)イエスは、ナタナエルが黙想していた個所まで言い当てている。
①ベテルでヤコブが見た夢(創28:10~12)
*神の使いたちが、はしごを上り下りしている。
*1つのはしごが、天と地の間を結ぶ役割を果たしている。
*天使たちの上り下りは、天と地のコミュニケーションである。
*イエスは、天と地を結ぶ新しいコミュニケーションの方法である。
③ヨハ1:18
Joh 1:18 いまだかつて神を見た者はいない。父のふところにおられるひとり子の神が、神を説き明かされたのである。
結論
1.バプテスマのヨハネ
(1)自分は光ではなく、光について証しをする者である。
(2)自分は「ことば」ではなく、「ことば」について証しをする「声」である。
(3)弟子を失うことや、脇役になることを、いとわない。
2.アンデレ
(1)彼は、脇役である。
①「シモン・ペテロの兄弟アンデレ」と呼ばれている。
(2)登場するときはいつも、人をイエスのもとに連れて来る。
①1:42(ペテロ)、6:4~9(少年)、12:20~22(ギリシア人)
3.ペテロ
(1)ペテロは、粗削りで、直情型の人間である。
(2)イエスは彼に、ケファ(ペテロ)という新しい名を与えた。
①イエスはペテロの可能性に目をとめた。
②彼の信仰告白は、教会設立の土台となる。
③教会誕生後、彼は岩のような役割を果たした。
4.ピリポは、ごく普通の人である。
(1)ヨハネの福音書にしか情報はない。
①登場する時は、アンデレとの関係で出て来る。
②自分から積極的に求めるタイプではない。
③イエスから彼を招かれた。
④神の国の拡大のためには、ピリポタイプの人材も必要である。
5.ナタナエル
(1)見られているという意識の重要性
(2)ナタナエルの信仰の土台は、ここにある。
(3)カルト的リーダーシップの問題点は、不安感である。
(4)詩139篇
まとめ
(1)公生涯への序曲が始まった。
(2)異なった賜物を持った弟子たちが、それぞれの方法で証しをする。
(3)私たちの時代にも、神は大いなることをなさる。
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